日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
基地の正門を抜け、一台の大型トレーラーが敷地内へ滑り込んできた。
「急いで! 戦闘区域の近くまで寄せて!」
「これ以上はヤバいですって!」
「知ったこっちゃないわ!」
小沢が怒鳴る。トレーラーの内部では、小室がすでに各種モニターを立ち上げていた。画面に映し出されているのは、屋上で激突する二つの強化服。
G3-X。そして、その発展型であるG4。
『ぐあっ!』
モニターの向こうで、氷川が吹き飛ばされた。
「氷川君!」
『だ、大丈夫です!』
小沢が即座に通信を開く。
「氷川君! 右から来る!」
『はい!』
立ち上がったG3-Xへ、G4が迫る。氷川は小沢の声に従い、身体を左へずらした。直後、G4の拳が顔の横を通り過ぎる。
『はぁっ!』
反撃の拳を繰り出すが、
『攻撃軌道予測』
G4が僅かに上体を反らし、拳は空を切った。さらに氷川が踏み込もうとした瞬間、G4の足が先に動く。
『ぐっ!』
腹部への前蹴りでG3-Xが後退する。
「今度は左!」
『はい!』
氷川がガードを上げる。
ガァンッ!
G4の拳を防ぐことに成功する。そのまま腕を掴もうとするが、それは予測されていた。G4が腕を引くと同時に身体を回転させる。
『なっ――』
ドンッ!!
回し蹴りがG3-Xの胸部へ直撃した。
『ぐあっ!』
再び氷川が吹き飛ばされる。
「……駄目ね。」
小沢が呟いた。
『すみません!』
「あなたに言ったんじゃないわよ!」
確かに氷川は食らいついている。何度倒されても立ち上がり、G4へ向かっていく。しかし、G3-XとG4には単純な出力差がある。
そして何より致命的なのは、G4に搭載されたAIだった。G3-Xの動きを解析し、次の行動を予測、常に最適解を選択する。だから一度見せた攻撃は通じない。回避行動も読まれてしまっている。
指示を出しても、G4はその指示すらも含めて氷川の動きとして解析してくる。
『はぁぁっ!』
氷川が突っ込むも、拳は避けられ、逆に脇腹へ一撃を入れられる。それでも氷川は倒れず、G4の腕を掴んだ。
『捕捉』
「うおおおおっ!」
そのまま押し倒そうとする。G4は一歩後ろへ足を引き、腰を落とした。
『ぐっ……!』
押せない。逆にG4が腕を振るう。
『うわっ!?』
氷川の身体が振り払われた。
「…………。」
小沢は黙ってモニターを睨む。強い。認めたくはないが、G4は強い。
G3-Xの発展型として設計されただけはある。けれど――。
「……変ね。」
「え?」
小室が振り返る。
「どうしました?」
「G4の動きよ。」
小沢が目を細める。
「ほんの少しだけ、右足を庇ってる。」
「右足?」
「G3-Xのセンサーをこっちに回して。スキャンするわ。」
「分かりました!」
小室が操作する。
『氷川君、少しだけ時間を稼いで!』
『少しって、どれくらいですか!?』
「十秒!」
『長いですよ!』
「男でしょ!」
『関係あります!?』
そう言いながらも氷川はG4へ向かっていく。そして、G3-Xの各種センサーがG4の全身を読み取っていく。
装甲。駆動系。関節。
「出た!」
小室が声を上げる。小沢が画面を見るとG4の右膝、そこだけ、他の部位とは明らかに数値が違っていた。
「損傷してる……。」
小沢の口元が僅かに上がる。
「でも、いつ?」
小室が首を傾げ、映像を確認する。そして見つけた。G4とG3-Xの戦闘が始まった直後、屋上へ降り立った一条が、最初に放った銃弾で撃ち抜いた場所。右膝の関節部。
「一条さんの弾……。」
「最初の一発ね。」
その後も一条は関節部を狙っていた。だが二発目以降、G4は射線を読み、直撃する前に身体をずらし、致命的な損傷を避けている。
だが、最初の一発だけは違った。G4のAIが一条を脅威として認識する前、完全な不意打ちだった一発。それだけは確実に右膝関節へダメージを残している。
「……使える。」
小沢が呟いた。
「小室君、一条さんに通信繋いで。」
ーーーーー
『一条さん、聞こえますか?』
「ああ。」
ライフルを構えたまま、一条が答える。
『G4の右膝。最初にあなたが撃った場所、覚えてます?』
「覚えている。」
『そこ、壊せますか?』
「今は難しい。」
一条の視線の先で、G4が氷川を殴り飛ばす。
「こちらを警戒している。照準を合わせた時点で射線から外れる。」
『ですよね。』
小沢も予想していた。一条の射撃技術なら狙える。だが、いくら正確に狙えても、引き金を引く前に避けられては意味がない。
『なら――避ける方向を、こっちで決めます。』
「何?」
『氷川君!』
『はい!?』
『作戦を説明するわ!』
ーーーーー
『……本当にやるんですか?』
「やるの!」
『無茶苦茶ですよ!』
「今さらでしょ!」
『それはそうですけど!』
氷川が構える。正面にはG4。一条は少し離れた位置からライフルを構えている。
『準備は?』
「できている。」
『氷川君。タイミングは任せるわ。とにかくG4に組み付きなさい。』
『了解!』
氷川が走る。
『敵接近』
G4が迎撃態勢を取る。
『うおおおおっ!!』
G3-Xが真正面からG4へ組み付いた。
『……!』
水城が僅かに目を見開く。先ほども見せた動きだ。当然、G4のAIは解析済みである。
『脅威度・低』
G4が腕を振るう。
『ぐっ!』
氷川が振り払われる。だが、
『もう一度!』
『うおおおっ!』
すぐに氷川が飛び込み、再び組み付く。また振り払われる。
『くっ!』
転がる。立つ。走る。
『はぁぁぁっ!!』
三度目。
『……何をしている?』
水城が訝しげに呟く。意味がない攻撃だ。G3-XのパワーではG4を押さえ込めない。組み付いたところで振り払えばいい。AIもそう判断している。
『行動パターン解析済』
四度目。
G3-Xが腕を伸ばす。G4は避けない。組み付かせ、そのまま振り払う。
『ぐあっ!』
氷川が倒れる。それでも、何度でも立ち上がる。
『もう一度……!』
『対象、同一行動を継続』
水城が眉を顰める。何を狙っている?
『氷川君、そのまま!』
『はい!』
五度目。氷川が飛び込み、G4へ腕を伸ばす。AIは判断する。脅威ではない。受けてから振り払えばいい。だから――回避する必要はない。
しかし。
「……っ!」
水城自身は違った。警察官として訓練を受けた氷川と同じように、水城もまた自衛官として訓練を受けてきた。
真正面から人間が組み付いてくる。腕が伸びてくる。身体を掴まれる。そんな状況になった時、咄嗟に攻撃を避ける動きは、水城自身の身体にも染み付いてしまっている。そして、さっきまでとは違い、今回の組み付きは、
『(諸手狩りか!?)』
両脚を両腕で抱え、相手を倒す投げ技。避け方は色々あるが、基本は、片足をーー
反射的に、水城は右足を引いた。その瞬間。
『今!!』
小沢が叫び、
ダンッ!!
一条のライフルが火を噴いた。弾丸がG4の右膝へ飛ぶ。当たりはしたが最初の一発ほどのダメージはない。ないのだが、
『右膝関節部、損傷拡大』
AIが即座に姿勢制御へ入る。崩れた重心を補正するため、右脚へ力を加える。同時に水城自身は、氷川の組み付きを避けようと身体を、脚を捻っていた。
機械の判断。人間の反射。二つの動きが、完全に食い違った。
ゴキンッ!!
鈍い音が響き、G4の右膝が――あり得ない方向へ曲がる。
『があああああっ!!』
水城の口から、明確な悲鳴が上がり、G4が膝から崩れ落ちる。
『右膝関節部、重大損傷』
『装着員右膝関節――』
『よし!』
氷川が息を吐く。これなら立てない。G4がどれだけ高性能でも、脚が完全に壊れてしまえば――。
『……え?』
G4の手が地面を掴む。そして、
ギギギギギッ……。
不自然な音を立てながら、G4が立ち上がった。
『な……。』
氷川が絶句する。右膝は完全に壊れている。装甲だけではない、中にいる水城自身の脚も、まともな状態ではない。それなのに。G4は立っていた。
『戦闘続行』
「何で……。」
トレーラーの中。
小室が青ざめる。
「どうして立てるんですか……?」
「……違う。」
小沢の表情から、先ほどまでの笑みが消えていた。
「立ってるんじゃない。」
「え?」
「立たされてるのよ。」
G4の駆動系が強制的に作動している。装着員の意思など関係ない。壊れた右脚を装甲の出力だけで無理矢理支え、戦闘姿勢を維持している。
『戦闘を続行しなさい!』
深海の声が響く。
『G4は、G3-Xなどに負けてはいけない!』
氷川が拳を握る。目の前にいるのは、もう自分を倒そうと立ち上がった人間ではない。システムに。AIに。そして深海に無理矢理立たされている人間だった。
『前進』
G4が動く。
ガクンッ。
右脚が折れかけるが、それでも駆動系が強引に補正し、一歩踏み出す。先ほどまでの無駄のない動きは、見る影もない。
『攻撃』
G4が拳を振るうが、遅い。氷川は身体を横へずらし、容易く避けた。G4の身体が大きく流れる。それでもAIが強制的に姿勢を戻そうとする。
『……もう、終わりにしましょう、水城さん。」
度重なる攻撃で調子が悪いG3ーXのマスクを外し、氷川は拳を握る。G4が振り向いた瞬間、
『攻撃を――』
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
G3-Xのーーいや、氷川誠の渾身の右拳が、
ドゴォンッ!!
G4の胸部へ叩き込まれた。
『ごっ――!』
装甲が大きく凹み、G4の身体は吹き飛び、屋上を転がっていった。
やがて、その身体が停止した。動かない。氷川は荒い呼吸を繰り返しながら、倒れたG4を見つめる。
勝った。けれど、喜ぶ気にはなれなかった。G4の性能を証明するため。兵器としての優秀さを示すため。自分の意思すら無視され、壊れた身体で戦わされていた水城。
「水城さん……。」
氷川が複雑そうに、その姿を見下ろす。その隣へ、一条が歩いてきた。
「氷川。」
「一条さん。」
氷川が振り向く。
「終わりました。」
「ああ。」
一条が短く答え、ライフルを構えた。
「え?」
ダンッ!!
倒れているG4へ弾丸が撃ち込まれる。
「ちょっ!?」
ダンッ! ダンッ!!
さらに二発。
「一条さん!?」
ダンッ!!
「何してるんですか!?」
氷川が慌てて一条の腕を掴む。
「もう倒れてます! 水城さんが中にいるんですよ!?」
「分かっている。」
「分かってて撃ってるんですか!?」
「小沢君の指示だ。」
「小沢さん!?」
『失礼ね! ちゃんと狙う場所は指定してるわよ!』
通信から小沢の声が飛んできた。
『今撃ったのはG4のメインバッテリーとAI制御系。装着員には当たらない位置よ。』
氷川がG4をよく見れば、一条が撃ち抜いた場所は胸部の端や腰部付近。水城の身体そのものから外れた箇所ばかりだった。
『さっきみたいに、また勝手に動かれたら困るでしょ。完全にシステムを止めただけ。』
「……そういうことですか。」
氷川が一条の腕を離す。
「すみません。」
「構わない。」
「でも……。」
氷川は改めて、一条が撃ち抜いた場所を見る。戦闘中、動き回るG4の右膝を正確に撃ち抜き、その後も関節だけを狙い続けた。最後には、水城本人には傷を負わせず、G4のバッテリーとAIだけを破壊した。
『どうしたの、氷川君?』
「いえ……。」
全身から力が抜けた。氷川はその場に、どさりと腰を下ろす。
「疲れた……。」
『ちょっと、大丈夫!?』
「大丈夫です。」
そう答えながら、隣に立つ一条を見上げる。本人は何事もなかったかのように、ライフルの調子を確認している。
「……やっぱり凄いな。」
「何がだ?」
「伝説の刑事ですよ。」
「?」
本気で分かっていないらしい。
氷川は大きく息を吐く。未確認生命体事件。その最前線で、第4号――クウガと共に戦い続けた刑事。話には何度も聞いていたし、資料でも見た。警察官なら知らない者はいないほど有名な人物だ。
けれど。
「実際に一緒に戦うと……よく分かります。」
「何がだ?」
「いえ、もういいです。」
氷川は答える気力もなくなり、そのまま空を仰いだ。
強すぎるG4。何度倒されても立ち上がる自分。そのG4の弱点を見抜き、AIと人間の僅かな齟齬を利用して作戦を組み立てた小沢。そしてその一瞬の齟齬を正確に撃ち抜いた一条。
「……疲れた。」
もう一度、氷川は呟いた瞬間、
ドォォォォンッ!!
巨大な衝撃音が響いた。
「……。」
「……。」
一条と氷川が、同時にそちらを見ると金色の雷光と、白い閃光が激突を繰り返していた。
「……そういえば。十文字君、まだ戦ってましたね。」
「ああ。」
ようやくG4を止めた。なのに、あっちでは未確認生命体第4号と、アギトを生み出したという存在が戦っている。
そういえば、一条さん、落ち着くどころか、武器の調子を確認してたな。氷川は数秒ほど無言になり、
「まだまだかー。」
不撓不屈って一条さんや氷川さんに合うと思ってます。
後、対AIは少し無理矢理でしたが、許してください。