パーフェクトゲームを目指すには!   作:メタ(ル)

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ストックが溜まりまくってるので試しに連続投稿。


※今回聖杯戦争に独自の設定を組み込んでいます。





Ⅴ 槍兵来りて

翌日の深夜零時、遠坂邸において。

 

 

「━━抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ━━!」

 

 

最後の一節を唱え終えた瞬間、召喚陣が眩く赤光を放った。

 

空気が震え、魔力が渦を巻く。

床に刻まれた魔法陣から噴き上がった光は暴風となって室内を吹き荒れ、カーテンを激しくはためかせた。

 

そして次の瞬間。

 

 

ドォンッ!!

 

 

 

辺りは赤い閃光と共に爆発した。

アニメの召喚シーンでよく見る、あの「そういう爆発」である。

しかも質が悪いことに、遠坂凛という少女はこういう派手な演出を狙ったわけではない。

純粋に制御しきれなかっただけだ。

 

煙が室内へと立ち込める。

煤混じりの熱気が漂う中、凛は思わず咳き込んだ。

 

 

「げほっ……けほっ……ちょ、ちょっと!?」

 

 

魔術師らしからぬ情けない声を漏らしながら爆発の中心部の部屋へと向かう。

 

すると、向かった先の部屋の中心。

一人の男が立っていた。

 

 

「やれやれ、とんでもないマスターに引き当てられてしまったな」

 

 

どこか皮肉げな空気を纏ったその男は、周囲を一瞥すると小さく肩を竦めた。

 

 

「あ、あなた‥‥‥クラスは?」

 

 

凛は問い掛ける。

聖杯戦争において、まず確認すべきはサーヴァントのクラス。

それは魔術師として当然の確認事項だった。

 

 

「おっと、まず先にそれを言うべきだったな。 ━━サーヴァント、クラスはアーチャーだ」

 

 

遠坂凛とアーチャー。

今宵、新たなる主従契約が成立した。

もっともこの一幕に特別な奇跡や大きな分岐など存在しない。

バタフライエフェクトも何もない原作(筋書き)通りのうっかりだった。

若き遠坂家の少女と赤き外套のアーチャーはこれより聖杯戦争の始まりへの一手を進めていくのである。

 

 

『‥‥‥‥‥‥』

 

 

一方屋敷の光が届かぬ影の中で。

本来ならば対サーヴァント用の結界によって外敵の侵入を阻んでいるはずの遠坂邸、その内部に。

怪しい骸骨が薄っすらと見え隠れしているということは少女はおろか赤い外套のアーチャーすら気が付かなかった。

 

いや、気付けるはずがなかった。

 

だって━━

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

『赤い外装のアーチャーが召喚された』

 

「オーケー、引き続き監視を頼む」

 

 

虚空へ向けて、俺は小さくそう呟いた。

返答は無いが気配はある。

バタフライエフェクトかは知らないがようやくアーチャー、未来の英雄であり正義の味方の成れの果てが召喚された。

細部に違いこそあれど、流れ自体は俺の知る原作(筋書き)とほぼ一致している。

少なくとも現時点では、大きなバタフライエフェクトは発生していない。

いや、あった。違う点はこのアサシンか。

 

 

『━━お前に人生を捧げるだけの信念はあるのか?』

 

『━━人の命を奪ってでもその信念を貫く覚悟はあるのか?』

 

 

昨夜の記憶が思い起こされる。

仮面の暗殺者が問いかけた二つの質問。

いかにも暗殺教団らしい問いかけだった。

無論マスターである以上、この問いかけには答えた。

 

 

「人生を捧げるだけの信念、あるさ。ただ生きたいという『生存欲』という信念が。ん? 問いの解としてはズレてたりするかな?」

 

「人の命を奪ってでもその信念を貫く覚悟‥‥‥さぁね。でも魔術という世界に入り込んでいる以上人の命を奪う覚悟はできてるさ」

 

 

正直なところ俺に信念なんて大層なものはない。

あるのは『生存欲』と『魔術師としての覚悟』ぐらいだ。

 

 

「まぁ良いだろう。これより我は汝の影となろう」

 

 

妥協してくれたのかは分からないが、このアサシンは俺をマスターだと認めてくれたようだ。

 

 

「逆に質問だけど、アサシン、願いはある?」

 

 

問いかけた数秒後、紙が落ちてきた。

相変わらず気配がしない。

 

 

『我が道に願望器は非ざる物。求める気はない。マスターはあるのか?』

 

「いいや、俺もな‥‥‥いや、あるのか。でも聖杯に選ばれたのが偶然だったし、そも事情があるというか‥‥‥』

 

『それが周囲にいる裁定者と他のサーヴァントと関係があるな』

 

「気が付いてたんだ。というか速記だなぁ‥‥‥、ま、願いがないと分かった以上色々話しておかなければならないことがあるので話しておきますね」

 

 

そこから先は、かなり踏み込んだ話をした。

 

俺自身の事情、聖杯戦争の行く末、聖杯の汚染、監督役の暴走、今後参加するサーヴァントの情報。

本来なら知るはずもない未来の知識すら、可能な範囲で共有した。

俺の正体に関しては今は重要ではないのでそれっぽく話す程度でアサシンもそれを察してか言及はしなかった。

 

「ギルガメッシュ」という単語を聞いた時に暗闇の向こうから、僅かにため息のような音が聞こえた気がしたが、彼もどこかの聖杯戦争で遭っているのだろうか。

その後、アサシンは全面的に俺へ協力する姿勢を見せてくれた。

言葉遣いこそ古風だが、性格そのものはかなり穏やかだ。

命令には忠実、余計な私情を挟まない、しかも気遣いまでできる。

ハサン系列の暗殺者は「敵には苛烈だが味方には優しい」と聞いたことがあるが、多分そういう系譜なのだろう。

 

今こうして「遠坂家の監視をしてサーヴァントが召喚されたら姿とクラスを報告しろ」という命令の結果、こうして紙切れが落ちてきたわけである。

このアサシンの真価は、潜入・諜報・暗殺。

気配遮断のランクがEXを誇り、戦闘時すら常にA+の気配遮断を出すことができる高い隠密性を誇る。

さすがに真正面から三騎士を相手取れるほどの力はないが、その能力を活かした搦め手であれば━━

 

 

「‥‥‥またメッセージか。えーっと『門入り口にて朱き槍を持ち青き装いをしたランサーのサーヴァントがいる』 なるほど‥‥‥‥‥‥はぁ!?」

 

 

何で来てんだよランサー‥‥‥。

まだ聖杯戦争で全騎出揃ってないから開始してないはずだが。

聖杯戦争のルールで「全騎出揃ったタイミングで監督役の宣言がないと聖杯戦争は開始されない」*1という暗黙の了解があっただろ。

 

‥‥‥いや、この第五次だとないのか!

監督役がアレな以上暗黙の了解が有耶無耶になってるし、そういえば原作だとセイバーが召喚される前にアーチャーVSランサーとかランサーが士郎君を半殺しにしてたな、そういや。

 

 

「どうしよ?」

 

思わず素で呟く。

まだトラップは未完成だし、別拠点の双子館に逃げる選択肢は‥‥‥逃げ道が一方通行だからない。

となると応戦は必然か。

 

 

「メディアは近接戦は無理。キャスター栄ちゃんやダンテも同じで、このアサシンも正面戦闘は苦手。オルタと三郎さんは‥‥‥ダメだ、霊基盤でアサシンが召喚されているのがバレてる以上あんな近距離戦ができる奴をアサシンと誤認するわけないし、がっつり日本の英霊が呼ばれてる時点で不審がられる」

 

 

アヴェンジャーが召喚されてたら無理やりクラス偽装で押し通せたんだが‥‥‥。

こうなりゃ謙信を出して偶然を装った芝居をして賭けに出るか。

 

いや、待て。

ランサーの目的は何だ?

 

クーフーリンは戦闘狂寄りではあるが、馬鹿じゃない。

むしろかなり理性的な部類だ。

 

なら今回の襲撃について本命は恐らく━━

 

 

「威力偵察による敵戦力の確認‥‥‥か? だとしたら‥‥‥」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

柳洞寺の総門前にて、夜風が石段を撫でる。

人気の消えた深夜の山門。

そこを、朱い槍を携えた一騎の英霊が悠々と登っていた。

朱い槍を得物とする槍兵の英霊だ。

 

 

「ったく、何だこりゃ。罠は中途半端。結界も中途半端‥‥‥早く来過ぎたかこれ?」

 

 

階段をのぼりながらランサーは小さく肩を竦めながら呟く。

あちこちにトラップのようなものは見受けられるが、どれも中途半端な素人でも看破できるぐらいのものや完成すらしていないものばかりである。

まだセイバーが召喚されていないにもあってここの陣営は本腰を入れていないのか。

 

そこで、山門付近の暗がりから人影が現れる。

仮面を被った男だった。

どこか慌ただしい。

というより、急いで出てきた感が凄い。

 

 

「あー‥‥‥ランサー、だな?」

 

「どうだか。剣や馬を隠しているだけでセイバーやライダーの線もあるぞ?」

 

「残念なことにライダーの姿は見てるし、セイバーが召喚されていないのは把握済みでね。君みたいな槍使いはランサーしか当てはまらないんだ」

 

 

不敵に笑みを浮かべるランサー。

対して男は仮面で表情が見えなかった。

 

 

「私はアサシンのマスターをしている者だ。ここのキャスター陣営と同盟を組んでいるごく一般的な魔術師だ」

 

「ほぅ‥‥‥」

 

 

ランサーはその男を凝視する。

キャスターの適性も持つ彼ことクー・フーリンは魔術に知見がある。

そのため目の前の男がどれぐらいの魔術師かも判断がつく。

 

一般的な魔術師、それ以上でもそれ以下でもない。

しかし、妙に底が見えない。

深い沼を覗き込んだ時のような、言語化し難い違和感があった。

というのがランサーの初見の反応だった。

 

 

「一応聞くけど、ここに来た目的は"まだ聖杯戦争が始まってもいないのに"サーヴァントと殺し合うことか?」

 

「ああ。だが、正確にはお相手さんの実力を調査しに━━ん?」

 

 

そこでランサーの思考が止まる。

今、妙な言葉が混じっていた。

 

 

「‥‥‥『まだ聖杯戦争が始まってもいない』? そりゃどういうことだ?」

 

「は? サーヴァントなら知ってるはずだろ? 「全騎出揃ったタイミングで監督役の宣言がないと聖杯戦争は開始されない」っていう暗黙の了解が」

 

「‥‥‥。」

 

「これが無かったらまだ英霊召喚をしていないマスターを予め殺すとかいうことができて、7人7騎がやり合う形式が成り立たなくなるだろうが」

 

「‥‥‥。」

 

 

ランサーは無言だった。

よくよく思い返せば大聖杯からの知識で「聖杯戦争は七人の魔術師と七騎のサーヴァントによる殺し合い」だと聞かされていた。

 

例えば、もしマスター候補または英霊を召喚していないマスターを故意であろうが過失であろうが殺したとする。

すると何らかのサーヴァントが1騎欠けてしまう。

そうなると先ほど述べた形式が破綻する。

さらに言えば、何も知らない素人を一方的に始末するなど、流石にゲームとして成り立たない。

 

ランサーは今日までの自分の行動を思い返した。

今日この日まではバーサーカーとライダーに戦いを挑んだが、よくよく考えればどちらも拠点に居っぱなしだった。

いや、正確にはマスターの護衛や策略として動くこともしばしば見受けられたが。

やけにあっさりとした殺し合いだったが、まさかどちらも聖杯戦争が始まっていないということで防戦に徹していたのだろうか。

 

 

「これ俺ルール違反犯してるのか?」

 

「暗黙の了解を破ってるしまぁ‥‥‥そうだな」

 

 

強敵との命懸けの殺し合いにテンションが上がった結果、普通にフライングしていたランサーである。

流石の大英雄もこれには少し気まずそうだった。

 

 

「というワケで帰ってくれない? こっちは見ての通り準備中なんだよ。まぁキャスターが昏倒事件を起こしちゃってくれたせいでそれを止めるのに作業が停滞してるんだが」

 

「ちなみに聞くが俺とサシでやり合える奴は‥‥‥」

 

「残念ながら、キャスターは強いけど君みたいな本職槍兵に真正面から挑めないし、アサシンは能力上そもそも無理」

 

 

ランサーは露骨にガクッと肩を落とす。

今の話は嘘は見受けられなかったから、ガチなのだろう。

アサシンとキャスターが同盟を組んだのも恐らく三騎士を真正面から相手取れるほどの余裕がなかったか、準備不足か。

仕方ない、ルール違反を仕出かしているはこちらだし、ここは諦めよう。

令呪で様子見で必要であれば戦えと言われているが、この状況で戦いが必要なわけが無いためか令呪の効力が効いていない。

 

 

「仕方ねぇ、そんじゃあ聖杯戦争が開始して次来る時は搦め手でもいいから相手してくれよ」

 

「良いよ。多分その時は万全に戦えるから」

 

 

その言葉にランサーは笑みを浮かべていた。

少なくとも生きてれば戦えるという約束をしたのだ。

それだけで十分だ。

情報収集も一応済んだ。

収穫ゼロではない。

 

 

「またな、アサシンのマスターさんよ」

 

 

朱槍を肩へ担ぎ。

ランサー━━クー・フーリンは再び石段を下っていく。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「セーフ!セーフ!」

 

 

山門から完全にランサーの気配が消えたのを確認した瞬間、俺は勢いよく仮面を外した。

そして両手で大げさにセーフ判定のジェスチャーをする。

危なかった。

本当に危なかった。

 

 

「ふぅ‥‥‥」

 

 

深く息を吐く。

肺に溜まっていた緊張がようやく抜けていく。

 

何とかランサーを帰らせることに成功した。

あの段階で他のサーヴァントを表に出すのは悪手だった。

というのも情報が言峰陣営に流れる。

特に、こちらが複数の規格外サーヴァントを抱えている事実はまだ隠しておきたい。

最悪の場合に備え、いくつか別プランも考えてはいた。

 

いざという時はダンテをキャスターに偽装して「こいつがキャスターです。こいつの情報の開示をこいつのマスターからしてもいいと言われているので開示します。だから帰って」とか言えばどうとでもなるし、別パターンで「俺らのサーヴァントは戦闘向きじゃないです。あ、そう言えば偶々各陣営の視察に来てたルーラーがいるのでそいうにお相手を願えばどうですか?」などというプランも考えていたりしたのだ。

結果的にはルール違反をちらつかせて撤退させたが。

 

 

「おはよー、マスター。ランサー追い払ったんだ」

 

「真夜中だし、昼夜逆転起こしているぞ、メタンヌ」

 

 

元の寺内に戻るとメタンヌが大きくあくびをしながらやって来た。

真昼間から昼寝していたせいで昼夜逆転現象を起こしたらしい。

 

 

「マスター、一つ聞いても良い?」

 

「何?」

 

「ちらっとマスターの記憶を覗かせてもらったんだけどさ、あのランサーとアーチャーが戦った結果、物語が始まったんでしょ?」

 

「あー‥‥‥うん」

 

 

あれ?

何な嫌な予感が‥‥‥

 

 

「あの感じだとランサーはセイバーが召喚されるまでは戦わない方針だよね?」

 

「‥‥‥。」

 

 

何か嫌な予感が、がが‥‥‥

 

 

 

 

「じゃあさ、ランサーとアーチャーの戦いって起こるの?」

 

 

 

 

 

 

‥‥‥あ。

 

 

 

 

 

 

この瞬間俺の脳がフル回転した。

 

ランサーは今の会話で、「セイバー召喚後まで待つ」という方向に舵を切った。

つまり今後しばらくは、真正面から戦うより隠密による情報収集を優先する可能性が高い。

そんなランサーをアーチャー陣営がターゲットにする可能性は低いし、隠密行動をしているので痕跡に気が付きづらい。

本来であればその戦いを偶然目撃した衛宮士郎が、ランサーに殺されかけることでセイバー召喚フラグが立つ。

そして更に、召喚前にランサー二度目の襲撃を決行する。はずだった‥‥‥

 

 

「もしかして俺、原作の流れ変えちゃったか!?」

 

 

ヤバい。

これマズいぞ。

下手するとセイバーが召喚されない可能性すらある。

そうなれば第五次聖杯戦争そのものの構造が崩れる。

ここから何とか原作の軌道に修正するには色々やらなければならない。

 

 

「やらかした‥‥‥」

 

「マスター‥‥‥ドンマイ!」

 

 

慰めるかと思ったメタンヌだが、意外と鬼畜天使だったようで‥‥‥。

はぁ‥‥‥やーらーかーしーたー!

 

 

 

 

 

 

*1
byダーニック談(第三次聖杯戦争)




独自設定

・全騎出揃ったタイミングで監督役の宣言がないと聖杯戦争は開始されない


原作でもそうですが、このようなルールが無ければ素人枠のマスターをサーヴァント召喚前に殺して召喚させないとか言う7騎の英霊の魂を汲んで『 』を観測する聖杯戦争が成り立たなくなる可能性があります。
それを解決するために聖杯の予備システムで死んだら次の候補者に令呪を聖杯が配布すると思いますが‥‥‥。
というかもし五次ランサーやアーチャーのようなセイバーが召喚されていないタイミングでマスター候補(例:士郎)を殺す&聖杯の予備システム起動が起こった場合、

召喚してない令呪持ちを殺す→令呪を奪う→予備システムで別の人に令呪が宿る→召喚される前にそいつを殺す→令呪を奪う→予備システムで別の人に令呪が宿る→‥‥‥

無理はありますがこの作業の繰り返しで令呪が量産されまくるとかいうまあゲスい裏技が出来てしまうわけですが、その辺はどうなんでしょうね?

まぁこの設定はようやく形が整えられた第三次頃なら普通にありそうですが。

ちなみに、召喚されたアサシン(ハサン)はもう読者の皆さま方は気が付いているでしょうが、サムレムアサシンと別ベクトルで強い能力をしているあのハサンさんです。一応マスターが転生相良君だったこともあって性格が多少喋る上、やや穏やかになってます。

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