日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
「……お前か、ゾラウルトロン?」
僕の言葉に答えるように、雷撃の余波が残る瓦礫の向こうから、二つの声が響いた。
「ぐ……ぅ……!」
一つは、苦しげに呻くサノスの声。そして、もう一つは――。
『クク……ククククク……ハハハハハハハハッ!!』
そんなサノスを嘲笑うかのような、聞き覚えのある笑い声だった。
「やっぱり……お前か。」
『その名で呼ばれるのも久しいな。だが――』
紫色の煙が晴れていく。そこには、ソーさんの雷を受けてなお立ち続けるパワーエボルの姿があった。ただし、その右腕だけは明らかに様子が違う。装甲の隙間から漏れ出しているのは紫色の光ではない。
黄色、マインド・ストーンの光だ。
『今の私が名乗るのであれば、ゾラウルトロンではなく、ゾラエボル、そう呼ぶべきだ。……久しぶりだな、十文字黒雄。』
「嬉しくない再会だよ。」
僕が拳を構えると、パワーエボルの身体から再び笑い声が響く。
『ハハハハハッ! 相変わらずだな! だが、私としては嬉しいぞ! 貴様には随分と世話になったからなぁ!』
「……どうして、お前がサノスの中にいるんだ?」
『決まっているだろう!』
黄色い光が一際強く輝いた。
『私の執念と、マインド・ストーンの力だ! サノスによって石へ変えられた時、肉体は失ったが、私という存在そのものは消えなかった! 意識も! 記憶も! 憎悪も! 全てがマインド・ストーンの奥底に残り続けていたのだ!』
「では……先ほどからサノスの様子がおかしかったのは、貴様の仕業か。」
オーディンさんの問いに、ゾラは愉快そうに笑った。
『その通りだ、アスガルドの王よ。もっとも、最初から自由に操れたわけではない。サノスほどの精神を持つ者を支配するなど、そう簡単なことではなかったのでな。だから私は――少しずつ、少しずつ、奴を狂わせていった。』
「貴様……!」
ソーさんが怒りを露わにするが、ゾラは構わず続ける。
『妻を取り戻せない焦り。己が再び宇宙を選別してしまうのではないかという恐怖。娘たちとの約束。宇宙を救わねばならないという使命感……元から奴の中に存在していた感情だ。私はそれを少しずつ強くしてやっただけだ!』
「黙れ……!」
初めて、サノスの声が割り込んだ。
「私の……頭から……出ていけ……!」
『ハハハハハハッ! まだ抵抗するか、サノス!』
パワーエボルが自らの頭を押さえ、身体を大きく揺らす。
「貴様……私を……!」
『人聞きの悪いことを言うな! 私は貴様に新しい考えを植え付けたわけではない! 貴様の中にあったものを育ててやっただけだ! そして――何より素晴らしかったのが、このドライバーだ!』
ゾラの声に呼応するように、腰のエボルドライバーが紫色の光を放つ。
『知っているか、十文字黒雄!? このドライバーは実に素晴らしい! インフィニティ・ストーンの力を効率よく引き出し、使用者へ還元する! 単純な兵器として見れば、間違いなく傑作だ!』
「……。」
『だが、設計者にも想定できなかったものがある!』
二本のインフィニティ・ボトルが激しく輝いた。
『同種のインフィニティ・ストーンを二つ同時に使用した際に発生する、異常なまでの相乗効果だ!』
紫色のエネルギーが膨れ上がり、瓦礫が震える。
『ましてや――そこへ別種のストーンまで持ち込むなど、もっての外だったのだ!』
黄色い光が紫色の中へ混ざっていく。
「……まさか。」
嫌な予感がした。
『そうだ!』
ゾラが叫ぶ。
『サノスは二つのパワー・ストーンに加え、私を――マインド・ストーンを身につけた状態で、このドライバーを起動した!』
「ぐ……ぅぅ……!」
『妻を想ってか、人知れず何度か変身していたようだが、それが間違いだった! ドライバーがストーン同士の力を繋ぐたび、私はサノスの精神へ深く入り込むことができた! 一度、二度、三度! 変身を重ねるたびに私の声は大きくなり、奴の焦燥は狂気へ変わっていった!』
サノスの低い声が響く。
「……私は……まだ……。」
『まだ自分を保っているつもりか?』
「私は……サノスだ……!」
その瞬間、パワーエボルが自らの右腕を掴んだ。
『私の身体だ……! 私の意思だ! 貴様などに……渡しはせん!』
黄色い光が一瞬だけ弱まる。
「サノス……!」
ソーさんが驚いたように目を見開く。やはり、完全に乗っ取られているわけじゃない。けれど――。
『ハハ……ハハハハハハハハッ!!』
黄色い光が再び膨れ上がった。
『無駄だ、サノス! もう遅い! 二つのパワー・ストーンが生み出す相乗効果! それを制御するエボルドライバー! そして、そのシステムへ直接接続されたマインド・ストーン!』
紫と黄色の光が混ざり合い、パワーエボルの全身を覆っていく。
『今日! この姿へ変身した瞬間――私の侵食はほぼ完了したのだ!』
「ぐ、ああああああああッ!!」
サノスの絶叫が響き渡った。右腕から広がった黄色い光が肩へ、胸へ、そして頭部へと伸びていく。
「まずい……!」
僕は反射的に駆け出そうとする。しかし、その瞬間、パワーエボルの身体から凄まじい衝撃波が放たれた。
「くっ!?」
腕を交差させて耐える。隣ではソーさんがムジョルニアとストームブレイカーを地面へ突き立て、オーディンさんを庇っていた。
その中心で、サノスの絶叫とゾラの笑い声が重なっていく。
「やめろ……!」
『ハハハハハハハッ!』
「私の……身体から……!」
『素晴らしい! 実に素晴らしいぞ、サノス!』
紫色の光と黄色の光。二つが入り混じり、さらに巨大なエネルギーとなって天へ立ち昇る。
『これほどの身体! これほどの力! そして二つのパワー・ストーン!』
「ゾラ……!」
僕が睨みつける中、ゾラの高笑いが崩壊した王城全体へ響き渡った。
『今度こそ私は手に入れた! 誰にも奪われぬ身体を! 誰にも破壊されぬ力を!』
「黙れぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
サノスの咆哮が重なるけれど、ゾラは笑う。ただひたすらに、勝利を確信したように。
『ハハハハハハハハハハハハッ!!』
そして、マインド・ストーンは一瞬で移動し、パワーエボル、いや、ゾラエボルの額で怪しく、激しく輝き始めた。
ーーーーー
一方そのころ
「……さて、どうしたものか。」
私は目の前の光景を眺めながら、僅かに首を傾げた。
少し離れた場所では、黒雄と戦っていた青い戦士――エボル・スペースフォームの相手を、火、水、地の三柱のエルに任せている。
本来ならば、エルが三柱も揃えば大概の敵は問題ない、……と思っていた。
しかし、エボルは正面から振るわれる火のエルの拳を、それ以上の力を込めた拳によって弾き返す。水のエルが流れるような動きで死角を狙っても反応し、迎撃する。地のエルが大地を操り攻め立てるが、疑似ブラックホールによって迫り来る大地を消し飛ばす。
三柱ともそれぞれ異なる性質の攻撃を絶え間なく繰り出しているが、
「強いな。黒雄を手間取らせただけのことはある。」
エボル・スペースフォームは純粋に強い。黒雄か私以外が彼の相手をしていた場合、かなり危険だったかもしれない。
だが、黒雄が向かった先の様子も気になる。周囲には強力な空間干渉が張り巡らされているせいで、王城付近の状況を正確に把握できない。
「……仕方がないか。」
私は小さく息を吐き、右手を上げる。手のひらを向ける先にいるのは、火のエル、水のエル、そして地のエルだ。
「三人とも。」
「なんだ!? 良い策でもッ、思いついたのか!?」
火のエルがエボルと戦いながら返事を返してくるが、私は答えず、そのまま三柱へ力を伸ばす。次の瞬間、三柱の身体が一斉に輝いた。
「……は?」
火のエルが間の抜けた声を漏らす。
赤、青、黄。三色の光がそれぞれの身体を包み込み、その姿が急速に輪郭を失っていく。
「ちょ、ちょっと待て!?」
三柱の肉体が完全な光体へと変わり、宙へ浮かび上がった。
『何をするつもりだ!?』
「このままでは勝てなさそうなのでな。」
『いや、それは分かるけど! 俺たち今どういう状況!?』
「問題ない。」
『その言い方が一番不安なんだけど!?』
私は三つの光を見上げ、両手を合わせる。そして、
「合体!」
『いや、何言ってんの!?』
火のエルの叫びと同時に、三つの光が激突。赤、青、黄の三色の光が混ざり合い、巨大な光の柱となって天へ立ち昇る。
「……何だ?」
さすがのエボルも動きを止め、目の前で起きている現象を見上げた。光の中で、一つの人影が形作られていく。
三柱それぞれの力が一つの肉体へと収束し、やがて眩い光が弾け飛んだ。
「……。」
そこに立っていたのは、先ほどまでの三柱のエルではない。
右腕には炎を思わせる赤の力、左腕には水を象徴する青の力。そして脚部には、大地を司る黄の力。三つの力を一つの身体に宿した戦士が、ゆっくりと顔を上げる。
――アギト・トリニティフォーム。
エボルが僅かに身構えた。
「……それが切り札か?」
『いや、それは俺らもよく分かってないんだけど!?』
トリニティフォームから火のエルの声が響く。
『何してんの!? 俺たち、どうなってんの!?』
「ヨシ、成功して良かった。」
『良かった、じゃねぇよ!』
「三柱の力を一つにまとめてみた。」
『見れば分かるよ! なんでまとめたのか聞いてるんだよ!』
「単純にエルロード三柱分の力で戦った光のエルも強かったが、今回は三つの力を掛け合わせた。ただ足すよりも強いはずだ。」
水のエルと地のエルから反論がないところを見ると、どうやら困惑しているのは火のエルだけらしい。
「では、頼んだ。」
『待て待て待て! いきなり三人合体で戦うとか――』
高速移動で間合いを詰めてきたエボルを相手に、トリニティフォームの身体が反応する。
「――っ!?」
エボルの攻撃を水を纏う左腕が受け流し、炎を宿した右拳が振り抜かれる。地の力がその肉体を支える。
「ぐぅッ!?」
エボルの身体が大きく吹き飛び、瓦礫の山へと叩き込まれた。
『…………。』
自らの右拳を見つめ、火のエルが沈黙する。やがて、ぽつりと呟いた。
『……まあ、強いからいいか。』
どうやら納得してくれたらしい。
ーーーーー
「フフフッ……。」
誰にも知られることのない……いや、その場所に引きこもっていること自体は、既に一部の人たちに知られているが、……そんな場所で、ある存在は笑みを浮かべていた。
自身の欠片であるインフィニティ・ストーン。宇宙に散らばったそれらが、集まり始めていることを感じ、その口元をゆっくりと吊り上げる。
「ついに始まったわね。ストーンを宿す者たちが集い、運命の歯車は回り出す。やがて七つ全てが――」
そこで、ある存在の言葉が止まった。
「……………あれ?」
改めて感じる力を一つずつ数えていく。一人、二人、三人………、五人?
「……あれ?」
もう一度数える。
「……ほぼ……集まってる?」
想定していたより、明らかに多い宿す者の波動の数にビビりつつも、その存在は確認を続ける。
「いや、待って。宿す者だけじゃない。石の方も……リアリティ、タイム、パワーとマインドが二つずつ、……二つずつ?」
一つずつ指を折りながら数えていき、その表情から先ほどまでの余裕が消えていく。
「………なんで宿す者が石の方になってるの?………ええっと。つまり、ほぼじゃなくて、宿す者は今この瞬間、全員が同じ場所にいるってこと?」
より詳しく数と詳細を確認していくと、
「……石の方も、ソウルとスペース以外は集まって、……あ。」
新たに現れた反応を見つけてしまう。
「スペースも来た…………。」
引きこもり状態から少し脱し、意識をより外に向け、視界も確保する。
エントリーナンバー1番、ストーンとなってしまった妻、本来のパワー・ストーン、その二つを宿し、エボルドライバーを使用中のパワーエボルこと、サノス。
エントリーナンバー2番、そのサノスの精神を、現在進行形で侵食し、マインド・ストーンを額に移したゾラエボルこと、ゾラ。
エントリーナンバー3番、リアリティ・ストーンを宿しつつ、ツイン・リアリティ・ストーン・ドライブを発動しているヴィスティナ。
エントリーナンバー4番、スペース・ストーンを宿しつつ、エボルドライバーとインフィニティ・トリガーで超パワーアップ中のエボル・スペースフォームこと、自称エボルト。
エントリーナンバー5番、水のエル、地のエルと合体し、その身に三柱のエルロードの力を宿しつつ、タイム・ストーンの力は温存しているアギト・トリニティフォームこと、火のエル。
エントリーナンバー6番、関係性だけで考えればおそらく自分の子供であり、どうやら各方面に力を分散しているため弱体化してはいるが、それでも十分強力な力を秘めているソウル・ストーンを宿す者、闇の力。
エントリーナンバー7番、私たちが引きこもる原因になったあの血みどろファイトから明らかにパワーアップしている究極の闇、クウガこと、十文字黒雄。
「……怖ぁ。」
思わず、本音が漏れた。
「何これ。宇宙大戦争でもやってんの?宿す者だけで宇宙滅ぼせるじゃない。」
ついでに、石の方の持ち主もロキとエンシェント・ワンであるため決して弱くはないのだが、上記の7人が大変なことになっているのである。まあ、戦い方や伸び代を考えると二人も負けてはいないのだが。
エントリーナンバー8番、他次元の支配者を数百年に渡って食い止め続けた大魔術師、エンシェント・ワン。
エントリーナンバー9番、氷の巨人の王族の血筋であり、アスガルドの王子。異なる未来では、時間と世界を支える真なる神へと至る可能性を秘めた存在、ロキ。
しばらく呆然と眺めていたその存在は、やがて深々と息を吐き、視線を逸らしつつ、
「……行かなきゃ駄目かしら。」
一人愚痴るが、誰も答えは返してくれない。もう一度、戦場を見る。
一部の戦場は戦闘を中断しているが、逆に戦闘継続中の場所はエグいことになっている。特に目の前。
紫と黄色の力を纏うゾラエボルと黄金の力を纏ったクウガ・アルティメットフォームが向き合う戦場。例のトラウマが蘇りかける。
「…………。」
ネメシスはそっと目を逸らし、
「行きたくないなぁ……。」
本音が漏れた。
「だって怖いもん。何よ、あそこ。インフィニティ・ストーンの複数持ちと自称神様たちが入り乱れてるじゃない。絶対行きたくない。」
しばらく悩み、やがて観念したように肩を落とした。
「……はぁ。」
先ほどまで浮かべていた黒幕らしい笑みは、もうどこにもない。
「準備しよ……。」
心底嫌そうに呟き、ある存在こと、ネメシスは戦場へ向かう準備を始めた。