白髭海賊団 二番隊隊長 ポートガズ・D・エース 公開処刑の文字が書かれた新聞が世界を震撼させた。
 悲しむ者、喜ぶ者、無関心な者、様々な反応を各地で見せた。

「ディ、大丈夫かい、落ち込んで居ないかい」

 優しい穏やかな声が、気遣うように優しく笑うディと呼ばれる女性に問う。『大丈夫だよ、君が心配する事は何もないさ』と男もまた、優しく微笑みながら、笑みを浮かべる女性の頬を優しく一撫ですると『行ってくるよ』と言って部屋を出て行った。

──これは、とある海軍中将のお話である


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第1話

 白髭海賊団 二番隊隊長 ポートガズ・D・エース 公開処刑の文字が書かれた新聞が世界を震撼させた。

 悲しむ者、喜ぶ者、無関心な者、様々な反応を各地で見せた。

 

「ディ、大丈夫かい、落ち込んで居ないかい」

 

 優しい穏やかな声が、気遣うように優しく笑うディと呼ばれる女性に問う。『大丈夫だよ、君が心配する事は何もないさ』と男もまた、優しく微笑みながら、笑みを浮かべる女性の頬を優しく一撫ですると『行ってくるよ』と言って部屋を出て行った。

 

──これは、とある海軍中将のお話である

 

*

 

*

 

 決して、人様に胸を張って言える人生を幼少期に送っては居なかったけれど、海軍に入る事が出来てどのくらいの時が過ぎただろうか。さほど圧倒的な何かしらの実力があるわけでもないけれど、英雄ガープと同じ地位を持つまでになった。己が掲げる”正義”を全うしていたら現在に至る。

 

 

「エリス中将!!!──島で捕えた海賊、インペルダウンへと護送完了致しました」

「ご苦労様、今日はゆっくり休むと良いよ」

「はっ!ありがとうございます。」

 

 

 礼儀正しく去っていく部下を見送り、エリスは『正義』のコートを脱ぐと椅子に掛け、窓から空を見上げる。

 

 明日は漸く君に会いに行けそうだ。1年ぶりに愛する者が待つ島へ帰郷する日。そんな生活を送って早20年になるか……多くて年に2回しか会えないけれど、男はその日を毎日待ち望み、幸せそうに微笑んでいた。

 

 

──翌日

 

 

 部下達に、指示書を手渡し執務室を後にしようとしたところ、ノックもなく『居るかぁ!!』の声と共に、バンッと豪快に扉を開かれる。

 

 

「なんじゃエリス、何処かに向かうのか」

「やぁガープ。あぁ、今日から暫くお休みを頂くよ。お土産買ってくるね」

「あぁ、もうそんな時期じゃったか」

 

 いつもの制服として着ているスーツと、海軍コートを脱いだエリスは、海軍本部中将には見えず、どこからみても貴族のような出で立ちである。 綺麗に纏められた、腰位まである銀色の長い美しい髪と、色素の薄い瞳、誰が見ても『眉目秀麗』と判断する顔立ち。

 

 

 かの海賊女帝、ボア・ハンコックとエリスが並んでいる姿をみた者は、『コレは美の暴力』『ここが天国か』『目がァァア』『目の保養を超えて、失明の危機』と言っていたそうだ。

 

 

 それに加え、彼は一際"優しい人"だと部下達は口を揃えて言う。だらけきった正義を掲げる上司、どっちつかずの正義を掲げる上司、徹底的な正義を掲げる上司、俺の正義を掲げる上司、そんな破天荒な上司を持つ海兵達は、エリスの部下達に口を揃え、涙を零しながら言うそうだ。

 

 

『俺/私も、エリス中将の部下になりたい』と。

 

 

 そして、彼自身が掲げる正義を、身をもって体現している影響もあってか、エリスの知り得ぬ所で崇拝する者も現れ、海軍本部内、エリスに救われた島の人間達の間では神格化され、海軍のオアシス、良心、と言われている。

 

 

 さて、話は戻るが、そんなエリスを呼び止める、海軍の英雄ガープ。穏やかなエリスと、破天荒を体現しているガープは合わないように見えて、そんな事はなく、タイミングが合えば一緒にご飯を食べるし、約30ほど歳下のエリスに呼び捨てにさせるくらいには仲が良い。

 

 

「で、何処にいくんじゃ?」

「ふふ、それは君にも秘密さ」

 

 

 人差し指を口元に当て、美しく微笑むエリスにガープは眉を寄せる。『まったく、いい加減わしに位教えてくれてもええじゃろ』と拗ねる姿にまたクスリと笑い手を振る。

 

 

 この時期に必ず、先の先のやるべき仕事を全て片付け、休みを取るエリスが向かう所は誰も知らない。聞いても今みたいにはぐらかされて終わってしまうのだ。

 

 

「それじゃあ、行ってくるよ」

「あぁ、気を付けて行ってこい」

「ありがとう、君もセンゴクさんや、部下の子達に迷惑を掛けないようにね」

「やかましいわ!この青二才が!!」

 

 

 あはは、と笑って別れた───…

 しかしこれが、この2人の最後の穏やかなやり取りになる事は、まだ誰も知らない。

 

 

 マリンフォードから1番近い有人島まで軍艦で送ってもらい、周りに誰も居ない事を確認し『ーーーまで転移』と呟けば、身体が光に包みこまれ、次に目を開くとそこには、懐かしい香りと風景が広がる。

 

 

 エリスは慣れたように足をすすめ、とある家の中に入る。

 

 

「ただいま、ディ、漸く帰ってこれたよ」

『おかえりなさい、エリス』

「あぁ、ただいま」

 

 

 それから、愛する彼女に会えなかった期間の話を沢山した。彼女は優しく微笑みエリスの話しを訊いていた。

 

 そんな穏やかな時間を4日ほど過ごした所で、緊急用の電伝虫が鳴り響く。ーー珍しいな、今までこんな事はなかったのに。と電伝虫を手に取る。

 

 

「はい、海軍本部中将 エリスです」

「休暇中にすまないエリス、センゴクだ」

「元帥殿……一体どうされましたか」

「あァ、実はだなーーー…」

「ーー……え、」

 

 

 センゴクとの通話を終え、額を抑えソファに座り込む。まさか.....彼が処刑されるだなんて───……。

 

 

 

 

 翌朝、ニュース・クーが運んでいた新聞を買うと、[[rb:昨日 > さくじつ]]元帥殿が言っていた事が1面を飾っていた。

 

 白髭海賊団 二番隊隊長 ポートガズ・D・エース 公開処刑

 

 あぁ、なんてことだ。コレは現実なのだろうか。

 こんなことして、あの男は黙っていないだろう。

 双方共に、甚大な被害が出ることは必至だ。

 

 後、数日は滞在予定だったが、上司からの招集には逆らう事が出来ず、休暇は突如終了となる。ーーこれも、運命か。

 

 笑顔の彼女が、何故だか少しだけ不安そうにしているような気がして。

 

「ディ、大丈夫かい、落ち込んで居ないかい」

『……』

 

 大丈夫、君が心配する事はない、僕がなんとかしてみせるよ。安心してくれ。と伝え笑みを浮かべる頬を撫でる。ーー本当はもっと一緒にいたかったけれど、しょうがないな。

 

「行ってくるよ、ディアナ」

 

 

 

 それからは、王下七武海の緊急招集から始まり、当日を迎えるまで物凄く忙しなかった。

 まさか……海軍、男嫌いのボア・ハンコックまでもが招集に応じるとは予想外だったけれど。

 

 

──ガープも、大丈夫だろうか

 

 

 『これ、わしの孫なんじゃ』

 と麦わら帽子を被った男の子が映る手配書と、テンガロンハットを被った、そばかすが似合う男の子が映る手配書を前に、嬉々として言われた時には、流石にちょっと困惑した。

 

 海賊が孫って、そんか嬉々として言う事ではないんじゃなかろうかと。でも、楽しそうだからいったと考えるのを放棄したのが運の尽き。暇さえあれば、彼等の話や愚痴を聞かされる事になったのはまた別の話だ。

 

 そんな孫バカだった彼が心配になり話しかけようとするも、遠目から見ることはあっても、忙しいのか話すタイミングが見つからず当日を迎えてしまった──……。

 

 

 

 

 戦場は混沌としていた。海兵としての自分も、『家族』を取り戻すために現れた、クルー達からはオヤジと呼ばれ慕われる偉大な男率いる、白ひげ海賊団。

 

 双方共に甚大な被害が出ている。硝煙の匂い、血の匂い...命がどんどん失われていく。

 

 ズキズキズキズキ...酷い頭痛に襲われながら海賊の相手をし、味方が襲われそうになっていれば援護した。

 

そんな、喧騒の中、威厳のある声が響いた。

 

「ポートガス・D・エース……。お前の父親の名を言ってみろ」

 

 

 まさか、バラすつもりなのか。

 エースは、白ひげがオヤジだと言った。しかし─...

 

 

「違う!!!」

「……あの時、我々が目を皿にし捜索した島があった……。南の海の『バテリラ』……!!」

 

 

ーードクン、と心臓が大きく鼓動した。

 キィィィンと酷い耳鳴りが遅い、耳を塞ぐけれど、声ははっきりと捕らえてしまう。

 

「母親の名はポートガス・D・ルージュ。女は、我々の目を欺く為、お前を腹に宿したまま……実におよそ二十ヶ月もの間、子を腹に留め置いたのだ。そして、お前を産み落とすと同時に……力尽き、その場で息を引き取った……」

「父親が死んで一年と三ヶ月後……。世界最大の悪の血を引いて生まれてきたのがお前だ……」

 

 

『あなた』

『まったく、無茶しすぎよ?』

『ねぇ聞いて!実はお友達が出来たの!ご近所の人でね、私達の子供と同い年になる妊婦さんなの』

 

 

ーーーディ...

 

 

『子供同士もお友達になれるかしら』

「あぁ、勿論なれるさ」

 

 

 幸せそうに微笑む彼女を抱きしめて、キスをした。

 

 

『…あなた、1人ぼっちなの?私もなの……ねぇ、私達、お友達にならない?』

 

『名前がないの?そう……じゃあ...エリスって名前は?あなたに似合うと思うの』

 

 

ーーディアナ、僕の最愛の人よ...

 

 

「エリス中将!!!エリス中将!大丈夫ですか!!!」

 

 その声に、はっとすれば部下が、不安そうに話しかけて来ていた。ーー意識が飛んでしまっていたのか...

 

 

「すまない...大丈夫だ」

 

 

 戦場に戻るも、酷く鈍い身体、ズクズクズクと身体の中を何かが蠢いているのに、それに気付かないフリをした。

 大丈夫だ……いつもの事だと、言い聞かせた。

 

 

 なぁ、ディアナ、僕はどうしたらいいだろう

 

 

『エース〜〜〜!!! 助けに来たぞォ〜〜〜!!!』

 ぐるぐるぐるぐる、纏まらない思考でいると、突如空から軍艦が降ってきたと思えば...声が響いた。

 

 白ひげに啖呵を切り、戦場を縦横無尽に走り回り、本来敵であろう海賊達すらも味方につけて、道を切り開く。

 

 「来るなルフィ〜〜〜!!! 分かってるはずだぞ!!! おれもお前も海賊なんだ!!! 思うままの海へ進んだはずだ!!!」

 

 と酷く辛そうな表情を浮かべ彼が叫ぶ。

 

「おれは弟だっ!!!!」

「海賊のルールなんておれは知らねェ!!!」

 

 麦わらの少年も叫び返す。

 ーーあぁ、そうだ、答えは簡単な事だった。

 

 救いたいから救う、家族だから、大切な人だから

 

 失いたくないから、大好きだから、愛しているから

 

 大切だから傷付けたくない、傷付いて欲しくない

 

 無茶をして欲しくない。

 

 双方の気持ちが、理解できてしまう。

 

 「ジジイ…… おれは…… 産まれてきてもよかったのかな……」と、彼に問われた際、ガープは『生きてみりゃわかる』と返答したが、合っていたか分からん、と酒の席で1度だけ漏らした。

 

 見聞色の覇気で、蹲る彼の気持ちも届いてしまった。

 

 家族を想う、その想いに正義も悪もあるものか。

 

 

 

「──...ディ、君は、笑ってくれるだろうか」

 海軍なのに、海賊を逃がしたいだなんて、思ってしまう僕を。

 

 弟によって解放された彼が、大将赤犬に煽られ逃げきれない。突如未来が頭に流れ込む。

 

 ーーあぁ、コレはいただけないね

 

「君、これを預かってくれるかい?」

「はっ、え、エリス中将、!?」

「うん、ごめんね、その子の事頼んだよ」

 

 

 誰もが思った…迫るマグマによって、この戦争の火種となった男は貫かれると──...

 

 

「いやぁ、間に合ったかな...火拳のエース君」

 

 

 しかし、誰が思っただろうか……

 麦わらのルフィと、火拳のエースを庇うように突如立ち塞がり、胸元に風穴を開ける海兵が現れるだなんて。

 

 

『エリス中将ーーーー!!!』

『なんだ、あいついきなり現れたぞ!?』

『なんで海兵がエースを!?』

 

 突然の光景に、海兵達は驚きを隠せず絶叫し、海賊たちも目を見開く。

 

「エリス...貴様ァ!!!一体なんのつもりじゃあ!」

 

 突然のことに、一瞬赤犬は驚いたが、直ぐに冷静になり怒りの声をあげる。

 ゴフッと口から血を流し、エリスはいつもの穏やかやな笑みを浮かべる。

 

「いやぁ、最後くらい、守りたくてね」

「なんじゃと?」

 

 青筋を立て、エリスの胸元を貫く拳に力が入る。

 

「な、なんで...海兵のお前が...誰だよ!なんでおれを」

 

 戸惑いを隠せない、エースの頬にエリスは静かに手を伸ばす。ーーあぁ、今までは遠くから見守る事しか出来なかったけれど...最後にこうして君と出会えた。

 

 

「君が産まれて来ることを...私の愛する人が、楽しみにしていてね」

「なに、いって...」

「ふふ、君と、私の子が...親友に、なれると良いなって、とても嬉しそうに、君の母親と話していたんだよ」

 

 

 その言葉に、周囲は一気にザワめき立つ。

 

 

「なんじゃと!?」

「エリス!!!貴様、まさか!」

 

センゴクが驚愕の声をあげる。

 

 

 

 

 

 

「あァ、私の妻は...バテリラで…同胞の手によって、無惨にも奪われたんだよ」

 

 

ーー続く??

 

 

『人物紹介』

◾︎夢主♂︎ エリス(本当の名前は知らない、元々無い)

幼少期▶ ︎自分の顔が売れると知ってからは、身体を売って生計を立てる。そんな折、妻に出逢い『エリス』と名付けて貰い、今までの人生の中で知らない感情を知り、大事に大事に愛を育み結婚に至る。

 

子供ができたと知った時は、涙を流し喜んだ

 

でも、幸せな時間はーー同胞の手によって散る

 

妻に『どんな事があろうと、人を憎まないで...貴方はとても優しくて強い人だから』と教わり、妻の意思を受け継ぐ。

 

 

◾︎ディ(愛称) ディアナ

エリスの名付け親。

死んだようなエリスと出会って、愛情を与え続けた聖母のような人。ルージュの旦那の事を知る人。

 

ディアナも中々にハードな人生を歩んでいるけれど、それを出さない強い人

 

◾︎ルージュ

仲の良い友人が、自身の手によって散ったと知らされ、絶望したけれど『ディは、貴女と過ごせて幸せだと言っていたよ。貴女の子は無事に産まれるよう、可能な限りサポートするからね』とエリスに言われ、涙し謝罪し続けた人。

 

ディアナのことを、心から信用出来る友人だと思ったため、唯一秘密を独白した人。

 

◾︎海賊王

草葉の陰から『すまねぇ』と謝り続けているらしい


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