日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです   作:ken4005

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ライダーを追加します。あと100話突入してしまった。



嵐神

 

アスガルドの各地にて激戦が続く中、王城でも戦いは続いていた。

 

サノスの拳が振り下ろされる。二つのパワー・ストーンが生み出す力は互いに共鳴し、増幅し合っていた。直撃すれば、世界そのものさえ砕きかねない一撃が、オーディンへと迫る。

 

対するオーディンは一歩も退かず、真正面からグングニルを突き出した。

 

拳と槍が激突した瞬間、王城全体が大きく揺れた。床が陥没し、壁に亀裂が走る。衝撃だけで周囲の瓦礫が粉々に砕け、砕けた破片が遥か彼方へと吹き飛んでいった。

 

「……止めるか。」

 

サノスが低く呟く。その視線の先で、オーディンは変わらず立っていた。

 

グングニルを両手で握り、サノスの拳を真正面から受け止めている。老いた身体は微動だにせず、ただ片目だけが鋭い光を湛えている。その様子を見て、オーディンはつまらなそうに鼻を鳴らした。

 

「当然だ。誰に向かって拳を振るっておる。」

 

言葉と同時に、グングニルを軽く捻る。

 

ほんの僅かな動きだったが、それだけでサノスの巨体がわずかに姿勢を崩し、重心が傾いた。その一瞬を、オーディンは逃さない。

 

懐へ踏み込み、身体を沈める。

 

「ふんッ!」

 

槍の石突きがサノスの脇腹へ叩き込まれ、巨体が浮き上がる。

 

「ぐッ!」

 

しかし、サノスは空中で身体を捻り、着地するより早く左拳を振り下ろした。

 

オーディンは即座にグングニルを跳ね上げ、その一撃を下から上に弾き飛ばす。行き場を失った紫色の光が王城の天井を焼き、そのまま遥か上空へと消えていった。

 

着地したサノスとオーディンは、ほとんど同時に間合いを詰め、再び、二人が激突した。

 

サノスの拳が次々と襲いかかる。その動きは巨体からは想像もつかないほど速く、しかも、その一撃一撃はインフィニティ・ストーンの力に頼らずとも重く、鋭い。まともに受ければ、骨どころか神の肉体さえ砕かれる。

 

だが、サノスは圧倒的な力を振り回しているだけではなかった。

 

彼は強者であり、オーディンが槍で拳を逸らせば、その動きに逆らわず身体を回転させ、反対の拳を叩き込む。穂先が喉元を狙えば、最小限の動きでかわしながら槍の柄を掴もうとする。

 

拳だけでなく、足払い、肘打ち、崩し、掴み投げ。長い年月をかけて培った戦闘技術を最大限に引き出し、そこへ二つのパワー・ストーンの力を乗せて、サノスは老神を攻め立てていく。

 

「はああああッ!」

 

サノスの拳が、オーディンの顔面へ迫った。

 

「遅いわ。」

 

その言葉とともにグングニルが跳ね上がり、拳を下から弾き上げる。紫色の光がオーディンの頭上を通過し、そのまま微かに残っていた王城の壁を消し飛ばした。破壊の奔流は止まらず、アスガルドの空へと伸びていく。

 

だが、オーディンはすでに次の一手へ移っていた。

 

「そこじゃ。」

 

グングニルが走る。

 

サノスは即座に身体を捻ったが、避けきれない。穂先が胸部を掠め、紫色の血が飛び散り、その巨体が数歩後退する。

 

その身体には、すでに幾つもの傷が刻まれていた。どれも致命傷ではない。だが、二つのパワー・ストーンによって尋常ならざる力を得たはずのサノスが、それでもなおオーディンを圧倒できずにいるという事実は、何よりも雄弁だった。

 

「……素晴らしい。最強の神、これほどとはな。」

 

サノスは胸元へ手を当て、指先に付着した紫色の血を見つめる。

 

「何を感心しておる。」

 

オーディンがグングニルを振るった次の瞬間、暴風が吹き荒れ、サノスの巨体が押し戻され、踏みしめた床が削れ、無数の亀裂が走る。

 

さらに、その荒れ狂う風の中を青白い光が駆け抜け、雷撃がサノスの胸を直撃した。

 

「ぐぅッ!」

 

サノスの身体が大きく仰け反るが、攻撃はそれで終わらない。

 

今度は雨が降り始めた。いや、雨などという生易しいものではない。真横から叩きつける豪雨が神力によって極限まで加速され、一滴一滴が弾丸と化してサノスへ襲いかかる。

 

サノスは両腕のガントレットを掲げるが、防ぎきれなかった雨は装甲の隙間へ突き刺さり、強靱な皮膚を切り裂き、肉を穿っていく。

 

「これは……!?」

 

「どうした。」

 

オーディンが歩を進める。

 

一歩踏み出せば、それに呼応するように雷が落ちる。二歩目とともに暴風がさらに強くなり、三歩目を踏み出した頃には豪雨が一層激しさを増していた。

 

まるで、嵐そのものがオーディンに付き従っているかのようだが、その光景を前にして、サノスは気づいた。

 

嵐がオーディンに従っているのではない。目の前に立つこの老人こそが、嵐そのものなのだと。

 

「……悠久の時を生きているとな。時折、自分が何者だったのか、忘れそうになる。」

 

オーディンが静かに口を開くと、それに応えるように雷鳴が轟いた。

 

「ワシのことを軍神だの、魔術の神だの、知恵の神だの、最高神だの……人々は好き勝手に呼ぶ。」

 

グングニルを握り直す。黄金の神力が穂先へ集まり、眩い光となって渦を巻き始める。

 

「だがな、」

 

オーディンが不敵に笑う。

 

「ワシは、そんな高尚な神ではない。」

 

そう告げながらグングニルを構えた瞬間、サノスの表情が変わった。

 

老いている。全盛期など、とうの昔に過ぎ去っている。寿命すら尽きかけている。それでも、今、目の前に立っているのは王ではなく、賢者でもない。

 

自分同様。いや、自分以上の、数千年にわたり、九つの世界を戦い抜いてきた、戦士であり、神だった。

 

「ワシは――嵐の神だ。」

 

オーディンの片目が黄金に輝いた瞬間、天より雷が落ちた。

 

だが、その雷はオーディンを傷つけることはなく、触れた瞬間、雷は神力へと変換され、黄金の奔流となってグングニルへ流れ込んでいく。

 

「貴様ごとき――薙ぎ倒してくれるわッ!!」

 

オーディンが腰を落とし、一気に踏み込む。

 

「ッ!」

 

黄金の閃光と化したグングニルが一直線に突き出される。

 

「ぬおおおおおおッ!!」

 

穂先がサノスの胸へ直撃し、轟音が王城を揺るがした。

 

サノスの巨体が後方へ押し込まれ、両足が王城の床を削っていく。床石が次々と砕け、舞い上がった破片が紫色の光に呑まれて消えていった。

 

「おおおおおおッ!!」

 

サノスが吠え、両腕を伸ばしてグングニルを掴んでいる。二つのインフィニティ・ガントレットで真正面から槍を挟み込み、二つのパワー・ストーンが激しく輝く。

 

「捕まえたぞ……オーディン!」

 

紫色の光が爆発的に膨れ上がる。サノスの腕が軋み、ガントレットが悲鳴を上げる。それでも、彼はグングニルを押し返していく。

 

「力比べならば――私に分があるようだな!」

 

サノスの口元が吊り上がる。

 

「……そうか。」

 

オーディンが静かに呟いた。その声音に、サノスの眉が僅かに動く。

 

「ならば教えてやろう。嵐というものをな。」

 

雷鳴が響き、グングニルが輝く。自ら掴んでいるグングニルから、青白い雷がサノスの両手へ直接流れ込んだ。

 

「ぐおおおおおおおおおおッ!!」

 

サノスの巨体が仰け反る。

 

雷がガントレットを駆け抜け、腕から肩へ、肩から胸へと流れ込んでいく。だが、それでもサノスは手を離さず、焼け焦げた指で、なおもグングニルを掴み続ける。

 

「まだじゃ。」

 

オーディンが告げた瞬間、今度は風が生まれた。

 

サノスを中心に渦を巻く風は、一秒も経たないうちに凄まじい暴風へと変わり、その巨体を引き裂かんばかりに吹き荒れる。

 

「ぐッ……!」

 

さらに、雨が生まれる。何もない空間から湧き出した大量の水が二人を中心に渦を巻き、それを見たオーディンがただ一言、命じる。

 

「行け。」

 

豪雨が一斉に方向を変え、すべてがサノスへと向かう。

 

距離は、ゼロに等しく、避けられる空間など、どこにも存在しない。一滴一滴が神力によって極限まで加速され、サノスの身体へ容赦なく叩き込まれていく。

 

「ぐッ! ぬぅううううッ!!」

 

装甲が削れ、皮膚が裂け、紫色の血が舞う。だが、その血すら瞬時に暴風へ呑み込まれ、跡形もなく吹き飛ばされていった。

 

しかも、サノスを襲っているのは雷と風と雨だけではない。オーディン自身の神力そのものがグングニルを通じて流れ込み、サノスの身体を内側からも蹂躙していく。

 

「おおおおおおおおおおおおッ!!」

 

オーディンが吠えた。

 

その咆哮に呼応するかのように嵐が爆発する。アスガルドの空には、いつの間にか巨大な雷雲が形成され、そのすべてが、たった一人へ向けられている。

 

「サノスッ!!」

 

オーディンがグングニルをさらに押し込む。

 

天が応え、数え切れないほどの雷が降り注ぎ、グングニルへと集束し、そのままサノスへ流れ込んでいく。

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

紫と黄金、そして青白い光が混ざり合う。二つのパワー・ストーンが激しく輝き、サノスの身体を守る。それでも、オーディンの嵐は止まらない。

 

装甲が砕け、皮膚が裂け、その下の肉までが雷によって焼かれていく。それでも、グングニルを掴む手だけは離れなかった。

 

「……!」

 

その事実に、オーディンが僅かに目を見開く。荒れ狂う雷光の向こうで、サノスが笑っていた。

 

「……クッ。」

 

身体中から煙を上げ、紫色の血を流しながら、それでも二つのパワー・ストーンはなお激しく輝き続けている。

 

「ク……ハハ……!」

 

やがてサノスは、口元を大きく吊り上げた。それは、痛みに耐えている者の顔ではなかった。恐怖に屈している者の顔でもない。

 

真正面から、二つのパワー・ストーンの力に抗う神。自らが持つ最大級の力をぶつけてもなお立ちはだかり、これほどまでに己を追い詰める存在と巡り会えたことを、心の底から喜んでいる者の笑みだった。

 

「ハハハハハハハハッ!!」

 

崩壊する王城を呑み込む嵐の中、サノスの笑い声がいつまでも響き渡った。

 

ーーーーー

 

全身を雷に焼かれ、暴風に切り裂かれ、豪雨によって肉を穿たれながら、それでもサノスは笑っていた。

 

二つのパワー・ストーンが紫色の光を放ち続ける。

 

「ぬぅ……ッ!?」

 

オーディンの片目が僅かに見開かれた。グングニルを掴んでいたサノスの両腕が、ゆっくりと動き始め、押し込まれていたはずの腕が持ち上がる。

 

紫色の光が膨れ上がり、先ほどまでとは比較にならないほどの力を吐き出していく。

 

「ハハハハハッ! 素晴らしいぞ、オーディン!」

 

サノスが吠え、グングニルを掴んだまま、その巨体が大きく回転する。

 

「ぬおおおおおおッ!!」

 

「ぬッ!?」

 

グングニルを手放す暇すら与えず、槍を握ったオーディンの身体ごと、サノスは強引に持ち上げ、投げ飛ばした。

 

「ぐぉッ……!」

 

オーディンの身体が王城を横切り、王城の外壁へと激突した。壁が大きく陥没し、その周囲へ蜘蛛の巣状の亀裂が走る。だが、

 

「……ふん。」

 

瓦礫を払い除けながら、オーディンは立ち上がった。グングニルも手放してはいない。そんなオーディンを見て、サノスはますます愉快そうに笑った。

 

「やはり、素晴らしい。」

 

「何がじゃ。」

 

「貴様がだ。……それほどの力を持ちながら、何故だ?」

 

サノスは歩きながら問いかけた。

 

「貴様ほどの力と知恵と寿命があれば、世界を、宇宙を、より良く導けなかったのか? 貴様が星々を束ね、人々を導いていれば、宇宙はもっとマシだったのではないのか?」

 

紫色の光が強くなる。サノスが一歩進むたび、その身体から溢れ出す力が増大していく。まるで、問いを重ねるたびに、自らの内側に押し込めていた何かが解き放たれていくかのように。

 

「九つの世界を治めた王。数千年を生きた神。無数の戦争を経験し、魔術を学び、知恵を蓄え、数多の生命を見てきた。」

 

さらに一歩。

 

「ならば何故、貴様は九つの世界で止まった? 何故、宇宙を見なかった? 何故、……救わなかった?」

 

サノスはオーディンへ殴りかかるのではなく、代わりに、左腕を持ち上げた。そこには、一つのパワー・ストーン。紫色に輝く石を見つめながら、サノスは静かに告げた。

 

「コレは、私の妻だった。」

 

「……何?」

 

オーディンの表情が変わる。サノスは左腕のストーンを見つめたまま、言葉を続ける。

 

「未来の知識と、異なる星の知識を持ち、明るく、優しく、強い女だった。」

 

先ほどまでの笑みは消え、怒りでも、悲しみでもない。ただ、遠い昔を思い出すような顔で、サノスは語る。

 

「パワー・ストーンの力をその身に宿し、そのエネルギーを他者へ分け与える術を持っていた。妻は私と共に星々を巡り、多くの者を救った。」

 

サノスの視線が僅かに下がる。

 

「飢餓に苦しむ星へ行った。戦争で荒れ果てた星へも行った。滅びを待つしかなかった者たちへ力を与えたこともある。」

 

ほんの僅かに、その口元が緩んだ。

 

「愚かな女だったよ。……自分の力にも限界があるというのに、目の前で誰かが苦しんでいれば放っておけない。私が止めても聞きはしない。」

 

その声には、奇妙なほど穏やかな響きがあった。しかし、

 

「だが、妻は病に倒れた。」

 

空気が変わり、サノスの左拳が握られる。

 

「私は妻を母星へ預け、病を治す手段を探した。」

 

紫色の光が揺らめく。

 

「宇宙中を探した。医学も、科学も、魔術も調べた。どれほど遠くても構わなかった。どれほど時間がかかろうとも、必ず妻を助けるつもりだった。」

 

拳が震えている。

 

「そして、ようやく治療法を見つけ、急いで帰ると、」

 

サノスは笑うが、先ほどまでとは違い、乾いた笑みだった。

 

「……帰ると、妻は石にされていた。」

 

オーディンの片目が細められる。

 

「我が母星タイタンは、すでに滅びの危機にあった。資源は枯渇し、人口を支えるだけの余力を失いつつあった。」

 

サノスが左腕を掲げる。

 

「だが、妻の力と尽力によって、タイタンはその寿命を伸ばしていた。」

 

パワー・ストーンが輝く。

 

「妻がエネルギーを供給することで、都市は動いた。食料を生産できた。人々は生きられた。だから、恐れたのだ。」

 

サノスの声から、感情が消えた。

 

「妻が死ぬことを。」

 

一瞬だけ、オーディンが目を細める。サノスが首を横へ振った。

 

「いや、違うな。」

 

左腕のパワー・ストーンを見つめる。

 

「妻を失うことではない。妻が死ぬことで、自分たちが受けていた恩恵を失うことを恐れたのだ。そこで権力者どもは、かつて失敗に終わった技術を持ち出した。」

 

「……技術?」

 

「生物を鉱物へ変える装置だ。」

 

オーディンの表情が僅かに険しくなる。

 

「肉体を鉱物へ変換する技術は、理論だけならば、それほど悪いものではなかった。」

 

サノスは淡々と語る。

 

「だが、失敗した。使用するエネルギーと得られる資源で、割が合わなかったのだ。それを、奴らは……妻に使った。」

 

遠くでは、未だアスガルド各地の戦闘音が響いている。それでも、この場所だけは奇妙なほど静かだった。

 

「星へ帰った時、私が見たのはな、」

 

サノスが顔を上げる。

 

「妻が信頼していた執政者が、妻だった石を保管装置へ入れる瞬間だったよ。」

 

最悪としか言いようがない結末を話し、サノスは左腕を下ろした。

 

「貴様らは、」

 

再び、サノスの口元に笑みが浮かぶ。

 

「私が宇宙の生命を半分消そうとしている、と思っているのだろう?」

 

オーディンの片目が鋭くなるが、サノスは即座に否定した。

 

「違う。妻に説得され、私はその目的を改めた。」

 

「……何?」

 

「半分を消すことで、残った半分は豊かになる。資源を巡る争いも減る。単純で、公平で、合理的だと私は考えていた。」

 

自嘲するように鼻を鳴らす。

 

「妻には随分と怒られたものだ。」

 

僅かに、笑う。

 

「『数だけ見て、人を見ていない』とな。……だから、やめた。妻に説得され、私は私の目的を改めた。そして、妻がいなくなり、私は決めたのだ。」

 

二つのパワー・ストーンがより強く輝く。

 

「半分、などと拘るからいかんのだと。ストーンを揃え、」

 

サノスが両腕を広げ、

 

「そして、願うのだ。」

 

紫色の光が天へ昇る。

 

「救うべき人間だけを残せ、と。」

 

オーディンの表情が険しくなったが、サノスは笑っている。

 

「単純だろう? それが最も平和になると思うだろう?」

 

「思わんな。」

 

オーディンの返答に、サノスの笑みが深くなる。

 

「そうか?」

 

「貴様が選ぶのか? 誰が生きるべきで、誰が死ぬべきかを。」

 

迷いはない答えが返ってくる。

 

「ああ。私が選ぶ。」

 

その答えを聞き、オーディンはグングニルを構え直した。サノスは気にした様子もなく続ける。

 

「その上で、妻を取り戻す。」

 

左腕を見つめながら、少しだけ困ったように笑った。

 

「それだけは譲らん。……ああ、私は我儘になったのだ。」

 

肩を竦める。

 

「妻には怒られるだろうが、謝り倒すさ。」

 

その瞬間だけ。宇宙の生命を選別しようとしている狂気の巨人ではなく、妻に頭が上がらない一人の男が、そこにいた。

 

……だが、それも一瞬だった。

 

「長話になったな。」

 

サノスが顔を上げ、オーディンを見据える。

 

「さて、オーディンよ。妻の作品を、楽しんでくれ。」

 

「……作品だと?」

 

サノスが手を伸ばすと、どこに隠していたのか、その手に握られていたのは、

 

「……ベルト?」

 

オーディンが思わず呟いた。明らかに、この戦場には似つかわしくない代物だった。中央部に機械的な機構を備えた、奇妙なベルト。

 

サノスはそれを眺め、

 

「正確には、ドライバーらしい。」

 

「ドライバー?」

 

「妙な拘りがあるようだが、コレが意外と強力でな。」

 

サノスが腰へドライバーを当てると、自動的に伸び、その巨体へ固定された。

 

そして、サノスが取り出したのは二つの容器。中身はなく、完全に空だ。

 

「それは?」

 

「器だ。この中へ力を込めて使うのだが、」

 

一つ目を右手に、二つ目を左手に。

 

「私が入れるものはコレだ。」

 

右腕のパワー・ストーンが輝き、紫色のエネルギーが一つ目の容器へ流れ込む。左腕のパワー・ストーンも輝き、同じく、二つ目の容器へ膨大なエネルギーが注ぎ込まれていく。

 

空だった二つの器が、紫色に染まる。

 

『POWER!』

 

一つ。

 

『POWER!』

 

二つ。

 

無機質な音声が、崩壊した王城に響き、サノスは二つの容器をドライバーへ装填した。

 

『POWER!』

 

『POWER!』

 

ドライバーから電子音声が響き渡る。そして、サノスが巨大な手でレバーを握る。

 

「エボルドライバーというらしくてな。」

 

回すと、歯車が動く。内部機構が高速で回転を始め、

 

『Are you ready?』

 

その音声と同時に、サノスの前後へ巨大な構造体が出現した。紫色に輝くエネルギー、無数のパイプ、歯車、フレーム。

 

それらがサノスを中心として展開されていく。

 

「……変身するつもりか?」

 

「妻の趣味でな。」

 

そして、サノスが口を開く。

 

「変身。」

 

前後に展開されていた機構が、一斉にサノスへ殺到した。

 

『POWER!』

 

右半身を紫色の装甲が覆う。

 

『POWER!』

 

左半身へ、さらに濃い紫色の装甲が形成される。二つのパワー・ストーンから放出されたエネルギーがドライバーを中心に循環し、サノスの巨体を包み込んでいく。

 

紫、黒、そして、黄金。重厚な装甲が胸部を覆い、巨大な肩部装甲が形成され、次々と装甲が組み上がっていく。

 

最後に、複眼が紫色に輝いた。

 

『POWER! POWER!』

 

電子音声が高らかに響く。

 

『POWER EVOL!』

 

紫色のエネルギーが王城を駆け抜け、周囲に残されていた瓦礫が一斉に吹き飛ばされた。オーディンはグングニルを地面へ突き立て、その衝撃に耐える。

 

やがて、光が収まり、オーディンが顔を上げると、そこに、先ほどまでのサノスはいない。

 

いや、中身は間違いなくサノスだ。だが、その巨体は紫、黒、金を基調とした異形の装甲に覆われている。

 

ただでさえ巨大だった身体が重厚な装甲によってさらに一回り大きく見え、全身にはパワー・ストーンのエネルギーが走っている。

 

そして、その中央には、エボルドライバーに装填された二つの容器が、紫色の光を放っていた。

 

オーディンはしばらく、その姿を眺めた。

 

「……それが、貴様の妻の作品か。」

 

「ああ。」

 

装甲越しに、サノスの低い声が響く。右手を握ると、それだけで空間が震えた。

 

二つのパワー・ストーン。それぞれが生み出す力をドライバーによって制御し、循環させ、装着者自身へ還元する。

 

ただでさえ怪物じみたサノスの肉体へ、さらに二つのパワー・ストーンの力をより効率よく上乗せするための戦闘システム。

 

その名は、

 

「パワーエボル。」

 

紫色の複眼が輝く。

 

サノス――パワーエボルは、ゆっくりと拳を構えた。

 





地球の原作崩壊戦犯=火のエル(元ドルマムゥに吸収された宇宙人さん)
光のエルに色々話してしまった後、吸収され数千年何もできずにいた人。

宇宙の原作崩壊戦犯=サノスの奥さん(現サノスの左手に輝く紫色の石さん)
宇宙を救うために色々やっていた科学者。趣味でエボルドライバー作ったりできるヤベー科学者。サノスさんを曇らせ、原作より圧倒的に強化してしまった科学者。

自称エボルトが使っているのは、サノス奥さんが作ったドライバーを再現したもの。

オリジナルライダーですみません。

エボルパワーだと変だったので、パワーエボルにしました。


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