数十年前のキタカミの里、とある少年は山道の外れで朽ちた祠を見付ける。少年は中に住み着いていた一匹のヌメラの世話を始めるが……みたいな微妙にホラー要素のある小説です。終始モブ視点です。SV主人公が本当に一瞬だけ出てきます。
人生初の二次創作なので色々と拙いです!設定もガタガタで捏造もひどいです!許してください!
※SVのDLC 番外編の微妙なネタバレがあります!未プレイの方はご注意ください!


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ポケモンのホラーとヌメラが好きでどうしても書いてみたくなり、初めて二次創作というものをしてみました!



第1話

流行神

(読み)はやりがみ

精選版 日本国語大辞典 「流行神」の意味・読み・例文・類語

はやり‐がみ【流行神】

〘 名詞 〙 ある土地で一時的に爆発的な人気を呼び、多くの信者や参詣人をもつ神。

[初出の実例]「とし徳や来る春毎のはやり神〈重良〉」(出典:俳諧・小町踊(1665)ちらし)

出典 精選版 日本国語大辞典

精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

 

 

    えー、皆さんこんにちは。今日は夏の地域ふれあいイベント「お年寄りに聞く、キタカミの怖~い話」にご参加いただきありがとうございました。次が最後のお話です。

 

    こんにちは。私は語り部の■■と言います。さて、今日はですね、私が何十年前も前に実際に体験した話をしたいと思います。途中でも席を離れるのは自由ですが、どうぞ最後まで楽しんでいってくださいね。

 

    さて、皆さんご存知ですか。昔々の大昔……というまではいかない、ざっと数十年前。私が皆さんくらいの年齢の時分ですね。あの頃はここ、キタカミの里にも学校がありました。丁度この場所、公民館のあった場所、里の中心ですね。今では建物自体無くなってしまいましたが、当時は私もそこに通っていました。

   ある日のことです。学校からの帰り道、私はふと引き寄せられるように通学路から一本外れた道へと入りました。思えば、あの時から何か運命のようなものが決まっていたのかーーーー

 

     さて。その日は、夏も盛りを過ぎたというのに随分と暑かった。

 

 私は学校からの帰り道をいつもとは違う方向へ歩いたのが始まりだった。理由は特になかった。なんとなくぶらぶらとしているうちに、気付けば森の中へと続く道へと足を踏み入れていた。

 

 道は少しずつ荒れていく。最初はただ歩いているだけだったが、そのうち興味が湧いた。足元はすっかり寂れているが明らかに人間の手で舗装がされている。この先に何があるのだろう。私は歩みを進め、遂に道の果てへと辿り着いた。

「物置……?」

 木々の合間に僅かに開けた土地があり、小屋が一軒建っていた。近づいてよく見ると、古びた鳥居のような柱の跡があり、入り口の上には消えかけた注連縄の残骸が垂れ下がっている。どうやら昔は神社、いや、この規模なら祠だったのだろう。私は観音開きの戸に手を掛けた。

 

 中を覗くと、当然薄暗かった。光源は板の隙間から射す日光のみで、埃を金色に照らしていた。奥の方には台座のような石と不思議な形の置物が幾つか。何かが祀られていた形跡だ。だが、現在も信仰が続いているとは到底思えなかった。

 

 ふと視界の端で何かが動いた。ハッと視線を向けると、石の影から見えたのはぬるりと光る触覚が現れた。ついで何も考えていなそうな顔の付いたほぼ球体の身体がゆっくりと這い出てくる。

 「……ポケモンか。ヌメラだ……」

 私が息をのむと、そのヌメラは首を傾げるようにしてこちらを見上げた。つぶらな瞳が、光を反射して光る。どうやらここに住み着いているらしかった。祠の中は湿っていて、一部苔まで生えている。きっと居心地のいい場所なのだろう。

 ヌメラは逃げなかった。むしろ興味深そうにずるりと近づいてきて、私の靴の先をふんふんと嗅ぎ回る。臆病なポケモンと聞いていたのに、こちらを恐れる様子は無い。やけに人懐こい個体だった。

 「……おまえ、ここに住んでるのか」

 ヌメラは返事のように「ぬめら」と鳴いた。

 

 その日から、私は毎日のようにその祠を訪れるようになった。ヌメラはどうやら一人ぼっちらしく、いつも同じ場所にいた。

 道端のきのみや給食のパン、果物の切れ端を持っていくと、嬉しそうに体を揺らして近寄ってきた。触るとぬるぬるしていて、手のひらにひんやりとした湿り気が残った。

 

 いつの間にか、私はその時間を楽しみにするようになっていた。ヌメラもこころなしか、私の姿を見ると嬉しそうにするようになった。その日の出来事やちょっとした悩みも祠の前で話しかけていると、不思議と心が落ち着いた。ヌメラは話を理解しているかも分からなかったが、それで良かった。

 

 ある日、家に帰ると母親に叱られた。最近毎日のように服が粘液と泥まみれなっていることに腹を立てているようだった。

「綺麗にする側の気持ちにもなりなさい。毎日どこで遊んでんの」

 正直に話した。森に祠があること。ヌメラが住み着いていて、仲良くしていること。そして、話しているうちに思い付いた。うちで飼えば良い。そうすれば、毎日出向く手間も服が泥で汚れることもなくなる。ヌメラもあの小屋ではこれからやってくる秋冬の寒さが辛いだろう。学校では初めてのポケモンを持ち始めるクラスメイトもいる。名案だと思った。

 しかし、母は困った顔をした。

「ヌメラはねー。身体弱いし、粘液も凄いし、初心者向きじゃないの。あんた、自分でポケモンを飼ったことないでしょ。お母さんドラゴン世話したことないから手伝えないよ」

 私は黙った。母の言う通りだった。ヌメラを連れて帰りたい気持ちはあったが、現在家で飼っている父のムックルや姉のウソハチも昼間は母が世話をしている。

「トレーナー目指すにしても、せめてもう少しポケモンに慣れてから捕まえること。最初はオタチとかタネボー辺りにしときなさい」

 黙って頷くしかなかった。

 

 次の日、私はいつものように祠を訪れた。ヌメラはいつも通り祠の中にいた。丸い体を小さく揺らし、ぴと、と足に寄ってくる。

「ごめんな、ヌメラ。おれの家じゃ、お前を飼えないって」

 ヌメラは何も言わず足元の草を食べ始めた。何も分かっていないようだった。それが却って悲しかった。

 私は通い続けた。母には自分の洗濯物は全て自分で洗うと宣言した。半ば意地であり、いつか必ず自身の手持ちに迎え入れるという決意表明だった。

 服を汚さぬようレインコートを着込み、ほぼ毎日のようにエサをあげ、水を替え。祠に続く道の掃除もした。

 ヌメラは毎日変わらずそこにいて、私を見つけると嬉しそうに体を揺らす、そんな日々が暫く続いた。

 

 ある日、祠に来客があった。学校の友人の一人で、最近付き合いが悪くなったために後をつけてきたらしかった。友人は古びた石段や小屋の内装を見ては持ってきた木の枝でつつき回した。

「これ、ヌメラ」

 紹介をすると友人は「ふーん」と曖昧に頷いた。

「ひやみず洞に棲んでるって聞いてたけど、こんな里の方にもいんだな」

 そして近付いてきたヌメラにポケットから取り出したきのみを差し出した。しかし、次の瞬間にはそれをひったくり、自身で食べてしまった。ヌメラはよく分かっていないようで唖然としていた。友人はけらけらと笑った。棒の先で擽るようにヌメラの尻尾を撫でたりもした。ヌメラがハッと振り向く様子を見てまた笑っていた。

「間抜けだなー。怒りもしねえし、ほんとにドラゴンタイプかよ」

 ヌメラは特に嫌がっていなかったが、度重なるいたずらに困惑している様だった。

「おい、やめろよ」

「ちょっとふざけただけだって。別にお前のポケモンでもねえだろ」

 なんとか引き離し、その日は友人と帰った。 

 ヌメラは普段と何も変わらない顔で、いつもより早い別れに首だか胴体だかを傾げていた。

 

 翌日、その友人に帰り道怪我をした、と報告を受けた。自転車のチェーンに何かが挟まって転んだということだった。小石か何かだろうと言うと、そうではないと彼は俯いた。何かベトベトしたものが絡まっていたのだと。

 さらにその翌日も、友人の机の上の筆箱が忽然と消えたり、体育の際に置いておいた体操服が枯れ葉まみれにされたりした。友人は最初私を疑っていたが、犯行が不可能なのは明白だった。何せ一緒に授業を受けていたのだから。

 私は冗談半分で祠のヌメラをいじめたからだと言った。

「何だよ、あんなのがわざわざ学校まで来れると思うか?」

「実は祠の神様だったんだろ。バチが当たったんだ。これからもっと酷くなるかもな」

 友人はその場では半信半疑といった様子だったが、どうやら後から恐ろしくなったらしい。帰り道、私と一緒に祠へ向かうことになった。友人は道に咲いていた野花を摘んでいた。供え物だという。

 その日もヌメラは祠にいた。友人を見ても特に警戒をする様子はなく、供え物の花を見せると嬉しそうにむしゃむしゃと食べ始めた。友人は疑いの目で私を見た。

「こいつが神様?」

「やっぱり違ったかも」

 どちらにせよ、もう彼にヌメラをからかうつもりはないようだった。恐れがまだどこかに残っていたのか、単純に興味が失せたのだろう。どうあれ私はひとまず安堵し、話はそこで終わったと思っていた。

 

 しかし翌日、朝学校で会うと友人は興奮気味に駆け寄ってきた。

「凄いんだよ、お供えをしてから良いことが立て続けに起きたんだ。なくしたと思ったものも全部見つかった!」

 

 私は笑って聞き流したが、事態は思わぬ方向に進み始めた。友人は祠の話を周囲に話しだしたのだ。クラス内で奇妙な信仰が生まれるのは時間の問題だった。

 

 山火事でも見ているような気分だった。信仰は瞬く間に広がり、ほかのクラスや大人にまで伝わっていった。半月も経たないうちに祠の周囲は供え物で埋め尽くされ、ヌメラも最初は楽しそうにしていましたが、やがて疲れた表情を見せることが多くなった。利益を得た者、得られなかった者、どちらも不思議と二度三度と祠へ通い、信者は膨れ上がる。枯れた花や腐った果物が増え、祠の周囲は次第に異様な光景に変わっていった。

 

 毎日世話をした、しかし、とても追い付かない。供え物は日に日に増え、気軽にを処分すると供えた人間に怒られる。そのうち相互で監視し合うような状態となり、遂には誰も片付けられなくなった。誰かがヌメラを飼ってくれれば……と呼び掛けても、やはり皆互いに牽制し合うばかりで誰の手も上がらない。ヌメラもすっかり元気をなくし、とうとう大人たちは祠周囲の立ち入りを禁止してしまった。

 

 正直に言うと、少し安心する気持ちもあった。祠の噂は随分と広まり、管理はとても私一人の手には負えなくなっていた。大人達に保護されるのならばあのヌメラの生活も少しは良くなるに違いない。こんなものは一時の流行りだ。どうせすぐに飽きられるはずだ。自身にそう言い聞かせ、祠へ向かうことは止めようと思った。

 しかし、とある真夜中に私は家から抜け出した。両親が話しているのを聞いてしまったのだ、あの祠の噂を。神社を建て、あのヌメラを神獣として祭り上げるという。慌てて駆け寄ると、二人とも露骨に目を逸らした。

「……もう、あんたに出来ることないよ」

 冗談じゃない。ここで止めなければとんでもないことになる、そんな確信があった。

 月の出ていない晩で町は静まり返っていた。秋が深まりつつあるからか、野生のポケモンの声すら聞こえない。何かに見張られているような感覚さえ覚えた。足を止めても、誰もいない。ただ街灯がゆっくりと明滅する低い唸りだけが響いている。

 

 街灯も無くなる町のはずれ、遠くから遠吠えじみた叫びが聞こえる。森は黒々とした夜闇に同化していた。声を辿っていくと、一ヵ所だけ妙に明るい場所があった。あの祠だ。

 異様な光景だった。

 

 祠の戸は開け放たれ、誰が設置したのか分からない電灯と何本も立てられたぼんぼりで目を伏せたくなるほどの光に包まれていた。神社ならば丁度賽銭箱でも置かれるだろう位置には幾重にも座布団が重ねられている。ヌメラはそこに乗せられていた。そしてバランスの悪そうな座布団の塔を取り囲む、無数の供物。花。群がる人間。絶え間なく響く声、声、声。罵声でも浴びせるように叫ばれる願いが渦を巻くように周囲を木霊していた。

 すぐに理解した。誰も彼も気が狂っている。止めるだなんて烏滸がましい。どうにかなるラインはとうに越えてしまっていた。手遅れだ。

 何よりおぞましかったのは、願いを叫ぶ大人達の顔が全て見知ったものであることだった。学校で、友人の家で、学校の帰り道で会う彼等とはまるで違う表情。両親がその中にいなかったことは、今でも心から幸運に思う。

 

 私は祠のすぐそばの茂みに身を潜め、夜が深まるのを待った。いや違う。待ったのではなく、見付かるのが怖くなったのだ。暗闇の中、木々の間から見える祠の明かり。絶え間なく聞こえる人々の声。それでも冷たい空気で削られていく体力のせいか、うとうとと眠りに落ちそうになる。冷たい夜風が頬を掠め、まぶたが重くなり、遂には。

 

 ふと目が覚めると、何かが頭にぶつかったような気がした。気のせいかもしれない。周囲を見回すと、夜明けが近いらしく空の端から暗闇が徐々に薄まってきている。灯されていた明かりは消え、大人たちはいなくなっていた。

 

 今しかない。私は祠へ駆け寄った。扉は既に閉まっていたが、押し開けると、疲れ切った表情で眠るヌメラがいた。目が合うと、向こうもこちらを覚えていたらしく幾度か瞬きをした。

 

 私は家から持ってきたモンスターボールを差し出した。

「一緒に行こう!」

 

 ヌメラは一声「ぬめら!」と鳴きボールに入った。ゆらゆらとボールが揺れる。カチリ、と捕獲完了を知らせる音が鳴った。私は立ち尽くしたまま大きく息を吐き出した。

 朝日が少しずつ差し込んでいた。がらんどうになった祠には腐敗臭の混じりった花と供え物の匂いが立ち込めている。少し前まで入り浸っていた筈の場所だが、言い様のない違和感があった。例えばそれは何かの視線のような。

「大丈夫、もう、大丈夫だからな……」

 私は思わずボールを胸元で強く握り締め、急いで祠に背を向け駆け出した。勿論誰かに見られたらまずいという理由もあったが、殆どは完全に恐怖からだった。

 背後で声がした。嬉しげで幼い声だった。

 

「わーい」

 

 冷房の効きが悪い公民館の一室、壇上で老人は一つ息を吐き、独りごちるように呟いた。

「私はね、あの声は祠にいた、本当の神様だったんじゃないか。そう思ってるんです」

 

 その後、幼き日の老人は振り返ることも出来ず駆け足で家に帰ったという。捕まえたヌメラはなんとか家族を説得し飼わせてもらった。人懐こく愛嬌があったため受け入れて貰えたが、やはりただのヌメラだった。

 祠の信仰はパッタリと途絶えた。浮かされた熱が急激に冷めていき、遂には祠そのものが取り壊されてしまった。

 季節が変わる頃にはもうそんな信仰があったことすら皆忘れているようだった。恐る恐る友人達にヌメラを見せても、誰もあのヌメラとは気付かなかった。それでも学校には昔こんなことがあったと怪談じみた噂が残っていたが、地域の過疎化でやがて学校もなくなり、噂話さえ完全に消え失せた。

「あの幸運、或いは不運が全て偶然だったとは思えません。しかし、本当にヌメラがもたらしたものだったのでしょうか」

 老人はずっと考えている。皆、勘違いをしていたのではないか。ヌメラではなく、あの祠には本当に神様がいて、それが願いを叶えていたのではないだろうか。

 それでも真実を知る術はない。祠はとうになくなった。ただ、今もあの楽しげな声だけが耳に残っている。

「神様にも色々な姿形があります。人間の神様、ポケモンの神様、おとなの神様、子供の神様。……あの祠の神様は、きっと子供だったのでしょう」

 

 ありがとうございました。老人の一礼で話は終わった。静まり返っていた室内に少しずつ子供のざわめきが広がる。張り詰めた空気が少しずつ緩んでいく。

 壇上から降りた老人が笑みを浮かべ、不意に懐からボールを取り出した。中から現れたのは一匹のヌメルゴンだ。

「あのときのヌメラも大きくなって今は立派なヌメルゴンです。さあ、元神様のポケモンと遊んでみたい子はいるかな?」

 ヌメルゴンが大きく両腕を広げ、手招きをした。周囲から歓声が上がった。観客達は立ち上がり、ヌメルゴンの元へ近付いていく。ヌメルゴンは話通りの人懐っこい笑顔を浮かべ、楽しげに踊るような動きを披露していた。

 

 その様子を遠巻きに眺める人影が二つ。どちらも年端も行かない少年のものだ。

 一人が不安げな表情を見せた。

「な、なあハルト……さっきの話……」

 もう一人、ハルトと呼ばれた少年は黙って頷き、懐から一つのボールを取り出して手のひらに乗せた。中で動き回っているのだろう、微かに揺れている。

「……君が神様の正体?」

 ボールの中からは微かな声で「モモワーイ」と返事があった。どこか嬉しげに。

 ハルトはボールをポケットに戻し、顔を上げた。

 ヌメルゴンは子供達に囲まれ、老人の隣で楽しげに踊っていた。

 

 

 

 

 

 

 




 最後まで読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました!

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