日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
少し短いです。
評価、感想をお待ちしています。
「……ああそう。殴り合いがご希望ですか。」
小さく溜息を吐きながら、改めて拳を握り締める。対するサノスは、紫色のエネルギーを全身に纏ったまま、こちらを真っ直ぐに見据えていた。
『……まずは、礼を言っておく。妻の意識が、今なおパワー・ストーンの中に存在している可能性。私では、決して知り得なかったことだろう。』
「……ああ、うん。」
『そして、私の肉体を取り戻してくれたことにも感謝している。貴様がいなければ、私はあの男の支配から逃れることができなかったかもしれん。』
……素直にお礼を言ってくれるんだな。だったら、さっきの一撃は何だったんだと思わなくもないけれど、
『……だが、十文字黒雄。貴様の存在は、私がこれから行う生命の選別において、最大の障壁となる。故に、今この場で排除させてもらう。』
……生命の選別?
「……なぁ、サノス。お前の目的って、宇宙全体の生命を、無差別に、平等に、半分にすることじゃないのか?」
『それは、かつての私が考えていたことだ。』
サノスはゆっくりと首を横に振ると、パワー・ストーンが埋め込まれた両腕を広げた。
『オーディンにも告げたが、今の私が望むのは、残すべき命だけを残す、生命の選別だ。価値のない命を間引くことで、生かす価値のある命を守り、ひいては宇宙全体を守る。それこそが、私の成すべきことなのだ。』
「……価値のない命、ね。」
『そうだ。宇宙の資源は有限であり、全ての生命を無制限に生かし続けることなど不可能だ。ならば、残すべき命を選び、それ以外を切り捨てるしかあるまい。』
「……ちなみに、その選別の基準は何なんだ?」
僕がそう尋ねると、サノスは当然のことを聞かれたとでも言いたげに、ゆっくりと胸を張った。
『オーディンも聞いてきたな。……無論、私だ。私が選び、私が決める。何を残し、何を滅ぼすべきなのか、その全てを私が判断する。私こそが絶対なのだ。』
なるほど。宇宙全体を守ろうとしていること自体は、本人なりに本気なんだろうけれど、そのために誰を生かして、誰を殺すのかを、全部自分一人で決めるつもりなのか。
…………………冗談じゃない。
「……そんなこと、させるわけないだろ。」
全身から黄金の雷が迸り、ゴルドアークルが眩い輝きを放ち、黒い装甲の各所を黄金の稲妻が駆け巡る。足元の大地が砕け、周囲の空気が激しく震え始める中、僕は目の前の相手を真っ直ぐに睨みつけた。
「お前が何を考えていようが、どんな理屈を並べようが、そんな勝手な理由で誰かの命を奪わせるつもりはない。」
『……愚かな。貴様ほどの力を持つ者ならば、理解できると思っていたのだがな。』
サノスは残念そうに首を横に振ると、両腕に宿るパワー・ストーンの力を解放する。紫色の光が全身から溢れ出し、黄金の雷と正面からぶつかり合った。
『十文字黒雄。貴様は、私が生かす価値があると認めた生命の一つだ。その力も、精神も、宇宙の未来に必要なものだ。』
「……それはどうも。」
『だが、私に抵抗するというのならば、話は別だ。貴様ほどの存在であろうと、その命を散らすことになるかもしれんぞ?』
「……やってみろよ。」
僕は拳を握り締め、腰を落とす。
『……良かろう!!』
次の瞬間、互いの姿が掻き消えた。
「ハァァァァァッ!!」
『ヌゥゥゥゥッ!!』
黄金の雷を纏った右拳と、二つのパワー・ストーンの力を宿した右拳が真正面から激突、轟音と共に凄まじい衝撃波が発生し、周囲の大地が爆発的に砕け散った。しかし、
「……ッ!?」
互いの拳が衝突した直後、僕の右腕だけが、凄まじい力によって強引に弾き飛ばされた。
「グッ……!?」
右腕が大きく跳ね上がり、上半身の体勢が崩れる。……まずい。これまでゾラエボルと殴り合っていた時とは、明らかに力の質が違う。だけど、まだッ!!
「オォォォッ!!」
崩れた体勢を利用して身体を捻り、サノスの側頭部へと蹴りを叩き込もうとする。しかし、サノスは左腕を構え、その一撃を受け止めてみせた。
『甘い!』
「……ッ!?」
蹴りを防がれた直後、サノスが動く。踏み込みと同時に拳を振り抜き、無防備になった僕の胴体へと、その剛腕を叩き込んできた。
「ガハァッ!?」
凄まじい衝撃が全身を貫き、黄金の雷が消し飛ぶ。アルティメットフォーム・ゴルドアークルの装甲越しに、内臓まで押し潰されるような激痛が走り、僕の身体は抵抗する間もなく後方へと吹き飛ばされた。
「グッ……ガァァァッ!?」
地面に叩きつけられ、そのまま大地を削り取りながら吹き飛ばされる。途中に存在していた巨大な岩盤を幾つも粉砕し、最後にはアスガルドの大地に深い溝を刻みながら、ようやく勢いが止まった。
「……ガハッ!?……ゲホッ、ゲホッ!!」
……嘘だろ。
瓦礫の中で身体を起こそうとするが、全身に走る激痛によって思わず膝をついてしまう。たった一度の攻防で、腕と脚は痺れ、かなりのダメージを負ってしまった。
ゾラエボルも二つのパワー・ストーンを使用していたし、マインド・ストーンまであった。でも、今のサノスの一撃は、これまで受けてきた攻撃とは明らかに別物だ。
『……どうした、十文字黒雄。先ほどまでの威勢は、その程度のものだったのか?』
紫色のエネルギーを全身に纏い、悠然とこちらを見据える巨人。その姿には、先ほどまでゾラが見せていた焦りも、怒りも、まるで存在していなかった。
「……ハッ。」
思わず、乾いた笑いを漏らしてしまうが、冷静に考えればこの結果は当然である。ヒドラの科学者と、MCUの絶対的悪役(ヴィラン)。そもそも、比較すること自体おこがましい組み合わせだった。
「……こりゃ、思っていた以上に厄介だな。」
僕はゆっくりと立ち上がり、改めて拳を握り締める。
「……なぁ、サノス。一つ聞いてもいいか?」
改めて拳を構えながら、声を掛ける。サノスは紫色のエネルギーを全身に纏ったまま、こちらを見据えていたが、
「……奥さんのことは良いのか?」
その言葉を聞いた瞬間、サノスの動きが僅かに止まった。
『……何が言いたい?』
「お前の奥さんの意識は、今もパワー・ストーンの中に残っている可能性が高い。だったら、僕と戦うより、問題を解決することが先決だと思うんだけど。」
『……心配には及ばん。インフィニティ・ストーンを全て集めれば、妻の問題も解決する。』
……ああ、そういう考え。
『私は既に殆どのストーンの在処を把握しつつある。そして、これまで存在すら確認できなかったソウル・ストーン。その力を宿す者を、ようやく見つけることができた。』
サノスはそう告げると、ゆっくりと僕の腰へと視線を向けてくる。……いや、僕はエゴ・ストーンとかいう別物らしいです。
『インフィニティ・ストーンには、石そのものと、その力を宿した者が存在する。両者を揃える、または石を確保できるのであれば、それに越したことはない。だが、石の在処が分からぬのであれば、宿主を石へと変えるほかあるまい。十文字黒雄。貴様には恩がある。妻の意識が残されている可能性を教えてくれたこと。そして、私をあの男の支配から解放してくれたこと。……その恩を忘れるつもりはない。』
サノスは静かにそう告げると、パワー・ストーンへと視線を落とした。
『だが、私には果たさねばならぬ使命がある。そのためには、全てのストーンが必要なのだ。』
「……つまり?」
『貴様を石へと変え、その力を手に入れる。案ずるな。全てが終わった後、必ず元の姿へと戻すと約束しよう。』
「……僕を石にする、ってことか。」
随分とあっさり言ってくれる……って、
「危なッ!?」
『フンッ!!』
会話の途中だというのに、サノスが唐突に踏み込んできた。咄嗟に身体を捻った直後、先ほどまで僕の頭があった場所を紫色の拳が通過する。拳圧だけで地面が抉れ、巨大な亀裂が周囲へと広がっていく。
「ちょッ!?まだ話してる途中だろ!?」
『必要なことは全て話した。』
サノスは拳を引き戻し、静かにこちらを見据えた。
『貴様が自ら、その身を差し出すことはあるまい?私も目的を諦めるつもりはない。ならば、これ以上言葉を重ねる意味はない。抵抗するならば、それも良い。だが、結果は変わらん。』
「さっきも言っただろ。……やってみろッ!!」
全身から黄金の雷を迸らせ、一気に間合いを詰める。対するサノスも真正面から踏み込んでくる。
「ハァァァァッ!!」
『ヌゥンッ!!』
こちらの攻撃が直撃しても、サノスは僅かに身体を揺らしただけで、その場から退がらない。
「……ッ!!」
即座に左拳を振り抜き、サノスの顔面を狙う。だが、相手は首を僅かに傾けるだけで回避すると、僕の左腕を掴み、そのまま強引に引き寄せてきた。
『フンッ!!』
「ガハァッ!?」
腹部へと膝が突き刺さり、凄まじい衝撃に身体が折れ曲がる。さらに、サノスは僕の左腕を掴んだまま身体を捻り、その巨体からは想像もできないほど滑らかな動作で、地面へと叩きつけてきた。
「グァァァッ!?」
僕自身が叩きつけられたことで大地が陥没し、全身に激痛が走る。だが、サノスはそれで攻撃を終えることなく、倒れた僕の頭部へと右拳を振り下ろしてきた。
「……ッ!?」
咄嗟に身体を転がし、その一撃を回避する。直後、先ほどまで頭があった場所が更に陥没し、巨大な亀裂が周囲へと広がる。無理矢理体勢を立て直し、サノスへと視線を向けるが、
『……悪くない反応だ。だが、その程度では私には勝てん。』
……僕は無言のまま地面を蹴り、再びサノスへと飛び掛かった。
「ハァァァァッ!!」
黄金の雷を纏った拳を振り抜く。サノスは左腕で受け止めるが、構わず連続して拳を叩き込む。
雷鳴を轟かせる連打を打ち続けることで防御をこじ開け、サノスの腹部へと蹴りを放つ。しかし、
『……フン。』
「……ッ!?」
サノスは僕の蹴りを右手で受け止めると、そのまま強引に押し返してきた。体勢が崩れ、サノスの反撃の拳が僕の顔面へと迫る。
「……ぐぅッ!?」
咄嗟に右腕を掲げて防御するが、凄まじい衝撃によって身体が後方へと押し込まれる。さらに、サノスは踏み込み、僕の胴体へと攻撃を叩き込んできた。
「ガハァッ!?」
サノスは追撃の手を緩めず、
『ヌゥンッ!!』
「……ッ!?」
吹き飛ばされた僕を追い掛け、凄まじい速度で間合いを詰めてくる。体勢を立て直し、迫ってきた拳を受け流そうとするが、サノスは僕の動きを見切っていたかのように拳の軌道を変え、そのまま右肩を掴んできた。
「……なッ!?」
『遅い。』
直後、サノスの額が僕の顔面へと叩き込まれた。
「グァッ!?」
強烈な頭突きによって視界が揺れる。さらに、肩を掴まれたまま身体を引き寄せられ、今度は腹部へと拳が突き刺さった。
「ガッ!?」
内臓を押し潰されるような激痛に、思わず呼吸が止まる。咄嗟に全身から黄金の雷を放出し、サノスを強引に押し返す。その隙に地面を蹴り、どうにか距離を取った。
「……ハァッ、ハァッ……!!」
呼吸を整えながら、サノスを見据える。圧倒的なパワーを持っているだけじゃない。拳の振り方、足運び、間合いの取り方、相手の動きを見極める判断力。その全てが、ゾラエボルとは、いや、これまで戦ってきた誰よりも洗練されている。
攻撃を仕掛ければ受け流され、体勢が崩れた瞬間には確実に反撃を叩き込まれる。逆に、こちらが防御へと回れば、圧倒的なパワーで強引に押し潰される。
『……どうした?貴様の力は、その程度ではないはずだ。』
サノスは静かにそう告げると、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた。その足取りには、焦りも、怒りもない。ただ、確実に目的を果たそうとする意志だけが感じられた。
……こいつ、本当に強い。
ゾラエボルとの戦いでは、どれほど激しい攻撃を受けようとも、相手の動きに隙を見出すことができたし、感情的になればなるほど動きも単調になっていた。だけど、サノスにはそれが通用しない。こっちが攻撃を仕掛ける前から、その動きを読まれているような感覚すらある。
そして、何よりも、
『…………。』
……この威圧感。サノスが一歩近づくたびに、全身が警鐘を鳴らしている。宇宙で戦い続け、数え切れないほどの敵を打ち倒してきた、生粋の戦士。信念と狂気を持って、宇宙中の生命を脅かすことで宇宙を救おうとする怪物。
……これまで戦ってきた相手とは、根本的に何かが違う。
『……十文字黒雄。抵抗を止め、その身を差し出せ。』
サノスは静かにそう告げると、両腕を下ろした。
『貴様ほどの戦士を、無意味に傷つけることは望まん。』
……本気で言ってるんだろうな。こいつにとっては、僕を石に変えることも、宇宙の生命を選別することも、全ては自分が果たすべき使命の一部なんだ。そして、そのためならば、どれほど多くの命を奪うことになろうとも、決して躊躇しない。
「……断る。」
『……そうか。残念だ。』
その言葉と同時に、両腕のパワー・ストーンが強烈な紫色の輝きを放ち始める。
「……ッ!?」
周囲の空気が激しく震え、足元の大地に無数の亀裂が走り、周囲に散らばっていた瓦礫が、凄まじいエネルギーの奔流によって次々と砕け散っていく。
『……ならば、力で示すしかあるまい。』
サノスはそう告げると、ゆっくりと右拳を握り締めた。
『貴様が抗おうと、私の使命は変わらん。』
ここまでの攻防で、僕はサノスにまともな一撃すら与えられていない。それどころか、相手の攻撃を防ぐだけで精一杯だった。……それでも、こいつを止めなければ、宇宙全体の命が危険に晒される。
無言のまま腰を落とし、改めて拳を構えた。全身から黄金の雷を迸らせ、ゴルドアークルへと意識を集中させる。
……絶対に、負けられーー
『……来い。』
その静かな一言を聞いた瞬間、背筋に冷たいものが走った。これまでにも、強敵と戦ったことはある。だけど、今、目の前に立っている男はーー
ーーダグバよりも強い。
『へぇ。』