パーフェクトゲームを目指すには!   作:メタ(ル)

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タイトルで多分察すると思います。

感想を頂けたら幸いです。
励みになります。


XXⅢ 忌愛乙女/How to seize fate

同時刻。

石段の方から聞こえた、あまりにも締まらない悲鳴。

それを目にしたセイバーとアーチャーは、ほんの一瞬だけ戦場であることを忘れた。

 

 

「‥‥‥」

 

「‥‥‥」

 

 

思わず、ぽかん、と。

無理もない。

つい先ほどまで真剣な面持ちで山門を駆け上っていた士郎たちが、次の瞬間にはまるで喜劇の一幕のように足を滑らせ、仲良く坂を転げ落ちていったのだから。

戦場とは到底思えない光景だった。

 

 

「シロウ!?」

 

 

反射的に振り返ったセイバーが叫ぶ。

 

 

「大丈夫、だ‥‥‥! ちょっと滑っただけだ! そこまで急斜面じゃないから登れる! セイバーたちは戦いに集中してくれ!」

 

 

坂の途中から士郎の声が返る。

転げ落ちこそしたものの、幸い致命的な怪我は負っていないようだ。

 

 

「‥‥‥はい!」

 

 

助けに向かおうとした足を止め、セイバーは再び眼前の敵へと意識を切り替えた。

戦場では一瞬の油断が命取りになる。

 

目の前に立つのは、灰衣をまとい無数の蛇を従えるアサシン。

槍とも剣ともつかない奇妙な武器を自在に操る、セイバーの側面を持つランサー。

そして後方からグレムリンを使役し、魔術による援護を絶え間なく送り続けるキャスターの側面を持つライダー。

三者三様。

それぞれが役割を完全に理解し、淀みなく連携していた。

ここまで打ち合うこと、既に三度目。

蛇を操るアサシンは、本来なら毒殺や暗殺を本懐とするクラスであるにもかかわらず、真正面からの剣戟でセイバーを押し返していた。

その太刀筋は重く、鋭く、それでいて隙がない。

一撃一撃に毒を宿しながらも、純粋な武芸だけで押し込んでくる。

暗殺者とは到底思えない技量だった。

加えてランサー。

飄々とした態度を崩さず、まるで遊んでいるような表情を浮かべながらも、その防御は鉄壁。

セイバーの斬撃も、アーチャーの射撃も、槍術と剣術を融合させた独特の武技によってことごとく受け流されている。

未だ一度として、その構えを崩せていない。

 

 

(‥‥‥強い)

 

 

セイバーは静かに息を吐く。

どちらも間違いなく一流。

特にランサーは、先ほど戦った木曽義仲と同じ類の武人だ。

名を歴史に刻んだ武術家。

そうでなければ、この完成された武芸は説明がつかない。

 

 

「時にアサシンの旦那よ。宝具の方は何分持つ?」

 

「呪が体に行き届いているのであれば一時間だ」

 

「それなら宝具を使ってくれるか。ちょっとばかし策を思いついてね。といっても策程度のものじゃないがな」

 

「承知した」

 

 

短く、それでいて互いを深く理解している者同士だからこそ成立する最低限のやり取りだった。

それだけで十分だった。

真のアサシンと名乗った男は、静かに一歩前へと歩み出る。

その一歩だけで、場の空気が変わる。

セイバーとアーチャーは反射的に剣を構え直した。

目の前に立つ男から漂う気配が、それまでとはまるで別物へと変貌していく。

 

 

「神なる力よ、目覚めよ━━化身・伊吹大明神縁起(けしん・いぶきだいみょうじんえんぎ)

 

 

真名が紡がれた瞬間、眩い神光が男を包み込んだ。

その輝きは単なる魔力光ではない。

神霊を降ろす儀式にも似た、畏怖そのものを具現化したような神威だった。

大気が震え、地面が軋む。

吹き荒れる霊圧に、木々の葉が一斉に揺れ動き、境内を覆う空気そのものが重く沈み込んでいく。

 

やがて光がゆっくりと晴れる。

その中心に立っていたのは、もはや人間ではなかった。

全長十メートルにも迫る巨大な肉体。

隆起した筋肉はまるで山肌のように盛り上がり、全身を覆う呪紋が生き物のように蠢いている。

肩から腕へ、胴から脚へ。

数え切れない蛇が肉体と一体化するように巻き付き、黄金の瞳を爛々と輝かせていた。

 

蛇神。

まさしくその一言に尽きる異形だった。

 

 

「伊吹の忍‥‥‥甲賀流忍術の開祖、甲賀三郎か」

 

 

静かに呟いたのはアーチャーだった。

 

 

「左様。我が真名を甲賀三郎」

 

 

低く響くその声は、人の喉から発せられたとは思えぬほど重々しく、大地を震わせる。

宝具名だけで真名へ辿り着いたアーチャーに、甲賀三郎は僅かに目を細めた。

 

甲賀三郎。

諏訪地方に伝わる『諏訪縁起事』、『大岡寺観音堂縁起』などに語られる伝説の主人公。

死してなお蛇神となり、伊吹大明神として信仰された異形の英雄。

 

なるほど、とアーチャーは胸中で納得する。

三騎士相手に真正面から渡り合う圧倒的な武技。

暗殺者でありながら剣士や弓兵を相手取ってなお一歩も引かない胆力。

その全ては伝説の主人公だからこそ成立する。

日本という土地で召喚された今、その知名度補正も決して小さくはないと考えられる。

 

 

「成程、ではアサシン様。私の宝具をお使いください」

 

 

その場で最初に動いたのは、後方の安全圏から絶えず魔術支援を続けていた、キャスターの霊基を持つライダーだった。

静かに一歩前へ出ると、彼女は祈るように両手を重ねる。

その瞳には一切の迷いがない。

 

 

我が愛しき君の儚き槍(グラデーション・ロンギヌス)

 

 

真名が紡がれた、その瞬間。

膨大な魔力が白銀の粒子となって空間へ広がり、光の奔流が彼女の両手へ収束していく。

やがてそこに現れたのは一本の槍。

白銀に輝く馬上槍を思わせる長槍であり、その穂先から柄に至るまで、一切の曇りなく神秘を宿している。

まるで長き時を経てなお神代の権威を失わぬ聖遺物そのもの。

ただ存在するだけで空気が張り詰め、周囲へ神聖さと畏怖を同時に放っていた。

 

その姿を見た瞬間、誰よりも強く息を呑んだのはセイバーだった。

 

 

「パーシヴァルの持つロンギヌス‥‥‥」

 

 

思わず零れたその呟きには、驚愕と確信が入り混じっている。

 

 

「ええ、そうですよ。と言っても、所詮は投影したコピーにすぎませんが」

 

 

ライダーは穏やかに微笑みながら槍を掲げる。

しかし、その言葉ほど軽い代物ではないことを、セイバーには理解できていた。

生前、自らの臣下であった円卓の騎士パーシヴァルが携えていたと伝わる聖槍ロンギヌス。

眼前にある槍は、その形状、質感、放つ神秘に至るまで寸分違わぬ完成度だった。

 

投影した、と彼女は言った。

つまりこれは投影魔術を極限まで昇華させた宝具によって再現された存在なのだろう。

 

だが、たとえ宝具による投影であったとしても、実物を知らぬ者がここまで完全に再現することなど不可能に等しい。

神秘とは形だけではなく積み重ねられた歴史、信仰、伝承、その全てを理解して初めて模倣が成立する。

それほどまでに聖槍ロンギヌスという存在は特別なのだ。

 

となれば彼女はロンギヌスそのものに深く関わった者かその持ち主に極めて近しい存在なのだろう。

アルトリアはとりあえず自分の知っている範囲でロンギヌスやそれに関連する出来事を思い返してみる。

ふと、脳裏に一人の人物が浮かび上がる。

 

聖杯探索の時代。

パーシヴァルによって討たれた魔槍ロンギヌスを投影した投影魔術の使い手━━魔術師クリングゾール。

しかし彼は男性であるため違うだろう。

目の前のサーヴァントは女性である。

 

ならば、と記憶を辿る。

クリングゾールの傍らには、一人の魔女がいたはずだ。

北欧神話の戦乙女ではないかと語られた存在。

その名は確か━━

 

 

「クンドリー、ですね」

 

「ええ、正解です。さすがは彼が従っていた王なだけありますね」

 

「パーシヴァルを魅了したと言われる魔女か」

 

「改めまして。私はワルキューレ━━個体名をクンドリー。もっとも、世間では魔女としての私の方が有名でしょうけど」

 

 

そう言って彼女は、どこか自嘲気味に肩を竦めた。

 

クンドリー

 

アーサー王物語の一つ、舞台神聖祝典劇『パルジファル』に登場する女性である。

磔刑に処された某救世主のセイヴァーを嘲笑した結果、不死の呪いを受け、悠久の歳月を彷徨った末、人々から魔女と恐れられるようになった存在。

後に魔術師クリングゾールに良いように利用され、円卓の騎士パーシヴァルを誘惑して口づけを交わしたと伝えられる。

しかし彼は誘惑を退け、聖杯と聖槍を携えて彼女の呪われた運命を終わらせた。

彼女の正体は北欧の戦乙女、ワルキューレの1人だったという説があったがそれは今、本人の口から事実として証明された。

 

なお余談ではあるが、英霊クンドリーは逸話の影響なのか、通常召喚された場合は精神汚染(B)を必ず保有している。

その効果によってある特定の人物*1を「愛する者」と認定してキャスターのジルのように狂気じみた執着を見せるのだが、今回は事情が異なる。

メタトロンによる特殊召喚という例外的な現象によって、(本来召喚不可能な)北欧のワルキューレ・クンドリーと(召喚可能な全盛期の)『パルジファル』における魔女クンドリーという二つの側面が融合した結果なのか、本来備わる精神汚染ではなく、代わりに狂化(E)*2が付与されていた。

 

 

「やはり━━こっちの方が合うね、うん。あんな古臭い修道服よりだいぶ動きやすいや」

 

 

瞬間的に衣服が変わると同時に、最初の方で見せていた狂気的な何かが消えうせる。

俗に言う、霊基再臨だ。

先ほどまでスカラプリオという衣装だったが、今はその場にいたワルキューレと同じ白を基調とする衣装へと変貌している。

ワルキューレに見られる頭に生えた羽のようなものや背後にある光の翼のようなものも露出する。

恐らくはワルキューレとしての全盛期だろう。

 

クンドリーから投影された聖槍を受け取った真のアサシンこと甲賀三郎は、一切の躊躇なく地面を蹴る。

爆発的な瞬発力。

その姿は視界から消えたと思った瞬間には、既にセイバーとアーチャーの目前まで肉薄していた。

 

 

「散れ」

 

 

振るわれる聖槍。

その一閃は風圧だけで地面を抉り、周囲へ衝撃波を撒き散らす。

セイバーは咄嗟に聖剣で迎え撃ち、辛うじて受け止める。

アーチャーも紙一重で身を捻り、その軌道から逃れることに成功した。

だが━━

 

 

「貴様の力では我が肉体に敵わない」

 

「ぐぅ‥‥‥!」

 

 

重い。

想像を遥かに超えた質量が、剣越しに両腕へとのしかかる。

押し返そうにも、全身へ巨大な岩盤でも乗せられたかのような圧力が容赦なく襲いかかってきた。

伝わってくる膂力は異常そのもの。

ただ筋力が高いという話ではない。

人ならざる怪物が純粋な暴力だけで押し潰そうとしているかのような、圧倒的な怪力だった。

 

セイバーは歯を食いしばり、踏み締めた足へさらに力を込める。

石畳が軋み、靴底がわずかに地面へ沈む。

受け流そうにも槍という武器の間合いがそれを許さない。

一歩退けば穂先が届く。

踏み込めば長柄を活かした次撃が待っている。

剣士にとって最悪と言える間合い。

 

技量で覆せる領域を超え、純粋な力と力が激突する押し合いとなったその瞬間、均衡は崩れた。

甲賀三郎がさらに一歩踏み込み、その怪力だけで聖剣ごと押し切る。

 

 

「っ━━!」

 

 

アルトリアの身体が勢いよく吹き飛ばされた。

もっとも、彼女は吹き飛ばされる勢いへ自ら合わせて後方へ跳ぶことで衝撃を逃がしており、致命傷には至らない。

しかし、それでも体勢は大きく崩された。

その僅かな隙こそ、敵が最初から狙っていた好機だった。

その瞬間だけを待ち構えていたランサーが、一切の躊躇なく動き出す。

 

 

「標的確認、方位角固定━━」

 

 

右手へ握られる一本の槍。

その構えは投擲。

世界を穿つためだけに磨き上げられた、必殺の構えだった。

 

同時に右腕を覆う籠手から轟音が響き渡る。

膨大な魔力が圧縮され、一気に噴き出した。

蒼白い炎はまるでジェットエンジンの噴射そのもの。

凄まじい推進力が腕全体を包み込み、投げ放たれる槍へ尋常ではない初速を与えていく。

 

さらに左手をL字に構え、着弾地点を割り出す。

まるで狙撃手が照準を合わせるような仕草。

三平方の定理を応用した彼独自の照準術は、幾多の戦場を潜り抜けてきた経験と計算によって導き出される必中の技法だった。

 

 

 

 

 

不毀の極槍(ドゥリンダナ)!!━━吹き飛びなァ!!」

 

 

 

 

 

放たれた瞬間、大気が弾け飛ぶ。

槍はもはや投擲と呼べる速度ではなかった。

空間そのものを裂きながら一直線に飛翔する絶対必中の神槍。

かつて世界のあらゆる存在を貫くとまで謳われた最強の投槍が、轟音を伴ってセイバーことアルトリアへ襲い掛かる。

完全に照準を合わせ切った一撃。

回避は不可能。

 

 

 

 

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!

 

 

 

 

その刹那。

アルトリアの前へ躍り出たのはアーチャーだった。

一切の迷いなく魔力を解放し、宝具を投影する。

現れたのは七枚の花弁が幾重にも重なる幻想の盾。

かつてランサー自身が放った必殺の投槍を唯一防ぎ切ったと伝えられる、伝説の守護宝具。

ロー・アイアス。

神槍と神盾が真正面から激突した。

 

 

轟ッ!!

 

 

爆音と共に衝撃波が周囲へ吹き荒れ、大地が大きく抉れる。

第一の花弁が砕け散る。

続いて第二、第三、第四と一枚、また一枚と花弁が悲鳴を上げるように砕け、魔力の破片が暴風となって周囲へ吹き荒れた。

それでもなおドゥリンダナは止まらない。

神槍は残る花弁を貫かんと突き進む。

しかし最後の、七枚目の花弁が消滅する、その寸前。

ついに神槍も勢いを失い、ロー・アイアスと相打つ形でその威力を失った。

 

 

「事前に聞いてたとはいえ、マジでアイアス(それ)のコピーを持ってやがったか‥‥‥」

 

 

ランサーが感心したように肩を竦める。

もっとも、彼にとってこれは決して想定外ではなかった。

事前にマスターやルーラーから、目の前のアーチャーがロー・アイアスを投影できることは聞かされていた。

だからこそ、あえて(・・・)防がれることを承知でドゥリンダナを放ったのである。

ランサーが片手を軽く掲げる。

すると相殺によって宙高く弾かれていたドゥリンダナが意思を持つかのように飛来し、その手へ静かに収まった。

 

 

「助かりました、アーチャー。怪我の方は‥‥‥」

 

「片腕を負傷したが、戦闘に支障はない」

 

 

短く答えるアーチャー。

だが、その右腕からは鮮血が絶え間なく滴り落ちていた。

完全に防ぎ切れたわけではない。

投影されたロー・アイアスは、あくまで本物を再現した模造品。

本物のドゥリンダナが宿す破壊力を完全には受け止め切れず、その余波だけで片腕を深く損傷していた。

それでもなお表情一つ変えず戦線へ立ち続ける姿からは、彼の卓越した技量と揺るがぬ精神力が窺えた。

 

 

「兜輝くヘクトール‥‥‥」

 

 

セイバーが静かにその名を口にする。

ドゥリンダナあるいはデュランダル。

その名を冠する武器を扱った英雄は歴史上複数存在する。

しかし、槍としてのドゥリンダナを振るう英霊は一人しかいない。

 

 

「そうだ。といっても、お前さんらにとっちゃ古人でしかないだろうがな」

 

「ご謙遜を。貴殿のような騎士道精神の体現者と相対できることは、私にとって誇りでしかありません」

 

「そりゃどうも」

 

 

ヘクトール

 

ギリシャ神話におけるトロイア第一王子にして、トロイア軍最高の将軍。

『兜輝くヘクトール』の異名を持ち、トロイア戦争では幾多の英雄と死闘を繰り広げた、トロイア側最高峰の英傑である。

その高潔な人格と責任感、そして騎士道にも通じる生き様は後世まで語り継がれ、アーサー王やシャルルマーニュ、イスカンダルらと並ぶ九偉人の一人として称えられるほどの名声を得た。

 

アルトリアもまた、その武勇と騎士道精神を伝承によって知っている。

だからこそ、こうして敵として剣を交えている今でさえ、胸の奥には僅かな高揚が宿っていた。

 

 

「かかってきな嬢ちゃん、いや騎士王って言った方が良いか? 死ぬほど得意な防衛戦(耐久戦)で相手してやらぁ!」

 

「望むところだ、ヘクトール!」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「相良‥‥‥」

 

「やぁ、衛宮君たち」

 

 

柳洞寺の本殿前で俺はこいつらと対峙することになった。

いや、普通に凄いなこいつら。

あの石段にホームセンターで買ったフローリングに使われる潤滑剤を塗装した上に脅かし要素で花火を仕掛けたり、大けがを負わない程度のブービートラップを仕掛けてたんだが、突破してくるか。

まぁ問題はないけど。

どのみち下手にサーヴァントとの戦いに割って入って命を晒しちゃってくれると色々面倒だったから降りて応戦する予定だったし。

 

ちなむと、山門前で戦ってるサーヴァントの奴らがやけに勘が鋭いのは監視カメラと急ごしらえで作った使い魔の映像を葛木さんや慎二君と見ながら指示を的確に出してたからだね。

いやぁ、やっぱり司令塔がいるだけで戦場の安定感は段違いだ。

と言っても作戦自体はサーヴァントが即興で組み立ててるけど。

 

さて、俺が士郎君たちと対峙したのには先に述べた理由の他にもある。

例えばイリヤの状態の確認。

小聖杯である彼女はサーヴァントの器になっていてサーヴァントの魂を取り込むごとに死へのリミットが迫って来るのだが、見た感じだと問題ないようだ。

恐らくメデューサと呪腕のハサンの魂は上手いこと分散していたか。

サクラの様子も同じく問題ないように見えるのでメデューサとの約束は守られている。

 

 

「相良、あんたは聖杯戦争にルールを破ってまで勝つ気なんだな?」

 

「そうだね」

 

「そこまでそのダーニック、とか言う人に恩があるのか?」

 

「‥‥‥へ?」

 

 

変な声が出たと思う。

え、何でそこでダーニックさんの名前が出てくるんだ?

いやまぁダーニックさんにはそりゃ恩があるけど、それはあくまで俺の世界での事情‥‥‥あーいや、この世界でも一応恩あるのか。

となれば、こいつらは俺の目的を「ダーニックさんから依頼を受け、彼が手に入れられなかった聖杯を代わりに獲得して渡すことで恩を返そうとしている」と推測している感じか。

 

 

「あー‥‥‥あのな、確かにダーニックさんから聖杯戦争について色々教わったけど、別にダーニックさんから依頼された感じでもないし、恩を返す目的でもないぞ」

 

「じゃあ一体‥‥‥」

 

「語っても良いんだが‥‥‥うん、やっぱこっちの方が良いか」

 

 

そう言いながら、腰のナイフと拳銃を静かに抜く。

とりあえず、目的の一つを果たすとするか。

 

 

「あれだ、俗に言う「聞きたければ俺に勝て」的なやつだ」

 

 

何かシャキッとしない。

やっぱり悪役っぽい台詞って難しいな。

こういう芝居を自然にこなせる奴って、案外才能が要るんじゃないだろうか。

少なくとも俺には向いていないらしい。

 

 

「ただし、戦うのは衛宮と遠坂の二人にしてくれ」

 

「何でさ?」

 

「さすがに四人がかりってのはきついし、サクラちゃんと戦うことがメデューサとの約束を破ることになるし、イリヤちゃんは戦われると色々困るから」

 

「ライダーが‥‥‥」

 

「そう。第三次の参加者から話を聞いてたようだけれど、知ってるのね」

 

 

別にやろうと思えば4対1できるよ。

でもね、勝てるかどうかガチで怪しくなるし、小聖杯が破損しちゃった元も子もないし。

 

 

「ルールは使えるモノは何でもあり(・・・・・)で勝ち負けはどちらかが降参するまで」

 

 

殺すつもりはないが手加減は‥‥‥できるかなぁ‥‥‥。

アベレージ・ワンと固有結界に近しい魔術師または魔術使いを相手取るのは厳しいねぇ。

アベレージ・ワンって普通にチートだからね。

やろうと思えば属性を切り替えるトリッキーな戦術が取れるわけだし。

 

 

「戦う前に一つ衛宮君に教示しておこう」

 

「?」

 

「君の魔術の本領は強化や投影ではないな。そしてあくまでこれは俺の勝手な独り言(・・・・・・・・)だが、恐らく君の魔術は武器を造り出すことに一点特化したものだろう」

 

 

ここまで言えば分かるだろう。

万が一の時のためにも、こいつには固有結界発動の一歩手前までは辿り着いてもらわないと困る。

そこら辺から拾ってきた木刀を強化して振り回す程度じゃ意味がない。

必要なのは、自分自身の魔術の本質へ辿り着くことだ。

 

やがて士郎君は静かに集中し始める。

どうやら上手く誘導できたらしい。

体内の魔力を一ヶ所へ収束させ、その先で創り上げたのは黒白一対の双剣だった。

 

 

「及第点かな」

 

 

俺はそう呟くと同時に地面を蹴る。

戦闘開始。

最初の一合は、俺が持つ元・切り裂きジャックの改造ナイフで真正面から砕く。

しかし士郎君もすぐさま双剣を投影。

二合、三合と火花を散らしながら必死についてくる。

さすが主人公。

いきなりここまで粘るとは思わなかった。

メディアから術式で肉体を強化してもらってるとはいえ油断できない。

 

だけど、その無理は長く続かない。

四合目にしてとうとう限界が来たのだろう。

士郎君は膝を突いた。

そりゃそうだ。

いきなり魔術回路をそこまで酷使すれば身体が悲鳴を上げる。

何事にも慣れってものがある。

 

 

「士郎!?」

 

 

おっと間髪入れずに凜の嬢ちゃんが飛び込んできた。

さっきまでは戦闘速度について来られず割って入れなかったが、このタイミングなら十分間に合う。

宝石魔術ってのは上澄みの奴なら防御魔術すら上回って来るから防ぎようがないんだが━━

 

 

置換・交替(コンバート・フラッシュ)

 

 

カキン! と乾いた音と共に宝石が弾かれる。

俺の置換魔術は、近くに魔力を持った存在さえいれば、高速で移動していない限り発動できる。

木々の陰へ潜伏していた幽弋さんがタイミングを合わせて実体化した、その瞬間を狙って俺と入れ替えた。

もちろん幽弋さんも最初から戦闘準備は済ませてある。

影で作り出した分厚い剣*3を振るい、飛来した宝石を見事にパリィしてみせた。

 

 

「ッ、アサシン!」

 

「言っとくが俺は「互いにサーヴァントを使うな」とは一言も言ってないぞ」

 

 

さぁ気が付け。

俺がわざわざこんな決闘をした目的を。

わざとサーヴァントを出した理由を。

そして、その決闘の唯一の抜け穴を。

 

令呪を使って自分のサーヴァントをテレポートさせるのも手だがそうなると下で戦ってる構図が崩れて一時的に不利な状況を作ってしまうので得策とは言えない。

正直言ってこれは賭けだ。

しかし、運命は必ず味方をしてくれるだろう。

 

さぁ運命を掴んで見せろ━━間桐(サクラ)

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

ずっと私は不幸だった。

間桐の養子となった、あの日から。

毎日のように続く訓練。

訓練なんて綺麗な言葉では済まされない。

あれは拷問だった。

蟲に身体を蝕まれ、痛みに耐え、命を削られ、それでも生き延びることだけを強いられる日々。

逃げ場なんてなかった。

泣いても意味はなく、助けを求めても誰も来ない。

そうして何年も過ごしているうちに、私は少しずつ壊れていった。

悲しい、苦しい、嬉しい、楽しい。そんな感情すら、どこか遠くへ置き忘れてしまったような気がします。

心が少しずつ擦り減って、空っぽになっていく。

それが当たり前になっていた。

 

聖杯戦争でサーヴァント━━ライダーを召喚した時もそうです。

私は最初から戦う気なんてなかった。

聖杯戦争なんて、人が人を殺し合うだけの儀式。

そんなものへ自分から参加したいなんて思えなかった。

だからマスターとしての権限を義兄さんへ譲り、私は降りるつもりでした。

しかし、運命は時に無情。

 

好意を寄せていた先輩も最近仲が回復しつつある姉さんもその戦いに身を投じた。

やがて、お爺様は聖杯の予備システムを利用してアサシンを召喚し、それから数日後。

ライダーは敗北した。

 

相手は、生前からの因縁を持つ宿敵。

激闘の末、最後の最後で力尽きたらしい。

あくまで伝え聞いただけだから、詳しいことまでは分からない。

それでも、ライダーが消えたという事実だけは変わらなかった。

一時的にマスターとなっていた義兄さんも、これで終わりだと思っていた。

 

けれど違った。

今度は真の聖杯戦争。

そこで義兄さんは、セイバーとバーサーカーという二騎ものサーヴァントを従えていた。

昔から劣等感ばかり抱いていた義兄さんが。

誰よりもサーヴァントへ執着していた義兄さんが。

本当に二騎の英霊を従えて戦っていた。

その話を聞いた時。

ほんの少しだけ。

羨ましいと思ってしまった。

そんな自分が嫌だった。

そして、また閉ざされた世界へ戻るのだと思っていた矢先だった。

 

自分の体内にあった異物とお爺様が諸共消え失せました。

唐突、でしたね。

私を鎖で縛り続けていた存在が、何の前触れもなく消えるなんて。

そんな奇跡が起きるなんて思ってもみなかった。

 

それから私は、先輩たちへ全てを打ち明けた。

隠していたことも。

間桐で過ごした日々も。

全部。

 

そして今。

私は戦場の外で、その戦いを見守ることしかできない。

変われたと思っていた。

もう昔の私じゃないと。

少しは前へ進めたと。

そう思っていた。

 

だけど違った。

肝心な時になると何もできない。

ただ誰かに守られ、誰かの背中を見つめることしかできない。

そんな昔と何も変わらない私が、そこにはいた。

 

 

「痛‥‥‥」

 

 

その時だった。

右手へ鋭い痛みが走る。

焼けるような熱。

懐かしくて、思い出したくもない痛み。

 

 

「急に何が━━ッ」

 

 

思わず右手を見る。

そして、私は言葉を失った。

右手には消滅したはずの令呪が宿っていた。

どうして?と思ってしまう。

しかし、それよりもある言葉が脳裏をよぎりました。

 

「互いにサーヴァントを使うなとは一言も言っていない」

相良さんが口にした、あの一言。

この言葉はすなわちサーヴァントを使ってもいいということでしょう。

しかし、今ここで先輩や姉さん、イリヤさんが自身のサーヴァントを呼び出してしまうと下での戦況が相手側に偏って負ける可能性が高くなります。

誰が動いても、向こうの戦力が不足してしまう。

 

でも、一人だけ、誰にも影響を与えず、この場を変えられる人間がいる。

 

 

「‥‥‥私しかいない」

 

 

自然と声が漏れた。

怖い、失敗するかもしれない。

また誰かへ迷惑を掛けるかもしれない。

そんな不安は、いくらでもある。

だけど、気付いてしまった以上、もう立ち止まることはできない。

 

これはきっと問かけなのだろう。

だったら応えたい。

誰かに守られるだけじゃない。

誰かに導かれるだけでもない。

今度こそ、自分の意思で前へ進みたい。

だから私は、この運命を掴んでみせる━━!

 

 

素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ

 

「‥‥‥桜?」

 

 

知ってましたか姉さん?

私こう見えても物覚えがいい方で、姉さんが教えてくれた大師のこと、ちゃんと覚えているんですよ。

 

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する

 

 

足元には、アサシンかキャスターが召喚に使っていた魔法陣。

幸運にも、それは機能を失っておらず、ずっと放置されていた。

震える手で魔力を流し込む。

失敗は許されない。

成功する保証なんてどこにもない。

それでも、やるしかない。

 

 

告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

 

アサシンは姉さんとの戦闘で手一杯。

相良さんも、ただこちらを見ているだけ。

止めようとはしない。

‥‥‥ううん。きっと、最初から止めるつもりなんてなかった。

 

 

誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

 

 

 

━━汝は二つの側面を持ち合わせる者。我はその二つの側面を手繰る者

 

 

これしかない。

ルーラーが使っていた二重召喚(ダブルサモン)

今、この状況を覆せる可能性があるのは、この術式だけ。

私は最後の一節を叫ぶ。

 

 

汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ━━!

 

 

世界が震えた。

魔法陣から眩い光が溢れ出し、膨大な魔力が渦を巻く。

手応えはあった。

成功した。

間違いなく、この召喚は成功している。

 

そして光が収まる。

 

 

サーヴァント・ライダー。再びこの呼び声にセイバーの側面を持ってきました━━サクラ

 

 

姿を現したのは、アイマスクを着けた神々しい戦女神。

黒い短剣にライオットシールドにも似た盾。

以前とは異なる装い。

けれど、その気配だけは決して見間違えない。

 

 

「ライダー‥‥‥!」

 

「ええ、先日ぶりです、サクラ」

 

 

その声を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなった。

帰ってきてくれた。

もう二度と会えないと思っていた、サーヴァントが。

 

 

「でも‥‥‥セイバーの適性なんて‥‥‥」

 

「ありませんよ。ですが今回は、非常に不本意ではありますが、大嫌いな女神(アテナ)の神格を取り込んだ影響で、セイバーとしての側面も持ち込めました」

 

 

思わず漏れた疑問へ、ライダーは小さく肩を竦める。

言い終えると同時に、ライダーは迷うことなく地面を蹴った。

その視線の先にいるのは、姉さんと激しく剣を交えているアサシン。

黒き戦女神は一直線に駆け抜け、新たな戦局を切り開くため、その刃を振るう。

 

 

 

 

 

 

 

*1
召喚者、マスター、一部の異性の同陣営のサーヴァントなど

*2
一応狂化の恩恵がギリ受けれるか受けれないか程度

*3
さすがに普段使ってる短剣じゃ受け切れない




サーヴァントマテリアルが更新されます(11時頃)。

ここで最後の枠であるメデューサ(剣)が登場!
見た目は今は第二再臨となってます。

そして、ランサーがヘクおじで、違法召喚組のライダーがお察しの方も居たと思いますが、クンドリーでした!
‥‥‥誰?、と思う方が多いかもしれませんので補足を。

クンドリー
fate/requiemのライダー(ドマイナーなサーヴァント)。
FGOのパーシヴァルの幕間で言及されてる。
requiemの設定を見た感じだと某ヨッカナーン(サロメ)の義母で元ワルキューレ。
恐らく精神汚染か狂化(の両方)持ち。
投影魔術の使い手で宝具に投影したロンギヌスと対象の魔力を覚醒させる唇。

オリジナル設定:

逸話が無くて召喚できないワルキューレ時代のクンドリーとして魔女クンドリーのガワ(能力)を付属としてメタンヌに召喚されてる。
その影響で精神汚染や狂化スキルが無いに等しくなっている。
第一再臨が魔女クンドリーの見た目で第二再臨がワルキューレのクンドリー(口調がたまに崩れる)、第三再臨が両方共の見た目が混ざった感じ。
ワルキューレとして召喚されたのでランクは低下しているがワルキューレの宝具も使える。
その他設定が追加されてます。

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