魔法科高校に鐘が鳴る   作:ゆうと00

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第8話 『“そのときしか経験できないこと”の価値を知るのは、経験できなくなってしまったときである』

 次の日の朝、厚志の家にて。

「へぇ、深雪が生徒会に入ることは予想してたけど、まさか達也とエリちゃんが風紀委員に入るとはねぇ」

「うん、昨日話を聞いたんだけど、何か今日からさっそく仕事があるみたいだよ」

「ふーん、まぁエリちゃんの実力ならそうそう怪我なんてしないでしょ」

「そうそう、何てったって、入試の成績が2位なんだからね。さすがに深雪には敵わなかったけど」

「駄目だよ、ココア! いくら成績が悪いからって、実戦も弱いとは限らないんだからね!」

「まぁ確かに、もの凄く身近な所に実例がいるからねぇ……」

 モカの作った朝食を食べながら、エリとミルココとモカがそのような会話を交わしていた。ちなみに厚志はいつもの朝食である“プロテインwith数個の生卵”を一気に飲み干した後、朝のトレーニングということで庭で腕立て伏せをしていた。筋骨隆々の大男がもの凄い形相でもの凄い速さで腕立て伏せをする光景は、最初に見たときは食欲も失せるような衝撃だったが、今となってはすっかり慣れたものである。主に“麻痺”という意味で。

 と、そのとき、どうやらトレーニングが終わったらしい厚志が、タオルで汗を拭いながら中へと入ってきた。

「風紀委員と言うことは、生徒達の喧嘩を魔法で止めることになるんだろう? 分かっていると思うけど、“プリティ☆ベル”の魔法を使うときは……」

「うん、分かってる! “やり過ぎないように”だよね!」

 にっこりと笑ってそう言うエリに、厚志は眩しいほどに白い歯を見せて頷いた。

「いやぁ、厚志さん……。こちらとしては、できればプリティ☆ベルの魔法は極力使わないでいてほしいんですが……」

「そうは言うけどミルク、エリちゃんはまだ現代魔法を完璧に使いこなしてるわけじゃない。下手に隠そうとして出し惜しみをしていたら、思わぬ怪我をするかもしれないよ?」

「それはそうですが、エリちゃんの魔法を見て彼女の“正体”がばれるようなことがあっては……」

「ははは、大丈夫さ。多少のことは『そういう魔法だから』の一言で納得させられる。なんせあらゆる超常現象を使う子供達が集まる場所なんだからね。――それに、エリちゃんの魔法を見ただけで気づくような奴には、とっくにエリちゃんのことは知られているよ」

 厚志の言葉に、ミルココ達の表情が険しくなった。

「……それって例えば、十師族とかですか?」

「彼らとその関係者には、確実に通達されているだろうね。もっとも、彼らだって下手に手を出すような真似はしないだろうが」

「そりゃそうですよね……。場合によっては“人間界と魔界の全面戦争”にすらなりかねない」

「そういうことさ。だからエリちゃんも、プリティ☆ベルの力を使うことを躊躇う必要は無いよ? もちろん、むやみに相手を殺すようなことは避けるべきだけど」

「うん、分かってるよ。殺すのは“最低限”だよね!」

 にっこりと笑ってそう言うエリに、厚志は眩しいほどに白い歯を見せて頷いた。

 ――『人を殺してはいけないよ』と言わない辺りが、何とも“らしい”といいますか……。

 横で話を聞いていたモカが苦笑しながらそんなことを思ったが、厚志達の言うことに反対しているわけではないので特に口に出すことはしなかった。

 

 

 *         *         *

 

 

 校内にチャイムが鳴り響き、本日の授業がすべて終わったことを告げた。途端に教室内が騒がしくなり、皆次々と教室から出ていく。

 その流れに乗るように、達也も自分の席から立ち上がった。

「お、達也。さっそく風紀委員の仕事か?」

「まぁな。今日からクラブ勧誘が始まるからな」

「それと風紀委員が何の関係があるんだ?」

「新入生の取り合いで、トラブルが多発するらしい」

「成程なぁ……。ま、頑張れよ」

 激励の言葉を贈るレオに軽く手を振って、達也は教室から出ていった。

 すると、

「あ、達也くん!」

 後ろから声を掛けられ振り返ると、エリカが手を振ってこちらに駆け寄るのが見えた。

「達也くんってさ、クラブとか決めた?」

「いや、まだだ」

「それじゃさ、2人で一緒に見て回らない? 美月もレオも決めちゃったみたいでさ、1人なんだよね」

「そうなのか。残念だが、今から風紀委員としてそれの見回りをしなきゃいけないんだ」

「えぇ、そうなの! そっかー……、まぁ別にたいして興味があるわけじゃないしー……、それじゃあたしは帰るねー……」

 明らかに落ち込んだ様子でその場を去ろうとするエリカに、達也は少し考えた後、

「どちらにしても、それぞれのクラブを見て回る必要があるんだ。委員会の仕事をしながらで良いのなら付き合うが」

 その瞬間、エリカの表情がぱっと華やいだ。「ほんと!」と嬉しそうな表情を見せた後、気恥ずかしくなったのかすぐに調子を元に戻すと、

「ま、まぁ達也くんも何かクラブが見つかるかもしれないしね!」

「一旦委員会のミーティングに出る必要があるから、その後で良いか?」

「えー、仕方ないなー! それじゃ、30分後に教室前で待ち合わせねー!」

 先程よりも明らかに機嫌の良くなったエリカは、今にもスキップしそうな勢いで廊下を歩いていった。

 達也はその後ろ姿を眺めながら、口元に笑みを浮かべていた。

 

 

 

「――というわけなんだ。勝手に決めて悪いが、エリカも一緒に回っても良いだろうか?」

「うん、良いよ! 1人で見るよりも、みんなで見た方が楽しいもんね!」

 風紀委員の本部へ向かう途中、偶然にも達也はエリと合流した。せっかくなので一緒に本部に向かうこととなり、その際に達也が彼女に先程の出来事を話すと、彼女は二つ返事で了承した。

「そういえば、達也さんは何かクラブとか入るつもりなの?」

「俺か? 別に予定は無いな。学校以外にも色々と忙しいし。そういうエリは?」

「うーん、何か面白そうなものがあれば良いんだけど……」

「意外だな。エリならこういうものには真っ先に飛びつきそうなものだが」

「そうなんだけどね? クラブに入ったせいで、厚志さんとかミルココ達と一緒に過ごす時間が減ったら嫌だなぁって……」

「成程な。だが学生というのは一生に一度しか無い、とても貴重なものだ。今しか体験できないことも、色々とあるんじゃないのか?」

「でもそれって、達也さんにも言えるよね?」

「……そうだな。まぁ、興味が湧いたらということで」

 そんな会話をしている内に、風紀委員の本部へと辿り着いた。学生証であるICカードには部屋に入れるように事前に登録がしてあるので、2人はそのカードを入口のパネルに差し込んでロックを解除、ドアを開けて部屋の中へと入っていった。

 どうやら自分達は最後に来たようで、部屋にはすでに何人もの生徒が待っていた。ドアが開いたことで、全員がこちらへと注目する。

 すると、その中に、

「な! おまえは司波達也! なんでおまえがここにいる!」

 それは入学2日目で散々顔を合わせた1-Aの一科生、森崎俊だった。

「森崎……、いきなり随分なご挨拶だな」

「何だと! というか、軽々しく僕の名前を呼ぶな!」

「分かったから、とにかく席に着け。他の先輩がいるのに騒ぐのは、さすがに非常識だぞ」

「非常識なのはおまえの方だ、司波! 僕は教職員推薦枠で、今日からこの風紀委員に――」

「森崎さーん、なんで私を無視するの? ひどいじゃない」

 周りの迷惑などお構いなしに大声で捲し立てていた森崎だったが、エリが話し掛けてきた途端に勢いが萎んでいき、彼女と目を合わせないように顔を逸らして席に着いた。

「森崎さんも風紀委員になったんだね。私達もなんだ、これからよろしくね」

「……あ、ああ、よろしく」

「森崎さん、どうして顔を合わせないの? 教室にいるときも、私のことを無視するよね?」

「えっと、その……」

「エリ、その辺にしておいてやれ。森崎が可哀想だ」

 達也の言葉に、エリはきょとんとした表情で首をかしげた。なぜ“可哀想”なのかが本気で分からないといった表情に、達也は他人事ながら森崎に同情した。

 と、そのとき、

「ん、何だ? 随分騒がしいと思って来てみたが、静かになってるじゃないか」

「おはようございます!」

「おはようございます、姐さん!」

 風紀委員長である摩利が部屋に入ってきた途端、今まで座っていた先輩達が一斉に立ち上がり頭を下げた。まるで軍隊のような統率ぶりに、達也とエリは内心、森崎はあからさまに面食らった。

「鋼太郎、姐さんは止めろ! ――森崎、この際だから言っておくが、おまえは一昨日の校門での騒ぎで風紀委員の推薦を取り消すこともできたんだ。それなのに、なぜ私がおまえの推薦を取り消さなかったと思う?」

 森崎が答えに窮していると、摩利が顔を近づけて囁くようにこう言った。

「憶えておけ。――2度目は無いぞ」

「……はい、肝に銘じておきます」

 森崎の返事に満足したのか、摩利は全員を席に着かせると、一番奥の席に移動して話を切り出した。

「さて、今年もあの馬鹿騒ぎの一週間が始まった。――クラブ活動の新入部員勧誘期間だ。いや、新入生“獲得”合戦というべきかな?」

 どこの学校でもクラブが新入生の勧誘に躍起になるのは同じだが、第一高校を始めとした魔法科高校では特にその傾向が顕著だ。

 原因は魔法科高校独自のクラブが存在することと、“九校戦”こと“全国魔法科高校親善魔法競技大会”だろう。簡単に言えば、全国に9つある魔法科高校が魔法を用いた競技で戦うというものなのだが、この結果が学校そのものの評価に繋がるのはもちろんのこと、活躍した生徒とクラブは学校から優遇されるのである。

 そういうわけで、優秀な新入生の獲得は最重要課題であり、ゆえに各クラブ間でのトラブルが多発する。さらにこの期間中はデモンストレーションとしてCADの携帯が許可されていることも、トラブルを大きくする原因と言えるだろう。学校側も九校戦のことがあって多少のルール破りは黙認状態であり、まさに学内は無法地帯と呼んで差し支えない。

「この状態を静められるのは、我々風紀委員だけだ! 今日から一週間フル稼働してもらう! 幸い今年は、新人の補充も間に合ったからな」

 摩利はそう言うと、達也たち3人をちらりと見た。自分達を紹介することを読み取った3人は、素早い動きで席を立つ。

「1-Aの美咲エリ、1-Aの森崎俊、――そして1-Eの司波達也だ」

 案の定、達也が紹介されたところで部屋の中がざわついた。「二科生が取り締まるのか?」といった声が、あちらこちらから聞こえてくる。

「委員長、この二科生は戦力になるんですか?」

 1人の生徒の発言に、摩利は呆れたように溜息をつく。

「腕前は確認済みだ。私の目が不安だというなら、自分で確かめてみるか?」

「い、いえ、結構です……」

 摩利の睨みが効いたのか、その生徒はすごすごと引き下がった。

「他に質問は無いか? ――無いなら、ただちに出動!」

 その言葉と共に、部屋にいた先輩の風紀委員が一斉に立ち上がり、そのまま部屋を出ていった。

「司波、森崎、美咲。おまえ達には、これを渡しておく」

 美咲がそう言って差し出したのは、掌サイズのビデオレコーダーと“風紀委員”の文字が書かれた腕章だった。

「巡回のときには、常にその腕章を身につけておけ。レコーダーは胸ポケットにしまい、何か起こったらすぐにスイッチを入れろ。また風紀委員は常にCADを携帯する許可が与えられているが、不正使用は厳罰対象だから注意するように」

「質問があります」

 摩利の説明が終わるタイミングを見計らって、達也が手を挙げた。摩利の「許可する」という返事を待ってから、部屋にある机の上に無造作に置かれているCADを指差す。

「CADは委員会の備品を使用しても良いのでしょうか?」

「構わないが、理由は?」

「あれは旧式ですが、エキスパート仕様の高級品ですよ」

 達也の言葉に、摩利は「そうなのか!」と驚きの声をあげた。昨日の模擬戦でもあずさにCADについて尋ねたりしていることから、どうやら摩利はその手の知識には疎いようである。

 摩利からの許可も得たことで、達也は幾つもあるCADの中から“2機”選び、それぞれの手首に装着した。

「それでは、こちらをお借りします」

「2機だと……? ふふ、本当に面白いな、君は……」

 不敵な笑みを浮かべて感心する摩利の後ろで、森崎が不機嫌そうに顔を歪めていた。

「エリ、せっかくだから借りてくか? エリだったら、これとか合うと思うが」

「達也さんがそう言うなら、借りておこっかな?」

 そんなことを気にする様子も無く、2人はエリの分のCADを見繕っていた。

 

 

 

「おい、どうやらおまえはハッタリが得意なようだな」

 摩利と別れ廊下を歩いているとき、ふいに森崎が達也に話し掛けてきた。

「2機も装着して注目を集めようとしてるんだろうが、両手にCADを装着してもサイオン波が干渉して使えなくなるのがオチだぞ?」

「……アドバイスしているのか? 余裕だな」

「うるさい! 一昨日は不意を突かれてしまったが、今度はもう油断しない。おまえに格の違いってやつを見せてやる」

 森崎はそう言うと、達也たちに背を向けて足早にこの場を去っていった。途中でエリが「別々に動いたら格の違いが分からないよー?」と呼び掛けたが、彼がそれに応えることはなかった。

 やがて、彼の姿が見えなくなったとき、

「戦ってるときに油断とか、もうその時点で駄目だよね」

「ああ、戦場だったら“次”なんて存在しないというのに」

「まぁ良いや。私達も巡回を始めよ――あっと、その前にエリカさんと合流しないとね」

「そうだな。30分後だったから……しまった、10分ほど遅れている。急ぐぞ」

 いくら急ぐといっても、さすがに緊急でもないのに廊下を走ることは許されない。2人は早歩きで1-Eの教室まで行くと、中を覗き込んだ。

「あれ、誰もいないよ?」

「待ちくたびれて、先に行ってしまったのかもしれないな。――ミルココにでも訊くか?」

「別に緊急ってわけでもないし、別にいいんじゃない?」

「そうだな、巡回ついでに探すとするか」

 達也の言葉にエリも頷き、2人はそのまま外へと出た。

 校舎の外は、まさに熱狂の渦が巻き起こっていた。

 それぞれのクラブが指定された場所にテントを建て、そこでCADを使ったデモンストレーションを行ったり、体験コーナーを設けていたりしていた。呼び込みの声もあちこちで入り乱れており、勧誘も相手の腕を引っ張ったりとかなり強引に行われている。特に一科生ともなると、やはり成績が優秀ということもあって様々なクラブから文字通り引っ張りだことなっていた。

「まさにお祭り騒ぎって感じだな」

「本当だね――って、達也さん! あれ!」

 エリの指差す先に目を遣ると、様々なコスチュームに身を包んだ複数の生徒が、1人の女子生徒を取り囲んで言い争いをしていた。人の目を惹く鮮やかな色をしたその髪は、間違いなくエリカのものである。

「まずいな……。エリ、止めるぞ!」

「うん、分かった!」

 そのグループへ向けて、2人は駆け出した。近づくにつれて、彼らの声が聞こえてくる。

「彼女に先に声を掛けたのは、我々テニス部だぞ!」

「いい加減に手を離しなさい! 私達バレー部が先よ!」

「あ、あの、もう離して……」

 いろんな方向から引っ張られ、エリカも相当参っているようだ。

「達也さん、二科生の生徒もあんなに勧誘されるんだね」

「いや、彼女は特別だろう。深雪とは違うタイプだが、彼女も“かなりの美少女”と呼ばれる顔立ちをしている。おそらく皆、部のマスコットにでもしたいのだろう」

 エリと達也が走りながらそんな会話を交わしていると、

「あの、他に行く所があるので――ちょ、どこ触って、きゃっ!」

「まずい! ヒートアップしてきたぞ!」

「よーし、こうなったら“グング――」

「待て、エリ! さすがにそれはまずい! 俺に良い方法がある!」

 エリが腕を構えて何かを仕掛けようとしたのを止めた達也は、その場に急停止するとCADに触れた。

 途端に、地面に魔法式が展開される。

 ――何も攻撃する必要は無いんだ。人垣を崩すだけで良い……!

 達也はエリカが囲まれている人垣を見据えながら、ほんの少しだけ右脚を上げた。エリカのもとへ走っていたエリは彼の方をちらりと見遣ると、即座に地面を蹴って幅跳びの要領で跳び上がった。

 そして彼女が空中にいるその隙に、達也が上げていた足を地面に叩きつけた。叩きつけた衝撃は地面を走り、本来ならすぐに消えるはずのそれが魔法式によって増幅される。最終的にその衝撃は、立っている生徒の足をふらつかせるまでに成長した。

「うわ、何だ!」

 突然地面が揺れ、エリカに迫っていた生徒達は一斉に彼女から手を離して倒れ込んだ。当然エリカもその揺れによってバランスを崩し、そのまま地面に倒れ――

「エリカさん、こっち!」

 そうになった直前で、エリに腕を掴まれたことでそれは防がれた。エリカはそのまま彼女に引っ張られながらその場を離脱、他の生徒が2人を追ってこないように達也が牽制しながら、3人はその場を駆け足で離れていった。

 やがて人通りの少ない建物裏まで逃げ込んだところで、ようやく3人は足を止めた。肩を上下させて呼吸を乱している女性2人に対し、達也は呼吸も平常で汗もほとんど掻いていなかった。

「いやぁ、2人共ありがとう。助かったわ」

「構わないさ。ああいうトラブルを解決するのが、俺達風紀委員の仕事だ」

「へぇ……。おお、風紀委員の腕章だ、似合ってるじゃないの」

「どうどう、格好良いでしょ!」

 にかっと人懐っこい笑みを浮かべて腕章を見せびらかすようにポーズをとるエリに、達也は口元にふっと笑みを浮かべた。

「それにしても、達也くんがもう少し早く来れば、あんなことにはならなかったのになぁ」

「それは悪かったな、エリカ」

「あれ、謝っちゃうんだ?」

「遅れたのは事実だからな。まぁ、勝手に待ち合わせ場所からいなくなるのは、また別問題だが」

「うぐっ! ……達也くんってさ、性格悪いって言われない?」

「特に言われたことはないな。なぁ、エリ?」

「うん。人が悪いって言われたことはあるけど」

「同じじゃん! てか、もっと悪いよ!」

 期待通りのツッコミを入れてくれたエリカに、2人は顔を見合わせて笑みを零した。

「それじゃ、お詫びと言っては何だが、エリカの好きな所に行くとするか」

「え、良いの? 巡回ルートとかあるんじゃないの?」

「あー、そういえば特に何も言われなかったね。どうなんだろ?」

「まぁ、言われなかったんなら、特に好きなルートで回っても問題無いだろ」

「あはは! 達也くんって真面目かと思ってたけど、案外分かってくれるんだね!」

 それじゃ、とエリカは少しの間考えて、やがて口を開いた。

「せっかくだから、“闘技場”を見ていきたいかな!」

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