パーフェクトゲームを目指すには!   作:メタ(ル)

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「はい、せーの!」

「「「ぐおおおおー!」」」

「オーケー、そのままコンテナに入れて」

「入りました!」

「じゃあ後は頼んだわよ」


"黒"の陣営の一場面






栄光/問答/押し込み漁(修正版)

トゥリファスのはるか上空。

雲がまばらにポコポコと発生している高さと同じぐらいの位置に"赤"の陣営たちは"黒"の陣営を打倒すべく集結していた。

 

 

「しかし、"赤"のセイバーやられているとなると、城攻めの難易度は高くなるか」

 

「どのみちあのセイバー主従を説得するのに材料は揃っていませんでしたので、残念ですが」

 

 

今彼らが話しているのは二日前に大聖杯から通達された事件だった。

"赤"のセイバー━━モードレッドの脱落。

消滅したことでルーラーである天草四郎にはその脱落したサーヴァントの真名と共に脱落が通達された。

 

やはり円卓の騎士だった、というのは今更ではあるが、ここでモードレッドが脱落したのはいい意味で誤算を起こしてくれそうな者の介入が無くなってしまったことによる損失だろう。

モードレッドが脱落していなければこちらに従ってもらう材料はないが「こちらに従わなくてもよいから、城攻めに参加してほしい」と言葉巧みに動かせば、運よく敵サーヴァントを倒すか足止めしてくれるので城攻めが楽になっていただろう。

このように「~たられば」の話をしていても、もうモードレッドが居ない以上どうしようもない。

 

 

「接近戦が出来るのはカルナと宝具によるデメリット付きでアタランテ、辛うじて私しかいないですね」

 

「バーサーカーかライダーの坊やを動かさないべきじゃったか。近接戦が主力のセイバー、バーサーカー、遊撃としてライダー、これらを失ったのはデカいな」

 

 

今の"赤"の陣営の問題点は接近戦を得手とする者がカルナぐらいしかいないことだ。

遠距離から穴倉を決めてチクチクやりさえすれば勝機はあるが、向こうにもまだたくさんの令呪がある。瞬間移動からの宝具で一発だろう。

やはりあの時無理やりにでもセイバーを入手すべきだったか、バーサーカーを令呪を使ってでも帰らせるべきだったか、ライダーを即座に撤退すべきだったか、反省点はたくさんある。

しかし、それでも天草は諦めていなかった。

何としても聖杯を手に入れ、人類の救済を‥‥‥! と。

 

 

 

さて、そんなこんなでもうまもなくユグドミレニアの拠点たる城塞が目視で視認できるほどの位置に居た。

さすがに神秘の秘匿を破って後世で叩かれるのはそれはそれで嫌なので一応地上から見えない程度の高度にいる。まぁ最終的には城塞付近で急降下するのだが。

敵の"黒"のキャスターによる神殿レベルの結界が張られているようだがこちらの宝具、虚栄の空中庭園(ハンギングガーデンズ・オブ・バビロン)ランクEX(規格外)且つ幻想から生み出されたものであるので無視して突破することが可能だった。

そうして完全に城塞を目視できるまでの距離に行ったところで天草はユグドミレニア城塞周辺のサーヴァントの探知を行った。

 

 

「数は‥‥‥10騎ですか。やはり亜種聖杯戦争で召喚されたのは3騎ですね」

 

 

数を確認してやはりバーサーカーとキャスターが存在していることと追加で召喚されたのが3騎だという予想が当たっていた天草。

残りの見えていない3騎はどのような能力持ちかはいまいち掴めないが不明組の"黒"のアーチャーと同じく強力な英霊であることには間違いがない。

 

 

「そして、肝心なのは‥‥‥」

 

 

城塞を正面から見下ろす形で視界全てで捉える。

何かを探すように眼を酷使する天草。

その光景はなぜか3分以上(・・・・)も続き、時間が経つにつれて表情が焦った方へと変化していった。

これには天草のサーヴァントであるセミラミスは声をかけようとしたが、その疑問は天草の発した言葉で理解してしまった。

 

 

 

「なぜ、なぜだ‥‥‥! なぜ城塞にない━━」

 

 

 

 

━━大聖杯

 

 

 

 

何と城塞に大聖杯が無かったのである。

しかも小聖杯や亜種聖杯も同様に無かった。

キャスターの魔術による隠匿の線は‥‥‥ありえない。あの大聖杯にはたとえ神代のキャスターだとしても弄ることはできても完全に隠すことはできない。

ならば既に破壊されているか。いや、それもない。それだったらセミラミスを含めたサーヴァントたちは消滅している。

他に可能性があるとすれば‥‥‥

 

 

「既に大聖杯を移動させた。こちらが準備をしていたようにあちらも準備できる期間がありました。ならば向こうがこちらの狙いが大聖杯だということを想定した上で移動させるのも納得がいきます」

 

 

普通に考えて『聖杯戦争』である以上、こちらが大聖杯を狙っていると考えるのは当然だ。

ならば数日かけてでも安全な場所に移動させるのも当然だ。

あちらには傘下の魔術師とホムンクルスにキャスターがいる。大人数かつ魔術を扱えるものならば重い大聖杯を移動させるのも簡単か。

今現在の大聖杯の場所も魔術で弄っているのか世界中のランダムな都市を指している。

 

 

(やられた‥‥‥!)

 

 

天草は内心で呟く。

既に余裕がなく、素の口調に戻りかけていた。

 

このような常人であればやるのも当然な策でしてやられた天草たち"赤"の陣営。

しかし、これだけで終わらないのが"黒"の陣営である。

 

 

 

 

「大聖杯を動かすぐらいするだろ。こっちはヒーローモノの悪役みたく重要な物を見せびらかして置きっぱにするほど馬鹿じゃないんだし。てことでゴルドさん」

 

「令呪を以て命じる、セイバーよ宝具━━我が儚き栄光よ(シャルル・パトリキウス)を発動せよ」

 

「了解だ、マスター! ようやく俺の出番だな!」

 

 

ホントに待たせてしまってごめん。

でも、この最終決戦においては活躍してもらうから。

 

 

「これぞ我が栄光の象徴! 起動せよ━━我が儚き栄光よ(シャルル・パトリキウス)!!」

 

 

宝具を発動するシャルル。

それとほぼ同時に城塞の裏手から地面が隆起し広大な土地が空へ飛んだ。

そしてエレナ女史が掛けていた隠匿の魔術が消え、その土地にあった建造物や外壁が姿を現した。

 

 

「なっ‥‥‥」

 

 

絶句する天草。

急に城塞の裏手からせり上げって来た物を見てしまった。

中世のヨーロッパ辺りの建築作りの外壁と建物に、中央には大層な噴水。

まるで庭園を模したような空中に浮かぶ城塞。

 

 

「宝具、ですね‥‥‥」

 

「ああ、我と同じ空中庭園(要塞)を出すもの‥‥‥」

 

 

想定しようがなかった。

向こうのサーヴァント、あのような芸当が出来るのはキャスターか‥‥‥そのサーヴァントがこちらと同じ城塞を扱える宝具を持っていた。

空中要塞を宝具として持てる英霊は数が絞られてくる、が…大聖杯からの知識で「キャスター、城塞」などと検索をかけてもそのサーヴァントが何者か絞り込められていない。

大穴でバーサーカーでも検索をしてもヒットしない。

「城塞」単体で調べると数時間かかるので今は無理だ。

エクストラクラスの持つ宝具か、別の概念系宝具の応用であの城塞を出しているのか‥‥‥。

 

 

 

ドゴンッ!!

 

 

 

岩石と岩石がぶつかり合うような音と共に互いの城塞が激突した。

ほぼ同じ質量の物体がぶつかり合うことでそれまで快調に進んでいた"赤"の空中要塞は停止してしまった。

 

 

「ち、面倒な‥‥‥」

 

 

セミラミスは舌打ちをする。

実を言うと儀式自体急ごしらえで本来3日かかる作業を2日でやってしまったため、一部の作業をカットしていた。

具体的には攻撃手段、城塞の周りに展開しているエネルギーバリアのようなものから出せるビームが出せなくなっており、シールドの役目しか果たせなくなっている。

そのせいで城塞外部への攻撃手段がいかにもな大砲数門しかない。

こちらの城塞内部に侵入してきたサーヴァントの対応は通常通り行えるが、それは相手がこちらに攻めてくる場合のみ。

 

 

「あちらの城塞から移って来るサーヴァントの気配はなし。 ‥‥‥足止めか!」

 

 

セミラミスはアサシンだがキャスターの側面を持つ。

そのため戦い方はキャスター寄りの後方支援型。

互いに自分の有利な宝具(フィールド)で穴倉を決めて、一向に状況が変わらないことに痺れを切らして自分の宝具(フィールド)から出ていけば相手の思う壺だ。

なお逆も然り。

 

無論ここで「私が行く」という選択肢はあるが敵キャスター又は城塞内に居る確認されていないサーヴァントの能力が未知数すぎるため、下手に行って返り討ちに遭うのがオチだ。

今"黒"のサーヴァントが全員出張ってる中城塞が手薄なために忍び込んで大聖杯を盗むこともできそうだが、そもそも大聖杯が移されている以上行ったところで無駄だ。

となればここは自拠点に引き篭ってただひたすら"赤"の2騎に勝利を祈るしかない。

 

 

「ところでマスターよ。この城塞は宝具級の攻撃でも数発は耐えるが、対"黒"のアーチャーの対策をしっかりした上でこの作戦を実行したんじゃろ?」

 

 

 

 

 

 

「あ‥‥‥("黒"のアーチャーの存在が抜けてました‥‥‥)」

 

「あ‥‥‥」

 

 

小高い丘から白き光が飛来する。

それは回避しょうがない一撃。

 

 

 

ドゴオオオオオオオォォンッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は打って変わり、ユグドミレニアの森を駆け抜ける"赤"のアーチャーことアタランテ。

風に髪をたなびかせながら俊足の足で駆ける。

道中で蛇魔が襲来してくることもあるが矢で射抜く。

そしてまた駆ける。

 

 

駆ける━━

 

 

駆ける━━

 

 

駆ける━━

 

 

 

そうして駆け抜ける内にアタランテはいつのまにか開けた草原のような場所に辿り着いた。

辿り着いていきなり矢が飛んでくる。

 

 

「ケンタウロスだと‥‥‥?」

 

 

下手人を見ると上半身が人、下半身が馬のケンタウロス。

まさか教えたがり(ケイローン)? と思ったがよく見ると布をかぶさっている上に肌が灰色である。使い魔だ。

この特徴がみられる使い魔とそれを使役する奴は‥‥‥

 

 

「フフ‥‥‥どうだったかな? 物語上のケンタウロスだったけど」

 

「射撃は兎も角、見た目‥‥‥も、ケイローン叔父さんと少し違うかな」

 

「辛辣‥‥」

 

 

ダンテ(作家)にペルセウス‥‥‥」

 

 

待ち構えていたのは"黒"のプリテンダーであるダンテと"黒"のライダーであるペルセウス。

互いにオールラウンダーな戦い方を取れるサーヴァントたちだ。

 

 

「"黒"のプリテンダーに"黒"のライダーよ、汝らが私の相手か」

 

 

弓に矢を番えるアタランテ。

矢を放てば開戦の幕が下ろされる。

しかしながら、対する向こうの2騎は違った。

 

 

「いいや。その前に君と話がしたいかな。アタランテ」

 

「話だと?」

 

「そうだよ。話す内容は‥‥‥『聖杯に何を願うか(聖杯問答)』でどうだい? ウチのマスターたちは場合によっては"赤"のサーヴァントの願いを叶える。君もそれに含まれている、と。フフ‥‥‥」

 

 

戦場でいきなり話したかと思えば、聖杯に掛ける願いについて話し合おうとのこと。

そして暗に場合によっては願いを叶えさせてやると言っている。

少し予想外であったが、アタランテは冷静に状況を見極める。

 

 

(表情を見るに、ウソではないな。周りには伏兵の気配が無い‥‥‥話し合いの最中に不意打ちをしてくることはないだろう。あの胡散臭い天草四郎(神父)よりかは信用における。となれば━━)

 

 

 

 

「いいだろう。その誘い、受けた」

 

 

 

武器を収め、話し合いに応じたアタランテ。

これより(簡略式)聖杯問答(聖杯大戦Ver)の始まりである。

 

 

「フフ‥‥‥じゃあ言い出しっぺの法則ということでトップバッターを務めさせてもらうよ。構わないね?」

 

「うん」

 

「ああ」

 

 

 

一番手:プリテンダー(ダンテ)

 

 

「私の願いは大きく分けて二つ。一つが「ベアトリーチェと会う事」、これが最優先事項だね。君たちなら聖杯からの知識で私の記録を知っているなら分かるよね? 『神曲』の登場人物(キャラクター)であり私の初恋の相手」

 

 

ベアトリーチェというのはダンテの著した『神曲』に登場する人物であり、史実における初恋のモデルの人物でもある。

ダンテの記憶は彼女への想いが主なせいもあって、史実の妻のことは殆ど覚えていない。

 

 

「フフ‥‥‥こうみえて聖杯戦争には何度も参加したことがあって今回こそその願いを叶えるために応じたんだ」

 

「過去の聖杯戦争の記憶があるのか?」

 

「朧気に「参加した」ことだけだけどね。フフ、でも何度も参加してるということは負けているか願いが叶えられていないということと同義でしょ?」

 

「それは‥‥‥」

 

「そこで私は考えた! 聖杯戦争に勝っていたとして、もし願いが叶えられてないとしたら過程(・・)が問題なのだと!」

 

 

強調するように語尾に勢いを付けるダンテ。

その空気に呑まれかけながらも残り2騎の英霊は聞き入る。

 

 

「というワケでどのようにベアトリーチェと会うかをこの世界で知見を集めながら模索しつつ、二つ目の願いである「イタリア・フィレンツェへの帰還」をしようかな」

 

 

「他にもイタリアのサッカーチームを大活躍させたり、フィレンツェをいい感じにさせたいな」と小声でつぶやく。

なお、当初は大聖杯でベアトリーチェを召喚することを視野に入れていたが、なぜかデジャヴを感じた*1ので方法を変えることにしたようだ。

「イタリア・フィレンツェへの帰還」は簡単だろう。ダンテは単独行動(B+)という本来アーチャーしか持ちえないスキルを所有している。そのおかげでその気になれば一人で帰還できるのである。

今後の事を考えると多少は融通が利くマスターたちにつき合いながら動く方が得策と考えたダンテは他のサーヴァントたちと同じく現界し続ける選択を選んだ。

 

聞いていた2騎はそれなり納得したように頷いたりしている。

それに続くようにペルセウスが口を開ける。

 

 

 

「じゃあ次は(ワタシ)の番だね」

 

 

二番手:ライダー(ペルセウス)

 

 

()の願いは━━僕を友人と呼んでくれたマスター(杏路)を生き返らせて幸福な人生を送らる。そして、彼と一緒にペルセウス座を見ること

 

「‥‥‥。」

 

 

仮面を外したと同時、空気感がガラッと変わったペルセウス。

同郷の英雄という像とは違う予想外の願いにアタランテは一瞬思考を停止してしまった。

その傍らでダンテはというと特に何の表情も変えていない。

 

 

「僕は霊基に刻み込むというやり方である聖杯戦争の記憶を引き継いでいる」

 

 

1999年‥‥‥いや、2000年。

かつて別世界の東京で行われた聖杯戦争。

その聖杯戦争においてペルセウスは参加者の1人である伊勢三杏路という8年前の聖杯戦争からずっと病床生活を続けていた少年に召喚された。

召喚された理由は杏路という人物が自分の運命や周囲の人間を恨まず、それどころか世界中の人間の幸福を願うと言う精神性を持っていたから、生前不幸な結末を迎えなかった唯一のサーヴァント(幸福な英雄)として彼の呼びかけに応えた。

互いが似たような精神性だったがためにかけがえのない友人として召喚されてすぐ意気投合し合った。

 

 

物語を聞かせてもらったこともあった。

 

自身の冒険を語ることがあった。

 

星座について聞かせてもらったこともあった。

 

一緒に夢を持った。

 

 

 

『いつ、か…いっしょに‥‥‥ライダーの星座(ペルセウス座)を、見に‥‥‥』

 

『ああ、約束だ』

 

 

 

 

しかし、運命は残酷だった。

やせ細った体にいつものチューブが巻かれ、もう死の寸前である杏路。

誰が見ても彼の風前の灯火だった。

 

杏路は悟っていた、もう自分は死ぬんだと。

だからこそ自分の腕を優しく握ってくれた彼に令呪を三画全て使用して受肉させた。

 

ピーという心電図からの音と共に杏路は目を閉じた。

最期の表情は穏やかで静かな幕引きを想像させるかのようだった。

 

受肉したライダー━━ペルセウスは次々と杏路を研究していた職員たちのほとんどを殺害した。

仮面を奪い、普段の優しい顔をしながら一般人にまで犠牲を出した。

それが自身のこの非道な行いこそが、守りたかった大切な少年の最後の祈りを最も汚すものであると知りながら。

 

 

『……幸福な人々を望んだ彼の為に━━君たちを、皆殺しにする』

 

 

本物の英雄だからこそ暴走した(ペルソナを被った)のだ。

善人であるが、感じ入った物事にとことん尽くすからこそ「聖杯を何としても手に入れる」という執着染みた暴走を起こした。

矛盾しているようで一貫しているような行動。

悪行に手を染めていても願いは善人のそれそのもの。

 

その後ペルセウスの暴走を止めるかのように(セイバー)の英霊、騎士王によって討たれた。

心のどこかで自分の暴走を止めてくる者によって貫かれるのを良しとしていたのだろう。

故にあの聖杯戦争での最後の一言は「ごめん、杏路‥‥‥」とマスターへの謝罪だった。

 

座に送られた情報によってペルセウスは杏路との約束を守れなかった後悔と何ら罪も無い一般人を虐殺したことに対する罪悪感から霊基のその情報を刻んだ。何としても忘れないために。

その結果『あの時の仮面』をスキルの一つとして持ち込めたり、今みたいにその聖杯戦争での記憶を完全に覚えられていた。

 

 

この話を聞いたアタランテは情緒がぐちゃぐちゃにされるような感覚に陥っていた。

ペルセウスが自分の願いと似た想いを抱いていたこと、英雄としての覚悟と後悔。

恐らくアキレウスがこの場に居たとすれば彼もまたどう返事をすればいいか決めあぐねていただろう。

傍らにいるダンテは無言になりながらも真剣にその話を聞いていた。

先ほどまでのおちゃらけた様子は一体どこやら‥‥‥。

 

 

「‥‥‥でもね、今の僕は大聖杯にそれを願う気はないよ」

 

「!? な、なぜ?」

 

 

またも予想外の一言に驚くアタランテ。

 

 

「数日前にマスターと話をした結果、大聖杯でそれが叶わないと分かっちゃってね‥‥‥」

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

『━━あの‥‥‥絶対とは言い切れませんが、ライダーさんの願いはかなえられないかもしれません』

 

『え?』

 

『その杏路さん?ってこの世界とは別の世界の人物ですよね? 私も言伝でしか聞いたことはありませんが、あくまで大聖杯が叶えられるのは"この世界内で完結できることに限る"可能性が高いと思います。もしかするとこの世界ではない別の世界の杏路さんを生き返らせるという願いは受理されないかも‥‥‥』

 

『‥‥‥。』

 

『もし仮に願いが受理されたとしてもそれが自分のマスターだった杏路さんとは違う別の要因で死んだ杏路さんが対象になったり、杏路さんが生きた世界線が作られるだけじゃないでしょうか?』

 

『‥‥‥そう、だね。確かにこの世界の大聖杯に願ったところで叶う可能性は低い、か‥‥‥。で、でも低い可能性なら‥‥‥!』

 

『師匠に聞きましょう』

 

 

 

数分後

 

 

 

『死者の蘇生は‥‥‥ほぼ無理かな。ちなみにどうやって蘇生しようと考えてた?』

 

『錬金術を見習って等価交換による生贄を‥‥‥』

 

『あー‥‥‥それならワンチャン、いやでも無理か。この世界の人物ならそれで出来るかもだけど別世界の人物の蘇生は無理だね。申し訳ないけど、ゴメン』

 

『‥‥‥。』

 

「‥‥‥。』

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

「まぁ、そういうことで僕の願いを大聖杯が叶えられないということが分かったから今回は諦めることにしたっていう感じだね」

 

「そう、か‥‥‥」

 

 

複雑な顔をしながら、「まぁ時には引き下がることも重要か」と納得するアタランテ。

一応第二魔法の要領でペルセウスが参加していた聖杯戦争の世界に行かせるか記憶を送るという手もあったが、ある種のタイムパラドックスが起こる可能性や記憶を送ったところで杏路は既に手遅れだったのでやるだけ無駄だ。

なら本体が偶然その世界の亜種聖杯戦争なり通常の聖杯戦争に出るなりして都合よく大聖杯を手に入れる、ここの(中古品の)大聖杯よりも万能な聖杯を見つけるという限りなく低い可能性に賭けていたほうが自身の願いが叶えられる。

なのでここの"黒"のライダーという影法師がこの世界ですることは現マスターが生きている間、杏路のために星座に関する知識を学ぶことや蘇生手段を色々考えておくき、マスターらが死んだ後に座に情報を送ることだろう。

そういことなのでなぜかペルセウスも現界し続けることを望んだ。*2

 

話に区切りを付けたペルセウスは次の話題を切り出す。

 

 

「じゃあ最後に君の願いを聞かせてくれないかな、アタランテ?」

 

「ああ、分かった」

 

 

 

三番手:アタランテ

 

 

「私の願い、それは━━この世全ての子供らが、愛される世界だ」

 

「へぇ‥‥‥」

 

「なるほど‥‥‥」

 

 

この世全ての子供らが、愛される世界。

大雑把に言うなれば、この世に生を受けた子供は皆、両親からも周囲の人々からも愛され、そうして育った子供たちが新たに生まれた命を愛するという循環の世界をつくるということ。

確かに近年では少年兵や発展途上国で子供が餓死を始めとする様々な要因で死亡している。

先進国の子供たちもいじめや社会的地位の関係から虐げられて降伏とは言えない生活を送っている者だっている。

 

捨て子な自身の生い立ちから「子供は庇護し、愛情を注ぐべき」と考えている夢想家(アタランテ)だからこそ此れを聖杯の願いとしたのだろう。

だが同時に、その世界の実現が「聖杯に頼らざるを得ないほどの夢物語」であることを薄々悟っており、無意識の内にその事実を否定したいがために、子供が犠牲になると現実の無情さと自身の理想との矛盾に苦しんでいる。が、それでもアタランテは願いを変えるつもりはなかった。

 

 

「これが私の願いだがどうだ?」

 

「「・・・・・・。」」

 

 

数秒間沈黙が続いてたがペルセウスが口を開けた。

 

 

「うん。良いと思うよ、杏路を幸福にする点で言えば僕の願いに近しから賛同できるね」

 

「そ、そうか。なら━━「その前に一つだけ聞いても良いかな?」 何だ?」

 

 

 

「君の願いは分かったよ。だったらさ━━『過程(・・)』と『基準(・・)』は?」

 

「?」

 

 

いきなり変な質問をされて疑問符を浮かべるアタランテ。

この様子に何かを察したダンテは語る。

 

 

「フフ、そのままの質問だと思うけどね…。過程はどうやってその願いを叶えるかの方法かその道筋。基準は何を以て幸福とみなすか、だね」

 

「過程ならば大聖杯に任せればよいのではないのか? 幸福の基準もそうだが、少し曖昧にはなるが人としての生活が送れて親の愛が送られている状態、だろうか」

 

「あーっとね‥‥‥(薄々察してたけど彼女ここの聖杯について‥‥‥)。アタランテ、まず君の勘違いを正そう。」

 

「勘違いだと?」

 

「まずこの聖杯大戦における(中古品レベルの)大聖杯について。ここの聖杯、実を言うと過程と願いを具体的に提示しておかないと聖杯が極端な出力の仕方をするんだ。例えば、君の願いをそのまま叶えるとしたら基準を満たさない人すべてを抹殺するとかかな」

 

「なッ‥‥‥!?」

 

 

そも聖杯戦争における聖杯というのは原典のように『万能』ではなく、事細かに願いを設定しなければ思い通りの結果にならない模造品である。

なので中身のない願いやら複雑すぎる願いなどは過程や基準をきちんと設定しておかなければ聖杯が無課金のAIのように極端な出力を開始してしまうのである。

さすがにペルセウスが述べた一例は極端な例だが、そうして厄災が起こったのがfate/zeroである。

 

明確な願いを持つアタランテだが、明確な過程を考えていない。

そのため願い自体は大変すばらしいものなのだが、過程が空っぽな願いである以上、使ったところで某魔術師殺しの二の舞を踏むだけだろう。

 

 

「具体的にどう子供たちを幸せにするか、っていう方法が今すぐ提示できるならそれ以上言及する気がないよ」

 

「‥‥‥。」

 

「答えは提示できない、と。フフ‥‥‥まさか聖杯の仕様の説明を聞かずに参加したの? 無計画だね」

 

 

「黙れ作家‥‥‥」

 

 

アタランテは過程を提示できなかった。というよりもこの願いで過程を提示すること自体不可能に等しい。

人それぞれ不幸と幸福の条件は違うからだ。

他人から見えてそれが不幸でも当人にとっては幸福、幸福な子供に見えて内面ではペルソナを被って不幸のまま過ごしていたりと。

親からの愛、子供としての一般的な視点、それを持たないアタランテなら尚更その過程の提示を出せない。

自分の願いが思いもよらぬ方向から否定されたことで、焦燥気味になっていたアタランテはダンテの煽るような発言に小声で呟いた。

 

 

 

 

 

「私の、私の願いはこの聖杯大戦では叶わないというのか! 聖杯の力さえあれば全て解決できるのではないのか!!」

 

 

 

故にこう叫ぶのも必然であり━━

 

 

 

「たとえ万能の願望器であったとしても全ては解決できない。聖杯戦争を経験しているからこそ言うけど‥‥‥甘いよ。そんな甘ったるい考えで聖杯戦争に勝てると思ったら大間違いだ。(ワタシ)ですら勝てなかったようにね」

 

 

 

聖杯戦争経験者(ペルセウス)が彼女を否定するのも必然だ。

 

 

 

 

「そう、か‥‥‥あ、ぁあ‥‥‥」

 

 

 

 

 

アタランテは折れた。

偉大な祖先(ペルセウス)に否定され、"赤"のキャスターのような作家(ダンテ)に嘲笑されて、自分の願いの粗を指摘されて感情が崩れた。

心が折れて自暴自棄になったアタランテは右手に黒い獣の皮を持とうとした。

 

 

「━━ストップ」

 

「ぁ‥‥‥」

 

 

しかしそれはペルセウスが突き付けたショーテル型の得物によって止められた。

 

 

「それは"今は"使ったらダメだ。今君が使えば、英雄であることを捨てるのと同義だ」

 

 

ギリシャ出身のペルセウスだからこそその皮を知っていた。

かつて女神アルテミスが神罰として放った魔獣・カリュドーン。

このカリュドーンの猪狩りに参加した彼女は、その猪の皮を報酬として承ったとか。

誰から見てもその皮が腐敗と悪臭を放ち、禍々しい魔力を放っているのは一目瞭然だ。

 

 

「退け、ペルセウス‥‥‥」

 

「嫌だね。少なくともそれを仕舞わない限りは」

 

 

引くわけにはいかないと無理やりにでも離れてもらおうとするアタランテだが、ペルセウスも引かない。

 

双方の間に流れる空気は重い。

今にも戦闘へ発展しかねない緊張感が漂っている。

だがペルセウスはそんな状況でも一歩も退こうとはしなかった。

それは敵として立ち塞がるというより、むしろ暴走しかけた相手を止めようとする意思の表れにも見えた。

 

 

「君は強いが所々甘い所がある。たとえ曖昧な願いだったとしても()や彼がそれを否定する気はない」

 

「何が、言いたいのだ、貴様は‥‥‥!」

 

 

アタランテの声には苛立ちが滲む。

願いを否定されるのであれば反発も出る。

理想論だと切り捨てられるのであれば怒りも湧く。

だが目の前の男はそうしない。

願いそのものは肯定しながら、その先の話をしている。

だからこそ意図が読めなかった。

 

 

「そうだね、なら単刀直入に言うね━━僕らみたいにこの世界で知見を得てみたらどう?」

 

「何?」

 

 

少しばかり予想外の回答だった。

願いを諦めろでもない。

願いを捨てろでもない。

まさか知見を得ろと言われるとは思っていなかったのだろう。

アタランテは我に返ったかのように冷静さを取り戻しつつあった。

 

 

「少なくとも無駄にはならないと思うよ。その願いの明確な解は見つからなかったとしてもヒントぐらい得られるんじゃないかな?」

 

「‥‥‥。」

 

「得た知見は座の本体が次に活かしてくれるのは間違いないし、それに僕の今のマスターの師匠さんは魔術師だけど善人だからその悩みをどう対処すればいいか手伝ってくれるだろうし」

 

「‥‥‥。」

 

 

アタランテは考える。

ペルセウスもダンテも自身の願いについては否定していないし好意的に捉えている。もっともダンテには中身のなさで散々煽られているが。

だがそれも願いそのものを否定したわけではない。

理想を実現するための方法論が存在しないことを指摘しただけだ。

そしてその指摘には反論しきれない部分があった。

 

救われない子供達を救いたい。

その願い自体に偽りは無い。

だがどうやって救うのか。

救った先にどのような世界を作るのか。

何をもって救済とするのか。

そこまで具体的に考えたことはなかった。

だからこそ願いの中身が無いと言われたのだろう。

 

今回の聖杯大戦で願いが叶わないのであれば知見を集めるというのは確かにありだった。

実際また同じような聖杯戦争に参加しても同じ轍を踏むだけだろう。

願いだけを抱え、実現するための道筋を持たないままでは結果は変わらない。

ならば知見を集めて、より論理的に願いを具体化していけばいいではないか。

今回答えを求めなくても、その知見は座へ還元され本体に活きる。

そもそも英霊には時間の概念が希薄である以上、焦る必要も無い。

一度の召喚ですべてを成し遂げなければならない理由も無い。

少なくとも損はしない。むしろ長い目で見れば有益ですらあった。

 

冷静さを取り戻したアタランテは感情ではなく理性でメリットとデメリットを比較する。

願いに固執して暴走するよりも遥かに建設的だ。

そして検討を重ねた結果、答えは思いのほか早く出た。

 

 

「ということでさ、アタランテ。穏便に手を打ってくれないかい?」

 

 

アタランテは熟考する。

正直なところ"赤"の陣営に未練はなかった。

一応"赤"の陣営として最低限戦った上、サーヴァントの情報を持ち帰るという貢献もしている。

義理は果たしたと言っていいだろう。

 

"赤"のライダー(アキレウス)については、本来であれば思い悩むところだったかもしれない。

だが彼は二回戦目で退場している。

アタランテの中での認識も同郷(ギリシャ)で生意気だが優秀な後輩程度のものであり、そこまで特別な感情を抱くことはなかった。

 

また召喚したマスターも毒にやられている時点で信用に値しない存在だ。

あの神父兼ルーラーについても、別に忠誠を誓っているわけでもなく、あくまで暫定的なマスターだから従っているに過ぎない。

それに従い続けたところで今のように使い走りにされる未来しか見えなかった。

少なくともアタランテの願いに真剣に向き合ってくれる存在ではないだろう。

 

 

「‥‥‥ああ、良いだろう」

 

 

結論は出た。

 

ならばここはペルセウスの言う通りに従ってみるべきだ。

少なくとも話を聞く限り、そのマスターは悪人ではない、むしろ根は善人気質らしい。

自分と致命的にそりが合わないということもないだろう。

願いを馬鹿にするような相手でもなさそうだ。

そう言えば自身は善寄りのサーヴァントであるはずなのに悪属性判定だったとはこれ一体‥‥‥

 

 

「だが、仮にも天草四郎とパスがつながっている以上彼の命令にある程度従わなければならないのだが」

 

「それなら互いにやり合っているように装えばどうかな? 傍から見れば命令通りに戦ってるから無茶な指示は飛ばしてこないだろうし」

 

「なるほど!」

 

 

確かに理に適っている。

互いに殺さないよう加減しながら戦闘を継続する。

外部から見れば敵対関係は維持されている。

だが実際には時間を稼ぎながら協力関係を築ける。

体裁上は「"黒"のサーヴァントと戦え」という曖昧な命令も遂行していることになる。

天草四郎から見ても命令に従っているようにしか見えないだろう。

少なくとも即座に裏切りを疑われる可能性は低かった。

互いに消耗を避けながら情報交換も行える。

今のアタランテにとっては理想的な妥協案ですらあった。

 

そうしてアタランテは現マスターが脱落するまでの間、ペルセウスやダンテと互いに殺さないよう手加減をしながらやり合うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
奏章Ⅳ

*2
杏路のことが一番だが、ちょっと現代で息抜きしたいってのもある




今回のまとめ:

天草:城塞でいざ敵陣へ向かったら大聖杯がどこにもないし、敵が空中城塞を出してぶつけてきたことで進行を妨害されている。しかも為朝の宝具が不定期に撃たれる。

"黒"の陣営:さすがに敵の狙いの大聖杯だとバレているので場所を変えた。2日と大勢の魔術師とマハトマ持ちのキャスターいれば移送はできるよね。

ダンテ:過程と手段をしっかりと考えていた人。ただ、考えていたプランにデジャヴを感じたので、優先順位を少し変えて何か凄そうな亜種聖杯があればかっらさろうという算段のもと現界する予定。

ペルセウス:prototypeの記憶を全て保持していて、過程と手段をしっかりと考えていた人。ただ、大聖杯で自身の願いは叶わないと分かったので諦めて知見を集めることにした。

アタランテ:過程と手段を考えてなかった人。ダンテの宝具で地獄に直接配達されなかった。zeroでいうアルトリア(不憫)枠。ただし、あの王共とは違ってちゃんと親身に願いのことを考えてくれる奴らだったおかげで"赤"の陣営を裏切った。



今後の内容的にアポ原作キャラもせっかくだから入れたいなと思い急遽変更しました。
その後の話も一部分変更したりしました。
fateの物語的には真反対の行動ですが、あくまで二次創作と思ってくれたら幸いです。

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