パーフェクトゲームを目指すには!   作:メタ(ル)

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迷宮探索 後

「ぷはぁ‥‥‥生き返る」

 

「ついでにエナジーバーも食べな。在庫がごまんとあるから」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

乾き切っていた喉を潤すように、目の前の少女は勢いよく水を飲み干した。

ごくごく、と喉を鳴らす音が静かな洞窟内に響く。

甘ったるい人工的な味。

保存食特有の妙に重い食感。

だが今の彼女にとっては、これ以上ないご馳走だった。

まともな食事をしたのがいつだったかすら曖昧だ。

極限状態が続いていたせいで胃が縮んでいるのか、一本食べただけでじんわりと体温が戻ってくる感覚があった。

 

名前をノーマ・グッドフェローという。

代々続く魔術遺跡探索者の一族に生まれで、本人もその道を生業とする探索者(ストレンジャー)だ。

魔術協会から依頼される形でアルカトラスの第七迷宮の探索に乗り出すものの、探索部隊は彼女を残して全滅。

 

彼女自身も死ぬ筈だったが沙条愛歌に憑依されてセイバーを召喚した。

そのまま他の召喚されたサーヴァントたちと第三層まで攻略していたが、途中で我に返った時に落とし穴型のトラップに引っ掛かりここまで落ちてきた。

このままここに住まう食人妖精に捕食されるかと思った矢先に『ホクサイ』と呼ばれるエクストラクラス(フォーリナー)の英霊が颯爽と助けに入り、続けざまに召喚されないはずの者(ルーラー)と令呪を持った魔術師(本業)に出会った。

 

 

「ノーマ・グッドフェロー‥‥‥リストに載ってるな。外見も特徴も一致しているから偽物ではないな」

 

 

相良は懐から取り出した資料をぱらぱらと確認しながら呟いた。

どうやらⅡ世から送られてきていた参加者リストらしい。

 

 

「改めて自己紹介しとくか。俺の名前は相良豹馬。元ユグドミレニアの英霊を受肉させずに現界させる機構を作った現在祭位(フェス)の地位にいる魔術師だ」

 

「!?」

 

 

最初にこれだけの情報を喰らって気絶しかけるノーマだが何とか耐えた。

今、この男はとんでもないことをさらっと口にした。

 

ユグドミレニア。

つい数ヶ月前、世界規模で隠蔽工作が行われた“聖杯大戦”の中心勢力。

時計塔が苦渋を飲まされた、前代未聞の大規模聖杯戦争。

 

その参加者で勝利陣営の1人。

しかも━━

 

“英霊を受肉させずに現界維持する機構”

 

それが何を意味するのか、ノーマにも理解できてしまった。

通常、サーヴァントは聖杯による魔力供給がなければ長期現界できない。

だからこそ受肉という裏技が存在する。

だがこの男は、それとは別系統の維持方法を確立した。

 

つまりこの男は複数体のサーヴァントを、大聖杯なしで従えている。

しかもだ。

 

ちらりと視線を向ける。

先ほどから壁にもたれてこちらを見ている軍神。

真名を上杉謙信。

本来は聖杯大戦の"黒"のランサーだったという英霊。

それを相良豹馬が奇策として霊基改造した結果、ルーラーと化していた。

 

英霊霊基の改造。

クラス変質。

複数契約。

長期現界。

 

どれも禁忌級だ。

なのに、目の前の男は妙に普通だった。

疲れた社会人みたいな顔でエナジーバーを齧っている。

それが逆に怖い。

 

「確かに魔術師としても実力はある、というより評価しづらい能力だから祭位(フェス)なのも理解できる」という時計塔上層部の判断を、ノーマは今ようやく実感していた。

 

天才というより異端。

研究者というより事故。

そんな印象。

 

 

「落ち着いてすぐで悪いけど━━」

 

 

相良は空になったペットボトルを回収しながら、少しだけ真面目な声音になる。

 

 

「一通り、これまでの経緯を教えて?」

 

 

ノーマは思い出す。

第三階層。

召喚されたサーヴァントたち。

あの異様なセイバー。

そして━━

 

自分の中にいた“何か”の存在を。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「━━というワケです」

 

「成程。最初に合成獣と思われる巨大な蛇魔が次々と探索者を飲み込んで行った時に長子(カウント)の連中は応戦したがどこからか現れたキメラに急襲された結果完全にこちらが獲物側になってしまった、と」

 

「‥‥‥はい」

 

「素直に待ってればサーヴァントを連れて楽々攻略できたというものを‥‥‥」

 

「その、何かすみません」

 

「いや、周りの空気読むのは日本人ならよく理解できるから」

 

「‥‥‥日本人?」

 

「集団行動で『ちょっと待とう』って言えなくなる現象あるんだよ。俺も学生時代はよくあった」

 

「は、はぁ‥‥‥」

 

 

よく分からないが慰められているらしい。

ノーマは曖昧に頷いた。

 

そんな会話をしながら前へ前へと進んで行く。

ノーマの持つ魔術礼装は天秤型の探索の魔術を増幅させる機能を持つ補助礼装。

 

 

「前方三メートル先。床面に魔力の偏りがあります」

 

 

強い光を出す懐中電灯と組み合わせればトラップの発見も楽だった。

 

 

「うっわ、この魔術トラップかなり陰湿だな。道を踏み外した瞬間に致死性の毒ガス巻くとか。解除は‥‥‥キャスターレベルじゃないと無理か」

 

 

最下層と謳っていることもあってか陰湿なトラップが増えている。

全て一撃で死に至るトラップばかりだ。

探索の魔術の礼装を持っていてくれて助かった。

無かったら危険な綱渡りしてただろうし。

 

 

「この亜種聖杯戦争に参加してるサーヴァントの真名━━いや、特徴を教えてくれない?」

 

 

追加でこの質問もした。

聞くかどうか迷ってたけど、召喚されたサーヴァントによっては危険度の高い奴とか厄ネタを抱えたスキル・宝具の奴もいるから、そういう奴らが居た場合の防止策を考えるために尋ねた。

一拍子してからノーマは口を開いた。

 

 

「私が見たのはセイバー、アーチャー、キャスター、アサシンの4体」

 

「ふむふむ、それで?」

 

「アサシンが骸骨のような仮面を被っていて、右腕が異様に長くて‥‥‥あ、確か宝具が妄想心音(ザバーニーヤ)だったはずです」

 

 

外見的特徴と宝具の名称で間違いなくハサン・サッバーハだな。

発達した腕‥‥‥中東の亜種聖杯戦争に居たハサンの一体、呪腕のハサンか。

 

 

「キャスターはフードを被っている女性で、多彩で強力な魔術を扱えていました。そう言えば『ダイダロスが~』って言っていたのでギリシャの神代魔術師だと思います」

 

 

ギリシャの神代魔術師‥‥‥キルケーかメディアのどちらかに絞れるが外見的特徴がフードを被っているしかないから後者だな。

となると破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を最大限警戒しておくべきか。

 

 

「アーチャーは真名は不明、ですが…シーフ、スカウト的な立ち回りや破壊工作が得意で、宝具が姿隠し?でした」

 

 

誰だ?

該当者が多すぎて絞り切れない。

アーチャーというクラス自体大雑把なクラスだからなぁ。

 

 

「外見的特徴は? 服装とかでもいいよ」

 

「‥‥‥緑衣。緑衣の服装でした」

 

 

あ、分かった。

結構有名な義賊だから前世のガキの頃覚えてたなぁ。

確か某仮面ライダー作品の一つで取り上げられてたけど、イメージ通りだから想像しやすい。

 

 

「最後にセイバー。最優のサーヴァントとして現界するに相応しい、伝説に名高き最高の英雄」

 

「‥‥‥!?」

 

「英国人である私にとって、ブリテン島に生まれ育った私にとってなじみ深い英雄で‥‥畏れ多かった人物」

 

「ちょっと待て、まさかとは思うが‥‥‥」

 

 

多くの外敵を打倒し、時には大陸でローマ帝国を退けた。

魔術世界において"星の聖剣"を操る存在として認知されている。

かの者の墓石に刻まれた文言は、"ブリテンのかつての王、そして未来の王"━━

 

 

「真名をアルトリア・ペンドラゴン、聖剣エクスカリバーの担い手で騎士王と称えられた王」

 

(マジかぁ‥‥‥)

 

 

アルトリア・ペンドラゴン。

かつてのブリテンにおいて騎士王と称えられた赤き竜の化身ともされる伝説的君主その人。

そして、初代fateことfate/staynightの主人公の相棒(サーヴァント)でメインヒロインでもある。

聖剣エクスカリバーから放たれる一撃はビーム兵器のようにすべてを飲み込む力があり、それ以前に彼女の卓越した剣術の技能が高く、誰だって真っ先に思いつく剣の英雄だろう。

一度イギリスの亜種聖杯戦争で呼ばれて勝利した経験があることは知っているが、それ以降は円卓関連の触媒が高騰して呼ばれなくなった。

 

そんな彼女が触媒による召喚ではなく縁による召喚でセイバーとしてこの亜種聖杯戦争に呼ばれている。

恐らくはノーマに憑依していた少女の縁だと思われるが何者だ?

色位(ブランド)級の魔術に何もかもを知ったような博識さ。追加で「『パラケルスス』の魔術工房がどうとか」と言っていたらしいので恐らくは聖杯戦争経験者。

これほどの能力であれば最近まで教会の末端だった俺でも知ってるはずだが‥‥‥。

 

 

アルトリア・ペンドラゴンという者を見てみたいと俺は思っていた。

俗に言う「テレビで見ていた有名人がすぐそこにいる」みたいなものだ。

文献と前世でモニター越しでしか見えなかった彼女を一目見たいと。

「騎士王アルトリア・ペンドラゴン」という名前だけはやはり別格だった。

Fateという物語を知る者にとって、あの名前は始まりみたいなものだ、と。

 

ただまぁそれはそうと迷宮を攻略してからだな、騎士王と会うのは。

そういえばノーマがその憑依していた奴が作った魔獣の肉入りサンドイッチがあるそうだが‥‥‥俺は食べる気はなかった。

こんな辺鄙な所に居る魔獣だ。変なウイルス持ってる可能性や殺菌ができてなくて食中毒になるリスクがあるし。*1

ただそういうのに罹らないサーヴァント2騎はありがたく頂いたそう。

本来は騎士王用に作ったらしいが数が多いので2つほど食べたところで誤差だ。*2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軽い世間話をしながら歩いていると鉄製の扉を開け、人造の石レンガでできた大広間に辿り着いた。

印象は赤か深紅。床の絨毯や垂れ幕の色合いから、貴族や王族の住まう場所という感じが最初に感じた印象だ。

その中に一際目立つ黄金の器が存在していた。

 

 

「聖杯‥‥‥」

 

 

ノーマが呟く。

間違いなく亜種聖杯、それもそこそこ作りの良い一級品だ。

願望器には至らないだろうが、魔力のリソースとしては十分すぎる代物だろう。

ここで半ば忘我状態で亜種聖杯を見つめているノーマの前に手を置き、下がるようにとお栄ちゃんが指示を出した。隣の謙信もそうだが一気に警戒態勢に入った。

 

 

「━━これは、これは。斯様の場に客人とは」

 

 

玉座の陰から姿を現すのは長身の男性。

貴族風の装いにアルビノ種のように肌が白い。

 

 

「謙信、あれは?」

 

「サーヴァント、ではないですね。真名看破が発生しない上、魔力の流れが現世で生きる者ですね」

 

「そちらのお嬢さんの言うように私は英霊ではない。にしても別口で侵入者がいるとは理解していたが‥‥‥特殊なクラスのサーヴァントを持った魔術師だったか」

 

 

どうやら5騎目のサーヴァントではないようだ。

こちらの存在は先ほどの良い方から察するに想定外だったと思われる。

目の前の魔術師でもない男の正体は確定とまではいかないがいくつか推測がある。

 

 

「お前はコ―バック・アルカトラスか?」

 

「いいや、彼ではないよ。それと付け加えるとあちら側(死徒)でもない。あんな純粋でもない奴らと同列に扱われても困る」

 

 

なるほど、だいぶ絞れた。

 

 

「吸血種の純正種‥‥‥」

 

「ほう、魔眼で視たか。そう、そちらのお嬢さんの言う通り私は純正の吸血種だ」

 

 

やはり吸血種、それも純正のやつときたか。

吸血鬼(ラミュロス)という呼び名ではなく有名な吸血鬼(ヴァンパイア)の呼称の方がいいだろうか。

今更ながらノーマがサーヴァントの動きを目視で捉えられていたような視線の動かし方と屈折した光の反射をしているような瞳をしていると思っていたが、魔眼持ちだったとは。

解析または補足の効果を持つ魔眼かな。

 

 

「改めて自己紹介を、私はヴォルフガング・ファウストゥス。お前たちヒトによって古き幻想と定められていた者だ。神秘の具現にして正しき系統樹ならざる存在の一つだ。まあ君たちに分かりやすく言うのであれば幻想種、と」

 

 

上位の幻想種。

宵闇の王であり正真正銘の怪物。

有名な創作物に登場する吸血鬼そのものであるのが目の前の貴族チックな男。

 

 

「私は古き者であり、アルカトラス不在の迷宮の支配者でもある。更に言えば是なる亜種聖杯の所有者でもあり、亜種聖杯の実験責任者でもあるか」

 

「実験‥‥‥ああ、サーヴァントの霊基か魂を吸収する目的か」

 

「おお、さすがここに辿り着いてきただけあって理解するのが早い。その通り、だた正確に言えば吸収はまだ構想段階で今は現界した守護者擬きの‥‥‥英霊の霊核を抽出する実験をしているのだ」

 

 

いかにも聖杯を知った者がやりそうな実験なこった。

多分霊核の抽出はやろうと思えばだれでもできるだろう。

まぁそれをやる気は俺には一切ないのだが。

だってどうでもいいし。

 

 

「さて、今回は聊か予定外があったが、こうなると都合がいい。本来亜種聖杯で呼べすらしない裁定者と邪神の力を抱えているであろう降臨者の霊核だ。抽出されるモノはどうな━━『バン!』 おっと」

 

「やっぱり外れましたか、いや少し掠ったか‥‥‥。もう数カ月は飛び道具の練習必須ですかね」

 

 

明らかに筒から放たれるとは思えない威力のビームがヴォルフガングの頬を掠め、彼の後ろの玉座を貫いた。

現人神(第3再臨)状態じゃなくても魔力さえあれば砲塔は自由に出し入れできるためやろうと思えばコンマ一秒射撃も夢じゃないとか。

ただ謙信ちゃん自身がノーコンなのもあって精度はそれほど高くない。

最近では某名探偵の「ハワイで親父に教わった」が如くコツをつかむために射撃訓練場で特訓している。

 

 

「ふむ、やはりルーラーということもあって能力は非常に高いようで━━『それ』 あ痛!」

 

 

冷静に分析していたヴォルフガングだが今度はお栄ちゃんが投擲した細筆、それも処分に困ってて墨を付けたまま5日ほど放置していた物を真っすぐ飛ばした。

その飛ばされた細筆は見事に吸血鬼の額に当たった。あれ先が結構鋭いから痛いんだよね。

俺も昔に書道で経験したし。

 

 

「貴女たちいくらなんでも野暮ではないですか? 人が話している最中に攻撃をするとか。あ、私は人ではありませんでしたねHAHAHA」

 

「そりゃあ、呑気に相手の前で会話をしている方が悪いと思うんだが。ほら、とと様も頷いてる」*3

 

「戦いの中で喋るのであればまだ分かりますが、何もせずに隙だけ見せて喋る敵を狙わないとでも?」

 

 

しれっと無視される吸血鬼ジョーク(笑)。

契約したサーヴァントの性格や思考はマスターのそれに少し似通るようになるらしいが、今回はそれが顕著に出た例だろう。

相手が喋ってる最中に攻撃何ていうのは俺の十八番だ。

まぁこいつらも俺の「狙い時だなぁ‥‥‥」という感情を察してやったのかもしれないが。

 

 

「‥‥‥はぁ、仕方ない。少々荒事にはなるが本題『殺す』に入るとしよう」

 

 

もう会話は通じないと悟ったか、ヴォルフガングは長く尖った鉤爪を露出させた。

しっかりとした得物で型に嵌まった構えをしている辺り、戦闘者としてはそれなりに上か。

 

 

「一歩下がるぞ、ノーマ。ここからはサーヴァントと幻想種との戦いだ」

 

「は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘からはや一時間経過した。

最初はサーヴァントが圧倒するかなと思いきや、なぜか普通に押されかけてた。

いやまぁあのヴォルフガングとかいう幻想種が死徒の上澄みぐらいの実力は持ってると考えてたけど、予想外にも程がある。

ありゃ上級死徒だったか死徒二十七祖ぐらいの実力はあるぞ。

 

 

「駆けよ、放生月毛!にゃー!」

 

「面白い!ならばこちらも剣を抜こう!」

 

「たぁっぷり墨を擦るサ」

 

「残念、見えていますよ!」

 

 

多分こいつ二流レベルのサーヴァントなら真正面から打ち倒せるぞ。

こいつを無理やりにでもルーマニアに連れて行って"赤"の陣営と戦わせたらこの前の数倍近く楽だっただろうに。

戦ってる2騎はもう既に極限集中状態に入ってガチな戦い方をしている。

宝具の車懸りの陣で白き焔という魔力放出と毘天宝塔の射撃を連発する謙信に、後方からチクチク細筆を投擲しながら不意打ちを仕掛けるお栄ちゃん。二人とも手加減なしの本気である。

しかしそれをいとも容易く回避したりカウンターを入れる吸血鬼。

 

 

「そらそらそら! そちらの攻撃もだいぶ見えてきましたよ!」

 

「くっ‥‥‥!」

 

「片腕、もらいました」

 

「がッ‥‥‥令呪を己の肉体に命じる、肉体を回復せよ」

 

 

こいつガチで吸血鬼だよな? サーヴァントではなく?

接近戦で謙信の片腕をそぎ落とすとかどんなバケモンだ‥‥‥。

その後令呪の応用で肉体を緊急回復させて消えた片腕を生やす機転を利かせた謙信もある意味バケモノだけど。

 

 

 

 

銀の弾丸持ってくれば良かった~~~ッ!

少なくとも動きを妨害したり、牽制で使えるから戦いやすくなっただろうに。

それかたたき起こしたメタトロンに浄化させればとは思ったが、入り口で魔術師に見られたら一発アウトだわ。

 

 

 

 

 

‥‥‥あ、そうだ。

 

 

「喰らえ、銀の弾丸(・・・・)!」カチャ

 

「何ッ!?」

 

 

懐に入れていたリボルバーを取り出して徐にヴォルフガングに向けた。

『銀の弾丸』と言われたことで彼の視線がこちらに一瞬向いた。

 

 

 

バン

 

 

 

俺は引き金を引いた。

しかし相手はこちらの弾丸を放たれたと同時、狙い通りに(・・・・・)右にサイドステップで飛んだ。

そう、狙い通りに(・・・・・)

 

 

「ブラフか‥‥‥!」

 

「相変わらずマスターは即興芝居が上手いというか‥‥‥先ほどのお返しです」

 

 

ザシュッという服と肉が切れたような鈍い音と共に茨のような特殊な形状をした剣が振り下ろされた。

咄嗟の嘘は嘘判定機的なものを持たない奴には有効だろう。

深い斬撃。間違いなく致命傷だ。

 

 

「ははっ、残念ながら私は吸血鬼なのでね。常世の者共とは違い、そんじょそこらの一撃では死なない」

 

 

ただし通常の人間とすればという仮定が付くが。

 

 

 

(これマジでどうしよ。謙信に令呪込みの宝具撃つと同時にこっちの令呪でお栄ちゃんの宝具を重ねるか? いや、無駄遣いか。ノーマの方はあの吸血鬼の乗ってる絨毯を引っ張って姿勢を崩す地味な嫌がらせしてサポートしてくれてるけど、いつまでもつか)

 

 

こうなれば、180度ターンして敵前逃亡してからの迷宮の魔術が解除されるまで7日間サバイバルしようかとも考えてしまう。

それぐらい打つ手がない。

正攻法であのヴォルフガングの倒し方は1つだけ。

 

『肉体を一つも残さず塵にする』こと。

 

火力は足りているんだが、あの異常な回復能力を削ぎ落すか、動きを抑制させない限りは宝具がどうにも命中しない。

この前だったら全方位からの宝具のゴリ押しでいけたのだが、今は二方向からしか攻撃が出来ない。

何かしら裏技があればよかったのだが、ここはある意味現実の空間なので甘くはなかった。

ああクッソ! こういう時にⅡ世から助言があったら楽だったんだがな!*4

 

少し愚痴を呟きながら思考を巡らせていたその時、風を切り割くように飛来した物たちがヴォルフガングの体に撃ちこまれた。

 

 

「チッ! まだ前菜だったというのにもう主菜(メインディッシュ)が来てしまったか!」

 

「来た、みんな‥‥‥!」

 

 

 

 

「おいおい、やけに魔力と神秘が濃いと思ってはいたが‥‥‥マスター付きのサーヴァントが2騎いたとはな」

 

「しかも恐らくエクストラクラス、本来もう召喚されないはずなのだけど、どういうことかしら?」

 

「しかし、戦力が増えたというのは大変ありがたいことでしょう」

 

 

ヒーローは遅れてやって来るかのようにやってきた3騎の英霊。

順にアーチャー、キャスター、アサシン。

彼らの真名と能力自体は亜種聖杯戦争での知識からある程度は知っている。

 

高速神言で発せられた言葉を紡ぎながら大魔術を行使するキャスターのサーヴァント。

真名を━━

 

 

「メディア。希臘(ギリシャ)の魔術師ですか。えー宝具は‥‥‥『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』と『金羊の皮(アルゴンコイン)』。保有スキル含め強いですね」

 

「なっ‥‥‥真名はまだしも宝具を完璧に当てた!? あなたまさかとは思うけど‥‥‥ルーラー?」

 

「そうですよ。その証拠に神明裁決の令呪ですよ、ほら」

 

「‥‥‥だとしてもおかしいわ。ルーラーは亜種聖杯戦争で召喚されないはずだけれど」

 

「ええ、私は亜種聖杯(ここ)で召喚された者ではないです。既に解体された願望器(大聖杯)でランサーとして呼ばれた後、キャスターやマスターたちに霊基を弄ってもらってルーラーとして現界している身です」

 

「‥‥‥ちょっと待ちなさい!? 大聖杯から呼ばれたサーヴァントというのはまだ理解できるけど、いくらキャスターのサーヴァントと魔術師が複数いたとしても霊基の改ざんは‥‥‥」

 

「それが不可能ではないんですよ、メディアさん。偶然にもキャスターが神代の魔術を使用できる上に、必要素材が集まって来たんですよね」

 

「まぁ確かに神代の魔術(アレ)と素材さえ揃えば出来はするけど。 令呪を持ってるところを見るにあなたが彼女たちのマスターね。凄いパスのつなぎ方をしているわね、何らかの魔力リソースに9割繋いで、残り1割を魔術回路につなぐなんて」

 

 

神代の魔術師が凄い目をしてこちらを見てくる。

召喚されたサーヴァントのクラスを別に変更させる、それもルーラーにという普通思いつきもしない策をやったことは困惑必須か。

普通ならそんなこと考えないか。

ただ理解力は凄まじく速いようで、こちらのサーヴァントと複数契約しているカラクリの方を一瞬で見抜いてきた。

 

 

「はははははははは!」

 

 

しかしこの隙を突き、ヴォルフガングは瞬時に体を再生した。

増えないタイプのプラナリアかよ。

 

嘲笑い、嘲笑する朽ちない肉体を持った吸血鬼。

 

 

「騎士王がご不在のようで助かった。いくら幻想種とはいえ、あの一撃は喰らえないのでね」

 

 

察するに魔力不足でセイバーは退場したのかこれ。

手痛いな。最悪パスを繋げてエクスカリバーを2発撃てるように準備してあげれたが遅かったか。

そして、ようやくヴォルフガングのカラクリの一部が判明した。

あの吸血鬼の頭上と左右の方に見えるのは亜種聖杯に似た眩い光を放つ光源。

 

 

「霊核‥‥‥」

 

「そう、我が核はひとつきりではないのだよ。是なる英霊核、三基こそ!」

 

 

その正体をいち早く看破したのはメディアだった。

あの野郎既に実験成功させて次の段階に入ってたのかよ。

ただ仕組みさえ分かれば攻略法は読めた。

「宙に浮かぶ霊核3つを同時破壊して宝具を叩き込む」だな。

 

 

「四基目は双頭の竜を作成するのに用いてしまったが‥‥‥何、是なる三基が何を成せるかご覧に入れよう!」

 

 

するとヴォルフガングは英霊核を本格励起させた。

何をしようとしたのか一瞬疑問を浮かべてしまっていたが故に行動が遅れてしまった。

 

 

「まさかあいつ追加召喚を‥‥‥!」

 

 

いや、だとしても亜種聖杯ごときでそれは無理だ。

ただでさえ4騎と確定している亜種聖杯戦争で追加召喚何てものはできない。

となれば他の手段・過程を‥‥‥憑依か?

あのやり方は召喚術の応用。

つまりは、サーヴァントを本来とは非ざるカタチで実体化をしている。

 

 

「■■■■■■■■■■!!!」

 

 

咆哮、または絶叫。

真っ白で傷だらけの肌に半分に割れた仮面を被った巨体。

精神を持たず、意思を有さず、豪刃の双斧を持って立ちふさがる全てを砕く狂戦士(バーサーカー)

其れはギリシャ神話における登場人物にして、クレタ島の迷宮ラビリンス(ダイダロス)の主。

 

 

「真名『ミノタウロス』、バーサーカーですね。宝具は万古不易の迷宮・邪(ケイオス・ラビュリントス)、迷宮ラビリンスの具現化させ補足した対象を全て放り込み強制的に迷宮攻略をさせる宝具ですが、特殊な召喚もあって機能していませんね」

 

 

真名を看破した謙信は宝具もかいつまんで説明した。

サーヴァント化。しかも本来とは違うやり方で召喚されたのもあって肉体の主導権はヴォルフガングが持っているらしい。

そのためなのか宝具もなくただ得物である斧を猛獣のように振るう。

 

 

「さぁ往け、ダイダロス大迷宮の主よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガチでこれマズい‥‥‥!!」

 

 

幻想種に反英霊+亜種聖杯が混ざり合った結果はこの呟きから分かるように恐ろしく強かった。

 

 

「誇大妄想の怪物とかどうなんだよ」

 

「ミノタウロスの素の肉体が強いせいもあって刃が通らないですね。毘天宝塔も弾かれてますし」

 

「フォーリナー殿、貴女の宝具ならあの血吸いの悪鬼の硬き肉を通せるか?」

 

「無理だナ。おれの宝具の火力じゃ足りん。そういう暗殺者殿はどうだ?」

 

「残念ながら私の宝具の性質上、複数核を持つ獣への効果は希薄だ」

 

「ちょっとあなたたち、会話してる余裕があるのなら手伝いなさい!」

 

 

狂化が付与されているが肉体の主導権の関係で理性的になってる神代のバーサーカーは圧倒的だった。

得物のバトルアックスから放たれる強烈な軌跡と亜種聖杯仕込みの意味不明な魔術の数々で戦場を支配している。

実力はあのアキレウスやカルナレベルではないのだが、閉鎖的な局所で地形をしっかり把握されているという地の利があちらが持っている以上押しきれないし、防戦一方だ。

急ごしらえではぐれサーヴァント状態の3騎に微量ながら魔力パスをつないだ(・・・・・・・・・)とはいえこれ以上魔力を持って行かれるとそろそろマズい。

宝具の連発でワンチャン狙えるが、俺の体がもたなく魔力切れでおじゃんするのが目に見える。

 

 

"マスター、最悪の場合は横にいる少女を連れて逃げてください"

 

 

謙信(ルーラー)に念話でこれぐらい言わせられる技能を持つ吸血鬼。

あまり考えたくはないが、これ敗北まで数歩手前かもしれない。

すぐ横にいるノーマもたじたじして‥‥‥?

 

 

 

 

 

「え‥‥‥は‥‥‥?」

 

『うふふ‥‥さぁ、奇跡を起こしましょうノーマ』

 

 

瞳が捉えたものは金髪で彼岸の者かのように肌の白い、胸に羽を模したような令呪がちらっと見えた少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

いいわねノーマ、これからあなたは奇跡を成すの。

ささやかに。ほんの少し。

ほら、ご覧なさいな。

 

アーチャーは軽やかに口笛を吹いている。「そうこなくては」って。

キャスターは何だか難しいことを呟くの。「まさか当代で見るなんて」って。

アサシンは納得した風な顔をしているわ。仮面越しでも分かるでしょう。

 

それから他の子も。

あれは‥‥‥裁定者(ルーラー)降臨者(フォーリナー)ね。片方は聞いたことがあるけれど、もう片方は初めて聞くクラス。

 

ルーラーはわたしを見るとすぐに警戒の色をみせた。わたしが何者であれ人の枠組みを越えているのを看破したのでしょう。

フォーリナーは困惑を隠せていない。その身に邪神の力を宿していてもわたしの正体にはたどり着けない。

 

そして、目の前の男は‥‥‥少しモザイク?がかかったような感覚がするけど、"面白い"魂をしていることだけは分かるわ。

それが()ってしまってはいけない何かがある感覚もある。

 

けれど一番驚いているのは黒色の彼こと吸血鬼。

もうひとろセイバーにお別れを言うのを邪魔した張本人なのだからお仕置きが必要、よね?

 

 

「お前は‥‥‥! お前は一体、何なのだ‥‥‥!?」

 

 

ああして彼が戸惑って、怖がっているうちに。

あんな風に歪んだ力を手に入れようとする不遜の幻想種だなんて━━

 

 

『存在ごと。世界ごと。すべて抉ってしまうといいわ』

 

 

そして、万色の光が放たれた。

星の輝きでも、太陽の灼熱でも、破壊の力でも、万死の呪詛でも非ず。

ヴォルフガング・ファウストゥスの持つ霊核と亜種聖杯を消し飛ばし、ミノタウロスを霧散させる。

是は一瞬で行われたこと。流れるようにこれを好機と見た英霊が即席ではあるが熟達した一団(パーティ)を思わせるような最高尾連携が其処には在った。

 

 

 

術の英霊が、吸血鬼の全身を空間へと繋ぎ止めて。

 

 

暗の英霊が、氷結の心臓をたちまち握りしめて。

 

 

弓の英霊が、肉体の再生を一時的に阻んでいて。

 

 

臨の英霊が、深淵の領域を示すかのように描いて。

 

 

裁の英霊が、其れの肉体を白き焔の一振りを以て。

 

 

 

此処に、幻想の王たらんとした吸血種は砕き尽くされる。

残骸として、エーテルの光だけを僅かに残して。

 

 

 

 

 

 

*1
常識的に考えたらここの魔獣の肉は危険

*2
※転生相良君はアルトリアが食いしん坊なのを忘れています

*3
隣で腕を組んでいるとと様

*4
さすがに第三階層から通信機が使い物にならなくなった




補足すると、ヴォルフガングの実力は原作ラビリンスを見た感じだと、素がヴォルフガング≦死徒二十七祖ぐらいの実力で、それに今回は聖杯パワーとミノタウロスが付与されるので普通にサーヴァント複数体(ルーラーあり)でも厳しいです。
さすがに全力ファブリーズには勝てませんが‥‥‥。

それと今回はAIを使用してません。
というのも素で1万字書いたうえで加筆させたら後編を分ける必要が出てくるので‥‥‥。

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