日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
唐突なガーディアンズ
投稿ミスとかではありません。
私がまだ幼かった頃、父は今のような人ではなかった。……なんて言い方をすると、少し語弊があるかもしれない。
「サノスも昔は善人だったってことか?」
クイルが信じられないものを見るような顔で聞いてきたので、私は小さく息を吐いて首を横に振る。
「昔から頑固だったし、一度自分が正しいと思ったことは簡単には曲げなかった。極端な答えを出す時もあった。ただ、少なくとも今みたいにインフィニティ・ストーンを集めて、宇宙そのものをどうにかしようとは考えていなかったってことよ。」
当時の父は母や仲間たちと共に宇宙各地を巡り、問題を抱えている星を見つければ介入し、必要なら自分たちの技術を提供することで解決へ導いていた。征服するためでも、支配するためでもなく、純粋にその星が抱えている問題を解決するために。
「つまり、宇宙を巡って人々を助ける正義の戦士だったのだな。」
ドラックスが納得したように頷いたけれど、私は少し考えてから肩をすくめる。
「……まあ、大体はそんな感じね。ただ、問題もあったけど。」
「なんだ?」
「見た目よ。」
巨大な宇宙船が空を覆い、そこから完全武装したサノス軍の兵士たちが降りてきて、その中央を二メートルを優に超える紫色の巨人が歩いてくる。本人たちに侵略の意思などなくても、何も知らない側から見れば、どう考えても悪の宇宙海賊か侵略軍にしか見えない。
「……まあ、半分は母さんの趣味だったけれど。」
隣にいたネビュラも遠い目をしながら呟き、クイルが呆れたようにこちらを見てくる。
「どんな趣味だよ?」
「偶にいるでしょ、ヒーロー側より悪役側の方が好きな人。『戦艦の色はどうする?』って父が尋ねたら、母は『悪役色!』って返したらしいわ。」
「何色だよ、悪役色って。」
クイルに引き続き、ロケットも呆れているようだ。
「……母は偉大な科学者で、強さと優しさを兼ね備えた人だったから、みんな気を遣って趣味には口出さなかったのよ。」
話が逸れたわね。……そんな旅の途中、父たちは惑星ゼホベリを訪れた。私の故郷よ。
当時のゼホベリは急激な人口増加による資源不足に苦しんでいて、このまま人口が増え続ければ、いずれ食料やエネルギーを巡って大規模な争いが起こる可能性が高かった。
そこで父と母たちは問題の解決に乗り出したのだけれど、父が提示した方法は人口を減らすことではなく、母が生み出した技術を使って食料の生産量を増やし、エネルギー供給を安定させ、限られた資源を循環させることで人口を支えられる環境そのものを作り直すというものだったわ。
「……ずいぶんと、そこを強調するな。」
クイルが妙な顔をしたので、私は横目で睨む。
「重要なところだからよ。」
「まあ……今のサノスを知ってると、ものすごく重要なのかもな。」
成果が出るまでには少し時間がかかったけれど、ゼホベリの状況は少しずつ改善し、最初は父たちを恐れていた住民も、やがて彼らを侵略者ではなく自分たちを助けてくれた者たちとして受け入れるようになった。
私の本当の両親も、そのことを喜んでいたわ。だけど、全員が父たちの介入を歓迎していたわけではなかった。
ある日、大規模なテロが起きた。
爆発と戦闘によって大勢の人が死に、私の両親もその中にいた。まだ幼かった私は何が起きたのかも理解できないまま瓦礫の中に取り残され、そんな私を見つけて助けてくれたのが母だった。初対面の時、変なアーマーを着たテロリストだと思って怯え倒したのだけれどね。
最初は、ただ保護されただけだったのだと思う。
それでも母は私を放っておかなかったし、私も少しずつ母のそばにいるようになり、いつの間にか母は私を娘として扱うようになっていた。そして父も、母ほど分かりやすく優しい人ではなかったけれど、私を自分の娘として受け入れてくれた。
こうして私は、サノスとその妻の正式な養女になったわ。それからしばらくして、私たちの家族にはもう一人の娘が増えた。それがネビュラよ。別の星で行き場を失っていた、青い肌の小さな女の子だった。
「お前の母親、行く先々で子供を拾ってたのか?」
ロケットが口を挟んだ瞬間、ネビュラが鋭い視線を向ける。
「拾ったとか言うな。」
「でもガモーラを連れて帰って、お前を連れて帰って、その後は、あのヴィスティナまで出てくるんだろ?」
「ヴィスティナは養女じゃないわ。」
私が訂正すると、ロケットは「似たようなもんだろ」と肩をすくめた。少し腹は立ったけれど、母が放っておけない性格だったことは事実なので、強く否定することもできない。
ともかく、そうしてネビュラも私たちの家族になり、私たちは幼い頃から一緒に育った。
もちろん、喧嘩だってした。訓練でどちらが勝ったとか、どちらが先に母に褒められたとか、今考えればくだらないことで何日も口を利かなかったことだってある。
「ちなみに、どちらの方が強かったのだ?」
ドラックスが興味深そうに尋ねてきたので、私は当然のこととして答える。
「私よ。」
「後半は私だ。」
隣からネビュラの声が重なり、私たちは同時に顔を向けた。
「……何?」
「何だ?」
しばらく睨み合っていると、ドラックスが何かを理解したように深く頷いた。
「なるほど。まだ決着していないのだな。」
『I am Groot.』
グルートが楽しそうに言い、ロケットが笑いながら通訳する。
「グルートが『仲良しだな』ってよ。」
「違うわ。」
「違う。」
また声が重なり、今度はクイルまで笑い始めたので、私はそれ以上何も言わないことにした。それでも、私たちは本当の意味で敵だったことは一度もない。
競い合うことはあったし、腹が立つこともあったけれど、ネビュラは私の妹で、私はネビュラの姉だった。血が繋がっているかなんて、私たちにとっては大した問題ではなかった。
……訓練で負け続けてしまうネビュラにアドバイスをしたら、今度は私が負け始めてしまったが、勝率は私の方が高かったはずだ。
そして、さっきは思わず否定したけれど、確かに母は行く先々で子供を拾ってきた。その一人がヴィスティナだ。
リアリティ・ストーンの力をその身に宿した子で、彼女もまた母に助けられた一人だった。母にはよく懐いていたのに、私たちのように養女にはならなかった。理由を尋ねたら、母が作り出す技術にも強い興味を持っていて、娘よりも教え子、弟子になりたかったのだとか。
そして、もう一人はスペース・ストーンをその身に宿していた少年。私たちの末っ子で、恐らく一番母に懐いていた。よく母が作った変身装置で一緒に遊んでいる姿を見かけた。今ではエボルトなんて名乗っているけれど、彼も昔から私たちと一緒にいたのだ。
「ちょっと待て。」
クイルが眉間を押さえながら手を上げる。
「リアリティ・ストーンを持ってる奴がいて、スペース・ストーンを持ってる奴がいて、お前たちの母親はパワー・ストーンの力を持っていたんだよな?」
「そうね。」
「ガモーラもネビュラも一流の戦士で、大黒柱はサノスだろ?君の実家ヤバすぎないか?」
「私に言われても困るわ。」
「家族写真を撮っただけで宇宙が滅びそうだな!挨拶行くときは気をつけろよクイル!」
ケラケラ笑うロケット。確かに冗談みたいな話だけれど、当時の私にとってはそれが普通だった。父がいて、母がいて、ネビュラがいて、ヴィスティナたちがいる。
そんな時間が、ずっと続くのだと思っていた。
だけど、終わりは突然やってきた。
母は病に侵され、ある出来事をきっかけに肉体を失い、パワー・ストーンそのものへと姿を変えてしまったのだ。
好き勝手に口を挟んでいたクイルたちが黙ってしまう。こういう時だけは、この人たちも空気を読むらしい。
父は母を元に戻す方法を探し続けたし、もちろん、私やネビュラも同じだった。ヴィスティナ、エボルトも、サノス軍の誰だって母を取り戻したかった。
だけど、父は少しずつおかしくなっていった。
インフィニティ・ストーンを集め、全てのストーンを手に入れれば、その力で母を元に戻せるかもしれない。そして、それだけの力があれば、宇宙に存在する多くの問題を根本から解決することもできる。
父は本気でそう考えた。
……私はその考えについていくことができなかったし、ネビュラも同じだった。母を助けたいという気持ちは変わらない。それでも、本当に父の方法しかないのか?全てのインフィニティ・ストーンを集めなければ、母を救うことはできないのか?
別の方法があるんじゃないかと考えて、私とネビュラは父とは別の方法を探すことにした。
父が嫌いになったわけじゃないし、サノス軍を敵だと思っていたわけでもない。ヴィスティナやエボルトだって、長い時間を一緒に過ごした大切な仲間だ。
ただ、今の父は母を戻す前に、宇宙の生命の選別を行ってしまうかもしれない。それほどまでに、父は変わってしまったように思えた。
……家族を捨てたいからじゃなく、家族を取り戻したいから。だから、私たちは独自に動き始めたの。
そんな時、ロナン・ジ・アキューザーが父と協力関係を結び、惑星モラグに存在する謎の球体、オーブを探し始めた。そして、それを先に盗み出した男がピーター・クイル。ラヴェジャーズに育てられた地球人で自称、スター・ロード。
「おい、自称って言うなよ!」
クイルがすぐに抗議してきたので、私は呆れながら彼に視線を送る。
「当時、あなたをスター・ロードって呼んでいた人が何人いたのよ?」
「俺!あと、ヨンドゥたちだって、たまに呼んでたぞ!」
「馬鹿にするときだけだろ。」
ロケットの一言にクイルが言葉を失ったので、そのまま話を続けよう。
私はオーブを追ってザンダーへ向かった。表向きは父の命令でオーブを確保するためだったけれど、本当の目的はオーブそのものではなく、その売却先として名前が挙がっていたタニリーア・ティヴァン、コレクターだ。
宇宙中から希少な生命や物質、遺物を集めている彼なら、インフィニティ・ストーンについても何か知っている可能性が高かったし、もしかしたら、母を元に戻す方法についても手掛かりが得られたかもしれなかった。
だから私はオーブを利用してコレクターへ接触するつもりだった。そしてザンダーでクイルを見つけ、襲撃した。
「もう少し言い方ない?」
「事実でしょう?」
「初対面で殺されかけたもんなぁ、俺。」
「本当に殺すつもりだったら、あなたはあそこで死んでいたわ。」
「怖いんだけど!?」
さらにクイルに懸けられた賞金を狙ってロケットとグルートまで乱入し、結局、私たち四人はザンダーの街中で大乱闘を起こして、全員まとめてノバ軍に逮捕された。そのまま送られたキルン刑務所で出会ったのが、ドラックス。
ロナンに家族を奪われた彼は、ロナンと行動していた私を敵だと思っていた。
「あの時は殺すつもりだった。」
ドラックスが真顔で認めたので、私は苦笑する。
「ええ、知ってるわ。でも、今は違うでしょう?」
「もちろんだ。今のお前は友だ。そしてネビュラも友だ。」
「……ありがとう。」
「俺は?」
クイルが横から聞いてきたけれど、無視。
「なあ、ガモーラ?」
無視。
そうして私たちはロケットの計画でキルンから脱獄し、クイル、私、ロケット、グルート、ドラックスという、後にガーディアンズ・オブ・ギャラクシーと名乗ることになる最初の五人が揃った。
もっとも、その時点では仲間なんて呼べる関係じゃなかったし、全員が自分の目的しか考えていなかった。
私たちはオーブを持ってノーウェアへ向かい、そこでようやくコレクターと接触した。そして、オーブの中身を知った。
パワー・ストーン。
その名前を聞いた瞬間、私は言葉を失ってしまった。母と同じ力を持つインフィニティ・ストーンだ。
何とか気を取り直した私は、コレクターから可能な限りストーンについて話を聞き、母を元に戻す方法についても探りを入れたけれど、母を救う方法を知ることはできなかった。
そのうえ事故でコレクターの施設が爆発し、さらに――
私はそこで言葉を止め、ドラックスを見る。
「何だ?」
「あなたがロナンを呼んだのよ。」
全員の視線がドラックスへ集まり、彼は少しも悪びれずに腕を組んだ。
「当時の私は復讐に燃えていたのだ。」
「燃えすぎなんだよ!」
クイルのツッコミを無視して、ドラックスは堂々と頷いていた。
その結果、ノーウェアへ現れたロナンにパワー・ストーンを奪われ、その力を手にしたロナンは、もう父に従う必要はないと判断した。
ストーンをコスミ・ロッドへ装着し、ザンダーを滅ぼすと宣言したことで、ロナンと行動していたネビュラも私たちと合流した。
ロナンが父との約束から完全に逸脱した以上、従う理由なんてどこにもなかった。そしてクイルが、ザンダーを救うために戦おうと言い出した。
「ここ重要だからな。」
「自分で言わないで。」
「いや、ガモーラ。ここはちゃんと話そう。俺がみんなをまとめた感動的な場面だぞ?」
「確かにクイルは立派な演説をした。」
ドラックスが真顔で頷いたので、クイルが嬉しそうに胸を張り、
「ただし、内容はあまり覚えていない。」
そして、後ろに派手にすっ転んだ。思わず笑いそうになりながらも、私はあの時のことを思い出す。
私たちはクイルの提案に乗った。ロケットは散々文句を言っていたけれど、私はこのどうしようもない人たちと一緒なら、もしかしたら何かを変えられるかもしれないと思った。
ラヴェジャーズとノバ軍も加わり、ザンダーでロナン軍との決戦が始まった。激しい戦いの末、ダーク・アスターはザンダーへ墜落し、その衝撃から私たちを守るため、グルートは自分の身体を巨大な防壁へと変えて私たち全員を包み込んでくれた。
当時のグルートが最後に言ったのは、
『We are Groot.』
あの時の言葉だけは、今でもはっきり覚えている。グルートの身体は砕け散ったけれど、おかげで私たちは生き残った。
ロナンも同様に生き残っていたけれど、クイルがアホなことを、
「ダンスバトルだ!あと、気を逸らすためにやったからアホなことじゃない!」
宇宙レベルのアホなクイルが、最後はパワー・ストーンを直に掴んだ。……銀河レベルのアホだった。
普通ならその瞬間に身体は消滅していたはずなのに耐えていた。だから私は思わず手を伸ばし、ドラックスが続き、ロケットも繋がった。
四人でパワー・ストーンの力を分散し、そのエネルギーをロナンへ叩き込み、ロナンを倒し、ザンダーは救われた。
最初は偶然集まっただけの私たちだったけど、ラヴェジャーズ育ちの地球人、サノスの娘、賞金稼ぎのアライグマと木、そして復讐に生きていた戦士――
「待て。俺の説明はスター・ロードだって言ってるだろ。」
クイルが不満そうに言い、ロケットがすぐに鼻で笑う。
「自称スター・ロードだろ?」
『I am Groot.』
「グルートもそう言ってる。」
「絶対そんなこと言ってないだろ!」
――そんな連中が、いつの間にか仲間になって、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー、宇宙を守る者たちになった。名前だけ聞けば、ずいぶん立派な集団に聞こえる。
「実際立派だろ?」
「あなたが自分で言うと台無しなのよ。」
「なんでだよ!」
私は今も母を元に戻す方法を探している。ネビュラも同じ。ヴィスティナやエボルとも完全に縁が切れたわけじゃない。
……そして、父とも。
私は父を倒したいわけじゃないし、母を諦めたわけでもない。ただ、できることなら昔のように、父と母がいて、ネビュラがいて、ヴィスティナたちがいて、くだらないことで笑ったり喧嘩したりしていた頃に戻りたい。
そのための方法を探したいだけだ。
「だから、俺たち皆で探してるわけだろ?」
不意にクイルがそう言ったので、私は隣に視線を送る。
「俺たち、今までだって無茶苦茶なことばっかりやってきただろ? 刑務所から脱獄して、宇宙最強クラスの石を持った奴と戦って、ザンダーまで救ったんだ。だったら、石になった母親を元に戻す方法を探すくらい、今さら大したことじゃないさ。」
「大したことあるわよ。」
「俺たち基準なら大して変わらねぇだろ。」
ロケットが鼻を鳴らし、グルートも『I am Groot』と頷く。
「グルートの言う通りだ。」
ドラックスも力強く頷いた。
「家族ならば、取り戻すべきだ。」
ネビュラが隣で小さく息を吐き、私はそんな彼らを見回して、思わず笑ってしまった。昔の家族を取り戻すために始めたはずなのに、気がつけば、私はもう一つの家族を手に入れていた。
「……ありがとう。」
「どういたしまして。」
すぐにクイルが答えたので、私は呆れながら彼を見る。
「あなた一人に言ったわけじゃないわよ。」
「話の区切りの時くらい格好つけさせてくれよ!」
本当に、馬鹿ばかり。だけど、悪くない。少なくとも、私はそう思っている。