日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
『へぇ。』
ーーーーー
それは、過去の記憶。日本の山奥に存在する雪原で、二人の怪物が死闘を繰り広げた。一人は漆黒の装甲と赤い複眼を持つ戦士、仮面ライダークウガ・アルティメットフォーム。そして、もう一人は、白い身体に漆黒の装飾を纏った、グロンギの頂点に立つ究極の闇をもたらす者、ン・ダグバ・ゼバ。
互いに究極の力を持ち、触れることなく相手を発火させることすら可能な二人。しかし、その戦いの最後は、互いの拳で、血みどろになりながら相手を打ち倒すという、あまりにも原始的な戦い方だった。
幾度となく拳が交わされ、その度に鮮血が雪原を赤く染めていく。骨が砕け、肉が裂け、互いの身体が限界を迎えても、二人は拳を振るうことを止めなかった。そして、戦いの末に、
『…………あはっ。』
雪原に倒れ伏した白い怪物は、小さく笑った。その身体は既に限界を迎えていた。全身の骨は砕け、内臓は潰れ、生命を維持することすら困難な状態に陥っている。それでも、ダグバは笑っていた。悪意などなく、ただひたすらに、無邪気に笑っていた。
『……あははっ……あははははっ……!!』
……楽しかった。本当に、楽しかった。
これまで、数え切れないほどのリントを殺してきた。数多のグロンギを打ち倒し、誰一人として自分に敵う者はいなかった。どれほど命を奪っても、どれほど相手を痛めつけても、満たされることのなかった欲求が、……ようやく満たされた。
自分と同じ究極の力を持つ存在。自分を傷つけ、自分を追い詰め、そして、自分を打ち倒した相手。初めて、心の底から楽しいと思える戦いができた。初めて、自分と対等に殴り合える相手と出会えた。
『……楽しかったねぇ……クウガ……。』
自分は今、笑っている。相手を殺すことでも、苦しめることでもない。ただ、全力で戦うことが、こんなにも楽しいものだったなんて。
『……あはっ……。』
満足だった。もう、思い残すことなど何もない。このまま死んでしまっても構わない。そう思いながら、ダグバはゆっくりと顔を横へ向けた。
『…………あれ?』
そこには、雪原に倒れ伏した黒い戦士の姿があった。変身が解除され、血塗れになった少年が、雪の上に横たわる。自分を倒し、自分を心の底から笑顔にしてくれた相手。
『……クウガ?』
返事はない。
『……ねぇ、クウガ。』
やはり、返事はなかった。その呼吸は弱々しく、今にも途絶えてしまいそうだった。
『…………。』
……おかしい。自分は、こんなにも楽しかったのに。こんなにも満足しているのに。どうして、クウガは笑っていないのだろう。
つい先日、数万人もの人間を惨殺した存在とは思えない思考であるが、彼にとって、自分に殺されるだけの存在と自分を笑顔にしてくれた存在の命は等価値ではなかった。
そして、自分を笑顔にしてくれた相手が死にかけている。それがどうにも………面白くない。せっかく、こんなにも楽しい戦いができたのに。せっかく、自分と同じ場所まで辿り着いた相手と出会えたのに。ダグバは暫く考え込んだ後、ふと、自分の腹部へと視線を落とした。そこには、グロンギの力の源である霊石、ゲブロンが存在している。
ダグバは、ゲブロンへと語り掛けた。
『……僕の全部、使いなよ。』
――ドクンッ。
ゲブロンが、脈動した。ダグバは笑う。いつものように、無邪気に。
『……クウガを、生かして。』
――ドクンッ!!
再び、ゲブロンが脈動する。それと同時に、ダグバの身体から白い光が溢れ始める。既に生命活動の限界を迎えていた肉体が、足先から徐々に崩壊していく。しかし、血肉となって散ることはなかった。崩れ落ちた肉体は、眩い光の粒子へと変化し、空中へと舞い上がっていく。
ダグバは、自分の身体が消えていく様子を眺めながら、笑顔を作る。これは善意ではない、悪意でもない。
『……また、笑おう。』
ただただ無邪気な望みだった。
そして、ン・ダグバ・ゼバの肉体は完全に消滅した。だが、ゲブロンに宿っていた膨大なエネルギーや、究極の闇としての力。そして、その更なる奥底に存在していた特別なモノ。それら全てが、一つの巨大なエネルギー体へと変化し、暫く雪原の上を漂った後、ゆっくりと倒れ伏した黒雄へと近づいていき、そのまま黒雄の身体へと吸い込まれていった。
アマダムとゲブロン、二つの霊石が共鳴した。本来であれば、決して交わることのないクウガのアマダムと、ダグバのゲブロンだったが、究極の力へと到達した二人の霊石は、互いを拒絶することなく、その力を受け入れた。
ダグバの肉体を構成していた膨大なエネルギーが黒雄へと流れ込んでいき、砕けた骨が修復され、裂けた筋肉が繋がり、損傷した内臓が再生を始める。今にも停止しようとしていた心臓が、再び力強く脈動した。
――ドクンッ!!
本来、ダグバのゲブロンの奥底に存在していた、六つのインフィニティ・ストーンとは異なる、もう一つの石、エゴ・ストーン。それが、黒雄のアマダムへと取り込まれた。
ダグバ自身でさえ、自分の中にそのような石が存在していたことなど知らなかった。彼が望んだのは、自分を笑顔にしてくれた相手に、生きていてほしい、というありきたりなモノだった。
やがて、全ての光が黒雄の身体へと吸い込まれ、雪原には静寂が戻った。降り続ける雪が、二人の戦いによって赤く染まった大地を、ゆっくりと白く覆い隠していく。
「…………ん……。」
一人の少年が、僅かに身動ぎした。既に、その身体に致命的な傷は存在していない。そして、少年の腹部、アマダムの更なる奥底では、白い光が輝いていた。
ーーーーー
ーー時は現在に戻る。
『ーー。』
エネルギーそのものに、意識が残っているかは定かではない。記憶か、残留思念か。それ以外の何かか。ただ一つ確かのは、黒雄の中に存在していた『なにか』が反応し、その奥底から這い出てきた、という事実である。
ーーーーー
「…………ッ!?」
突然、背筋に冷たいものが走った。誰かの声が聞こえたわけではない。ただ、自分の身体の奥底で、何かが反応した感覚があった。
思わず、自分の腰へと視線を落とす。アークルの、その奥底に存在するアマダムから、得体の知れない気配が溢れ出そうとしている。
……何だ?こんな感覚は初めてだ。しかし、気配だけには身に覚えがある。決して忘れることのできないほど、強烈な気配。
「…………ッ!?」
だが、その正体を考えるよりも早く、
『……隙だらけだぞ。』
「……しまった!?」
サノスの姿が消えたかと思えば、次の瞬間には目の前にいた。意識をアマダムに向けすぎた。幾多の戦場を生き抜いてきたサノスが、僕の明確な隙を見逃すはずもなかった。
『ヌゥンッ!!』
既に、サノスは目の前まで迫っていた。力を宿した右拳が、紫色のエネルギーを纏いながら振り下ろされる。
……まずい、防御が間に合わない。回避も不可能。このままでは、まともに――
――ドクンッ!!
「…………ッ!?」
ゴルドアークルが、その奥底に存在するアマダムが、これまでにないほど激しく脈動した。
「……ぐッ!?」
全身を駆け巡っていた黄金の雷が、一瞬にして掻き消える。雷のエルの力によって、これまで完全に制御していたアルティメットフォームの力が、僕の意思とは無関係に、爆発的な勢いで増大し始めた。
全身から、漆黒の闇が噴き出し、漆黒の闇に混ざるようにして、もう一つ、全く異なる白い闇が溢れ出してきたのだ。
「……白い、闇?」
『……何ッ!?』
黒と白。二つの闇が僕の全身から爆発的に放出され、拳を振り下ろそうとしていたサノスを真正面から弾き返した。
『ヌゥッ!?』
サノスの巨体が宙を舞い、後方へと押し戻される。しかし、サノスは空中で身体を捻ると、両足から大地へと着地した。
『……何だ、今の力は?』
「…………。」
サノスの問いに、僕は答えることができなかった。何が起こったのか、僕自身にも分からない。それなのに、今も身体の奥底から、得体の知れない力が溢れ続けている。
……これは、僕の力なのか?いや、違う。少なくとも、これまで僕が扱ってきたアルティメットフォームの力とは、明らかに異なっている。ふと、自分の右腕へと視線を落とした。
「…………ッ!?」
そこには、見慣れた漆黒の装甲が存在しているはずだった。しかし、
「……白い?」
右腕を覆っていた漆黒の装甲が、白く変化していた。漆黒の装甲に白い闇が纏わりつき、その色を塗り替えているのだ。左腕も、両脚も同様だった。アルティメットフォーム・ゴルドアークルの全身を覆っていた漆黒の装甲。そのうち、両腕と両脚だけが、まるで別の存在のものと入れ替わったかのように、白へと変化していた。
「……何だ、この姿は?」
思わず、両手を目の前に掲げる。黒と白。二つの色が混ざり合った、見たこともない姿。だが、僕はこの白い装甲を知っている。この色合いを、この気配を知っている。
……忘れるはずがない。かつて、雪原で、互いに血塗れになりながら殴り合った相手。グロンギの頂点に立つ、究極の闇をもたらす者。
「……ダグバ?」
その名前を口にした瞬間、背筋に再び冷たいものが走った。
……馬鹿な。あいつは死んだはずだ。あの雪原で、僕は確かにあいつを倒した。それなのに、どうして。どうして、あいつと同じ気配を、自分の身体から感じるんだ?
「…………。」
この力は、僕の意思で発動したものじゃない。雷のエルの力によって、完全に制御していたはずの究極の闇。その制御を超えて、別の何かが溢れ出している。
……もし、この力が暴走したら?もし、僕自身が制御できなくなったら?
『……戦いの最中に、何を考えている?』
「……ッ!?」
サノスが動いた。先ほどまでとは異なり、その表情には僅かな警戒が浮かんでいる。だが、だからといって攻撃を躊躇するような男ではなかった。
『フンッ!!』
「……くッ!?」
再度、間合いを詰めてきたサノスが、右拳を振り抜く。咄嗟に左腕を掲げ、迫り来る拳を迎撃したが、
……まずい、完全に反応が遅れた。踏み込みも不十分で拳の振り方も雑。これまでの攻防を考えれば、間違いなく押し負け――
「……ッ!?」
『……むッ!?』
凄まじい激突音が鳴り響いた。紫色のエネルギーと、白い闇を纏った拳が真正面から衝突し、その衝撃によって、僕の左腕が弾かれた。だが、
「…………ッ!?」
吹き飛ばされてはいない。確かに、拳は弾かれた。だが、先ほどまでのように身体ごと押し飛ばされることはなかった。足元の大地が砕け、両足が地面へと沈み込んでいるものの、僕はその場に踏み止まっていた。
……何だ、この力は?
『…………。』
サノスも、僅かに目を細めていた。つい先ほどまで、僕はこいつとの殴り合いで、一方的に押し負けていたのだから。
「…………ッ!!」
……いや、考えるのは後だ!!何が起こったのかは分からない。この力が何なのかも、どうして突然発現したのかも。だが、目の前にはサノスがいる。宇宙全体の生命を、自分の価値観だけで選別しようとしている男が。
……今は、こいつを止めることだけを考えろ!!
「ハァァァァッ!!」
僕は拳を握り締め、サノスへと踏み込んだ。白く染まった右腕に、漆黒の闇と黄金の雷が纏わりつく。先ほどまでとは比較にならないほどの力が、拳へと集中していく。対するサノスも、既に拳を握り締めていた。
『ヌゥゥゥゥッ!!』
二つのパワー・ストーンが紫色の輝きを放ち、サノスの右腕へと膨大なエネルギーが流れ込む。そして、
「オォォォォッ!!」
『フンッ!!』
互いの拳が、真正面から激突した。
「……ッ!!」
『……ぬぅッ!?』
黄金の雷と紫色の光が激しくぶつかり合い、凄まじい衝撃波が周囲へと広がっていく。周囲の岩盤が粉砕され、アスガルドの地表に巨大な亀裂が走った。しかし、
「……ッ!?」
今度は、僕の拳が弾かれることはなかった。サノスの拳と真正面からぶつかり合い、そのまま互いの力が拮抗している。
……互角だ。先ほどまでは、真正面から拳をぶつければ、僕の方が一方的に弾き飛ばされていた。それなのに、今は、
『……ほう。』
サノスが、低く声を漏らした。その声から、先ほどまでの余裕が消えていた。
『どうやら、貴様の力を見誤っていたようだな。』
そう告げると、サノスは拳に更なる力を込めてきた。
「……ぐぅッ!?」
凄まじい圧力が右腕を襲うが、僕も負けじと拳へと力を込めた。
「……オォォォッ!!」
互いの拳が弾かれ、僕は数歩後退した。だが、サノスもまた、僅かに後方へと押し戻されていた。
「……ハァッ、ハァッ……!!」
……押し負けなかった。二つのパワー・ストーンを宿したサノスと、真正面から拳をぶつけ合って、それでも、僕はその場に立っている。
……だが、どうしてだ?アマダムが更なる進化を遂げた可能性もある。しかし、今の僕の身体から溢れているのは、明らかにそれだけでは説明できない力だった。
『…………。』
サノスは無言のまま、ゆっくりと後方へ下がった。その視線は、僕の両腕へと向けられている。
『……奇妙な力だ。先ほどまでとは、明らかに異なる。貴様自身も、その変化を理解していないようだな。』
……実際、何が起こっているのか分からない。
『……フン。』
サノスは小さく鼻を鳴らすと、改めて拳を構えた。僕も無言のまま、自分の拳へと視線を落とした。
白く染まった装甲。その表面を、黄金の雷と漆黒の闇が静かに駆け巡っている。
……ダグバ。あいつと最後に戦ったのは、もう随分と前のことだ。あの雪原で、僕は確かにあいつを倒したはずだ。でも、まさか。
「…………いるのかよ。」
思わず呟いたが、当然、返事などない。何かが語り掛けてくることもなければ、誰かの意思を感じ取れるわけでもない。ただ、自分の身体の奥底から、これまで知らなかった力が溢れ出している。
「…………。」
……もし、本当にそうなのだとしたら。あの雪原での戦いは、僕が思っていたような結末ではなかったのかもしれない。だが、今はそれを確かめる術がない。それに、仮にこの力がダグバに由来するものだったとしても、僕がやるべきことは変わらない。
「……今は、戦うしかない。」
小さく呟き、改めて拳を握り締めた。白く染まった両腕に、黄金の雷が迸る。対するサノスも、両腕に宿るパワー・ストーンの力を高めていく。
……まだ、勝てると決まったわけじゃない。相手は、あのサノスだ。力が互角になったとしても、戦闘技術や経験では向こうが遥かに上回っている。それに、今の力がいつまで維持できるのかも分からない。突然発現した以上、突然失われる可能性だってある。
……何より、僕自身がこの力を完全に制御できているわけじゃない。それでも、
「……絶対に、勝たなきゃならない。」
僕はゆっくりと腰を落とした。黒と白。二つの究極の闇を宿し、再びサノスと向かい合う。
ーーーーー
黒雄本人すら気付いていないが、これまで鮮やかな赤色に輝いていた複眼は、僅かに黒みを増し、深い暗赤色へと変化していた。