パーフェクトゲームを目指すには!   作:メタ(ル)

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「首尾は上々かね、()()()()()

「その言い方は指揮ではねぇが、この上なく、と返事でもしておこうか。そちらの方は?」

「無論だ。しかし恐ろしいな、お前の能力であれば並大抵のサーヴァントは‥‥‥」

「あぁ、()()がその気になれば、有無を言わせるまでもなく、そいつを支配下へ置ける。英雄王だろうがぁ、大英雄だろうがぁ、裁定者だろうがぁ‥‥‥みぃんな等しく、現世へ縛られた魂に過ぎんのだからねぇ」

「ただまぁ‥‥‥そう簡単な話でもなくてなぁ。現界したサーヴァントを縛るにはぁ、いくつか面倒な決まり事があるのさ。この体になってから、好き勝手ばかりできるわけじゃないんだよぉ」

「あの騎士王と偽のアサシンと、よく分からん偽キャスター擬きには、おそらく効かんだろう」

「成程‥‥‥」



ある主従の会話(なお、キャスターの口調がミスってる可能性あり)
このヒントだけで真キャスターの真名が分かったら普通に凄い。
(オリジナル設定が一部あり、というかこうしないとヤバい)





XⅧ 衝突するヤリ/咎人の終焉

「あぁ゛‥‥‥釣れねぇ‥‥‥」

 

 

昼過ぎのやや日が照らす時間帯。

セイバー、アーチャー、バーサーカー、セイバー(アルターエゴ)が戦った近くの埠頭の岬にてランサーのクー・フーリンは今日も今日とて釣りに勤しんでいた。

ここのところ今の(・・)マスターである言峰にグダグダと命令される日々が続いていたのだが、つい先日からというもの自由な時間が増えて言っているのである。

どういう風の吹き回しか、と問うてみるとある意味予想外の回答が出てきた。

 

 

「すまないが、真の聖杯戦争の情報収集以前に激化しつつある戦いの隠蔽で手が回せないのだ。つまるところ今後忙しくなるために休暇を取ってもらっている」

 

 

真の聖杯戦争。

言峰が語るには自分たちを含めた七騎を呼び水にして更に制限なく召喚させて戦わせるという大規模な聖杯戦争。

自分たちが所謂偽のサーヴァントだった、ということは特に何とも思うことは無い。

特段聖杯に願う願いなど持ち合わせていない。

 

今の所確認された真のサーヴァントはライダーでギリシャ神話の大英雄ペルセウス、セイバーで新撰組の一番隊隊長沖田総司の反転霊基(オルタナティブ)、バーサーカーでイギリスの連続殺人鬼ジャック・ザ・リッパー、アサシンで歴代ハサンの1人である呪腕のハサン。

何と言う事だろう、自分にとって戦い甲斐のある者ばかりではないか。

同盟を組んでるセイバーやアーチャーは防戦一方、キャスターとアサシンは正面からの戦いにならない、ライダーはそもそも怪物、バーサーカーは引きこもるというシケた状況であったが、言峰の話を聞く所、真のサーヴァントはほぼ全てが活発に動いているそうだ。

今すぐ戦いたい、と思ってしまうがまだ真の聖杯戦争発覚から二日しか経過していない。

急いで出ても叩かれるだけだ。

 

言峰の方も慌ただしく動いており、ライダーが学校で暴れた件の隠蔽から、メデューサとペルセウスが激戦を繰り広げ破壊しまくった高層ビル群の隠蔽といい様々な仕事が舞い込んできているようだ。

今ランサーが埠頭に居るもの一応言峰に調査を命令されたからである。

先ほど埠頭付近で大規模な戦闘があったということについてだが、いざ来てみると周りの被害はコンテナが2個破損、ポール3個が全損、その他地面の削れと被害自体は少ない。

報告が終わり、そのまま自由にしても構わないと言われたランサーは今こうして釣りに勤しんでいたのである。

 

 

「‥‥‥。」

 

「‥‥‥‥‥‥。」

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」

 

 

 

「かからねぇ‥‥‥」

 

 

釣りというのは気長に待つものだと聖杯の知識から送られてきているが、こう一時間以上も釣れないとなると退屈でしかない。

やがて水面に垂らしていたルアーを回収しなおし、再度水面に垂らす。

もう慣れた作業だ。

こうして腰を下ろしながら気長に待っていると━━

 

 

「釣れそうですか?」

 

 

ふと、ランサーの背後から声がした。

声がした方に振り返ると白髪でやや黄色寄りの翡翠色の眼をした現代でいうところのストリートカジュアルに相当する衣装をした女が立っていた。

女の後ろにはバイクが見えるので恐らくそれに乗ってここまでやって来たのだろう。

 

 

「ここ、さっき大きな何かがあったようで魚たちは深海へと隠れてると思いますよ」

 

「‥‥‥。」

 

 

外見だけを見ればその辺の現代人と区別はつかない。

しかし、武芸者であるランサーからしてみればそんなものは通用しない。

 

 

「‥‥‥いいや」

 

「?」

 

 

例えば、女と自分の距離。

こちらの得物をしってるかのように絶妙に届かない距離感を常に保っている。

 

例えば、僅かながらに感じる神性。

やや憶測混じりになるが、人の世に生まれた現人神か。

 

 

「釣れたぜ、巨大な魚のふりをしたお前さんが」

 

「‥‥‥女性に対して体重のことを言うのはデリカシーが無いですよ」

 

「違げぇ、そういうことじゃなくて━━サーヴァントだろ、お前さん」

 

「‥‥‥あちゃーバレちゃいましたか」

 

 

まるで隠す気がなかったかのように女は頭を軽くたたく。

現代に溶け込んでいるがこいつもサーヴァントだ。

目の前の女は少なくともキャスターやアサシンのような搦め手のスペシャリストではなく真っ当な武闘派のサーヴァントだろう。

武闘派の女性ということで師匠(スカサハ)をつい思い浮かべてしまうが、さすがにそこまでイかれたタイプではない‥‥‥だろう、多分。

 

 

「クラスは、何だ? ランサーか、それともライダーか、あるいは━━」

 

「ルーラーです、元ランサーですが」

 

「あん? ルーラーだぁ?」

 

 

確かにルーラーが召喚されてることは聞かされていたが、目の前の女がルーラー?

いや、よく見れば確かに召喚されてたルーラーの1人である上杉とかいう日本の武将に酷似してはいるが‥‥‥

 

 

「ああ、髪の色は変えてますよ。あっちは神霊の側面が強く出ていて、今の容姿は生前そのままですので」

 

 

成程、ルーラー特権とかいう奴の一種か。

確かに大物は釣れたが、大きすぎる。

喧嘩を吹っ掛けても他のサーヴァントたちと敵対は必然となってしまうだろう。

さすがのランサーでもその状況で勝てるかと言えば、答えは否だ。

 

 

「はぁ‥‥‥そんでお前さんはオレに何か用か?」

 

「ええ、単刀直入に言いましょう。ランサー…いえ、クー・フーリン━━あなたを裁定しに来ました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 

そして、日が暮れ始めて月が静かに夜空へ姿を現したころ。

埠頭には穏やかな潮風が吹き抜け、水面には月明かりが揺らめいている。

昼間まで戦場だったとは思えないほど静寂に包まれたその場所に、二つの影だけが向かい合って立っていた。

互いに武器は手にしているものの、まだ戦いは始まっていない。

 

やがて、その沈黙を破るようにランサーが口を開く。

 

 

「━━そんで、お前さんはどこまで知ってるんだ?」

 

「あなたが元は時計塔から選出された封印指定代行者のサーヴァントで、今は言峰とかいう神父の駒として動いている事ぐらい、ですかね」

 

「ほぼ全てじゃねぇか‥‥‥」

 

 

まるで世間話でもするかのような口調で返されたその言葉に、ランサーは思わず額へ手を当てた。

ここまで調べ上げられているとは思っていなかった。

やはりルーラーというクラスは、情報収集能力まで規格外なのではないか。

そんな考えが自然と頭を過る。

言峰の使い走りとして動いていることまでは、まだ分かるが、自分が本来は時計塔から派遣されたバゼットのサーヴァントだったという事実にまで辿り着いているとは思いもしなかった。

そこまで知られているのなら、もはや隠し事をする意味もないだろう。

もっとも、目の前のルーラーの話によれば、バゼット本人は辛うじて命を繋いでいる状態らしい。

その言葉を聞き、ランサーは胸の奥で小さく安堵する。

あの女なら簡単には死なないとは思っていたが、実際に生存していると聞けば、やはり安心するものだった。

 

元々は、その事実と+αを条件としてこちら側へ付くよう持ち掛ける予定だったらしい。

だが、それは最初から成立しない話だった。

クー・フーリンという英霊は、例えマスターが変わろうとも、一度結んだ契約と義理だけは決して裏切らない。

その相手が外道であろうと、望まぬ形で主従関係を結ばされた相手であろうとだ、己の願いを懸けて聖杯戦争へ参加している以上、その契約は最後まで全うする。

もちろん、先に主の側が裏切り、契約を踏みにじるのであれば話は別だ。

 

しかし、少なくとも現状では、ランサー自身から契約を違えるつもりは一切なかった。

ならば、ルーラーが自分の前へ姿を現した理由は何か。

単純に考えれば、言峰という男が聖杯戦争における何らかのルール違反を犯しているからだろう。

裁定者である以上、その可能性は十分に考えられる。

あるいは、ルーラー陣営の目的を達成する上で、言峰という存在そのものが障害になったのかもしれない。

いずれにせよ、自分がその渦中へ巻き込まれていることだけは間違いないだろう。

 

そんな静かな空気の中、謙信がゆっくりと白銀の槍を構える。

その動作には一切の迷いがなく、月明かりを受けた穂先が静かに銀色の光を放っていた。

対するランサーも、口元へ獰猛な笑みを浮かべながら、愛槍ゲイ・ボルクを肩へ担ぐ。

互いの間に流れていた穏やかな空気は消え去り、代わりに肌を刺すような殺気が埠頭一帯を包み始める。

 

 

「さて、やり合いましょうか、クランの猛犬殿?」

 

「ハッ、いいぜ! その代わり━━オレを楽しませてくれよ?」

 

 

その言葉を最後に、二騎は同時に地面を蹴った。

爆発するような踏み込みによって石畳へ亀裂が走り、両者の姿が一瞬で視界から消える。

そして次の瞬間、朱色の槍と白銀の槍が真正面から衝突した。

轟音と共に火花が夜の埠頭を照らし、激突の余波によって水面が大きく波打つ。

互いに一歩たりとも譲らないその一撃は、これから始まる死闘の幕開けを高らかに告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

夜の高速道路は騒がしい。

車体に備わっているライトを点けた車両が往来し、光がまばらに点在している。

 

 

「‥‥‥。」

 

 

その道路の脇のやや上に骸骨の仮面を付けて黒いマントで身を覆った影が一つ。

呪腕のハサンと呼ばれるアサシンが一体。

己のマスターに命じられたことは「情報収集及び、隙あれば敵の排除」。

さすがにかの裁定者に喧嘩を売るという愚行はせずに地道に情報収集をしている。

 

 

「‥‥‥来たか」

 

 

やがて、気配を感じた。

周囲を見渡してもサーヴァントの姿は捉えられない。

となれば恐らくは自身と同じ気配遮断を持つアサシンだろう。

しばらく経つと不自然に動く影が見えた。

 

 

(影で移動‥‥‥いや、影そのものと同化する能力を持ったアサシン。加えて相当な気配遮断を兼ね備えた‥‥‥ん?)

 

 

此方にやって来たであろうアサシンの能力を察する呪腕のハサンは一つ気がかりだった。

気配遮断が自分より上な者は数多くいるだろう。

しかし、影と同化する逸話を持ったアサシンというのに妙な引っ掛かりがあった。

 

その影は何かを創り出した。

あの見た目は短剣だろうか。

 

 

「フンッ!」

 

「‥‥‥。」

 

 

唐突に投擲された影のような短剣。

それに対し呪腕のハサンは自分の持っていた短刀を弾丸のように放って相殺する。

 

次の瞬間、その濃かった影が自身に急接近した。

暗殺者である自分ですら察知できない距離の詰め方だった。

影は黒い短剣を振るう。

呪腕のハサンはそれに対して持っていた短刀で防ぐ。

 

 

「貴様、一体何も━━」

 

 

防いだ瞬間に呪腕のハサンは相手の姿を捉える。

最もそれでもはっきりと捉えたわけではないが。

山の翁の特徴である骸骨の仮面。

それを被っている、目の前のサーヴァントが。

 

違う代のハサンではない。

あれほどの隠密に優れたハサンなど死後も聞いたことがない。

では一体何なのか?

呪腕のハサンの記憶にはあるものがある。

それは歴代のハサンたちしか知りえない者の名前と能力だ。

 

 

━━世代を示す助動詞を持たず、時には『初代の影』とさえ呼ばれた幽弋()の山の翁がいると。

 

 

 

「まさか、貴殿(・・)は‥‥‥!」

 

「‥‥‥汝は」

 

 

やがてその影が口を開いた。

 

 

「己が妖精から奪った腕で、結局何を成しえたのだ━━呪腕の?」

 

「幽弋、殿‥‥‥」

 

 

幽弋のハサンと呼ばれた者だ。

かつて初代の影として表の歴史にすら姿を現さなかった真のハサンとも言ってもいいぐらいの人物。

存在すら問われるほどの人物であったが、現にこうして目の前に現れた。

 

感傷に浸る時間なんてものはない。

そういう思考を一瞬で切り替えることはさすがハサンの1人と言うべきなのか、短刀を三本投擲する。

 

 

「甘い」

 

 

しかし、それは幽弋のハサンにとっては甘い。

黒い影のような壁で全て防ぎきる。

 

 

「いいえ、まだだ!」

 

 

一気に呪腕のハサンは距離を詰めていた。

そのまま近接戦へとなだれ込む。

 

 

「なぜです! 貴殿ほどの人物は聖杯をめぐる争いごとに縁遠い存在であるはずだ!」

 

「‥‥‥。」

 

 

互いに剣を執る。

とはいってもさすがに本職のセイバーには一歩劣る。

 

 

「答えてください、幽弋殿! なぜこの戦いに参加したのです!」

 

「呼ばれたからだ。我は呼び声があればそれに応じる、例えそれが人に害なす外道であったとしてもだ」

 

 

激化した剣舞は一旦収束し、呪腕のハサンは下の高速道路にそのまま落ちる。

落ちた場所は、車が数台あるキャリアカーだ。

続けて影を這うように幽弋のハサンもキャリアカーの後方に着く。

 

 

「時に、」

 

「?」

 

「問おう、呪腕よ。汝は何が目的で異教のモノを奪い合う戦いに参加したのだ?」

 

「!?」

 

 

思わず驚いてしまう呪腕のハサン。

まぁ確かにイスラムールを信仰している身としては起源は同じだとしても色々マズい。

しかし、それで言えば幽弋のハサンも同じことになるが‥‥‥

 

 

「我のように呼ばれたがために参加するのならば良し。聖杯に叶える明確な本意があるのであれば━━初代様が動く」

 

「‥‥‥。」

 

 

言えない。

ハサンとなる上で失われた自らの顔を取り戻した上で、自身こそが唯一のハサン・サッバーハとして永遠に名を残す事という願いが。

前者は良いとしても後者が特にマズい。

まして同じ山の翁という存在が目の前にいる中それを言えばどうなるか。

 

 

(いや、それよりも初代様が動くというのは一体‥‥‥)

 

 

唯一のアサシンの冠位を持つ初代様であるが、彼が動くというのはどういうことだ。

と思ったがよくよく考えれば初代様というのは死の概念だ。

召喚されなくてももしハサンが聖杯戦争に勝利して聖杯で願いをかなえようとした瞬間に「首を出せ●●」をしてくるか。

今更ながら聖杯戦争に願いを掛けることをするべきではなかったのではと思ってしまう。

まぁこの際願いは運がよければ叶えてもらうとして、マスターの方を優先しよう。

 

そうして再び短刀と黒い包帯で巻いていた呪いの腕を解放する。

 

 

「幽弋殿、私には確とした願いはあります」

 

「‥‥‥。」

 

「しかし、私は同時に聖杯戦争のサーヴァント。故にマスターの道具でもある」

 

「‥‥‥。」

 

「押し倒させてもらいます、我が腕を以てして!」

 

 

それはかつて奪った悪性の精霊・シャイターンの右腕。

赤い腕を露わにした呪腕のハサン。

それに対して幽弋のハサンは‥‥‥

 

 

「良いだろう。ならば相手をしよう、呪腕の」

 

 

トンネルに差し掛かった両者ともにキャリアカーから降りる。

この時間帯だとトンネルを通る車も一、二台しか見受けられない。

互いにただ突っ立ってるように見えるが黒いマントと髑髏の仮面でそれが逆に不気味さを感じる。

 

やがて呪腕のハサンは前傾姿勢を取る。

赤い悪霊の腕は薄暗いトンネル内でも光ってみせる。

 

 

「宝具━━」

 

 

正面から距離を詰めに掛かる呪腕のハサン。

対する幽弋のハサンは影と同化せず、実体化して動かない。

 

 

(まさか、受け止める気なのか‥‥‥!!)

 

 

呪腕のハサンは幽弋のハサンの意図を読み切れない。

しかし、こうなった以上策略を看破した上で幽弋のハサンを‥‥‥倒す。

 

 

妄想(サバ―)‥‥‥」

 

 

腕が幽弋のハサンに向かって伸びる。

その距離僅か5m。

 

 

(ニ―)‥‥‥」

 

 

更に腕が伸びる。

その距離既に3mを切った。

 

そして最後の「音」という一文字を言おうとしたその瞬間、ドクンという擬音語が相応しいであろう感覚が呪腕のハサンを襲った。

まるで急に繋がれていた糸が切れたかのような感覚。

 

 

「まさか、マスター!?」

 

 

切れたのだ。

マスターとのリンク、すなわち契約が。

魔力提供元であるマスターを失った呪腕のハサンの腕は1mを切ったところで急速に勢いが弱まり、そのまま幽弋のハサンの目の前の地面に下がる。

 

 

「元より聖杯戦争というのは複数が争い合う。ならば、こうして我と汝が争っている間に横やりが入るのも必然だろう」

 

 

油断、と言えばそうだろう。

恐らくはこうなることを読み切っていたか。

嗚呼、まだ自分はハサンとしては未熟な方なのだなと。

 

 

「さらばだ、呪腕の。次の機会があればその時は何を成すのか答えて見せろ」

 

 

そして、影から無数の黒い刃が呪腕のハサンの頭、喉、心臓(霊核)を無情にも貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡って、間桐邸玄関前にて。

 

 

「では、私たちも動きましょうか」

 

「オーケーじゃあ早速‥‥‥」

 

 

俺とメタンヌは間桐邸の入り口前に立っている。

狙うは間桐臓硯の首とおまけで間桐の魔術系の資料諸々。

メタトロン的には間桐臓硯はこの世の人非ざる者という認識らしく「当初の目的に関しては同情の余地あれど、やったことが外道なので裁定を」と裁く気満々だとか。

意外にも積極的に動いてくれるようだったのでこうしてついて来てくれている。

 

 

「門は‥‥‥ご丁寧に鍵かけてるな」

 

 

インターホンでピンポン連打とか言うクソガキムーブで行ってやろうと思った矢先これだ。

インターホンは家の玄関前に備え付けられてるし、当の門はチェーンと鍵が掛けられている。

まぁこんな防犯対策がされていようが‥‥‥

 

 

パシュッ!

 

パシュッ!

 

 

 

「開いた、っと」

 

 

持ってきてよかったサイレンサー付きリボルバー(ナガンピストル)

銃弾ってさ、これぐらいの鉄だったら余裕で壊せるんだよね。

あくまでゲームの知識でしかなかったけど、いざ実践するとガチだったんだなぁと思ってしまう。

 

地面に落とした空薬莢を拾いつつ、こじ開けた門から堂々と侵入する。

やがて玄関先から大体15m前後の位置に着いたあたりから小賢しい蟲の羽音が徐々に大きくなっていった。

ここの蟲は全て使い魔だが、随分と気持ち悪い見た目である。

 

 

「呵呵呵、火薬の匂いがしたと来てみれば八枚舌の使い走りと大天使か」

 

間桐臓硯(マキリ・ゾォルケン)‥‥‥」

 

「その名を聞くのは久方ぶりであるな、確か名前は‥‥‥」

 

「相良豹馬。此度は偽のアサシンと真のライダーのマスターを務めている者です」

 

「相良‥‥‥嗚呼、東京の生贄専門の魔術師じゃったな」

 

 

最も別世界かつ俺の代で生贄を用いることはやめたのだが。

死体なんぞ見続けてたらいつか狂う。

 

 

「今夜は儂に何の用じゃ? 儂のアサシンはそっちのアサシンと戦っているが、マスター同士の魔術勝負か?」

 

「いいえ。俺はあくまで彼女に引っ張られただけですね。用があるのはメタトロンの方です」

 

「ほぅ」

 

 

そしてメタトロンが一歩前に出る。

神々しい姿であるがその圧力に怖気づかないのはさすがというところか。

 

 

間桐臓硯(マキリ・ゾォルケン)よ」

 

「何じゃ、大天使の裁定者よ?」

 

 

一拍置いてメタトロンは間桐臓硯(マキリ・ゾォルケン)に告げた。

 

 

「今ここに有罪判決を、そして裁定を」

 

「ほぅ、一裁定者として儂を葬るというのか。残念なことに今の儂は━━」

 

 

 

 

地獄(ゲヘナ)の炎よ、罪人を包み込め

 

 

まさしく地獄の炎と形容すべき灼熱が臓硯だけを包み込んだ。

しかし、臓硯は余裕の表情を崩さない。

 

 

「嗚呼、せっかくの蟲たちが台無しではないか。しかし、儂はこの程度じゃ‥‥‥」

 

「死なない、だろ?」

 

 

軽くうなずいて見せる臓硯。

そう、所詮こいつは蟲で形成したアバターのようなもの。

本体は別にある。

 

 

(そろそろか‥‥‥)

 

 

 

 

 

「む? どうした桜、勝手に出てきおって‥‥‥成程、催眠の魔術か」

 

「まぁその程度ならバレますよね」

 

 

間桐家の玄関から出てきたのはサクラだ。

しかし、虚ろな目をしていたことと流れていた魔力にやや違和感があったことから臓硯は魔術で催眠されていることに気が付いている。

 

 

「本体の場所は把握してるようじゃが、どうする? 仮にも学び舎の教え子の1人であろう」

 

 

無論こっちの思惑に気が付いたようだ。

最もサクラを心臓にくっついてる臓硯の本体ごと炎で焼くというのもプランにはあるが、それああくまで最終手段。

 

 

「だから、こうする。てことで頼みます、キャスター」

 

「了解よ。痛みは一瞬━━破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)!!」

 

 

グサリ、とサクラの心臓をどこからともなく現れたメディアが刺す。

本来であれば致命傷に近いが、あえてメディアは浅く、心臓にギリギリ届かない距離に刺していた。

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)

ざっくり言えば刺した対象の魔術効果を全て初期化するというもの。

ランクはC~C+とやや低めではあるが刺しさえすればサーヴァントとの契約解除とかもできるので低ランクのクセして普通に強い宝具である。

読者諸君からしたらサクラの体事情はルールブレイカーごときで解決できる程度のものではないと思うだろう。

 

いや、しかしだ。

こならどうだろうか。

 

━━令呪による強化で臓硯の本体に対してほぼ確実に当たるようになっているならば。

 

 

 

「何じゃとッ!?」

 

 

ここで臓硯の表情から余裕の笑みが消えうせた。

驚愕、ではなく困惑に近しかった。

 

それもそのはず。

だって蟲の本体が初期化されて『聖杯の破片』へと戻っているのだから。

 

 

「ダーニックさんから貴方のことは聞いてましたけど、その時と今を比較すると明らかに可笑しかったんですよね」

 

 

ダーニックさんから聞いた話だと第三次聖杯戦争で見たこいつの本体はサクラのような人間の魔術師に寄生させないどころか全てが本体というような感じだったらしい。

しかし、第四次終了後及び第五次のこいつはサクラの心臓に本体を寄生させていた。

延命のために核とする本体を作るのはまだ分かる。

だが、それでなぜサクラに寄生させる必要があるのか分からなかった。

別に寄生させる対象はそれこそ服従させた野良の三流魔術師やそもそも厳重に隠すという手段も取れたはずだ。

 

ここで俺はほとんどあてにならない原作知識を基に仮説を立てた。

サクラが無事にマキリの杯(ヘブンズフィール)になるように促成させるために寄生させたのではないか。

臓硯は第四次で破壊された聖杯の一部をサクラに埋め込んだという原作知識を覚えていた俺はすぐさまこの仮説を立てた。

いくら聖杯の欠片でもそれを小聖杯と同じように動かすなんて余程の幸運が無いと難しい。

ならばサクラに寄生させた本体で脳や体を弄って作動させるように動かすという方法にでてもおかしくないのだが、臓硯にしてはやや説得力がない。

 

例えばサクラが不慮の事故*1で死亡してしまった場合だ。

サクラが死んだとなれば聖杯の欠片を育てる母体がなくなったに等しく、いくら死体を操れる能力を持っていようと聖杯の欠片の摘出に時間がかかる上、運が悪ければ消滅や破壊する可能性だってある。

臓硯ならサクラが死亡してもいいように代替案は立てているだろう。

それは聖杯の破片を確実に回収するのもだ。

 

となればだ、こういう可能性が浮上する。

聖杯の欠片も元をたどれば金属、高温で熱せば液体となる。

マキリの魔術属性は水で使い魔の使役と水または液体全般を操作できるという感じだったはずだ。

なら、聖杯の欠片を溶かした液体を操作して無理やり蟲本体に変えた上でそれをサクラに寄生させている。

これなら臓硯は蟲本体が聖杯の欠片なのでサクラが死んでもすぐに回収できるし、やや強度を得ている蟲だから本体として設定していてもおかしくはない。

 

つまりだ効くのだ。

ルールブレイカーが。

液体操作と改造使い魔使役という魔術の応用されまくった本体及び聖杯の欠片に。

 

 

「おのれェ‥‥‥!」

 

 

長ったらしい説明をした傍で臓硯は怨嗟の声を上げながら燃える。

本体が存在しなくなることでやがて分身体とも言える使い魔は司令塔が消えて混乱している。

そのせいなのか臓硯の姿も朧気になり始めつつあった。

 

残念だったな臓硯。

お前はここで退場だ。

 

 

「せめて生前の走馬灯の一つか二つ見せましょうか」

 

「阿‥‥‥ァ‥‥‥ユス、ティーツァ‥‥儂は‥‥‥」

 

 

メタトロンが何か言った気がするが俺は分からない。

燃える事約1時間。

間桐臓硯というなの外道は地獄の炎に焼かれて、怪物と成り果てた生涯に幕を閉じた。

やがて炎が消えると、そこには焼け焦げた匂いが充満するばかりであった。

 

 

「終わりました」

 

「‥‥‥あ、ああ。それじゃあ次は俺の番か」

 

 

思わずボーっとしちゃってた。

俺は催眠の魔術がかけられているサクラに近づく。

ちなみにこれは俺の魔術ではなくメディアの(神代のそこそこキツイ)魔術だ。

 

 

「さて、聞こえてないと思うが"間桐桜"よ」

 

「‥‥‥。」

 

「俺はお前を救済しよう。しかし、すまないがその恋心はこの世界では実らない(士剣カップリングが見たいから諦めてくれ)

 

 

聖杯戦争とか魔術とか関わらなければ正当にこいつとあいいつがくっ付くんだろうが、ごめんな。

士郎君が複数の女性と付き合うってのもそれはそれで見てみたいが、社会的に考えて、ねぇ?

 

 

「魔術刻印ヨシ! 心臓にある聖杯の欠片は大体この辺でと‥‥‥」

 

 

俺の得意魔術が防御魔術だと最初言ってたよな?

 

━━ありゃ嘘だ。

 

だって、俺が防御魔術を使ってる所、魅了のレジストの一回ぐらいしか見たことないでしょ?

あくまで通常の魔術(・・・・・)であればその中で得意なだけであってそこまで特出した防御もできない。

暗示も潜伏の魔術礼装もそうだが、俺がやってるのはほとんどその魔術を使いやすくした簡素な応用型の魔術だ。

なら本当の得意な魔術は何か。

 

なら逆に聞こう。

なぜ、俺は桜の師匠となった?

なぜ、時臣は俺に桜の教育を任せた?

 

そう、俺の得意魔術、それは━━

 

 

置換・転送(チェンジ・フラッシュ)

 

 

二節の魔術を唱える。

するとあら不思議、手に持っていた魔術刻印が何か禍々しい金属片に変貌したではありませんか。

 

というように名前から察するように置換魔術だ。

ただし、俺の置換魔術は普通の置換魔術と違って虚数属性を持った『なんちゃって置換魔術』である。

本来置換魔術というのは錬金術の派生形として劣化型の等価交換という使い手が極端に少ない魔術だが、俺には突然変異した魔術刻印から発現した『転移(または転送)』と虚数属性の組み合わせで化けた。

効果は省略して言うと魔力を帯びたモノ同士を入れ替えるというもの。*2

 

まぁサーヴァントの複数運用するパターンだと強いけど、入れ替えできるのは自分から半径15m以内のモノのみで、一度に複数入れ替えるなんてこともできない。

本職のエインズワースのバケモノ置換魔術には及ばないし、あくまで俺の虚数は転移の際に一時的にモノを虚数軸に持って行くという性質であるためhfのサクラのような虚数魔術には到達してない。

 

これを見ていたメディア曰く「マジシャンがよっぽど向いてる」だとか。

実際、コップに入れた物体を入れ替えるマジックを披露できるけど、大衆の前でやったら一発で代行者がやって来るからやれない。

 

とりあえず、サクラはベッドに戻して書置きを残しておいたのでいざ帰るとしよう。

 

 

「あーメタンヌ、ちょっと頼みたいんだけどさ」

 

「はい?」

 

「ま、魔力プリーズ‥‥‥」

 

 

セイバーとアサシンを同時運用して尚且つ魔術を行使したせいで魔力が限界来てる。

なお、この後メタンヌに固形型の魔力物質を貰った。

 

‥‥‥死にかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ここでは交通事故や事件性のある要因

*2
つまりやろうと思えばサーヴァントの位置を入れ替えることも可能




今回のまとめ:

ゾウケン:裁定者に勝てると思ってた虫。しかし、相手がちゃんと作戦を立ててた大天使だったばっかりに瞬殺される。ちなみに、聖女や天草などのルーラーなら勝てる見込みはあったりする。尺の都合上、本気でバトる展開になると話数が滅茶伸びるので瞬殺にした。

相良君:実は虚数属性。そもそもなぜサクラを内弟子にできたかのかというのと本編と番外編含めて一切防御魔術を使ってない(迷宮探索のあれは自己強化系の応用)時点で本来の得意な魔術が防御じゃない伏線は分かりづらいけど張ってたりする。

呪腕さん:ほぼ上司みたいなやつと戦う羽目になった不憫な人。最後に宝具を発動しようとしていたが、幽弋さんは影なので霊核があっても心臓はないのでどのみち通用しなかった。
そして、心臓を貫かれた‥‥‥


ルールブレイカーの能力的にサクラの体内にある魔術の応用で作った蟲って初期化して聖杯の欠片に恐らく戻せるだろうと思います。ただしサクラの体力を考慮しないものとする。
そして、ここで相良君の得意魔術と能力が虚数の置換魔術ということが判明しましたが、そもそもサクラを内弟子にした時点で相良君を虚数属性にするのは転生者特典関係無しに決まってました。
そして、置換魔術についてですが、これはエインズワースのバケモノ置換魔術とは別方向でゲテモノになってます。結構使える能力ですが、実際はそこそこ魔力を喰うし、発動条件が厳しく、あくまで補助的な魔術ですので戦いの決定打となる感じではないです。

相良君の置換魔術:

・二つの魔力を持つ物体を虚数空間に持ってから虚数軸のズレを利用して入れ替える
・周囲半径15m以内の物体しか入れ替え不可
・3つ以上の物体の入れ替えは不可
・物体が動いている場合は入れ替え不可
・物体の質量、密度、面積が大きいと入れ替えに消費する魔力が増える
・大きすぎる物体(巨大なサーヴァント含む)と人(魔術師、自分)は入れ替え不可
・サーヴァントはサーヴァント同士かつ両方とも動いていない時しか入れ替えれない



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