パーフェクトゲームを目指すには!   作:メタ(ル)

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「仕事だ。アサシン、プリテンダー、フォーリナー。内容は━━」

「承知した」

「フフ、オーケー」

「了解ダ、マスター」


「━━まだ夜は終わらせない」



「ところで何でクラス名で呼んだんダ?」

「いやだってその方がカッコ良くない?」

「まぁ‥‥‥そうだな」








Ⅷ 急襲

 

 

「なぁ遠坂。そもそもルーラーって言うのは何だ?」

 

 

夜深くの衛宮邸のリビングにて。

時刻は既に日付が変わる頃合いだろうか。窓の外には静寂に包まれた住宅街が広がり、時折吹き抜ける夜風が庭木の枝葉を揺らしている。

昼間の激戦が嘘だったかのような穏やかな空気。

しかし、その場にいる誰一人として本当の意味で気を緩めてはいなかった。

今夜、自分たちは常識では説明できない存在と遭遇したのだから。

 

衛宮士郎は湯呑みを机へと置きながら、胸の中に引っ掛かっていた疑問を口にした。

それは魔術師として未熟な彼だからこその疑問であり、同時に聖杯戦争そのものを知る者たちにとっても無視できない問いだった。

 

ルーラー。

 

数時間前に突如として現れた謎のサーヴァント。

聖杯戦争の説明を受けた際、言峰綺礼から聞かされた七つのクラス。

そのどれにも該当しない名前だった。

だからこそ士郎は純粋に知りたかった。

あれは何者なのか。

なぜこの聖杯戦争に存在しているのか。

 

 

「まぁ、これに関しては素人が知らなくても無理はないわね」

 

 

凛はソファに腰掛けたまま軽く肩を竦めた。

その声には呆れよりも諦めに近い感情が混じっている。

 

 

「というか、私ですら本当に存在しているのか確証を持てなかったんだから。遠坂家の資料でもほとんど伝説みたいな扱いだったし」

 

 

そう言いながら近くにあった画用紙を引き寄せ、ペンを手に取る。

 

 

「聖杯戦争において召喚されるのは七クラス。それは聞いたでしょ?」

 

「セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーだったな」

 

「そう」

 

 

さらさらとペンが走る。

画用紙の上には簡単な人型とクラス名が並んでいった。

 

 

「ただし、実際のところ少し違うのよ。セイバー、アーチャー、ランサー。この三つは三騎士と呼ばれるクラスで、基本的に固定されているわ」

 

「基本的に?」

 

「ええ。聖杯戦争そのものの根幹を支えるクラスだから。戦力としても安定しているし、召喚条件も明確。だからここはまず変わらない」

 

 

凛は三つのクラスを丸で囲む。

そして今度は残り四つへペン先を向けた。

 

 

「問題はこっち。ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの四枠は必ずしも固定じゃないの」

 

「どういうことだ?」

 

「場合によっては、その枠に別のクラスが割り込むことがあるってこと」

 

 

新たな人型が描かれる。

その上に記された文字は『EXTRA』。

 

 

「エクストラクラスよ」

 

 

士郎が小さく呟く。

 

 

「エクストラクラス‥‥‥」

 

 

 

聞き慣れない単語だった。

少なくとも言峰からは聞いていない。

 

 

「今まで確認されているエクストラクラスは一つだけ」

 

 

凛のペンが鎖を描く。

痩せ細った男。

全身を縛る鎖。

まるで世界そのものから呪われた亡者のような姿。

 

 

「アヴェンジャー。復讐者のクラスよ」

 

 

その言葉が重く響く。

描かれた瞳はただの落書きでしかないはずなのに、どこか底知れぬ憎悪を宿しているようにも見えた。

 

 

 

「そして今回現れたのが━━」

 

 

 

凛はさらに一枚の絵を描く。

今度は天秤を持つ女性。

裁きを象徴する存在。

 

 

「ルーラー。裁定者と呼ばれるクラス」

 

 

その言葉に、自然と全員の視線が画用紙へ集まった。

 

 

「過去の聖杯戦争で正式に確認されたことはほぼ無い。少なくとも私たちが知る記録には存在していなかったサーヴァントよ」

 

 

 

ルーラー、それは戦うための英霊ではない。

勝利を掴むための駒でもなければ、願いを叶えるための参加者でもない。

聖杯戦争そのものを監督し、維持し、必要であれば裁く存在。

 

曰く、ルール違反を行った者へ警告を与える者。

曰く、聖杯戦争の破綻を防ぐための調停者。

曰く、自らの願いを持たない中立の英霊。

そして曰く。

人の手では裁けぬ事象を裁定するために送り出される特別なサーヴァント。

 

 

「通常の聖杯戦争じゃ召喚されない」

 

 

凛は断言した。

 

 

「ルーラーが現れるのは、その聖杯戦争があまりにも特殊で結果が予測できない場合か、あるいは戦争そのものが世界へ歪みを与える危険性を孕んでいる場合だけ」

 

 

 

それはつまり。

聖杯自身が必要だと判断した時にのみ現れる存在。

マスターの意志ではなく、召喚陣でもなく、聖杯というシステムそのものが呼び出す管理者。

 

 

「しかも能力も規格外よ。サーヴァントに対する特権を持ってるし、単純な戦闘能力も異常。正面から勝負したら普通のサーヴァントじゃまず相手にならないわ」

 

 

凛は少し苦い顔を浮かべ、士郎は少し考え込んだ。

 

 

「てことは、そのルーラーっていうのは聖杯戦争を成り立たせるために動いて、一般人を守る側の存在なんだよな?」

 

「そうね」

 

 

凛は頷く。

 

 

「少なくとも本来はそういう存在。無関係な人間を巻き込むような真似は許さないし、ルール違反を繰り返す連中には罰を与える」

 

「つまり法みたいなものか」

 

「まぁ、近いわね」

 

 

そして士郎はさらに続ける。

 

 

「悪い奴を裁くための存在」

 

「そう考えても間違いじゃないわ」

 

「しかし、ルーラーたちは実際に動きました」

 

 

静かに言葉を挟んだのはセイバーだった。

彼女の表情は冷静だが、その視線は鋭い。

 

 

「それも裁定というより、一方的な粛清という形で」

 

 

その言葉によって場の空気が僅かに重くなる。

確かにそうだ。

もし本当に公平な裁定者ならば、あの場でバーサーカーだけを裁定するのは意味不明だ。

そこにこそ最大の疑問があった。

 

 

「そう。それが一つ目」

 

 

凛は指を立てる。

 

 

「本来なら両者へ何らかのペナルティを与えるべき場面だった。それなのに実際は一方だけを裁いた」

 

 

そして二本目の指を立てる。

 

 

「もう一つは、なぜルーラーが二騎も存在しているのか。それも、本来召喚できないはずの神霊まで含めて」

 

「召喚できない?」

 

 

士郎が首を傾げる。

それに凛は小さく頷いた。

 

 

「聖杯そのものが西洋魔術の産物だから、基本的に召喚対象になるのは西洋圏、あるいは中東圏の“人の血を持つ英霊”だけなの。だから本来なら日本を含む東洋圏の英霊ですら例外的な扱いになるし、まして神霊なんて召喚できるはずがないのよ」

 

 

その声には魔術師としての常識が滲んでいた。

今回現れた二騎。

 

上杉謙信

メタトロン

 

どちらも聖杯戦争の常識から大きく外れている。

特に後者は神そのものに連なる存在だ。

本来なら英霊の座とは無縁であるはずだった。

 

 

「多分メタトロンの方は説明できるわ」

 

「本人も言っていたけど、ジャンヌ・ダルクを依り代にして降臨している。神霊の擬似サーヴァント化なら理論上は可能でしょうね」

 

「じゃあ上杉謙信の方は?」

 

 

士郎の問いに、凛は珍しく即答できなかった。

 

 

「‥‥‥分からない」

 

 

そう言って苦笑する。

 

 

「強いて言うなら、ルーラーの選定基準自体が通常の召喚システムを無視しているとか、その辺りかしら。でも正直、憶測でしかないわね」

 

 

それほどまでに今起きている事態は異常だった。

次はこの異常をどうすれば良いのか考える。

 

 

 

 

 

とか何とか考える━━瞬間だった。

 

 

「ッ!? シロウ!!」

 

 

突如としてセイバーが叫んだ。

それは警告というより反射だった。彼女自身も考えるより先に身体が動いたのだろう。金色の髪を翻しながら士郎へ飛び込み、その身体を押し倒すように覆いかぶさる。

何が起きたのか理解できず士郎が目を見開いた直後だった。

 

ヒュン━━と。

鋭く空気を裂く音が耳元を掠めた。

それと同時に何かが障子をすり抜け(・・・・)た。

紙を破る音も木枠を砕く音もない。

まるでそこに障害物など存在しなかったかのように通過したそれは、そのまま背後の(ふすま)へ深々と突き刺さる。

 

 

「短剣!?」

 

 

襖に突き刺さっていたのは20cmほどの短剣だった。

刀身は漆黒。いや、黒という色ですらなかった。

闇そのものを凝縮し、無理矢理刃の形へと固めたかのような異様な質感を持っている。光を反射するどころか、周囲の明かりすら吸い込んでいるように見えた。

そして何より恐ろしいのは、その軌道だ。

短剣は一直線に士郎を狙っていた。

迷いも狂いもなく、完璧な精度でまるで最初から士郎の心臓へ吸い込まれるように飛来している。

もしセイバーが庇っていなければ、もし一瞬でも反応が遅れていれば、その短剣は間違いなく士郎の胸を貫いていただろう。

 

 

「アーチャー!!」

 

 

凛の鋭い声が響く。

即座に霊体化が解除され、アーチャーが実体を現した。しかし、その表情には珍しく困惑が浮かんでいる。

普段ならば皮肉の一つも飛ばしそうな男が何も言わず周囲を警戒している。

つまり、彼ですら投擲の瞬間を捉えられなかったということだ。

その事実が敵の危険性を雄弁に物語っていた。

 

次の瞬間、セイバーが立ち上がる。

その動きに一切の迷いはない。

まるで弾丸のような勢いで縁側へ飛び出し、そのまま庭へと駆ける。

先程の攻撃、その僅かな魔力の流れだけで既に狙撃地点を割り出していた。

 

 

「そこだッ!!」

 

 

セイバーが不可視の剣を振るう。

だが━━

 

 

「居ない!?」

 

 

セイバーの瞳が鋭く細められる。

振り翳した場所には誰も、何もいなかった。

人影どころか気配すら存在しない。

ただそこにあったのは月光の届かない場所へ落ちる濃い()だけだった。

 

 

「━━影か!!」

 

 

セイバーがそのわずかな違和感に気づく。

ほんの僅か、本当に微細なレベルではあるが、その影から魔力の残滓を感じたのだ。

 

 

「‥‥‥。」シュッ

 

 

その瞬間だった。

影が揺れたのだ、まるで生き物が呼吸するように。

そして次の瞬間、影の中から無数の刃が浮かび上がる。

 

黒い短剣

黒い剣

黒い杭

 

形状は様々だが、その全てが暗黒によって形成された武器だった。

数十にも及ぶ刃が夜空へ浮かび、その切っ先を一斉にこちらへ向ける。

 

セイバーたちは避ける。

先ほどの投擲でこの短剣が標的までの間にある障害物を無視してくる性質を見破ったからか、将又直感か。

無数の短剣は一直線の軌道で発射されるのを見るに追尾機能は備わっていないようだ。

 

 

「‥‥‥。」

 

 

その時、一瞬だけではあるが影に潜む者の姿が浮かび上がった。

しかし、その全容を捉えることはできない。

見えたのは骸骨を模した不気味な仮面のみ。それ以外の全ては夜の闇へと溶け込み、その輪郭すら判別できなかった。

まるで影そのものが人の形を取っているかのような異様な存在感だった。

 

 

「骸骨の仮面‥‥‥アサシン。 山の翁に連なる者か!」

 

 

セイバーが鋭く言い放つ。

その判断はかつての聖杯戦争で目にしたアサシンたちの特徴と酷似していたからだ。

骸骨の仮面、暗殺者としての在り方、そして気配の薄さ。その全てが山の翁の系譜を連想させる。

 

だが、それ以上に無視できない問題があった。

 

 

「ステータスが見れない!?」

 

 

凛が驚愕を滲ませながら呟く。

あのアサシンがハサン・サッバーハのいずれかである可能性は極めて高い。

だが本来であればマスターには敵サーヴァントの能力値がある程度視認できるはずだった。

しかし、目の前のアサシンだけは違った。

まるで濃い霧でも掛かっているかのように何も見えない。

その全てがモヤよって覆い隠されていた。

 

 

「ッ━━!」

 

 

それを聞いた瞬間、セイバーの動きがわずかに止まった。ステータスが見えない影のようなサーヴァント━━その特徴には覚えがある。かつて己の臣下として共に戦い、最後までその心を理解しきれなかった友の姿が脳裏を過ったのだ。

 

だが、すぐにその感傷を振り払う。

彼ではない。

そもそも英霊とは広大な歴史の集積だ。

似た逸話を持つ者もいれば、似通った能力を持つ者もいる。偶然にも能力体系が重なっただけだろうと割り切り、セイバーは再び不可視の剣を構え直した。

 

 

「‥‥‥。」シュッ

 

 

その直後、件のアサシンは再び影そのものへと姿を変えた。まるで地面に溶け込むように移動しながらも、その動きはどこか奇妙だった。本来なら存在そのものを消し去るべき暗殺者でありながら、あえて追跡可能な程度の痕跡を残している。

まるでこちらを誘導するかのように。

 

その意図を察しながらも、セイバーたちは追跡を選んだ。ここで逃がすよりは、相手の本拠やマスターの情報を掴める可能性に賭けた方が遥かに有益だと判断したのである。

 

二騎と二人は衛宮邸の正門を抜け、夜の坂道へと駆ける。

街灯の明かりが不安定に瞬く薄暗い通り。

そして、その先で━━。

影となっていたアサシンは、既にそこに立っていた何者かの影へと自然に溶け込んだ。

 

 

「!? キャスター‥‥‥!」

 

「フフ‥‥‥」

 

 

月明かりの下に立っていたのは、一人の男だった。

 

纏うローブ。

余裕に満ちた微笑。

そして底知れない魔力。

 

間違いなくサーヴァント。

つい昨日のキャスターである。

 

 

「前日ぶりだね。それでそっちのセイバーたちは初めまして。私はキャスターのサーヴァントだ」

 

「貴方がキャスターですか‥‥‥」

 

 

セイバーは静かに相手を観察した。

外見だけならばどこか胡散臭く、粘つくような雰囲気を漂わせている。しかし、その奥に潜む力量までは隠し切れていない。

少なくとも、ただの魔術師ではない。

歴戦の英霊としての感覚がそう告げていた。

 

 

「やっぱり、アサシンと同盟を組んでいたのね」

 

 

凛が鋭く言い放つ。

 

 

「どうしてそう思ったのかな?」

 

「つい先日、あなたがランサーに言っていたじゃない。“私やアサシンと先約があるでしょ?”って。自分の名前の次にバーサーカーやライダーを差し置いてアサシンが出てきた。つまり少なくともアサシンの行動は把握している。そして、それを説明できる一番自然な答えが━━」

 

「同盟、だね?」

 

 

キャスターは愉快そうに肩を竦めた。

 

 

「正解」

 

 

あっさりと認めるその態度には動揺も焦りもない。

まるで隠す必要すら感じていないかのようだった。

 

 

「同盟に関してはマスターとサーヴァント双方の利害関係が一致したからだよ。もっとも、その内容までは伏せさせてもらうけどね」

 

 

どうやら全てを話すつもりはないらしい。

一方で士郎と凛は別方向へ視線を向けていた。

道路脇に設置されたカーブミラー。

 

その鏡面の中に、曲がり角の先へ立つ人影が映り込んでいる。

闇と同化するような黒い服装。

顔までは判別できない。

だが、体格から見れば二十代前後の女性だろうか。

恐らくはキャスター、あるいはアサシンのマスター。

 

 

「さてと、まだ夜は明けないだろうから‥‥‥一戦、つき合ってもらえるかな?」

 

 

キャスターが剣呑な笑みを浮かべる。

 

 

「セイバー!」

 

「アーチャー!」

 

「はい、シロウ!」

 

「了解した、マスター」

 

 

それぞれが即座に戦闘態勢へと移行した。

セイバーは不可視の剣を抜き放ち、アーチャーは静かに弓を構える。

一方のアサシンは足元の影から無数の不可視の刃を生み出し、キャスターはそれを眺めながら不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

「汝の相手は我がつとめよう」

 

「来るか、アサシン!」

 

 

ここに来て初めて明確な言葉を発したアサシン。

その低く響く声には感情らしい感情は感じられず、ただ任務を遂行するためだけに存在する刃のような冷たさがあった。

そして彼が標的に定めたのはセイバーだった。

次の瞬間、影の中から生み出された無数の刃が雨のように放たれる。

 

 

「チィ!」

 

 

セイバーは咄嗟に剣を振るい、それらを弾き落とす。

いや、正確にはそうする以外になかった。

放たれた刃はあまりにも薄く、夜闇の中では視認することすら困難でありながら、その狙いは異常なほど正確だった。

鎧の隙間を狙うどころか、場合によっては装甲そのものを貫きかねない危険性を秘めている。

 

 

「スッ!」

 

 

さらに追撃するように、アサシンは影からロングナイフを思わせる黒き影剣を構え、そのまま一直線にセイバーへ突撃した。

本来であればセイバーほどの剣士なら回避も迎撃も容易い。

むしろ反撃まで織り込めるはずだった。しかし、

 

 

(見えない━━!?)

 

 

そう、見えないのだ。

正確には、気配が存在しない。

 

薄っすらと人影は認識できる。だが、その肉体の輪郭も剣筋も異様なほど曖昧で、感覚が捉え切れない。

視界では存在を認識しているにもかかわらず、本能が敵の位置を把握できないのだ。

まるで目の前の存在だけが世界から切り離されているかのような違和感。

そのためセイバーは視覚ではなく、ほぼ直感だけを頼りに迎撃せざるを得なかった。

 

 

「グッ!」

 

 

激突

 

剣と剣が正面からぶつかり合い、金属音が夜気を震わせる。

純粋な剣技と力量ならばセイバーが上回っている。

しかし、一瞬の遅れは致命的だった。衝撃を受けたセイバーは数メートル後方へ押し出される。

それでもすぐさま体勢を立て直し、追撃を振るわれる前に剣を振るってアサシンを退けた。

だが、その時には既に距離が開いてしまっている。

 

結果として戦場は自然に二つへ分断された。

 

セイバーVSアサシン

 

アーチャーVSキャスター(■リテ■■■)

 

そんな構図が出来上がる。

 

 

「さすがに君たちのマスターが乱入してきたら嫌だし、往けマレブランケ!」

 

 

キャスターが片手を掲げると、その足元に魔術陣が浮かび上がった。

そこから現れたのは三体の異形。

コウモリを思わせる翼に、悪魔のような角。そして獣と人間を混ぜ合わせたような不気味な身体を持つ使い魔(マレブランケ)だった。

 

 

「マレブランケ、ケルベロス‥‥‥まさか貴方の真名って!?」

 

 

凛が何かに気付いたように目を見開く。

 

 

「おっと、まだもったいぶりたいから、やめてね。特に真名っていうのは‥‥‥」

 

 

キャスターは意味深な笑みを浮かべながらそれ以上を語らせない。

そして次の瞬間、三体のマレブランケが一斉に士郎と凛へ襲い掛かった。

 

 

「さて、これでタイマンだね、アーチャー?」

 

「ふん。元より個別に戦う算段だったのだろうが、一魔術師(キャスター)三騎士(アーチャー)と真正面から戦うと?」

 

「そうだね」

 

 

その言葉と共にキャスターは腰に差していた剣を抜き放つ。

月光を受けて輝く刀身。

魔術師であるはずのキャスターが、だ。

 

 

「キャスターが剣を!?」

 

 

さすがのセイバーもその光景には驚きを隠せなかった。

魔術師が護身のために剣を扱うことはある。

しかしサーヴァント同士の戦い、それも三騎士を相手に正面から剣を抜くなど常識外れにも程がある。

 

 

「フフ‥‥‥一応これでも剣技は得意な方でね」

 

「君風に言えば、『魔術師とて剣を執ることぐらいあるだろう』かな?」

 

 

「随分と余裕だなキャスター。君自身は『君が書いた叙事詩の自分』よりも強くないだろう?」

 

「フフ‥‥‥どうかな?」

 

 

その返答と同時に二騎は地面を蹴った。

夜気を裂いて交差する二つの影。

英雄と英雄。

遠距離戦を得意とするはずのアーチャーと、魔術師であるはずのキャスター。

常識から外れた二人の英霊が、剣を交えるため真正面から激突した。

金属同士がぶつかり合う甲高い音が響き、静まり返っていた夜の住宅街に戦いの開幕を告げる鐘のように鳴り渡った。

 

 

 

 

 




与太話:『今更』


士「遠坂、今更だけど‥‥‥上杉謙信って女性だったんだな」

凛「言われてみればそうね。女性説は確かにあったけど‥‥‥」



今回のまとめ:

アーチャ―:自分の覚えているキャスター、アサシンコンビではないためさすがに異常が起きている事には気づいている。ちなみに、キャスター(に扮したプリテンダー)の剣を解析して真名に気づいている。

凛:マレブランケが出てきたことで真名に気が付いた。それと同時に「じゃああの蛇魔は‥‥‥」と違和感を持ち始めた。

アサシン:ハサンの1人。もう攻撃方法で分かるように出自はstrange fake。



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