「ーーッ!? ワールドユニオン……!」
「ふふっ、そんな顔をしていたら、可愛い顔が台無しだよ、美月ちゃん〜」
美月とサターンは、ワールドユニオン軍最強のガーディアンズのメンバーのフォーとトゥーとスリーと対峙したまま、動けないでいた。
相手は全国大会高校生の部の決勝戦の後に、
そして、その場が一触即発の雰囲気になる中、野次馬の様に集まっていた軍人たちが、突如道を開けた。
「——何をしている、お前たち。 余計なことはするなと厳命していた筈だぞ」
すると、巨漢の男性を始めとした四人の人物たちがやって来た。
その四人のことも、美月は事前情報で知っていたが、そんな自分よりも先にきららが思わず声を上げた。
「……!! セブンさん……!」
「……きらら。 全国大会の事件に巻き込まれただけでは飽き足らず、まさかここまで来るとはな……。 前にも忠告はした筈だぞ……」
その色の抜け落ちた白い髪に、血の様な真っ赤な瞳を持つ、褐色肌の巨漢の男性こそ、US国出身のアダムチルドレンにして、ワールドユニオン軍最強のガーディアンズの隊長のセブン・ガーディアンだった。
セブンが競技の方のウィッチバトルに参加したのは、記念すべき最初の世界大会の時だけだったが、その際に圧倒的なまでの強さを見せたことで、今も尚、歴代最強の候補に名前が上がる程の人物だった。
そんな彼の後ろには残りのガーディアンズのメンバーたちもおり、今この場に全国大会の事件の際に美月たちを襲ったあの時の面々が集っていた。
そんな敵とも言える人物たちを前に、美月は冷静になるべく、事前情報を頭の中で確認していった。
「え〜、ちょっと美月ちゃんに挨拶しただけだし〜。 別にいいでしょ、隊長〜」
まずは先程美月に絡んで来て、全国大会の事件の際にも一番槍を務めていた女性、フォー・ガーディアン。FR国の出身で階級は大尉。
そんなフォーは、赤い髪と瞳をした、自由気ままな性格の女性だった。
「……私はただ、フォーと一緒にいただけ……」
次にトゥー・ガーディアン。EP国の出身で階級は大尉。
そんなトゥーは、緑の髪と瞳をした、口数の少ない性格の女性だった。
「そうです、隊長! フォーがまた勝手に……!」
そして、スリー・ガーディアン。RU国出身で階級は大尉。
スリーは、青い髪と瞳をした、メガネをかけた真面目そうな性格の女性だった。
「え〜、トゥーちゃんも、スリーちゃんも酷い〜」
「……」
「事実でしょう! 貴方はいつも勝手なことばかりするんですから!」
確か……プロフィール上は、この三人は麗やネオンたちと同じ二十五歳の同年代同士だったこともあって、軽い口喧嘩を始めていた。
すると、それを仲裁する様に男性が口を開いた。
「まあまあ、フォーもスリーも落ち着いて下さい。 今日はお客さんが来ているんですから」
続いては、ファイブ・ガーディアン。BR国出身で階級は少佐。
そんなファイブは、黄色の髪と瞳をした、褐色肌の物腰柔らかそうな男性だった。
確か……プロフィール上は、きららと同い年だった筈……。
すると、そんなファイブの後ろにいた男女が、セブンへと声をかけた。
「……セブン、フォーが自由なのはいつものことだろう……。 多めに見てやれ……」
そんな王は、藍色の髪と瞳をした、物静かな性格の男性だった。
「そうですね。 どの道、彼女たちとこうして会合することになるのは、時間の問題でしたからね」
シックス・ガーディアン。AU国出身で階級は大佐。
そんなシックスは、紫の髪と瞳をした、厳格な性格の女性だった。
確か……プロフィール上は、この二人はセブンたちと同じ三十七歳と言うこともあってか、タメで話していた。
そして、セブンを隊長とし、シックスを副隊長とするこの七人こそが、ワールドユニオン軍最強のガーディアンズのメンバーで……。
——その時だった。
「——ちょっとすみません! 通して下さい! あ、フォー姉さん! 言われた通り、飲み物買って来ました!」
両手にいろんな缶を持った軍服を来た男性が、人混みを割る様に現れた。
「……!! 嘘……!? どうしてここに……!?」
「お前は……!?」
その男性を見た美月とサターンは思わず固まった。だって彼とは、先日の学園祭で顔を合わせていたから……。
美月は思わず彼の名を呟いた。
「——
「……!! 黒土さん!? あ、そっか……! 今日は黒土さんたちがエデンに来ているんだった……!」
その正体は、先日の学園祭でちょっとしたトラブルが起きた際に、美月たちを助けてくれたゼロだった。
しかし、そんな彼は今、ワールドユニオン軍の制服を着ていた。
しかも……。
「もお〜、遅いよ、ゼロ〜」
「コラ! フォー! ゼロをパシって起きながら、何て言い方をするんですか!」
「わわ……!? 落ち着いて下さい、スリー姉さん! 自分は後輩として当たり前のことをしているだけですから……!」
そんなゼロはあろうことか、ガーディアンズのフォーたちと親しげに話していた。
すると、そんな中、先日ゼロと一緒にいたナインまで現れた。
「——お兄……んんっ、
「ナインさんまで……」
「お前たちはワールドユニオンの人間だったのか……!?」
「黒土さん、それに、サターンも、お久しぶり振りです。 先日は騙す様な真似をして、すみません。 ほら、ゼロ。 改めて自己紹介するよ」
ナインは先日とは打って変わって、どこまでも真面目な口調だった。
そして、そんなナインとゼロが改めて口を開いた。
「……改めまして、自分はゼロ・
「
「はい。 黒土さんの想像通り、自分とナインは、アダム議長の孤児院出身のアダム・チルドレンです」
「先日名乗ったナンバーは、引き取られる前の旧姓なんです。 だから、私の今の名も、ナイン・ガーディアンなんです。 そして、私とゼロはガーディアンズの一員でもあるんです」
「そんな……!」
ゼロとナインがワールドユニオンの一員で、自分たちを騙していただけでもショックだったのに、まさかガーディアンズの一員でもあったなんて……!
しかし、美月が教えて貰った事前情報では、ガーディアンズにゼロとナインと言う人物がいるとは記されてなかった。
いや、そうか……!だから、先日はこの二人が学園祭に来ていたのか……!
そして、改めてこの場にガーディアンズの九名と、アダム議長の秘書の英斗の十人のアダムチルドレンが集った。
草刈は言っていた。自身らはアダム議長に恩返しをする為に、どんな命令にも黙って従っていたが、彼の養子であるアダムチルドレンはよりその傾向が強いと……。
養父の為ならば、文字通りなんでもするし、その敵には微塵も容赦はしないと……。
すると、美月の側にいるそんな草刈たちへと、フォーたちは厳しい目を向けた。
「あらあら、そう言えば、裏切り者もいるじゃない〜。 パパを裏切っておいて、この場に顔を出すなんて、どんな神経をしているのかしら〜」
「全くです。 本当に信じられません」
「……お
思ったことを何でも口にするフォーだけではなく、真面目そうなスリーと、口数の少ないトゥーも、棘のある言葉を発していた。
「それに、ワールドランキングのトップをこんなに連れて来て、パパに喧嘩でも売る気なの〜? 所詮、
さらに、フォーは、ワールドランキングのトップ十の面々のことも煽り出した。凄い敵意だ。本当にアダム議長に敵対する者には容赦が無いらしい。
すると、ウィッチバトルをお遊びの偽物のバトルだと断じられたことで、焔たちが思わず声を上げた。
「ウィッチバトルは確かに遊びですけど……それでも偽物のバトルなんかじゃありません!」
「焔の言う通りです! バトルする当事者も、見ている人たちも笑顔にするウィッチバトルは、紛れもなく本物なんです!」
「そうだよ! あまり馬鹿にしないでよね!」
「確かに、あなたたちは軍人としての誇りがあるのでしょうけど、それでもウィッチバトルのことを貶していい理由にはなりません」
焔と冬馬と小春と輝がそう言うと、他の子供組もそれに同意していった。
さらに、子供組だけでは無く、大人組……特に現役のプロリーグの選手たちも声を上げていた。
「子供たちの言う通りルー! それに、本物だと偽物だの言うのなら、メカニカルウィッチを戦いの道具に利用しているお前たちの方が間違っているルー!」
「私も蘭に同意だ! そんなの美しくないからね!」
「はい……! メカニカルウィッチは戦いの道具ではありませんから……!」
「そうね! 間違っているのは、ワールドユニオンの方だわ!」
「僕としても、ワールドユニオンのそんなやり方には納得ができませんからね」
蘭とアーサーとアーミラとコーラルとリオがそう言い返すと、フォーだけではなく、他のガーディアンズの面々も鋭い目をした。
「は? 恒久和平の為に頑張っているアタシたちを否定する気?」
「フォーの言う通りです! 先程の言葉、撤回して下さい!」
「……遊んでばかりいる連中の癖に……」
「そうですね。 僕としても聞き捨てなりませんね」
「メカニカルウィッチは……人工精霊は所詮、道具でしか無い……」
「それを適切に利用しないなど、愚の骨頂です」
フォーとスリーとトゥーとファイブと王とシックスは苛立ちの籠った声でそう口にした。
やはり、美月としてもワールドユニオンとはどうしても
そして、両者が一触触発になる中、フォーが提案した。
「それなら、模擬戦で白黒つけましょう? 貴方たちのバトルなんて、所詮お遊びでしかないと教えてあげるから? 隊長、良いでしょう?」
「……仕方があるまい。
「望むところルー! プロリーグの意地を見せるてやるルー!」
そして、プロリーグの選手と言うこともあり、子供組以上に熱くなった蘭たちがそれを承諾したことにより、突如予定外のバトル……いや、模擬戦が始まることになった。
*****
——ワールドユニオン軍の模擬戦場にて。
ワールドユニオン軍の模擬戦場。それは、一般的なバトルフィールドは違って、実戦を想定した場になっていた。
一応は、見学席を守る為の特別なマジカルバリアが設けられているが、一般的なバトルフィールドの様に内部が高濃度の魔力で満たされていない。つまり、機体の自前の魔力で戦うしかないのだ。
……とは言え、模擬戦と言うだけあって、流石に安全対策は施されており、命の危険は無いらしい。
『おっしゃー! 皆! プロリーグの意地を見せるルー!』
『フッ、子供たちが見ている手前、カッコ悪いところは見せられないね!』
『いつものバトルとは違いますが……わたくしも頑張りますわ……!』
『ええ! ウィッチバトルの真髄をワールドユニオンに示すわよ!』
『はい……! 頑張りましょう、
『俺たちもワールドランキングトップ十の一員として、力になりす!』
『フンッ、ナターリヤとしても、アイツらのことは気に食わないからね!』
『さあ、楽しい楽しいバトルの時間デーズ!』
そんな模擬戦に名乗りを上げたのは、この場所で出会った、蘭と竜、アーサーとペガスス、アーミラとアルゴたち、コーラルとサザンクロス、リオとヒュドラー、カイとオリオン、ナターリヤとカシオペア、ブールとケルベルスのワールドランキングトップ十の面々だった。
しかし、同じトップ十にして、二大チャンピオンバディの麗とウラノスもネオンとネプチューンは今回は出なかった。流石に自身らも美月の側から離れるのは不味いと思ったらしい。
それに、蘭たちがガーディアンズと同数の正々堂々とした公平な勝負を望んだのもある。まあ、セブンたちは、実戦に公平など無いから、何人でも良いとは言っていたが……。
焔たち子供組も最初は名乗りを上げていたが、プロとしての意地に燃える蘭たちを見て、最終的には諦めていた。
そんな訳で、模擬戦の場に、ワールドランキングトップ十の面々の機体が立っているのを、美月は見学席から見ていた。
ちなみに、今回の模擬戦の場は、『市街地』のバトルフィールドに似た場になっていた。しかし、いろんな環境に対応する為にか、街の外側には山や海などのいろんな環境が広がっていた。
そして、準備が終わったことで、今回の模擬戦の進行を引き受けた英斗のアナウンスが聞こえて来た。
『それでは、これよりガーディアンズとワールドランキングの面々による模擬戦を行います。 勝利条件は
『さあ、竜! 先手必勝ルー!』
『ああ、蘭! 我らの力を存分に示すぞ!』
模擬戦の開始の合図と同時に、蘭と竜の
炎竜は赤を基調とした、竜人の様な機体で、武装も己の拳の『炎ノ籠手』だけと言うシンプルなものながら、圧倒的な攻撃力とスピード、そして、なにより技を持っていた。
『フッ! 私たちも行くぞ、ペガスス!』
『ああ、アーサー! 私たちの美しさを見せよう!』
続けて、アーサーとペガススのナイトペガススが、マントの様な翼を広げて飛び立った。
ナイトペガススは白銀を基調とした、騎士の様な機体で、ブースターを内蔵した大型のランスの『ナイトランス』を主武装に、空を自由自在に飛び回るスピード特化の機体だった。
『アルゴたち……! 今回は集団戦である以上、味方に攻撃を当てない様に注意しますわよ……!』
『『『了解です、アーミラ様!』』』
そんな中、アーミラとアルゴたちのゴッデスアルゴがその巨体をゆっくりと浮かび上がらせた。
ゴッデスアルゴは黄金を基調とした船の様な機体で、文字通り機体の下半身が巨大な船になっており、本体の持つ『ゴッデスロッド』による魔法と、船の各部に搭載した様々な火器を組み合わせた、圧倒的な火力が持ち味の機体だった。
『イヤッホー! 今日も波が乗っているわね、サザンクロス!』
『コーラル姉ちゃん! 今回は相手が相手だから、あんまり油断すんなよ!』
その一方で、コーラルとサザンクロスのシンサザンクロスは、背中に装備していた小型の船のサポートメカに乗って、川の上を爆走していた。
シンサザンクロスは青を基調とした海賊の様な機体で、マスケット銃の『シンライフル』や、ナイフの『シンナイフ』などの様々な武器や、サポートメカを巧みに使い分けるオールラウンダーな機体だった。
『リオ! 妾たちの神聖なる舞台を愚弄した者共に罰を与えるぞ! いつも通り、援護せよ!』
『ヒュ、ヒュドラー……! 最初から熱くなり過ぎないで……!』
さらに、リオとヒュドラーのロードヒュドラーも街中を猛スピードで走っていた。
ロードヒュドラーは紫を基調とした姫騎士の様な機体で、キャノン砲を内蔵した大剣の『ロードバスターソード』を主武装に、ドローン武器である大小九機の『ロードスカート』を僕の様に操ってバトルする機体だった。
『俺たちも『黎明の星々』に続くぞ、オリオン!』
『へへっ! 今日も相手と共に、ファンたちのハートも撃ち抜いてやるぜ!』
また、『新世代』のカイとオリオンのアルテミスオリオンも、月の様な形をした巨大な弓の『アルミテミスマルチボウ』に乗る形で、空中を飛び回っていた。
アルテミスオリオンは青を基調した勇者の様な機体で、移動ユニット兼狙撃銃としても機能するアルテミスアローを乗り回して、相手を狙撃する機体だった。
『フンッ! ワールドユニオン軍が何よ! ナターリヤたちだって、プロリーグの意地を見せて上げるわよ! カシオペア! きららお姉様たちが見ているんだから、情けない姿は見せられないわよ!』
『分かっていますわ、ナーシャ。 いつも通り、わたくしが支えるから、ナーシャは好きに動きなさい』
それから、ナターリヤとカシオペアのジュエルカシオペアが武器を構えた。
ジュエルカシオペアは白を基調とした姫の様な機体で、ドローン武器としても分離できる巨大な盾『ジュエルマルチシールド』をメインウェポンとした、相手の攻撃を全て弾き返す鉄壁の防御力とカウンター性能を持つ機体だった。
『ケルベルス! 私たちも行くのデーズ!』
『グルル……! 今日もいっぱい食ってやるぞー!』
最後に、ブールとケルベルスのガトーケルベルスも動き出した。
ガトーケルベルスは金を基調した怪獣の様な亜人型の機体で、その三つの首から炎を吐き、相手をこんがり焼いて食う、中々にえげつないバトルスタイルが特徴的な機体だった。
そして、そんなワールドランキングトップ十の面々の機体がそれぞれ動き出す中、ガーディアンズの機体たちも同じく動き出していた。
どの機体も先日の全国大会の事件の際に見た機体と同じ物だったが、一機だけ美月も初めて見る、オレンジ色の機体がいた。
「あれが……ゼロさんの……」
「はい、ゼロの機体、ユニオンメラクです」
すると、少し離れは場所にいたナインがそう説明してくれた。
どうやら、ゼロはガーディアンズの隊員であるらしいが、ナインはあくまでも部隊を補佐する非戦闘員の立場らしい。
「確かに、ワールドランキングのトップ十の面々は紛れもない強者ですが……それでもゼロが……
ナインが意味深なこと呟く中、ゼロのユニオンメラクが槍を構えた。あれは確か共通武装の一つの『ユニオン
そして、あろうことか、近距離戦闘に関しては間違いなく世界最強の炎竜の攻撃を真正面から難なく受け止めた。
『な……ッ!? 蘭たちの拳を受け止めたルー!?』
『まさか……これほどの強者がまだ世界に眠っていたとは……!』
『強者かどうかは分かりませんが……! 自分はナインをが……妹が生きる世界を守る為なら、どこまでだって強くなって見せます!』
——そして、それを皮切りにワールドランキングトップ十とガーディアンズが激突した。