ウマ娘ロイヤルダービー   作:ロイヤルヒューマン社員

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ロイヤルダービー第1部の開始です


第一部
1話


ロイヤルダンスの中山金杯勝利から数年、ロイヤルのウマ娘たちは未だ重賞勝利は2人、G1には手の届かない……それどころか、未勝利戦を勝ち上がることすら難しい日々を送っていた。

そんな状況の中、中央トレセン学園の美浦寮の一室でロイヤルのウマ娘たちが話し合っていた。

 

「それで?会社()の方はなんて言ってた?」

 

鹿毛で少し勝気なウマ娘がベッドに腰掛けながら話しかける。

 

「社長の血縁というのもありますが、それ以上にロイヤルヒューマン社のウマ娘支援の理由は宣伝目的が強いですし……山王社長も尽力してくださってますが、今年中に中央で1勝はしないといけないそうですよ」

 

それに答えるのは椅子に座った足に包帯を巻いた芦毛で丁寧な口調のウマ娘だ。

 

「ったく……ハピネス先輩とダンス先輩が重賞勝ってるしいいじゃねーか」

 

「ロイヤルヒューマンも慈善事業じゃないですからね。社長の養女として迎え入れられた御嬢様のためにもここで打ち切りにはさせたくないのですが……」

 

「今、中央に居てマトモに走れそうなのがオレくらいってことか」

 

「すみませんねファイト……私の脚が良ければ……」

 

包帯を巻いた足をそっと撫でる芦毛のウマ娘にファイトと呼ばれたウマ娘は「ハンッ!」と鼻で笑う。

 

「幼馴染であるオレが保証してやるよ、お前はオレより強い。未勝利戦で燻ってるオレよりな」

 

「しかし……」

 

「しかし、じゃねぇよイザーニャ。お前はレースを限れ、一発デカいのを決めてくれればいい……その分はオレがレースを増やす」

 

イザーニャと呼ばれた彼女は自信がなさそうだが、ファイトはそれでも自分より強いと言い切る。

 

「そうと決まればトレーナーにも相談だな」

 

「ファイト!?ファイトー!?」

 

イザーニャの静止を無視し、休養日にも関わらずファイトはトレーナーの所へと向かった……が。

 

「駄目だ」

 

「はァ?」

 

トレーナーの返事は非情であった。

 

「君たちロイヤルの事情なんて俺は知らないからな。チームにも上限はあるし、ロイヤルイザーニャと一緒じゃないと嫌だという君の我儘に付き合っているんだ……未勝利なんだし、これ以上振り回すのはやめてくれ」

 

「なんだその言い草は!オレをスカウトしたのはそっちだろうが!」

 

「ああそうだ。だけどまさかそのまま未勝利で燻るとは思ってもみなかったよ」

 

「アンタ……それでもトレーナーか?」

 

余りにも酷いトレーナーの言い分にファイトはトレーナーを睨むが、トレーナーは淡々と告げる。

 

「トレーナーだよ。損得勘定をしっかりできるだけだ」

 

「貴様には失望したぞ……」

 

「勝手に失望しているといい。トレーナーだって慈善事業じゃあない。君たちは何処にも受け入れられないと思うよ」

 

ファイトは舌打ちをしてトレーナー室を去っていく。

その後も教官へ相談したり、複数のトレーナーへ自分たちを売り込んだり、時にはロイヤルのスポンサーであるロイヤルヒューマンの伝手を頼ったりしたが、いい返事が貰えることはなかった。

 

「コーゾー社長にも助けて貰ってんのに……やっぱオレじゃ駄目なのか……?」

 

ずっと2人で居た、自分が引っ張て来たイザーニャには弱い所を見せたくなく、1人で奔走していたファイトは誰も居ない校舎裏で、遂に弱音を吐いた。

 

「クソッ……くそぉ……オレが……しっかりしなきゃいけねぇのに……」

 

ロイヤルの名を冠するウマ娘たちの人数はシンボリ家やメジロ家と比べると決して多くなく、更にはアグネスやナリタなどよりも活躍は少ない……ロイヤルハピネスとロイヤルダンスが重賞勝利したと言えど、それはGⅢであり、G1ウマ娘は未だ居ないのだ。

中央1勝……それは決して簡単なことではないが、それを軽く飛び越えて行くウマ娘も多い中、それが余りにも遠く、届かない。

唯唯一、中央で走れるロイヤルのウマ娘としてプレッシャーを背負い、戦ってきた精神が、壊れてしまったのだ。

 

「なんで勝てねえんだ……イザーニャの為にも……ロイヤルの奴らの為にも……勝たねえといけねえのに……トレーナーだって見つけなきゃいけねえのに……」

 

校舎裏にただ泣き声が響き、ロイヤルファイトは孤独に泣く……それでも、拾う存在はあった。

 

「お前、大丈夫か?」

 

声をかけたのはトレセン学園の制服に身を包んだ鹿毛のウマ娘……シリウスシンボリが立っていた。




今回はここまで。
第一部の主人公はロイヤルファイトとロイヤルイザーニャでお送りいたします。
シリウスを出した理由ですが、不良ウマ娘たちを率いて練習をするなど、会長の手の届かないトレセン学園の陰の部分に手を差し伸べるようなことをしている上に、海外で負け続けながらも孤独に戦ったシリウスなら「勝てない、頼っていい存在も分からない」というファイトの心情を汲んでくれるのではないかという理由ですね。
悩みとか色々と吹っ飛ばしてくれるし、真面目なことにはちゃんと向き合ってくれるゴルシと悩みました。

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