日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
「……火のエル。」
援軍として来てくれた三柱のエルロード。それぞれが超人兵士クラスでは相手にならない力を持つ存在であり、本来なら一柱が現れただけでも大騒ぎになる強さだ。それが、三柱揃って援軍に来てくれたことは、間違いなく心強い。
それでも僕は、目の前に立つ青い戦士へ視線を戻し、首を横に振った。
「来てくれたのはありがたいです。でも……ごめんなさい。」
「あぁ?」
火のエルが眉を寄せる。
わざわざ助けに来てくれた相手に言うことではないのかもしれない。それでも、今は遠慮している場合ではない。
「エルロード三柱では、今のコイツの相手は厳しいと思います。」
エボル・スペースフォームの姿になってから、こいつは空間操作の精度も、身体能力も跳ね上がっている。僕の封印エネルギーへの対策ができているというのもあるだろうけど、……ドルマムゥ級に厄介な奴だ。
エルたちが弱いわけではないけれど、相手が悪い。
「おやおや。」
エボルが面白そうにこちらを見てくる。
「随分と冷静じゃないか。せっかく助けに来てくれた仲間に、勝てないなんて言うものじゃないと思うけど?」
「うるさい。」
「傷つくなぁ。」
「お前は絶対傷ついてなんてないだろ。」
僕がそう返すと、火のエルが突然笑った。
「ハッ!今のアスガルドが救援を呼んでんだぞ?ヤベェのがいるのは予想できてた。」
火のエルは燃え上がる拳を軽く振ることで炎を消し、ニヤリと笑う。
「スペース・ストーンの力を宿す上、まさかの姿を取ってやがるのは予想外だったが、俺たちも備えてはきたんだぜ?」
「……え?」
その瞬間、地のエルが片足を踏み込み、大地に力を流し込む。それに呼応するように水のエルが両腕を広げると、大気中に自身の力を染み込ませた水を出現させる。最後に、火のエルが拳を地面へ叩きつける。
三柱のエルが力を放ち、一つになると、光の壁が展開された。
「これは……!」
ドルマムゥとの戦いで、僕たちが利用した結界?
「ってこの感じ……まさか聖域!?」
僕が思わず叫んだ瞬間、空間そのものが震えた。エボルも異変を感じ取ったらしく、青い複眼を周囲へ向ける。
「……へぇ。空間を固定したのかな。面白いね。僕の能力への対策のつもり?」
「それだけじゃねぇよ。」
火のエルが笑う。
「犠牲なしの完全勝利のために、俺たちよりもっとヤベェ奴を暴れやすくする準備だよ。」
僕とエボルとの中間。聖域の中心に、黒い光が落ちた。
ーーーーー
「さて。」
剣を肩に担いだまま、周囲を見渡す。戦いはほとんど終わっており、女仮面ライダーやソイツと同じ姿をした光るヤツ、そして風のヤツは既に倒れ伏している。
ソーは王城へ向かってしまったが、今から追えばまだ戦いが終わる前には間に合うだろう。それに、地上ではサノス軍とアスガルド軍、そして地球からやってきた援軍が戦っている。少し押し返されているようだが、大した問題ではない。
「少し追加しとこうかしら。」
片手を掲げ、リアリティ・ストーンの力を発動する。周囲の空間が歪み始め、戦車隊や兵士を追加していくと、
「……ん?」
何かおかしい。
僅かな違和感だけれど、自分の感覚を信じるのは大事だ。倒れている三人へと目を向ける。確かに倒したし、戦闘の感触も覚えている。攻撃を受け、反撃し、圧倒した。
……おかしい。いくら私が強いといっても、
「流石に弱すぎたわよね。」
先ほどまで足止めしていたアスガルドの王子は、まともにぶつかればこちらも無傷では済まない相手だった。
その代役として現れたのが、この三人。それなのに、あまりにも簡単に終わった。特に光るヤツは感じていた力と、実際に戦った時の力が噛み合っていない気がする。
「……そういうこと。」
私自身を中心として赤い波動を一気に広げる。周囲の空間を塗り潰す現実へ干渉する力が、偽りを暴き出す。瞬間、倒れていた女ライダーの姿が揺らぐ。光るヤツも、風のヤツも同様だ。
「やっぱり。」
私が呟くと、まるで鏡が割れるように周囲の光景へ無数の亀裂が走り、戦場そのものが崩れ落ちていく。そして、偽りの世界の向こう側には、
「……おや?」
黄色の法衣を纏い、一際強い緑色の輝きを放つ首飾りを下げた女ーーエンシェント・ワンが、静かな笑みを浮かべながら立っていた。
「意外と早く気づかれてしまいましたね。」
無言で赤い剣を構える。……いつからだ?どこからが幻だった?
こっちが答えへ辿り着くよりも早く、法衣の女が僅かに横へ動いた。
「ですが、もう十分です。」
その後ろから、
「撃ちなさい、真魚。」
「はい!」
本物の女仮面ライダー、確かマナと呼ばれていたヤツがいた。装甲にはいくつか私が付けた覚えのある傷がある。やはり、途中までは本物だったらしい。
その両手には一本の杖が握られており、先端には巨大な光が収束していた。先ほど空を埋め尽くした無数の光球、その全てを一つへ圧縮したかのような、凄まじいエネルギー。
「ちょっ――」
「いっけぇぇぇぇぇぇッ!!」
杖を突き出され、極大の光が一直線に向かってきた。
…………あ。私今戦車降りてる。
ーーーーー
聖域を満たす空気が変わった。黒い光が消え、そこに現れたのは、外見だけなら、何の変哲もない人間だ。ただし、実際は規格外の力を持ち、宇宙開闢から存在している、
「闇の力……。」
僕の呟きに、彼は答えず、ただエボルだけを見ていた。
「君がスペース・ストーンを宿すものか?」
「その通り。今の姿の時はエボルって呼んでね。」
「そうか。」
それだけ返事をして、闇の力が右手を上げる。エボルは即座に反応し、青い光で全身を包み、空間転移しようとする。しかし、
「なに!?」
身体がその場へ縫い付けられ、轟音と共に足元が陥没。エボルの真上に、目には見えない巨大な力場が発生していた。
「重力か……!?」
エボルは全身から青い光を噴き出し、スペース・ストーンの力を一気に解放するが、それでも身体が持ち上がらない。
「な……ガッ!?」
エボルの声に、初めて明確な動揺が混じった。地面が次々と陥没し、蜘蛛の巣状の亀裂が周囲へ広がっていく。闇の力は、ただ片手を向けているだけであるというのに。
「空間を操るならば、その空間ごと押さえ込めばいい。」
「簡単に……言ってくれるね……!」
エボルの周囲に青い渦がいくつも発生する。しかし、形成された端から重力場によって歪められ、形を保てず崩壊していく。
火のエルが楽しそうに笑う。
「だから言ったろ? 俺たちも備えてきたって。」
「……最初から、これが目的だったのか。」
三柱でエボルを倒すのではなく、結界で逃亡を防ぎ、闇の力が足止めする作戦だったのか。
「黒雄。」
闇の力に名前を呼ばれる。
「ここは私たちに任せろ。お前はアッチを頼む。」
一瞬だけ、王城へ視線が向けられる。紫色の光は、今もなお空へ立ち昇っていた。
「オーディンを助けに行け。」
僕は一度だけ、重力場に囚われているエボルを見る。その身体から溢れる青い光は、未だ衰えていない。闇の力に押さえ込まれてなお、空間そのものを軋ませるほどの力を放ち続けている。
間違いなく強いけれど、闇の力がいる。さらに火、水、地の三柱のエルロードもいる。……だったら。
「……分かりました。任せます。」
「ああ。」
闇の力はエボルから視線を外さないまま答える。
「行け。」
その一言と同時に、僕は地面を蹴った。
ーーーーー
強ぇ。
目の前で、闇の力がエボルへ右手を向けている。それだけで、エボルの足元は既に大きく陥没し、蜘蛛の巣状の亀裂が周囲へ広がる。
エボルは青い光を何度も全身から噴き出し、そのたびに空間を歪ませているが、転移することはできていない。
「ぐっ……この……!」
「無駄だ。」
闇の力は右手を向けたまま、僅かに指を動かす。それだけで重力がさらに増したのか、エボルの身体が沈み、地面がもう一段深く陥没した。
黒雄が言った通り、俺たち三柱だけじゃコイツを倒すのは厳しいだろうが、最初からそのつもりで来たわけじゃない。
「ハッ、どうした? さっきまでの余裕が消えてるじゃねぇか!」
「火のエル……貴様は少し黙っていろ。」
「いいだろ、これくらい!」
そんなやり取りをしていると、
「う……おおおおおおおおおおッ!!」
エボルが雄叫びを上げた。
全身から青い光が爆発し、その周囲を巨大な球状のフィールドが包み込む。空間そのものを自分の支配下へ置いたのか、闇の力が作り出していた重力場と激突し、青い光が激しく明滅した。
「うおおおおおおおおッ!!」
轟音と共にフィールドが膨張し、次の瞬間、重力場を弾き返した。
「なに?」
流石の闇の力も僅かに目を見開く。その瞬間にはエボルの姿が消えていた。転移じゃない。
「速ぇ!」
地面を蹴っただけ。それだけで、一瞬で闇の力との距離を詰めたエボルが、その勢いのまま拳を振り抜く。
しかし闇の力は僅かに首を傾けて拳を躱すと、そのまま腕を横へ振った。
「ガッ!?」
凄まじい衝撃波が炸裂し、エボルの身体が後方へ弾き飛ばされる。何度も地面を跳ねながら数十メートルは吹き飛んだが、エボルは空中で体勢を立て直し、両足で地面を削りながら着地した。
「……本当に滅茶苦茶だね、アンタ。」
エボルは、そう言いながら手の平に青い光を集め始める。拳ほどの光が瞬く間に膨張し、内部で凄まじいエネルギーが渦を巻き始めた。
「おいおい……。」
俺は思わず顔を引きつらせる。周囲の瓦礫が浮き上がり、青い球体へ向かって吸い込まれていく。光も、空気も、俺たちが固定した空間さえ引っ張られているような感覚がある。
「本物には遠く及ばないけど、擬似ブラックホールってところかな!」
エボルが青い球体を放つ。
一直線に闇の力へ向かうそれを前に、闇の力は避けようともせず、静かに右手を突き出した。
「ならば、こうしよう。」
闇の力の掌の前へ、重力が集中していく。見えないはずの重力が、空間を歪ませることで目に見えるほどの密度へ圧縮されていき、やがて闇の力の掌の先にも黒い球体が形成された。
「は?」
エボルの間抜けな声が聞こえる。
「重力を圧縮してみた。」
「いや、みたって――」
闇の力が腕を押し出す。黒い球体と青い球体が正面から激突すると、一瞬周囲から音が消えた。
次の瞬間、二つの擬似ブラックホールが互いを喰らい合うように歪み、そのまま収縮して消滅する。
「…………。」
エボルは固まっている。その姿を、俺は思わず鼻で笑った。
「ハッ! どうしたよ? 自慢のブラックホールも通じなかったみてぇだな!エボルの姿をしてるみてぇだが、相手が悪かったな!」
「……うん。」
「あ?」
エボルがゆっくり立ち上がる。
「一回落ち着こう。」
突然、自分へ言い聞かせるように呟き始めた。
「ガムシャラに戦うな。オーケー? サノス様は……多分大丈夫。じゃあ僕はどうする? 相手は十文字黒雄並みに強いヤツ。てかアレ、闇の力? アギト編のラスボスの。あー、そんなヤツを味方にしてるとか狡いわ……。」
「何ブツブツ言ってやがる?」
エボルはしばらく独り言を続けていたが、やがて大きく息を吐いた。
「でも、……オイ。」
空気が変わった。さっきまでのふざけた調子が消え、エボルが真っ直ぐ闇の力を見ている。
「アンタ、鉱物にされた人間を元に戻すことはできるか?」
「……?」
あまりにも唐突な質問に、俺は眉を寄せる。闇の力もすぐには答えなかったが、しばらくエボルを見つめた後、静かに口を開いた。
「やったことがないので分からん。ただし、その質問が『鉱物にされ、死んでしまった命を完全に甦らせることができるか?』という意味ならば、恐らく私には無理だ。」
「……そう。」
「死んだ直後、あるいは鉱物へ変えられた直後ならば話は違うかもしれんがな。何にしても、実際に見ないことには分からん。」
エボルは僅かに俯き、
「絶対に無理、とは言わないんだね。」
「絶対に無理ならば、無理と言う。」
しばらく沈黙が流れ、
「……そう。」
エボルは小さく呟き、再び顔を上げた。
「まあ、敵同士だし、こんな状況だし、こっちにも目的があるからさ。頭下げて協力してください、なんて頼むつもりはないよ。」
そう言って、腰へ手を伸ばす。取り出したのは、黒い小型装置だった。銃の引き金部分だけを切り取ったような、妙な形をしている。
「おい、それは!」
「エボルトリガーじゃないし、一回使ったら補充しないといけないけど――超強力だぜ?」
エボルトリガーじゃないのかよ!誰だ、そんなもん作った奴!? だが、嫌な予感が止まらない。エボルはそれをエボルドライバーへ差し込み、迷うことなく引き金を引いた。
『Infinity Evolution, Power!』
電子音が響いた瞬間、紫色の光が爆発した。
「ッ!?」
凄まじいエネルギーがエボルの全身から噴き上がり、青を基調としていた光へ紫が混ざっていく。空気が震え、俺たち三柱で構築した聖域すら軋み始めた。
「おいおいおい……!」
冗談じゃねぇ。さっきまでとは明らかに出力が違う。エボルは両腕を大きく広げた。
「インフィニティ・ストーンの力を完全制御し、効率的に扱うことができるエボルドライバーとインフィニティ・ボトル! そして!」
紫と青のエネルギーが螺旋を描きながら、その身体へ収束していく。
「別のインフィニティ・ストーンの力を、短時間だけ上乗せすることができる、インフィニティ・トリガー!」
「マジかよ……。」
さっきまでのアイツでも俺たち三柱だけじゃ厳しかったってのに、さらに別のストーンの力を上乗せしやがったってのか!?
「さあ、優先順位は変わった!」
エボルが拳を握る。
「今の僕が切れるカードは、全部切らせてもらった!」
地面が砕ける。何か攻撃したわけではなく、ただ溢れ出すエネルギーだけで、周囲の大地が耐え切れず崩れている。
「この力で、アンタを捕らえさせてもらうよ!」
「……おい、闇の力。」
流石に笑っている場合じゃなくなってきた。聖域を維持するだけでも、さっきまでとは比べものにならない負荷が掛かっている。だが、
「そうか。」
闇の力の振る舞いは変わらなかった。目の前のエボルがどれだけ強大な力を放っていても、表情一つ変えずに見つめている。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「ちょっと、ヤバイかもしれない。」
「オイィィィィィッ!?」
「手伝ってくれ、エルたちよ。」
表情を変えていないにも関わらず、非常に情けないことを言い始めた闇の力であった。