幕間「失われた星の記憶」
夜。
――化猫の宿の一室。
小さな灯りが、静かに揺れている。
「……ほんとにいいの?」
少し不安そうに言うのは
ウェンディ・マーベル
その手には、小さな水晶のような魔導具。
「こっそり持ってきちゃいました……」
「怒られないといいけど」
苦笑する
ミラジェーン・ストラウス
「……問題ない」
ヨゾラが静かに言う。
「どうせ確かめるつもりだった」
視線は、水晶へ。
「これが……記憶を見る魔導具か」
「はい」
ウェンディが頷く。
「マスターが持ってたもので……」
「触れた人の記憶を映すんです」
「……便利だな」
ヨゾラがぼそっと言う。
「でも」
ミラジェーンが少し真剣な顔になる。
「無理はしないで」
「記憶って、いいものばかりじゃないから」
「……わかってる」
短く答える。
「それでも」
水晶に手を伸ばす。
「知りたい」
その声は、揺れていない。
「……じゃあ」
ウェンディが小さく言う。
「やってみます」
三人で、水晶を囲む。
「……いきます」
ウェンディが魔力を流す。
淡い光。
水晶が、ゆっくりと輝き始める。
「……」
ヨゾラが触れる。
その瞬間――
光が、弾けた。
■記憶の中
暗い夜。
燃えるような赤。
「――急いで!!」
女性の声。
ヨゾラは――幼い。
小さな手が、誰かに引かれている。
「……っ」
息が荒い。
背後から、怒号。
「逃がすな!!」
「捕らえろ!!」
城。
巨大な王国の城が、炎に包まれている。
「怖がらないで」
優しい声。
手を引く女性。
ピンク色の鎧。
騎士のような姿。
長い髪が揺れる。
「……アイレン」
幼いヨゾラが、その名を呼ぶ。
女性――
アイレンが、振り向く。
「大丈夫」
微笑む。
「私が、守るから」
その言葉。
まっすぐで、強い。
でも――
その目には、どこか覚悟があった。
「こっちよ!」
走る。
長い廊下。
崩れ落ちる天井。
炎。
叫び声。
「……なんで」
幼い声。
「なんで、こんな……」
「いいの」
アイレンが言う。
「今は走って」
強く手を引く。
「生きることだけ考えて」
「……」
ヨゾラは、ただ頷く。
その時――
前方に、影。
巨大な存在。
「……っ」
アイレンの表情が変わる。
「……来たわね」
ヨゾラを庇うように前に出る。
「下がって」
「……やだ」
幼いヨゾラが首を振る。
「一緒に行く」
「……ヨゾラ」
アイレンが一瞬だけ目を細める。
そして――
優しく頭を撫でる。
「いい子ね」
微笑む。
「でも」
剣を構える。
「ここは任せて」
「……っ」
「約束して」
振り向く。
「必ず、生き延びるって」
その言葉。
重い。
でも――
「……約束する」
震えながらも答える。
「いい子」
アイレンが笑う。
その笑顔は――
どこか、最後のようで。
光が――
弾ける。
■現実
「――っ!!」
ヨゾラが息を荒げる。
手が震えている。
「ヨゾラ!」
ミラジェーンが支える。
「大丈夫!?」
「……はぁ……はぁ……」
呼吸が乱れる。
「今の……」
ウェンディが震えた声で言う。
「記憶……?」
「……ああ」
ヨゾラが呟く。
「……思い出した」
目を見開く。
「……アイレン」
その名前。
はっきりと。
「……誰なの?」
ミラジェーンが静かに聞く。
ヨゾラは、しばらく黙って――
「……わからない」
そう言う。
「でも」
拳を握る。
「……大事な人だ」
その声は、確かだった。
「……守られた」
小さく呟く。
「俺は……あの時」
「……」
「逃げたんじゃない」
目を閉じる。
「……託されたんだ」
その言葉。
重く、静かに落ちる。
「ヨゾラさん……」
ウェンディが心配そうに見る。
「……大丈夫だ」
ゆっくりと息を整える。
「むしろ……はっきりした」
目を開ける。
その瞳は――
少しだけ強くなっていた。
「……俺は」
静かに言う。
「守られて、生きてる」
その事実を。
今、初めて受け入れた。
「……だから」
立ち上がる。
「強くなる理由も、はっきりした」
「……」
ミラジェーンが、優しく微笑む。
「いい顔してるわ」
「……そうか」
ヨゾラが小さく笑う。
その時。
水晶が――
パキッと、小さくひび割れる。
「……あ」
ウェンディが固まる。
「……これ」
「……バレるな」
ヨゾラがぼそっと言う。
「どうしよう〜!!」
「怒られるわね〜」
ミラジェーンが楽しそうに言う。
さっきまでの重さが、少しだけ軽くなる。
でも――
ヨゾラの中には、確かに残った。
“アイレン”という名前。
そして――
守られた記憶。
星は、まだ繋がっている。
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