BIOHAZARD: Re-Genesis 作:ヨシフ書記長
なにか似てるなと思ったら、早乙女博士だわ、ゲッター線だわ
そう思うだろぅ?スティンガーくぅん
クリス・レッドフィールドの瞳には、深い疲労と消えない怒りが宿っていた。数ヶ月前、欧州のスペンサー邸で繰り広げられた地獄。目の前でジルがウェスカーと共に崖下へ消えていったあの光景が、今も瞼の裏に焼き付いて離れない。
そんな彼のもとへ、レベッカ・チェンバースが重い足取りで現れた。
「クリス、少し時間いい? 妙な報告が入っているの。アンブレラの旧施設が何者かに荒らされているわ」
「旧施設が? どういうことだ? BSAA……国連の管理下で封印されているはずだろう」
クリスは忌々しそうに吐き捨てた。スペンサーは死に、アンブレラも滅びた。だが、その負の遺産はいまだに世界を蝕み続けている。
「ええ……。でも、この画像の粗い監視カメラの映像を見て。北欧の旧備蓄庫よ」
レベッカが操作パネルを叩くと、モニターにノイズ混じりの映像が映し出された。
雪に覆われた施設を悠然と歩く、二つの人影。白いワンピースに、つばの広い帽子を被った少女が、まるでピクニックにでも来たかのように軽やかな足取りで進んでいく。そしてその背後には、少女を護衛するように、岩のような体躯の巨漢が付き従っていた。
「……なんだと? このB.O.W.……タイラントか? だが、これほどの知性的な動きをする個体は見たことがない。それに、この少女は……」
「さらに信じられないのは、この施設への侵入コードよ。……抹消されたはずのスペンサー卿の生体マスターキーが使われているの」
「スペンサーだと!? 馬鹿な、アイツはウェスカーの手で殺されたはずだ。あの邸宅で…オレの目の前で死んでいたんだぞ!」
クリスの声が怒りで震える。スペンサーの死を確認したのは、他でもないクリス自身だ。その直後、ウェスカーとの戦いの中でジルを失った。スペンサーの死は、クリスにとってジルの喪失という「最悪の代償」とセットになった確定した事実だった。
「わかっているわ、クリス。でも見て、この少女の網膜パターン。……不完全ながらも、スペンサー本人の生体データと驚くべき一致を示しているの。まるで、老いた彼が若返って、再び現世に舞い戻ったかのような……」
「…」
クリスは言葉を失い、拳を強く握りしめた。
もしスペンサーが生きていたとしたら。あるいは、何らかの形でその「意志」が受け継がれていたとしたら。
「……あいつは死んだ。この目で見たんだ。……だが、アンブレラの『亡霊』がまだ彷徨っているというのなら、放置はできない。この少女が何者であれ、これ以上アンブレラの遺産を好きにさせるわけにはいかないからな」
その頃、極寒の北米・荒野を走る大型トレーラーのコンテナ内。
エリザベートは、アンティークのソファに腰掛け、回収したばかりの古いマイクロチップを愛おしそうに眺めていた。
「ふむ……。クリス・レッドフィールドか。あやつ、ワシが死んだと思ってさぞかしせいせいしていたことであろうな。……あの日、邸宅に現れた時の絶望に満ちた顔、今思い出しても傑作であったぞ」
彼女は、傍らで静かに佇むセバスチャンの太い腕を軽く叩いた。
「さぁ、セバスチャン。次は南米の地下に眠る『秘密の金庫』へ向かおうか。ウェスカーがジルという女を連れて姿を消した隙に、ワシはワシで帝国の残骸を回収せねばならんからな」
エリザベートの紅い瞳が、闇の中で怪しく輝く。
帝王は死なず、ただ姿を変えて、自らの王国を再建するために動き出していた。
欧州某所。深い霧と冷たい雨に沈む、歴史から忘れ去られたような古い共同墓地。
立ち並ぶ無数の墓標はどれも風化し、景色全体が色彩を失ったような灰色の世界――モノトーンの静寂に包まれていた。
その一角、他よりもひと際重厚な石造りの霊廟の前に、クリス・レッドフィールドと数名のBSAA隊員たちが立っていた。
「……確認した。間違いなく、オズウェル・E・スペンサーの遺体だ」
防護服を着た鑑識隊員が、こじ開けられた石棺の中から顔を上げ、クリスに頷いた。
棺の中に横たわっていたのは、枯れ枝のように痩せ細った老人の亡骸。その胸には、アルバート・ウェスカーの手によって物理的に貫かれた、生々しい致命傷の痕跡がはっきりと残されていた。
あの嵐の夜、洋館でクリス自身の目で見た死。それは、やはり揺るぎない現実だった。
「老人は死んでいる。物理的にも、生物学的にもな。……なら、あの監視カメラに映っていた『スペンサーのコードを使う少女』は一体何者なんだ?」
クリスは忌々しそうに雨水を拭い、棺が再び重い音を立てて閉じられるのを見つめた。
クローンの可能性、あるいはスペンサーの記憶や人格をAIとして移植されたB.O.W.なのか。推測は尽きないが、どれも確証には至らない。
その時、クリスの視線が、石棺の傍らに置かれた「ある物」に引き寄せられた。
モノトーンの色合いの墓場に、その色鮮やかな赤色は嫌にでも目に付いた。
「……花束……?」
クリスは眉をひそめ、それに歩み寄った。
冷たい雨に打たれながらも、まるで血の滴るような鮮烈な真紅を放つその花。
「リコリス……彼岸花か」
鑑識隊員が呟く。
死と再生、そして『転生』を象徴するその不吉で美しい花は、つい先ほど誰かの手によって手向けられたばかりのように、まだ瑞々しさを保っていた。
「こんな人里離れた隠し墓地に、誰が花を供える? スペンサーを慕う身内など、とっくに絶えているはずだ」
クリスは赤い花弁を見つめながら、背筋に冷たいものが走るのを感じた。
監視カメラに映っていた、つばの広い帽子と白いワンピースの少女。あのアンバランスで不気味な姿が脳裏をよぎる。
「……まさか。あの少女が、ここに来たというのか?」
自らの死体を確認するように? それとも、過去の自分に決別を告げるために?
クリスはリコリスの花束を鋭く睨みつけ、周囲の深い霧の向こうへと警戒の視線を向けた。見えない敵の輪郭が、少しずつ、だが確実におぞましい形をとって浮かび上がってきていた…。
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