パーフェクトゲームを目指すには!   作:メタ(ル)

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※相良君は既存の情報を基に戦略を立てるタイプです
※なので相良君は正式な二重召喚のルールを知りません
※この辺りからオリジナル設定が出てきます


感想とかお気に入り登録とか是非!


※一部本格的に本編に関わる内容で修正しました


XⅥ 乱戦の開幕(一部修正)

ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)!?」

 

 

静かな名乗りだった。

しかし、その一言が持つ重みは計り知れない。

セイバーは剣を構えたまま目を見開く。

 

━━切り裂きジャック。

かつてのブリテン(イギリス)の産業革命期に現れた歴史上最も有名な未解決連続殺人犯であり、正体不明、動機不明、その存在そのものが恐怖として語り継がれる怪物。

血煙と煤煙に覆われたロンドンの闇の中で幾人もの娼婦を惨殺しながら、最後まで正体を掴ませなかった殺人鬼。

数多の容疑者が挙げられながらも真相は今なお霧の中にあり、その名だけが恐怖の象徴として現代にまで残り続けている。

その名が今、英霊としてこの冬木の地で告げられたのだから。

 

 

「すまないな、マスター。少々ドジを踏んだ」

 

『いいや構わない。仕込みは無駄になったが、バレたところでむしろこっちが有利だ』

 

 

そう、むしろ生前どのようなことをしたか書物で分かる円卓の騎士よりも、正体不明の殺人鬼の方が情報を知られていないというアドバンテージがある。

戦い方も先ほどの剣の打ち合いがそう見せるためのfakeか見極める必要が出てくる上、どう対策を取ればいいのか不明すぎるのだ。

相手が円卓の騎士ならば伝承から推測できる。

 

だがジャック・ザ・リッパーにはそれがない。

 

剣を振るうのか。

暗殺を得意とするのか。

毒を使うのか。

あるいは今見せている姿すら偽装なのか。

何一つ断言できない。

 

それに、これは慎二側しか知りえないが、夜間であればモードレッドに敗れたというある意味モルガンの被害者であるアーサー王に対して強制的に先手を打てるバーサーカーの能力があるので、その気になればアーサー王を暗殺できる。

そして何より厄介なのが、あるスキルとある宝具の組み合わせだった。

 

と、ここで凛がある違和感を指摘する。

 

 

バーサーカー(・・・・・・)?」

 

「そうだが」

 

「バーサーカーならどうして流暢に会話が成立してるって言うの?」

 

目の前の怪物はまさにバーサーカーと呼称していいだろう。

アサシンにしては堂々とし過ぎている。

正面から姿を晒し、敵と対話し、理性的に受け答えを行っている。

しかしそれならば、なぜこうも流暢な会話が出来ているのか。

例え狂化ランクが最低値であっても言語機能に支障をきたすはずだ。

にも関わらず目の前のバーサーカーは何事も問題ないかのように会話をしている。

 

「ある者の知見が入るが、私の『狂気の象徴』としての出自と『バーサーカー』というクラスが『マイナス×マイナス=プラス』の式の下で、狂化と打ち消し合った。それ故私は正常な理性と知性を得ている」

 

まるで学者が理論を説明するかのような落ち着いた口調だった。

つまりは狂化がなされてないバーサーカーということ。

それはバーサーカーと言うクラスの強みが消えているに等しい。

だが。

しかしながら、バーサーカークラスのジャック・ザ・リッパーの強みは狂化ではない。

その宝具と保有スキルの凶悪な組み合わせなのだ。

 

瞬間、埠頭にある倉庫やその影から無数の人が現れた。

 

 

「嘘、何で警察が‥‥‥」

 

 

凛が思わず声を漏らす。

現れたのは警棒を携え、制服を着こんだ警察官の集団。

それも全員同じ顔だった。

そう、同じ顔だ。

まるで鏡写しのように。

一人や二人ではない。

数十人に及ぶ全員が同じ顔でこちらを見つめている。

その異様さに、士郎の背筋へ冷たいものが走った。

 

 

「全員がサーヴァント、だと!?」

 

 

セイバーがいち早くその警官隊の正体に気が付く。

しかもこれは以前相対した第四次のアサシンの分身とは違い、それぞれが各々の霊基を所持している。

一体一体から放たれる気配は決して幻ではない。

確かな英霊の存在感。

それが数十。

いや、視界に映るだけでもそれ以上。

 

 

『どうだ遠坂? 僕のバーサーカーは! 宝具とスキルの併用でやろうと思えば警察署を乗っ取ることも容易いんだぜ?』

 

「イかれた性能をしてるわね‥‥‥」

 

 

思わず凛も絶句してしまっている。

バーサーカーの宝具『其は惨劇の終焉に値せず(ナチュラルボーンキラーズ)』はざっくり言えば霊基を持った分身を作り出すというもの。

だが恐ろしいのはそこから先だ。

分身と言ってもどれも本体であるから最後に残った一体が自動的に本体となり、しかも分身を消されたとしても魔力が減る程度で霊基にダメージは入らない。

そして『千貌(A)』というアサシンクラス並みの変身能力で個別に姿を変えたり、物質になることが可能なのだ。

つまり理論上は市民の中に紛れ込むことも出来る。

そして、今やっているように警察官になることも出来る。

 

これらを組み合わせるとどうなるかというと‥‥‥サーヴァントによる無限の兵隊が作られる。

しかも何気にマスターが慎二であるため戦略面を担当し、火力は沖田オルタがカバーできるという最善の布陣である。

二組で戦う聖杯戦争という枠組みで考えるなら、極めて厄介な組み合わせだった。

 

 

『ああ、安心しろよ。別にこいつらで前みたいに無関係な人を巻き込むつもり何て毛頭ない。まぁ数日前にそれをやった僕の信用は無いに等しいだろうが』

 

 

声色的に嘘ではなさそうである。

しかし、警戒するに越したことはない。

 

再び緊張の空気が張り詰める。

波の音だけが静かに響く。

誰もが相手の出方を窺っていた。

また、戦いへと発展するかと思われていた矢先だった。

 

 

『━━撤退だ』

 

「承知した」

 

 

スピーカーからその単語が告げられると、ジャックたちは一斉に懐にあった閃光手榴弾を投擲した。

統率の取れた動きだった。

まるで訓練された特殊部隊のように、一切の無駄がない。

それが地面に落ちてから数秒後、辺りが閃光に包まれた。

夜の埠頭を塗り潰すような白光。

視界が焼き潰され、誰もが反射的に目を細める。

 

 

「また会おう、騎士王」

 

「セイバー‥‥視界が‥‥‥」

 

 

その光景を見ていた沖田オルタも即座に180度ターンをして撤退していく。

まるで最初からそう決まっていたかのような迷いのない動きだった。

視界がクリアになると、そこは先ほどまで大勢いた者が綺麗さっぱりと消えていた。

残されているのは潮風と静寂だけだった。

 

 

「逃げた‥‥‥」

 

「どういうことだ?」

 

 

どう見ても戦況は慎二側が有利だったはずだ。

数、情報の優位もあり、奇襲の余地すらあった。

なのに、なぜ撤退を選んだのか。

深追いを避けたのか。

それとも別の狙いがあるのか。

士郎や凛はおろか彼らのサーヴァントですら困惑するばかりであった。

 

有利なはずの側が自ら引いた。

その事実だけが、不気味な余韻となって埠頭に残り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥まぁ困惑するよな、そりゃぁ」

 

 

緊急避難用拠点として使用していた双子館(西)で監視カメラの映像を見ながら俺は呟く。

モニターには先程まで埠頭で繰り広げられていた戦闘の余韻が映し出されていた。

既に当事者達の姿はそこから離れつつあるが、それでも戦いの痕跡は色濃く残っている。

そんな中、通信越しに慎二君から報告が入った。

 

 

『撤退完了。後が付けられている気配はなし』

 

「じゃあそのまま柳洞寺に戻っておいて」

 

『了解』

 

 

こんな会話をしているように慎二君は俺の手駒と化している。

以前なら何かしら文句を言うか、遠回しに嫌味を挟むか、最悪の場合は勝手な判断をしていた男である。

自分の方が優秀だと思えば平然と指示を無視し、自分の利益になると思えば余計な行動を取る。

そんな男だったが今では指示を出せば従い、報告を求めれば報告しているのだから人間変われば変わるものだ。

もっとも、その変化の理由を考えるとあまり健全な話でもないのだが。

まぁ、俺にとっては都合が良いので特に問題はない。

 

あの場で撤退を即決した理由?

それはねぇ‥‥‥。

 

 

"埠頭付近から金ぴかの王が離れていきました"

 

"んならよし。そのまま次の準備に動いといて"

 

"了解です、マスター"

 

 

英雄王が動きを見せたからである。

念のためクレーンの上に謙信を配置して正解だった。

埠頭全体を監視できる位置に置いておいたおかげで、ギルガメッシュの動向を即座に把握できてたのは大きい。

あの王様何をするか分からんからね。

下手にあそこでセイバーかアーチャーを倒せば漁夫の利でやって来る可能性も否めなかったし。

というか、ギルガメッシュという男は利益とか合理性とか以前に「面白そうだから」で行動するタイプだ。

その気になれば、

 

 

「ほう、雑種同士で潰し合っているではないか」

 

 

とか言いながら乱入してきても不思議ではない。

あのタイミングでの撤退は不自然すぎただろうが、まぁ結果的に英雄王が動かなかったので良しとしよう。

剣弓陣営からすれば意味不明だったろう。

あと一歩で戦闘が大きく動きそうな局面でこちらが突然引いたのだから当然だ。

だが、こちらとしては戦力を温存できた。

そもそも今回の目的は剣弓陣営の撃破ではなくただ戦わせて本当に真の聖杯戦争が起こってると誤解させるためである。

それらが目的なのであって、勝敗そのものは優先事項ではない。

ならば無理をする理由はない。

 

さて、皆は色々思うことがあるだろう。

特にバーサーカーについてか。

まず初めに慎二君にさせた実験について語ろう。

慎二君にはルーラーからまず令呪を三画与える。

本来ならば魔術師にしか宿らないはず、と言われているが実際は別にそんなことなく魔術回路を持たない一般人も宿すことが亜種聖杯戦争で確認されている。といってもイレギュラーなケースしかないが。

魔術師達の間でもあまり知られていない話ではあるが、実例が存在する以上、不可能ではないということだ。

そもそも令呪と言うのは自然発生した魔力の塊のようなものなので魔術回路を持たないマスターでもサーヴァントに令呪で命令できる。ただし、魔術回路が無いので数時間で消滅するのがオチだ。

 

要するに電池だけ渡された状態である。

スイッチを押すことも命令もできる。

だが継続運用ができない。

サーヴァントというのは存在しているだけで膨大な魔力を消費するため、一般人がマスターになったところで長期維持は不可能なのだ。

数時間、長くても半日、それで終わる。

だから通常ならば一般人が令呪を得ても大した脅威にはならない。

 

しかし、ここで俺が慎二君に魔術刻印を与えるとどうだろうか。

知っての通り俺の魔術刻印は通常の魔力消費を三分の一に抑えるという効果を他人に分け与えることが可能であるのだが、同じ魔術刻印を使用しているためか、分け与えた者に刻印を通して魔力を与えたりその逆もできるという隠し効果的なものがある。

つまり、魔術刻印を与えた慎二君には俺の魔力が送られてくる上に元の効果である魔力量の消費を抑えるのも相まってサーヴァントを魔術師ではなくても難なく使役できているのである。

簡単に言えば外付けバッテリー付きマスターだ。

割と酷い抜け道である。

聖杯戦争のシステム設計者が知ったら頭を抱えそうなバグ技と言ってもいい。

 

そして、バーサーカーについて。

元々は慎二君が何かして臓硯から四次のランスロットの触媒を貰うという計画だったが、「臓硯に接触させるべきではない」と"ある者"からありがたく助言を頂いたので代わりに俺の持っていた触媒『切り裂きジャックのナイフ』*1を使うことになった。

これは前に聖杯大戦で使うはずだった触媒で、三郎さんを召喚した数時間前に駅でスられていた、と思ったら実家に置きっぱなしだった。

無くなってるとか思ってたけど、元から持ってなかっただけという俺がバカしただけである。

当時はかなり焦った。

触媒が無くなったと思って必死に探したし、盗難まで疑った。

結果はただの置き忘れだった。

今思い返しても情けない話である。

まぁ結果的にアサシンでクソ強い三郎さんを召喚できたからよかった。

結果オーライ、本当に結果オーライである。

以降は刃こぼれがしない、使用者に呪いを付与する呪物でもない、扱いやすいということでサバイバルナイフ*2に加工して使っていた。

 

そして、こんな触媒を用いて召喚されたのが、かつて偽の聖杯戦争でバーサーカーの役を持っていたジャックさん。

あのねぇ‥‥‥こいつ強いわ、マジで。

正直、召喚直後はここまで強いとは思っていなかった。

こっちは魔力が十分に行き渡らせることが可能だから宝具を使いたい放題で化けたサーヴァントのスキルや一部の宝具をコピーしたり、後は数秒間三騎士相手に奮闘できるレベルなところが。

制約こそあるけど、俺の得意分野の魔術との組み合わせでそのデメリットを消せる。

結果として本来以上の性能を引き出せている。

 

其は惨劇の終焉に値せず(ナチュラルボーンキラーズ)という宝具は「切り裂きジャックは1人ではなく、集団だった」という説に基づいているのだが、これによって化けれる範囲は当時の19世紀に存在していたモノやターゲットした対象、そして切り裂きジャックの正体として挙げられているモノ

ここで注目してほしいのは変身できる対象の三つ目である。

この切り裂きジャックの正体として挙げられているモノの狭義には『ある複数の人物が切り裂きジャックの正体として考えているモノ』というのがある。

そして、俺の得意分野の魔術の中には人にあることを信じ込ませる暗示という魔術がある。

 

これで分かっただろう。

俺は魔術の秘匿を守ったうえで適当にその辺にいる人に「切り裂きジャックの正体はランスロットの生霊」という身も蓋もない説を信じ込ませ、後はジャックさんがそれを「切り裂きジャックは何らかの拍子で召喚されたバーサーカーのランスロット」と拡大解釈して変身してもらった。

まぁそれでも顔までは化けれず、アロンダイトと正体を隠匿する宝具はコピーできなかったが、別に変装はあくまでセイバーの心を折ってそれを士郎君が癒すというマッチポンプが主目的*3*4なのでバレたところでどうでもいい。

こっちはサーヴァントに通用する銃や武装を持つサーヴァントの兵隊を持てるようになったのだ。

ダンテや三郎さんの使い魔を使うとしても数があるだけ良い。

 

 

「さてと、今夜は‥‥‥」

 

 

俺は椅子の背にもたれながら現状を整理する。

監視カメラの映像。

各サーヴァントから送られてくる報告。

そして今まで得られた情報。

それらを頭の中で組み立てながら、今夜の動きを再確認していく。

剣弓陣営は恐らく今夜も動く、恐らくちゃんとコンビでだ。

情報が欲しいのは間違いないが、召喚されているサーヴァントの数が不明な以上下手な単独行動は控える。

まぁその召喚された奴らのほとんどが同一陣営だとは思いもよらないだろが。

 

 

「そして今宵━━間桐陣営は潰す」

 

 

静かな宣告。

あのクソ蟲は平然と漁夫の利を狙って来るので、もうこのタイミングで排除しないと変則型hf√に入ってサーヴァントの総数というこちらの強みが黒化で消える。

ならばここで息の根を止める。

そのためにも今回はかなり大掛かりな陽動を使う。

メインの間桐潰しとそのおまけでやる予定の『ランサー戦』をする以外のサーヴァントをそれぞれツーマンセルかスリーマンセルとなって夜の冬木市内を散策する。

それぞれ巡回するルートはフリーにしているが、巡回ルートが被る場合は同盟陣営でもバトルだが、正確には戦ってる風だけ装ってちょっとしたらどちらかが撤退する。

そして剣弓陣営や他の予備システムで呼び出された‥‥‥通称真のキャスター真のライダーにカチ当たれば本格的に戦闘開始、という感じである。

 

既にこちらの陣営は盤石となっている。

多分全滅することはそうない。

不確定要素はギルガメッシュと先述した予備システムのサーヴァントの二騎だが、よほどのことは無い限り大丈夫だろう‥‥‥多分(フラグ)。

 

 

「じゃあ君らは19時以降に行動を開始してくれ━━セイバー(・・・・)アーチャー(・・・・・)ランサー(・・・・)

 

 

そう告げると、目の前に並ぶ三騎の英霊たちは揃って静かに頷いた。

その反応を確認しながら、俺は内心で小さく息を吐く。

聖杯の予備システム起動というのは本来ならば、それは俺の計画を大きく狂わせるはずだった異常事態だった。

だが、結果だけを見ればむしろ好都合だったと言える。

予想外の事態によって生まれた歪み。

その歪みを利用したことで、当初の想定を遥かに超える戦力を揃えることができたのだから。

 

まず最初に行ったのはメディアへの令呪譲渡だ。

二画の令呪を与え、原作snにおいて彼女が行ったアサシン召喚の要領を応用する。

さらにメタンヌへ頭を下げ、予備システムによって再配布される令呪の受領者の一人として俺が選ばれるよう細工してもらった。

これで二騎。

 

ここまではまだ想定の範囲内。

問題はその次だ。

令呪を宿したマスター候補を探していた際、偶然にも穂群原学園の生徒の一人に令呪が発現していることを確認した。

その少女を暗示で柳洞寺へと誘導する。

抵抗も警戒も抱かせないまま寺へ連れていき、メディアのルールブレイカーで令呪を奪取。

作業が終わった後は、その時間帯の記憶だけを丁寧に消去する。

何も知らないまま日常へ帰っていった少女を見送りながら、俺はメディアが手に入れた令呪を移してもらう。

二騎分の令呪。

理論上、それがあれば可能となる荒業サーヴァント同時召喚。

常識外れもいいところだが、今後魔術教会で企画されているある聖杯戦争の例がるのでできる。

 

今更だが、奪った令呪の元の持ち主は氷室鐘だった。

確か冬木の市長の娘で魔術師家系ではなかったはずだ。

となると予備システムによって選出された一般人枠ということだろう。

まあいいだろう、今となっては些細な問題だ。

これで三騎。

俺は本来ならばあり得ないはずの戦力を手に入れるための準備を整えた。

そして━━

 

 

静まり返った召喚陣の前で詠唱を開始した。

 

汝三大の言霊を纏う七天

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ━━━!

 

 

膨大な魔力が渦を巻き、召喚陣が眩い光を放つ。

空間そのものが軋み、冬木の大聖杯が発する魔力の奔流が地下へと流れ込んでくる。

そして、その光が収まった時。

俺の前には三騎の英霊が立っていた。

 

 

「サーヴァント・セイバー、召喚に応じ参った。契約に従い、汝の(やいば)となろう」

 

「サーヴァント・アーチャー、参りました。同時召喚とは珍しい━━」

 

「サーヴァント・ランサー、よろしくな。あー‥‥‥こりゃまた厄介ごとかね?」

 

 

 

召喚成功。

アサシンとバーサーカーの枠が既に埋まっている以上、三騎士が呼ばれること自体は予想できていた。

だが、それでも驚きは隠せなかった。

予め召喚呪文を弄ってた(・・・・・・・・・)とはいえ、まさかセイバー、アーチャー、ランサーという三騎士を綺麗に揃えて引き当てるとは思わなかったのである。

触媒は無し、純粋な縁召喚。

普通に考えれば縁のある英雄が呼ばれるはずだが、正直言って俺自身にそこまでの縁があるとは思えない。

恐らく原因は大聖杯の不具合だろう。

 

‥‥‥ああ、いや。

一人だけは違うか。

地域的な意味で前世との縁がある。

というか、元からこちらにいた複数の英霊との繋がりも多少存在する。

そう考えると完全な無関係というわけでもない。

後は━━

 

 

されど汝の生国は日の本なり

 

汝、剣の側面を持つ者。我はその刃を従わせる者

 

 

召喚術式へさらに手を加える。

本来なら存在しない追加条件。

俺なりのアレンジだ。

知名度補正を最大限に引き出せる日本の英霊を呼び出すこと。

 

更に追加でメディアと合同で利用したのが天草四郎が遺した資料を解析に解析を重ねて得た『(セイバーの)二重召喚(ダブルサモン)』だ。

本来ならあり得ないクラス要素の重複付与。

天草の記録によれば、『二重召喚(ダブルサモン)』とはライダー、バーサーカー、キャスター、アサシンの四クラスのみ(・・)に適用可能な特殊技術であり、条件を満たした上で召喚することで二種類のクラススキルを保持させることができるらしい。

資料を読めば分かるように三騎士への適用は不可能であり、四騎士へ三騎士クラスを付与することも不可能。

少なくとも天草四郎はそう結論付けていた。

 

だが、実際はそうでもなかった。

天草四郎(シロウ・コトミネ)の死後、中国で発生した亜種聖杯戦争。

そこでは"ランサー"の李書文が『二重召喚(マルチクラス)』と『圏境(A)』を保有した状態で召喚されていた。*5

実例が存在する以上、不可能論は崩れる。

三騎士であろうと他クラスの要素は付与できる。

方法が見つかっていなかっただけだ。

俺はその穴を突いた。

天草が辿り着けなかった先へ手を伸ばした。

 

 

「はずだったんだがなぁ‥‥‥」

 

 

セイバーは元からセイバーだったのでクラスの追加は無いのは当然だ。

だが、アーチャーとランサーはなぜかセイバーの術式を入れているはずなのに一切それが付与されなかった。

やっぱり確立されてないことをやると失敗しやすいんかな。

ただ、片方は剣を持ってたから一応セイバーの真似事はできそうだから良しとしよう。

しかも何気に強いこいつら。間違いなく、ここ10年の運を使ったレベルの大当たりだった。

しかも神性を持たないのでギルガメッシュ相手に投入できる。

 

神性特攻や相性問題を気にせず運用可能な時点で価値が高い。

さらに都合が良いことに、三騎とも聖杯に託す願いがなかった。

正確に言えば、一騎はこのまま順調に進めば叶うだろうし、他二騎はそもそも願いが無くただ呼ばれたから来ただけだった。

だからこそ、俺が事情を説明し協力を求めた時も迷いはなかった。

余計な裏切りを警戒する必要もない。

こうして俺は、本来なら絶対に揃うはずのない布陣を手に入れた。

冬木の聖杯戦争において、ありえないはずの三騎士だ。

ガバはあったが戦力が増えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

そして、数時間が経ち夜が始まる。

その夜は今までの夜よりも長く、苛烈を極めた。

 

 

 

「汝は己の悪魔が如き腕で何を掴んで見せた━━呪腕の?」

 

「なぜ、貴殿が‥‥‥この聖杯を巡る戦からほど遠い貴殿が召喚されているのだ━━幽弋殿!」

 

 

 

ある高速道路では教団の主と影が

 

 

 

「断言しよう、貴殿は悪ではない。むしろ誰かのために戦える尊き存在だ。しかし、我がマスターの命において貴殿を斬る。すまぬな、騎士のセイバーよ」

 

「そっくりそのままお返ししましょう、武士(もののふ)のセイバー」

 

 

 

未遠川の岸で相対する影が2つ

 

 

 

「この災厄を捧がん━━」

 

「毒血、深緑より湧き出る。弔いの木よ、牙を研げ!」

 

「我が骨子は捻れ狂う━━」

 

 

「「「訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)!!/祈りの弓(イー・バウ)!!/偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)!!」」」

 

 

 

冬木大橋に飛び交うは多種多様な矢の数々

 

 

 

「あははははは! 久しいですね、本気で戦うというのは!」

 

「面白れぇ! 真正面からルーラーと打ち合えるとはな!」

 

 

 

荒廃した船着場で戦うは生粋のウォーモンガー同士

 

 

 

聖杯戦争という儀式は崩壊した。

今そこにあるのは現在進行で綴られる英雄譚のみ。

本来は存在しない様々な英霊がぶつかり合う。

 

 

 

 

*1
正確にはジャックが使ったとされるナイフの一つ

*2
迷宮探索で使用してたあれ

*3
士剣ガチ勢的な

*4
ワンチャン言峰陣営が誤解してくれればいいかなと思っているが、どうせギルいるのでバレる

*5
案の定太刀打ちできるサーヴァントはおらず完勝してる




補足及び解説


・なぜジャックさんがランスロットに化けれたか?

相良君が宝具とスキルの仕様から「切り裂きジャックの正体に新しい説を作れればそれにも変装できるようになるんじゃね?」と考えた結果。
その後、暗示の魔術で「切り裂きジャック=バサスロット」とかいう説をでっちあげて変装させた。ただし、さすがにアロンダイトや正体を秘匿する宝具はコピーできなかった。


・二重召喚について

本作では二重召喚≒マルチクラスという設定でやっています。
なので本来相良君はマルチクラスの術式を使用しないといけなかったのですが、そんな術式はまだ開発されてないので二重召喚の変則式の術式でやったため召喚された三騎には他クラスの能力は付与されませんでしたが‥‥‥


・世界観について

stay night世界と思いきや、これ実は氷室の天地時空(つまり≒strange fake世界)がベースになっており、それで所々の設定がギャグ時空に影響されてます。
霊脈が耐えきってるのは「何騎召喚しても耐えれる(細かいことは気にするな)」的なギャグ時空の要素があるから。


・慎二について

もろに抑止力の影響を受けた結果、インテルが入った。
相良君から魔術刻印を飲まされたので魔力を一般人よりも持つことができるようになった。
ちなみに、相良君から遠隔で魔力は送られてきてるが、さすがに食事とかで魔力を補うことをしてる。


・三騎士について

二騎召喚は普通に原作fateでも恐らくできます(例:亜種二連聖杯戦争)。
三騎同時運用などできないかと思われますが、結構相良君もギリギリですね。
幽弋さんと召喚した二騎の魔力燃費が結構いい方なので。
それでもってこの三騎士は前置きで言っておきますが当たり枠です。

彼らのヒントとしまして

セイバーは武士で和鯖(アルトリアがそう判断できるぐらいの見た目)。
アーチャー、ランサーのどちらかが和鯖(ではない)で片方がセイバー適性を持ってたりする。
オリジナルサーヴァントではない。

それと最後に言っておくとこれ番外編ですので戦闘はあまり期待しないでください。


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Fate/hollow adaptation――異戒の華は冬木に咲く​(作者:りー037)(原作:Fate/)

十年前の冬木。第四次聖杯戦争の裏側で、大聖杯のシステムすら想定し得なかった「致命的なバグ」が産声を上げた。▼魔術師たちの野望と妄執が渦巻く中、地獄のような環境から一人の少女が解放される。▼間桐桜。彼女の足元に広がる「虚数」の影は、マスターを失い世界から消滅するはずだった理外の怪物――あらゆる事象に適応し破壊する『異戒の神将』と奇跡的な融合を果たしていた。


総合評価:3726/評価:8.63/連載:29話/更新日時:2026年06月16日(火) 12:39 小説情報


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