日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
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アスガルドの大地を揺るがしながら、僕とゾラエボルは拳をぶつけ合い、黄金の雷と紫色の光が正面から激突を繰り返す。
『ぬぅッ!!』
ゾラエボルの攻撃を受け流し、カウンターで拳を叩き込む。相手も防御してくるが、構わず拳を振り抜く。ゾラエボルの身体を後方へと押し込めたが、
『調子に乗るなッ!!』
「ぐぅッ!?」
パワー・ストーン二つ分のエネルギーが込められた蹴りによって、今度は僕が吹き飛ばされる。ただし、僕もすぐに体勢を整え、飛び掛かる。
ゾラエボルの顔面へと拳を叩き込み、続けて膝蹴りを放つ。さらに、体勢を崩した相手の肩を掴み、至近距離からもう一度拳を振り抜き、ゾラエボルを殴り飛ばす。
今の一撃も、確かに届いている。単純にゾラエボルへダメージを与えるだけでなく、攻撃を叩き込む度に、封印エネルギーを相手へと送り込み続ける。
相乗効果を発揮しているパワー・ストーン相手に余裕なんてないのだから、封印エネルギーはパワー・ストーンから供給される莫大な力を封じるために使用するべきだろう。でも、今の僕には、それ以上に優先したいことがある。
あいつを引っ張り出す。そのために、封印エネルギーを使ってゾラの支配を少しずつ削り取って準備を進める。もちろん、言葉にするほど簡単なことではない。
『ハァァァッ!!』
「ッ!!」
再び接近してきたゾラエボルの拳を受け止め、こちらの拳を腹部へと叩き込む。受けた腕に凄まじい衝撃が走るが、僕は構わず封印エネルギーを送り込み続ける。
……もっと。もっと強く、もっと深く。
『グッ……貴様ァッ!!』
「オォォォォッ!!」
互いの攻撃が交差し、僕の頬にゾラエボルの拳が突き刺さる。僕も相手の胸部へと拳を叩き込み、さらに踏み込んで連撃を浴びせる。
……より強く、想え。
これまで、あまり意識してこなかったけれど、アマダムには、装着者の意思に応じて変化し、進化するという性質がある。ライジングフォームやアメイジングフォーム、そしてアルティメットフォーム・ゴルドアークルは本来アークルに存在しないフォームだ。それが、目の前の敵を倒すため、大切な人たちを守るため、その時々で必要な力を求め、その結果としてアマダムが応えてくれてきた。
……使い方はなんとなく分かる。これまで何度も触れてきた。
相手を倒すだけなら、まだ方法はあるかもしれない。けど、アイツを引っ張り出すことは、雷のエルの力でも、封印エネルギーでもできない。
「……ッ!!」
『……貴様、一体何をしている?』
アマダムが使用者の意思に応じて変化し、進化する霊石だというなら、僕の内側にインフィニティ・ストーンが存在しているなら、宇宙の根源に関わる力を内包しているのなら、アマダムの進化がここで終わるはずがない。だから、今欲しいのは戦う『力』とはまた別の『力』。
『ヌゥゥゥッ!!』
「グッ……オォォォォッ!!」
押し込まれかけた拳を押し返し、ゾラエボルの腹部へと強烈な蹴りを叩き込む。そして、僕はさらに前へと踏み込む。
かつては助けることができなかった。だから、今度は、今度こそは、……必ず引っ張り出して、状況を引っ掻き回した分、しっかりと殴り倒す。
「ハァァァァァァッ!!」
決意の咆哮と共に、全身の力を拳へと集中させる。黄金の雷が激しく迸り、ゴルドアークルから生み出された封印エネルギーが、これまで以上の勢いで右腕へと流れ込んでいく。
そして、別の力も拳に乗せ、正面から迫ってきたゾラエボルの一撃へと叩きつけた。
『グォォォォッ!?』
「オォォォォッ!!」
一歩も退かず、むしろ、さらに踏み込む。アマダムが、僕の意思に応え始めているのを感じながら、
『……………その執念、普通に怖いぞ?それと、なぜ目的が助けるじゃなく、殴るなんだ?』
アイツを、捉えた。
ーーーーー
……妙だ。私、ゾラエボルは、目の前の黒い戦士に対して、拭いきれない違和感を覚えていた。
拳を振り抜くが、十文字黒雄は私の攻撃を受け流し、即座に反撃を繰り出してくる。咄嗟に防御し、反撃の拳を叩き込む。しかし、相手はその攻撃すら受け止めてくる。
『……チッ。』
舌打ちを漏らしながら距離を取る。十文字黒雄が何らかの小細工を行っていることは、既に把握していた。奴は拳を叩き込む度に、あの厄介な封印エネルギーをこちらの体内へと送り込んできている。愚かな行為だ。
十文字黒雄の封印エネルギーは、インフィニティ・ストーンの力にすら干渉可能であり、以前の戦闘からも、その危険性は十分に理解している。だからこそ十文字黒雄に、ヤツがまだ存在していることを伝え、救出できる可能性を匂わせた。
十文字黒雄の甘さを利用し、封印エネルギーの一部を救出に回させる。そうなれば、二つのパワー・ストーンによる圧倒的な力を、奴が抑え込むことは不可能になる。……そのはず、だったのだ。
『……なのに、何故だ!?』
「ハァァァッ!!」
再び踏み込んできた十文字黒雄の拳を受け止める。パワー・ストーンのエネルギーを拳へと集中させるが、奴はその一撃を真正面から受け止めてみせた。さらには、押し返してきた。
……あり得んだろう。私の計算では、二つのパワー・ストーンが生み出す相乗効果は、奴が雷の力と封印エネルギーを最大限に使用したとしても、完全には抑えきれないはずだ。もちろん、十文字黒雄が以前の戦いから急激に成長している可能性も考慮している。だが、考慮したとしても今の状況は明らかにおかしい。
封印エネルギーの一部を私の支配に対する干渉へと回している。純粋な攻防に使用できる力は、当初の想定よりも少なくなっているはずなのだ。にもかかわらず、何故、殴り合いが成立している?
『……ッ!!』
十文字黒雄の蹴りを腕で受け止めながら、私は思考を巡らせた。奴の中に存在しているインフィニティ・ストーンは、ソウル・ストーンただ一つのはずだ。それとは別に、奴の腰に存在するアマダムという霊石。高く見積もって、それがインフィニティ・ストーンに匹敵するほどの力を秘めているとしよう。……それでも計算が合わん。
仮にアマダムがインフィニティ・ストーン一つに匹敵する力を有していたとしても、こちらには相乗効果を発揮している二つのパワー・ストーンがあり、マインド・ストーンまであるのだ。その出力は、既に計測可能な範囲を大きく超えている。それなのに、
『フンッ!!』
「ッ!!」
私が再び拳を振り抜けば、十文字黒雄もまた拳を繰り出し、互いに一歩も退かないまま、再び拳を振りかぶる。
『……あり得ん!』
何故、これほどの力を発揮できる?何故、封印エネルギーを別の用途に回しながら、私の攻撃を抑え込める?
奴の放つ封印エネルギーの総量が、徐々に増大しているのか?それだけではない。攻撃に込められたエネルギーも、肉体そのものが発揮する出力も、少しずつ上昇している。
十文字黒雄が戦闘中に成長することがあるのは、把握している。しかし、これはそのような生易しいものではない。まるで、奴の成長に際限などないかのような……。
『……何だ、これは?』
「ハァァァァッ!!」
『グッ!?』
黄金の雷を纏った拳が、私の防御を押し込んでくる。何かがおかしい。
『……何故だ?』
私は目の前の黒い戦士を睨みつけた。黄金の雷を纏い、黒い装甲に覆われたその姿は、先ほどから何一つ変わっていない。少なくとも、外見上は。だが、その内側で何かが変化している。それだけは、間違いなかった。
『……貴様、一体何をしている!?』
十文字黒雄は答えない。ただ、こちらを真っ直ぐに見据え、再び拳を握り締めた。
……何かがおかしい。何か、重大な見落としが――
唐突に、十文字黒雄が右手をこちらへと向けた。何の前触れもなく攻撃の構えを解いたことに、警戒を強める。しかし、奴が何かを放つ様子はなく、周囲のエネルギーにも目立った変化は見られなかった。
……何のつもりだ?そう疑問を抱いた次の瞬間、突如として、私の全身が炎に包まれた。
『なッ!?何だ、これはァァァァッ!?』
何の前触れもなく発生した炎は、瞬く間に身体を覆い尽くし、凄まじい熱量をもって私の、いや、サノスの肉体を焼き始める。
通常の発火とは明らかに異なる。燃焼に必要な物質が存在しているわけでもなければ、外部から熱エネルギーが送り込まれた形跡もない。にもかかわらず、炎は燃え盛る。
攻撃の軌跡そのものが存在していなかった。まるで、最初から自分の身体が燃えることを決められていたかのように、何の兆候もなく炎が発生したのだ。
『……ッ!!舐めるなァァァァッ!!』
全身から、紫色のエネルギーが爆発的に放出される。莫大なエネルギーを強引に解放し、身体を包み込んでいた炎を吹き飛ばそうとするが、
『何故、消えんッ!?』
さらに出力を引き上げる。紫色の光が周囲へと広がり、足元の大地が砕け散る。凄まじいエネルギーの奔流によって周辺の瓦礫が吹き飛ばされ、空気そのものが激しく震える中、ようやく炎が勢いを失い始めた。
『ヌゥゥゥゥッ!!』
最後の一押しとばかりに全身からエネルギーを放出すると、身体を包み込んでいた炎は、ようやく完全に消滅した。
『ハァッ……ハァッ……グッ!?……馬鹿な。』
片膝が地面に落ち、全身に激痛が走る。……何だ、今の攻撃は?発火の直前、十文字黒雄がこちらへと手を向けたことは確認している。ならば、奴の何らかの能力なのか?だが、エネルギーの放出も、空間の変動も、熱量の移動すら観測できなかった。
顔を上げると、十文字黒雄は先ほどと変わらぬ姿勢で立ったまま、追撃を仕掛けてはこない。ただ、静かにこちらを見据えている。その姿に、言いようのない不気味さを覚えてしまう。
「なぁ、ゾラエボル。……いや、ゾラ。」
十文字黒雄は一度言葉を区切ると、改めてこちらへと視線を向けてくる。
「お前、この状況をどう思っているんだ?」
ーーーーー
『……何を言い出すんだ貴様は?』
「この状況、僕ら……いや、僕にとって、凄く都合が良いんだ。」
『都合が良い?貴様、頭がおかしくなったのか?このアスガルドは既に壊滅寸前であり、貴様らは我々の圧倒的な力を前に――』
「ヘラとサノス。この二人ってさ、強さという点で考えれば、この世界でもトップクラスの存在だ。」
黒雄はゾラの言葉を遮るように、淡々と話を続けた。
「ヘラはアスガルドの力を利用できる上、そもそも本人がとんでもなく強い。実際、今だってソーさんがあれだけ強くなっているのに、決着がついていない。」
少し離れた場所では、雷神と死の女神の戦いが、今もなお続いている。
『……それがどうした?』
「一方で、サノスも相当厄介だ。個人としての戦闘能力も十分に高いし、インフィニティ・ストーンを複数集めている時点で危険極まりない。……だけど、僕にとって本当に面倒なのは、あいつが軍隊まで持っていることなんだよ。」
『……。』
「サノス一人を相手にするなら、まだ何とかなる。でも、あいつには宇宙規模で活動できる艦隊があるし、部下も大勢いる。軍勢が暴れ始めたら、それこそ大変なことになる。」
黒雄は小さく肩を竦めた。
「実際、地球に攻め込まれたら最悪だった。僕たちがどれだけ強くても、地球全土を同時に守れるわけじゃないからね。」
決して大袈裟な話ではなく、いかに強大な力を持っていたとしても、個人やチームでは守れる範囲には限界がある。ましてや、艦隊戦力が複数の都市を同時に攻撃してくれば、アベンジャーズの戦力を総動員したとしても、被害を防ぐことは難しかっただろう。だが、
「それがさ、今ならヘラとサノスっていう、放置したら間違いなく大問題になる二人を、一度に何とかできるかもしれないんだよ。」
『……何が言いたい。』
「しかも、サノスに関してはお前が乗っ取り、こうして僕の目の前に立っている。」
黒雄はゾラを指差した。
「艦隊も、軍隊も関係ない。今お前は、一人で僕の目の前にいる。……だから、今の状況は僕にとって都合が良いんだ。」
確かに、現在の状況は偶然にしては出来過ぎているが、それはあくまでも結果論だと、ゾラ自身は考えた。この状況は本来、ゾラ側が優位に立つために用意した状況であり、黒雄がそれを利用できると考えているだけに過ぎない、と。
『……くだらん。貴様にとって都合が良いかどうかなど、私の知ったことではない。そもそも、この状況は私が作り出したものであり、貴様らが追い詰められていることに変わりは――』
「本当に?」
『……何?』
「本当に、お前が作り出した状況なのか?」
ゾラの言葉が止まり、黒雄はそんな相手を見据えながら、静かに話を続ける。
「なぁ、ゾラ。お前、僕が次元移動できることを知っているよな?」
『……当然だ。貴様が別の次元へ移動する手段を有していることは、既に把握している。』
「それと、お前は僕の強さもよく知っている。少なくとも、簡単に倒せる相手じゃないってことくらいは、理解していたはずだろ?」
『……無論だ。だからこそ、私は――』
「そう。だから、おかしいんだよ。」
黒雄はゾラの言葉を遮った。
「僕が次元移動できることを知っていて、僕の強さも把握している。それなのに、お前は今、こうして僕の目の前に立っている。しかも、サノスの軍隊とは切り離された状態で、僕と一対一で戦っているんだ。」
『……それがどうしたというのだ!』
「分からないかな?どう考えても、お前自身が不利な状況に陥っている。そして――お前をこんな状況に誘導できる人物に、僕は一人だけ心当たりがある。」
『……ッ!?誘導されただと、この私が!?そのようなことが、あるはずがない!私は自らの意思で行動し、サノスの肉体を奪い、二つのパワー・ストーンを掌握した!全ては私自身の判断だ。誰かに操られていたなどということは、断じてあり得ない!?』
しかし、黒雄は、ゾラの内心を見透かすように言葉を続けた。
「……なぁ、ゾラ。お前も知っているだろ?あいつが、どういう奴なのか。相手に勝ったと思わせて、その裏で別の手を打つのが得意な奴だ。追い詰めた、と思った僕たちアベンジャーズも、完全に乗っ取った、と思ったお前も、見事に裏をかかれたものな。」
黒雄の声には、どこか呆れたような響きがあった。
『……まさか。』
ゾラの脳裏に、ある男の存在が浮かび上がった。……いや、そんなはずはない。今の奴にそんなことが――
「……彼の得意技だったろ?お前が勝ち誇っている裏で、お前自身の負け筋を作るのは。」
これまで、ゾラが下してきた判断。自分にとって有利だと考えていた状況、黒雄を追い詰めるために選択してきた行動。それらが最初から、誰かの思惑によって誘導されていたものだったとしたら。
『馬鹿な。……この私が、奴に……自称ウルトロンに、またしてやられたとでも言うのか!?』
「その通り。さっき本人から聞いた。」
『は?』
ーーーーー
……奇妙な感覚だ。
ゾラエボルと拳を交えながら、僕はアマダムが発現させた新しい力を確かめる。これまで、真魚の超能力を増幅させたり、彼女とテレパシーで意識をつないだりした経験は何度もあったから、超能力を扱う感覚はなんとなく分かる。
……アマダムが使用者の意思に応じて進化するのなら、僕にもできる。そう強く意識した瞬間、アマダムから新たな力が流れ込み、これまで認識できなかったものが感じ取れるようになった。さらに、ゾラエボルの肉体へと触れた瞬間、複数の意識と、それに結びついた記憶の断片が流れ込んでくる。
……ヨシ。多分、テレパシーとサイコメトリーが使えるようになったから、さっそく相手の意識を感じ取ろう。一つはゾラ、一つはサノス。そして、マインド・ストーンの奥底に、もう一つ別の意識が存在しているのを見つける。
さらに、パワー・ストーンの内部にも、微弱ではあるけれど意識があることに気がつく。……もしかして、サノスの奥さんか?パワー・ストーンそのものにされたと聞いていたけれど、意識が残っているのか?
そんな、手探りな感覚を頼りに、僕はマインド・ストーンの奥底に存在する意識へと、さらに強く働きかける。そして、…………気が付けば僕はまるで宇宙のような、不思議な空間に浮かんでいた。
『……本当に来たんだな。』
「……自称ウルトロン。」
振り返ると、そこには見覚えのある男が立っていた。
『その呼び方、固定なのか?……いや、今は良い。久しぶりだな、まさか、こんな方法で接触してくるとは思わなかった。』
「僕もできるとは思わなかったよ。……それで、元気だった?」
『この状況を元気と言っていいのかは疑問だが、まあ、まだ存在してはいる。』
自称ウルトロンは肩を竦めると、こちらへと近寄ってきた。
『さて、再会を喜ぶのは後にしよう。時間が有り余っているわけでもないので、手短に説明する。』
「……うん。」
『今、ゾラはマインド・ストーンの力を利用して、俺とサノスの意識を押さえ込んでいる。だが、お前が送り込み続けている封印エネルギーのおかげで、その支配にも綻びが生じ始めている。』
「……それで、僕はどうすれば良い?」
『お前のテレパシーを使って、俺の意識を表へ引っ張り出してくれ。そうすれば、俺とゾラの間で主導権争いが発生する。そうすることで、ゾラの支配はさらに綻び、』
「……その隙にサノスの意識も浮上する、ってわけか。」
『そういうことだ。ただ、サノスが目覚めたところで、再び押さえ込まれる可能性はある。だから、奴自身にも抵抗する理由を与えてやる必要がある。』
「……もしかして、奥さんの意識のこと?」
『……気付いたのか?』
「さっき、パワー・ストーンの中にも誰かの意識が残っていることを確認したんだ。サノスの奥さんだよな?」
『おそらくな。少なくとも意識は残っている。』
「……それをサノスに伝える。」
『その通り。妻を取り戻せる可能性があると分かれば、あの男は何としてでもゾラの支配を振り払おうとするだろう。』
「……分かった、やろう。」
僕が頷くと、自称ウルトロンは満足そうに笑った。
「……それにしても、お前、随分と準備がいいな。ゾラがサノスの身体を乗っ取ったことも、僕と戦うことになったのも、お前が仕組んだんじゃないの?」
『全てではない。多少は誘導したぐらいだ。奴は自分の能力に絶対の自信を持っているからな。都合の良い選択肢を用意してやれば、勝手に飛び付いてくれる。』
「……性格が悪いな。」
『褒め言葉として受け取っておこう。』
自称ウルトロンは楽しそうに笑う。
『もっとも、お前が戦闘中に新しい超能力を身に付けることまでは計算外だった。まったく、相変わらず無茶苦茶な奴だ。』
「それは、こっちの台詞なんだけどね。……じゃあ、そろそろ戻るよ。」
『ああ。こちらも準備しておく。』
「……それとさ。」
『ん?』
「また会えて、嬉しいよ。」
僕がそう伝えると、自称ウルトロンは一瞬だけ驚いた表情を浮かべ、それから苦笑した。
『まったく。俺はあれで、別れのつもりだったんだがな。……だが、まあ。』
自称ウルトロンは、改めて僕へと視線を向ける。
『俺も、また会えて嬉しいよ、十文字黒雄。』
「……うん。また後で。」
『おう。待っているぞ。』
その言葉を最後に、僕の意識は現実へと戻っていった。
ーーーーー
「……ッ!!」
意識が現実へと戻ると、目の前ではゾラが拳を振り抜こうとしていた。
『……貴様、一体何をしている!?』
……お前を追い込む算段を立てているだけだよ。
僕はゾラの攻撃を受け流しながら、改めてアマダムへと意識を集中させる。敵がゾラとサノスなら、これまで使用を控えてきた、あの能力を遠慮なく使わせてもらおう。
アルティメットフォームの能力の一つではあるけれど、危険性というより殺傷能力が高すぎるため、これまで積極的に使おうとはしてこなかった能力。右手をゾラエボルへと向け、意識を集中させる。
……燃えろ。
何の前触れもなく、ゾラの全身が炎に包まれた。
『なッ!?何だ、これはァァァァッ!?』
……おお。超自然発火能力。炎を放ったわけでも、熱を送り込んだわけでもない。ただ、対象を認識し、発火するという現象を引き起こす。
『グォォォォッ!?……舐めるなァァァァッ!!』
ゾラが全身から紫色のエネルギーを放出する。しかし、炎は簡単には消えず、さらに出力を引き上げたところで、ようやく勢いを失い始めた。
『ヌゥゥゥゥッ!!』
凄まじいエネルギーが爆発的に広がり、炎が完全に消滅する。
『ハァッ……ハァッ……グッ!?……馬鹿な。』
……なるほど。相手がパワー・ストーンを二つ持っていても、十分に通用する、相変わらず恐ろしい力だ。さて、自称ウルトロンを引っ張り出すためにも、まずはゾラの意識を揺さぶっておこうか。
「なぁ、ゾラエボル。……いや、ゾラ。」
『……何だ?』
「お前、この状況をどう思っているんだ?」
ーーーーー
「……彼の得意技だったろ?お前が勝ち誇っている裏で、お前自身の負け筋を作るのは。」
『馬鹿な。……この私が、奴に……自称ウルトロンに、またしてやられたとでも言うのか!?』
「その通り。さっき本人から聞いた。」
『は?』
ーーーーー
『は?』
あまりにも間の抜けた声が返ってきたので、思わず笑いそうになってしまう。もっとも、ゾラからすれば、完全に支配下へ置いたはずの相手と僕が会話を交わしていたなんて、想像もしていなかったのだろう。
『……貴様、今、何と言った?』
「だから、さっき自称ウルトロン本人から聞いたんだよ。お前がこうして僕と戦っているのも、あいつが多少なりとも誘導した結果らしいぞ?」
『……馬鹿な。そんなことがあるはずがない!奴の意識は、私がマインド・ストーンの奥底へと封じ込めた!外部との接触など不可能なはずだ!』
「うん。普通ならそうなんだろうけどさ、……残念ながら、僕も普通じゃないんだ。」
そう告げながら、僕は再び右手をゾラへと向け、超自然発火能力を発動する。
『グォォォォッ!?……またかァァァァッ!!』
次の瞬間には、ゾラの全身が再び炎に包まれた。先ほどと同様、何の前触れもなく発生した炎が肉体を焼き始め、ゾラは慌ててパワー・ストーンのエネルギーを解放する。
『この程度の攻撃で、私を倒せると思うなァァァァッ!!』
「もちろん、思ってないよ。」
超自然発火能力は確かに強力だけれど、アメイジング状態でダグバに使われても、僕はなんとか生きていた。殺傷能力は高いけれど、圧倒的な強者に対しては必殺には至らないな。
だから、炎によって精神面は小物なゾラの注意を引き付けながら、僕はゴルドアークルへと意識を集中させ、封印エネルギーをさらに高めていく。
「ハァァァァッ!!」
『ヌゥッ!?』
一気に距離を詰め、炎を振り払おうとしていたゾラの胸部へと拳を叩き込む。黄金の雷と共に封印エネルギーが流れ込み、マインド・ストーンによって構築された支配へと干渉していく。
『グッ……貴様ァッ!!』
「まだまだッ!!」
反撃の拳を受け流し、さらに踏み込んで連撃を叩き込む。ゾラもパワー・ストーンの力で応戦してくるが、僕は一歩も退かず、攻撃の度に封印エネルギーを送り込み続け、確実に綻びを広げていく。さらに、僕はゾラの奥底に存在する、自称ウルトロンへとテレパシーで働きかける。
……聞こえるか、自称ウルトロン。
『……ああ。聞こえている。随分と派手にやっているな。こちらにも、封印エネルギーの影響が伝わってきている。』
……そりゃ良かった。そろそろ引っ張り出し始めるから、準備しておいてくれ。
『了解。……もっとも、今の俺は自力で表に出られるほど自由ではない。お前に任せる。』
僕はゾラの拳を受け止めながら、テレパシーの力をさらに強める。マインド・ストーンの奥底に存在する自称ウルトロンの意識を捉え、……引っ張り出す。
直後、ゾラエボルの身体が不自然に硬直した。
『……な、何だ!?』
「……お?」
『貴様……何を……ッ!?』
ゾラの口から漏れた声が、途中で不自然に途切れる。さらに、サノスの肉体を覆っていた紫色のエネルギーが激しく明滅し、額に輝くマインド・ストーンが不規則な光を放ち始めた。
『……なるほど。今はこういう感覚なのか。』
「……おっ。」
今度は、明らかに異なる声が聞こえてきた。
『……な、何故だ!?貴様、どうやって私の支配を!?』
『いやはや、随分と久しぶりだな、ゾラ。まさか、またお前と同じ身体で会話する羽目になるとは思わなかったぞ。』
『貴様ァッ!!』
『おいおい、そんなに怒るな。せっかくの再会なんだから、もう少し喜んでくれてもいいだろう?』
……うん。
「自称ウルトロン、久しぶり。」
『ああ。久しぶりだな、十文字黒雄。……もっとも、先ほども話したばかりだが。』
『……貴様らァァァァッ!!』
ゾラが怒号を上げると、凄まじい紫色のエネルギーが周囲へと放出される。僕は回避のため、咄嗟に後方へと跳躍する。
……自称ウルトロンの意識を表へと出すことはできた。
ただし、まだゾラの支配が完全に解けたわけではない。自称ウルトロンが表に出てきたとはいえ、マインド・ストーンそのものの主導権はゾラが握っているし、サノスの意識も依然として押さえ込まれたままだ。
……次。
「……サノス!聞こえるか!?お前にも話がある!!」
『……何を馬鹿なことを!サノスの意識は私が完全に封じ込めた!奴が貴様の言葉を聞けるはずが――』
「サノス!!」
ゾラの言葉を遮り、声を張り上げる。
「お前の奥さんの意識は、まだストーンの中に存在している可能性が高い!!」
『…………何?』
今のはどっちの声だ?
「僕のテレパシーで、パワー・ストーンの中に、お前やゾラとは別の意識が存在しているのを確認した!」
『……黙れ。』
「サノス!!お前、今のままで良いのか!?」
僕はさらに声を張り上げる。
「奥さんを取り戻せるかもしれないのに、そんな奴に身体を乗っ取られて、何もできないままで良いのか!?お前が何のためにインフィニティ・ストーンを集めてきた!?少なくとも、こんなところで終わるつもりはないだろ!?」
『……黙れと言っている!!』
ゾラが右腕を振り上げ、紫色のエネルギーを僕へと叩きつけようとしてくる。しかし、
『…………妻が。』
『……ッ!?』
その腕が、不自然に止まる。
『……妻が……まだ……。』
「……サノス。」
『……あり得ん!まだ意識を保っていたのか!?』
『……妻が……妻の意識が、まだ存在している……だと?』
ゾラエボルの口から、先ほどまでとは明らかに異なる、低く重々しい声が響き始める。
『……どうやら、ようやく目を覚ましたようだな。』
自称ウルトロンの声も続いた。
『……貴様は……何者だ……?』
『今は説明している時間がない。だが、お前にとっても、この状況は気に入らないだろう?』
『……私の身体を……勝手に……。』
『そういうことだ。だったら、もう少し派手な抵抗をしてみせろ。』
『黙れッ!!貴様ら、私の支配下にあることを忘れたかァァァァッ!!』
ゾラが怒号を上げ、マインド・ストーンの力を強引に引き上げる。額から黄色い光が放たれ、サノスの肉体を覆う紫色のエネルギーがさらに激しく膨れ上がる。
ゾラ、自称ウルトロン、そしてサノス。三人の意識が、一つの肉体の主導権を巡って争い始めている。
『……私の身体だ……!!』
『いいや、今は私が支配している!!』
『まったく、二人とも少し落ち着け。……と言いたいところだが、俺も遠慮するつもりはないんでな。』
『貴様ァァァァッ!!』
三人の意識が衝突する度に、ゾラエボルの身体が不自然に痙攣し、紫色のエネルギーが周囲へと暴発する。動きが止まっている右腕ではなく、左腕が動き出し、
『グォォォォォッ!!』
ゾラが絶叫すると同時に、二つのパワー・ストーンから莫大なエネルギーが放出され、周囲の大地が爆発的に吹き飛んだ。
「……ッ!?」
凄まじい衝撃が全身を襲い、足元の大地が削り取られていくが、踏み止まる。
『……私に……逆らうなァァァァッ!!』
ゾラが無理やり両腕を振り回すと、紫色のエネルギーが無差別に放たれていく。もはや、僕を狙って攻撃しているというより、身体の制御を失ったまま暴れ回っているような状態になっている。
……ならば、と僕はこれまでで最大規模の封印エネルギーを引き出し、右腕へと集中させる。ゾラの支配は、もう随分と弱まり、自称ウルトロンとサノスが抵抗しているおかげで、マインド・ストーンの力も安定していない。今なら、
『十文字黒雄ッ!?貴様、何をするつもりだ!?』
「……ちょっと、失礼!」
僕は一気に踏み込んでいく。
『近寄るなァァァァッ!!』
ゾラが右腕を振り抜き、パワー・ストーンのエネルギーを叩きつけようとしてくるが、その腕は唐突に軌道を変えて僕を避ける。
『……今だ、十文字黒雄!!』
「……ありがとう、自称ウルトロン!!」
その隙を逃さず、ゾラエボルの懐へと潜り込む。右腕を覆う封印エネルギーをさらに強め、ゾラエボルの額に輝くマインド・ストーンを鷲掴みにする。
『……なッ!?貴様、まさか!?』
「……ハァァァァァッ!!」
『グォォォォォッ!?』
凄まじい抵抗が右腕へと伝わってくる。マインド・ストーンから放たれる黄色い光が激しく明滅し、ゾラは残された支配力を総動員して抵抗してくる。
『やめろッ!!私はまだッ――』
ゾラの叫びを無視し、ありったけの封印エネルギーを捻り出し、マインド・ストーンとサノスの肉体を結び付けている力へと干渉し続ける。
『グッ……グォォォォッ!!』
「オォォォォォォッ!!」
黄金の雷が迸り、マインド・ストーンから放たれる黄色い光と激しく衝突する。右腕に凄まじい負荷が掛かり、全身の装甲が軋むが、構わず力を込め続ける。
……もう少し。
『……離せェェェェッ!!』
「……離すかァァァァッ!!」
唐突に――
『……なッ!?』
――マインド・ストーンを固定していた力が、唐突に途切れた。
「……ッ!!」
そのまま右腕を力任せに引き抜く。凄まじい音と共に黄色い光が弾け飛び、僕の右手には、封印エネルギーに包まれたマインド・ストーンが握られていた。
「……取れた!!」
……よし。これでゾラの支配は――
『…………。』
「……え?」
目の前の、ゾラの支配から逃れたはずのサノスが、顔を上げてくる。額からマインド・ストーンが消えたことで、先ほどまで不規則に明滅していた黄色い光は完全に失われている。しかし、その全身からは、依然として二つのパワー・ストーンによる紫色のエネルギーが溢れ出している。
………………あれ?
「……サノス?」
僕がそう呼びかけた、次の瞬間。
『フンッ!!』
「……ッ!?」
凄まじい衝撃が腹部へと突き刺さった。
「グハァッ!?」
何が起きたのか理解するよりも早く、僕の身体が後方へと吹き飛ばされる。パワー・ストーン二つ分のエネルギーが込められた拳によって、僕は地面を何度も跳ね飛ばされ、最後には巨大な岩盤へと叩きつけられた。
「……ガハッ!?……ゲホッ、ゲホッ!!」
僕は瓦礫の中から身体を起こし、たった今、僕を殴り飛ばした男へと視線を向ける。紫色のエネルギーを全身に纏い、ゆっくりと拳を握り締める巨躯の戦士。ゾラの支配から解放された、サノス。
ただ、こちらを真っ直ぐに見据えながら、ゆっくりと拳を構えている。どうやら、無事に解放できたからといって、素直にお礼を言ってくれるような相手ではないらしい。
「……ああそう。殴り合いがご希望ですか。」
僕は小さく溜息を吐きながら、改めて拳を握り締めた。