日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
アギト編完結
一連の事件が一応の決着を迎えた数日後。
まず、深海と水城。
「完全に逮捕されたらしいですよ。」
「当然だ。」
「まあ、そうですよね。」
僕の言葉に、一条さんが頷く。やっていたことを考えれば当然である。超能力を発現させた子供たちを集め、G4システムの予知能力を補助するために利用する。集めた、なんて言えば聞こえはいいけれど。実態は――
「誘拐ですよね。」
「誘拐だな。」
完全に誘拐だった。僕と真魚に銃まで突きつけて連れて行ったくらいだ。子供たちの中にも、本人や保護者の意思を無視して連れてこられた者がいたらしい。その辺りも含め、現在は警察が調べている。そして肝心のG4システムだけど。
「計画そのものが破棄、ですか。」
「ああ。」
自衛隊上層部も、さすがに今回の結果は看過できなかったらしい。莫大な予算、無断で集められた超能力者、予知能力への依存。そして、スペックで劣るはずのG3-Xと生身の一条さんに敗北。そりゃ偉い人も、
『これ、いる?』
ってなる。結果。G4計画は凍結――ではなく、完全破棄。少なくとも現時点で、再開する予定はないらしい。
「G3ユニットの皆さんについては?」
「小沢たちは始末書だ。」
「うわぁ。」
「私もだ。」
「一条さんも!?」
「お前も書くか?」
「なんで!?」
いや、確かに勝手に自衛隊基地へ乗り込んだけど!
「……まあ、上層部としても色々と思うところはあるだろう。」
一条さんが少し遠い目をした。警察の一部署が、自衛隊の施設へ乗り込んでG4と戦闘。そこへ元未確認生命体第4号まで乱入。さらに正体不明のアギトまで現れて、最終的に基地の一部がボロボロ。始末書で済んでいるだけ、マシなのかもしれない。
「警視総監が収めてくれた。」
「警視総監が?」
「ああ。」
「なんて?」
一条さんは少し黙ってから、
「『まあ、良いじゃないか』と。」
「軽っ!?」
それでいいの警視総監!?警察と自衛隊を巻き込んだ大騒動なんですけど!?
「……あの人、昔からあんな感じだったな。」
「一条さん、知り合いなんですか?」
「未確認生命体事件の時にな。」
というわけで。G4を巡る騒動は、どうにか終結した。
――問題は。
僕は一条さんを見る。
「子供たちは?」
「大半は保護者の元へ戻った。」
「大半?」
一条さんの表情が少しだけ曇る。
「帰宅を拒否している子供が何人かいる。」
理由は、それぞれ違った。元々家庭環境に問題があった子。超能力が発現したことで、家族との関係が壊れてしまった子。自分の力を恐れ、普通の生活へ戻ることを怖がっている子。そういった子供たちもいたそうだ。
「現在は、一時的に光のエルが預かっている。」
「なんで!?」
意味が分からない!なんでそうなる!?
「いや待ってください! あの人、この前まで超能力者を無差別に増やそうとしてた人ですよ!?」
「本人たちが希望した。」
「なんで!?」
二回目!
「光のエルの元には、同じような力を持つ者たちがいるらしい。」
なるほど。自分だけがおかしい、自分だけが普通じゃない。そう思っている子供にとって、同じような力を持っている人たちがいる場所は、確かに安心できるのかもしれない。
「いや、でも生活はどうするんです?」
「問題ないそうだ。資金もある。」
「資金?」
嫌な予感がする。
「超能力者の一人に、宝くじの当選番号を――」
「アウトォォォォォッ!!」
何してんの、あの人!?
―――――
そして来ました、光のエルの拠点。
「…………村じゃん。」
村だった。山間部のそこそこの広さの土地に、いくつもの建物が並んでいる。畑まである。なんなら小さな川まで流れている。
「アジトっていうから、もっとこう……地下施設とか、廃工場とか想像してた。」
「何故だ。」
隣に立つ光のエルが首を傾げる。
「いや、あなた前まで敵だったから。」
「今も思想が一致したわけではない。」
僕との戦いに負けた――本人曰く、力を認めたことで、光のエルは話し合いには応じるようになった。無差別に人間へ力を与えることも、一旦停止している。一旦、というのが怖いけど。
ついでに、この村に住んでいるのは――
「超能力者が十二人。そして、アギトが一人。」
まあ、それも分かる。光のエルが力を与えているんだから、一人くらいアギトが生まれていても不思議ではない。
「ギルスが一人。」
「はい?」
聞き間違いかな?
「ギルスが一人いる。」
何故ここにギルス!?その時だった。村の奥から、一人の青年が歩いてくる。背が高く、鍛えられた身体。
見覚えがある。いや、直接会ったことはない。でも知っている。
「……葦原?」
青年がこちらを見る。
「俺を知ってるのか?」
「…………。」
葦原涼。仮面ライダーギルス。普通にいた。
「いたのか、葦原!?」
「だから、なんで俺を知ってるんだ?」
またやった。
「い、いや! なんとなく!」
「なんとなくで人の名前を当てるな。」
ですよね!どうしよう!
「彼の父親に、私が力を与えた。」
「…………はい?」
光のエルを見る。
「父親?」
「ああ。」
「……あかつき号って船に乗りました?」
「いや?乗っていないが。」
待って、整理しよう。葦原涼がギルスになった原因は、父親があかつき号事件に関わったから。でも、この世界では。
「私が彼の父親に直接、力を与えた。」
「その影響が、息子の葦原さんにも?」
「そうだ。」
「それでギルスに?」
「そうだ。」
原作補正仕事しすぎじゃない?あかつき号関係ないのにギルスになってる!
「いや、待って。じゃあ、ここにいるアギトって、」
「ああ。彼なら向こうにいる。」
光のエルが指差した先に青年がいた。
「沢木……。」
津上翔―ではなく、本名、沢木哲也。本来の津上翔一。僕が知っているアギト本編において、かなり重要な人物。
「なんでいるの!?」
もう何回目だよこれ!
「私が会った。」
光のエルが淡々と答える。
「彼の姉について話した。」
沢木雪菜。最初のアギト。そして、沢木哲也の姉。
「彼は苦悩していた。姉の死を、自らの罪だと考えていた。だから、全てを話した。」
光のエルは沢木の方を見る。
「姉に何が起きたのか。何故、力に目覚めたのか。」
それ、かなり重要なところじゃない?
「その上で、彼は私に協力している。」
「……マジかぁ。」
葦原涼。沢木哲也。超能力者十数人。今回、沢木さんとか葦原さんが戦いに来なくて、本当に良かった。光のエルだけでも、めちゃくちゃ苦戦したんだぞ。そこへアギト、ギルス、下手すれば超能力者まで加わっていた。
「複数人の仮面ライダー相手に一人で戦うとか……。」
僕、完全にダークライダー側じゃん。
―――――
そして数日後、いつもの喫茶店。僕が店内を見回すと、闇の力、光のエル、水のエル、火のエル、真魚、そして僕。
改めて見る。闇の力、光のエル、水のエル、火のエル、真魚を飛ばして、僕。
「なんだこのメンバー。」
アベンジャーズ相手でも勝てるんじゃないか?ちなみに喫茶店は貸し切りである。こんな連中を一般客と同席させられるか。闇の力は、いつもの席でカプチーノを飲んでいる。もう完全に常連みたいになってる。光のエルは、その向かい。水のエルは今回、人間の姿を取っている。長い黒髪の落ち着いた雰囲気の女性だ。そして、
火のエルは正座していた。床で。
「なんで火のエルさん、床に正座してるんです?」
「罰だ。」
闇の力が即答した。
「誰からの?」
「私だ。」
火のエルがものすごく不満そうな顔をしている。
「いつまで正座してればいいんだよ。」
「私が良いと言うまでだ。」
「もう足痺れてんだけど。」
「エルが痺れるの?」
思わず聞いてしまった。
「人間の身体って不便なんだよ!」
知らないよ。というか、あれだけ迷惑かけたんだから正座くらい我慢してほしい。
「それでは。」
光のエルが口を開き、空気が変わる。
「まず、謝罪しよう。」
光のエルが僕を見る。そして、闇の力を見る。
「私の行動は、あまりに性急だった。」
「本当にね。」
「クロオ君。」
真魚に小声で注意された。すみません。
「特に、力を与えた者たちへの配慮を欠いていた。彼らが人の社会で生きる者である以上、その社会への影響を考えるべきだった。」
光のエルが静かに頭を下げる。
「申し訳なかった。」
素直に謝った。ちょっと意外。いや、この人は頑固だけど、別に悪人じゃないんだよな。人間を守りたいという考え自体は、本物だし。
「ただし、考えそのものを変えるつもりはない。この星は、いずれ大きな脅威に晒されるが、人は弱い。だが、可能性を持っている。アギトという力。超能力という力。それらは、これから訪れる脅威に抗うための力となる。」
「だから、無差別に人間に力を与える?」
「以前のような方法は取らない。」
少しは反省してるらしい。
「しかし、人類全体が力を持つべきだという考えは変わらない。」
「それは――」
僕が口を開くより早く。
「理解はある。」
闇の力が言った。
「え?」
思わずそちらを見ると、闇の力はカプチーノのカップを置いた。
「お前の懸念は理解できる。この星の外には、我らですら無視できぬ存在がいる。」
闇の力が静かに続ける。
「人間だけではない。この星に生きる全ての生命を守るため、力を与える。それ自体は理解できる。」
光のエルが僅かに頷く。
「ならば――」
「だが、やり過ぎだ。力を与える者を厳選しろ。」
「ちょっと待って!?」
思わず割って入ってしまった。二人の視線がこちらへ向く。
「いやいやいや! なんで妥協点が『厳選して超能力者を作る』なんですか!?」
「何が問題だ。」
「問題しかないですよ!」
なんでラスボス同士で話し合った結果、選ばれし超能力者を作ろう、みたいな方向に進んでるの!?
「例えば、人格、適性、精神性を見極めた上で――」
「駄目です!それ、あなたたちが人間を選別するってことでしょ!?」
「そうなる。」
駄目だ。この人たち、根本的な価値観が人間じゃない!
「力を与えられた人と、与えられなかった人で絶対問題が起きますから!」
「ならば全員に与えればいい。」
「光のエルさんは黙って!話が戻る!」
堂々巡りだ!と頭を抱えいると、真魚が手を挙げた。
「一ついい?」
「どうしました?」
「さっきから気になってたんだけど。」
真魚が光のエルを見る。次に、闇の力を見る。
「その『脅威』って、何なの?」
店内が静かになった。
「宇宙から危ないものが来る、っていうのは聞いたけど。」
真魚が続ける。
「具体的に何が来るの?」
闇の力は答えない。光のエルも沈黙している。水のエルも、どこか考えるように目を伏せていた。
その時。
「――セレスティアルズ。」
下から声がした。全員で見ると、床に正座している火のエルが口を開いていた。
「セレスティアルズ?」
真魚が首を傾げ、火のエルは頷く。
「火のエル。」
闇の力が彼を見る。
「お前は知っているのか。」
「そりゃな。」
火のエルがニヤリと笑う。
「俺がどれだけ未来を見てきたと思ってんだ?」
そうだった。こいつ、転生者だった。しかも、恐らく僕よりもMCU関係の知識が多い。
サノスとインフィニティ・ストーン以外の脅威について知っているはずだ。
「簡単に言えば――」
火のエルが片膝を立てようとした。
「正座。」
「…………はい。」
闇の力に言われ、戻した。ちょっと面白い。
「……簡単に言えば、宇宙の創世から存在する、桁違いの生命体だ。」
火のエルが続ける。
「俺たちエルとも違う。人間とも違う。星々を巡り、生命と文明に干渉してきた連中だ。」
「どのくらい強いの?」
真魚が尋ねる。
「強い、なんて言葉で括れるかねぇ。」
火のエルは肩を竦める。
「星一つをどうこうする程度なら、あいつらにとっては大した話じゃない。」
真魚の顔が引きつる。僕も笑えない。やっぱり規模がおかしい。
「セレスティアルズは、宇宙に生命を広げる存在だ。星々へ種を蒔き、生命を育て、文明を生み出す。」
「……良い人たちなの?」
「人間から見れば、そうとも限らない。連中にとって重要なのは、宇宙全体の生命だ。一つの星、一つの文明、一つの種族じゃない。そして、地球にもいる。」
真魚が固まり、火のエルが笑みを消す。
「セレスティアルそのものがな。」
火のエルが、はっきりとそう告げた。僕は黙った。セレスティアル。
「いるの?そんなのが?」
「知らねぇのかよ。」
火のエルが呆れたように僕を見る。
「知らないですよ!」
いや、名前くらい聞いたことがあるような、ないような。でも少なくとも、僕が前世で見たMCU作品には出てきていない。というか、僕がちゃんと見たのってアイアンマンとかアベンジャーズとか、その辺が中心なんだよ!
「お前、俺と同じだろ?ガーディアンズは?」
「見てない。」
「キャプテン・マーベル。」
「見てない。」
「エターナルズ。」
「見てない。」
「お前、知識偏りすぎだろ。」
「うるさいな!」
アイアンマンとスパイダーマンが好きだったんだから仕方ないでしょ!
すると、真魚が話を戻してくれる。
「クロオ君の謎発言は後で追求するとして、地球にもそのセレスティアルっていうのがいるの?」
「ああ。」
火のエルが頷いた。
「正確には――」
「待って、一回整理させて。」
サノス、インフィニティ・ストーン、宇宙から来る軍勢。そこへ追加で、星をどうこうできるセレスティアルとかいう超生命体。そして、地球にもその関係者がいるらしい。頭が痛くなってきた。僕は両手で顔を覆った。
「もう無理。」
「クロオ君?」
「いや、だって!」
顔を上げる。
「サノスだけでも大変なのに、なんでさらに星をどうこうできる連中まで出てくるんですか!?」
前世の知識があるから、ある程度の未来は知っている。ロキとチタウリが来た。いずれ、インフィニティ・ストーンを集めて、指を鳴らして、宇宙の生命を半分消そうとするサノスが来る。それだけでも十分すぎるほどヤバいのに。
「セレスティアル? エターナルズ? 何それ!? 知らないんですけど!」
「落ち着け。」
「落ち着けませんよ!」
闇の力に言われると余計に腹が立つ。そもそも、この人たちの話を聞いていると、どんどん世界の危機が増えていくんだよ!
「……もういいです。セレスティアルとかいう連中については、とりあえず保留!」
火のエルが目を瞬いた。
「いいのか?」
「良くないけど!」
僕はテーブルを軽く叩く。
「今すぐどうこうしなきゃいけない相手じゃないんですよね?」
火のエルが闇の力を見る。光のエルも闇の力を見る。水のエルも――いや、水のエルだけは何故か普通にお茶を飲んでいた。闇の力が頷く。
「少なくとも、今すぐではない。」
「だったら後!」
決めた。
「今はサノスです。」
「サノス?」
真魚が首を傾げるけど一旦保留で。
「将来、地球に来る可能性が高い宇宙人。インフィニティ・ストーンっていう、とんでもない力を持った石を集めてる奴をどう対処するか考えましょう!」
「どのくらい危ない奴なの?」
「宇宙の生命を半分消そうとするくらい。」
真魚が固まった。
「なんでそんなのが次から次へと出てくるの……?」
「僕が聞きたいです。だから、今は対サノスを優先しましょう。」
「具体的には?」
光のエルが尋ねてくる。
「それを考えるんですよ。」
インフィニティ・ストーンを守る。地球の戦力を増強する。サノス本人だけじゃなく、その軍勢への対策も必要になる。ただし。
「人に迷惑をかけない。」
光のエルを見る。
「勝手に人間を超能力者にしない。子供を集めない。宝くじの当選番号を超能力で調べない。」
「…………。」
「なんで最後だけ目を逸らしたんです?」
やっぱり悪いことだって分かってたんじゃないか!
「ともかく!」
僕は改めて全員を見る。
「人に迷惑をかけない範囲で、対策を練ってください。サノスとか、インフィニティ・ストーンとか、これから来る可能性がある宇宙の脅威とか。」
「我らに任せるのか?」
闇の力が尋ねてくる。
「一旦任せます。もう疲れた。いや、僕も仮だけどアベンジャーズの一員なので動きはしますけど。」
クウガ編が終わって一般人に戻ろう、と思ったらアべンジャーズ編というかMCU編が始まった。そしたら並行してアギト編が始まった。
サノスを警戒していたら、今度はセレスティアルとかいうのまで出てきたのである。もう知らん。
「僕、一応まだ高校生なんですよ。」
「そうだったね。」
真魚が苦笑する。
「忘れそうになりますけどね。」
僕自身も忘れそうになる。
「だから、とりあえず僕抜きで話し合ってください。何か必要になったら呼んでくれれば来ますから。」
「分かった。」
闇の力があっさり頷いた。
「では、必要になれば呼ぼう。」
「お願いします。」
「念じれば済む。」
「はい?」
「私に用がある時も同様だ。お前は既に我らと繋がっている。強く念じれば届く。」
僕は固まった。
「何それ。」
「何、とは?」
「そんな機能あったんですか!?」
初耳なんだけど!?
「お前は現在、我らと同質の存在でもある。」
「いや、人間ですよ!?」
「人であることと、エルとしての性質を持つことは両立する。」
両立するんだ……。
「七柱に属さぬ、新たなエル。雷を操る者。」
「……雷のエル。」
真魚が呟く。やめて、なんか妙に格好いいから。
「いうなれば、八柱目のエルだ。」
闇の力が言った。
八柱目、雷のエル。
「それを先に言えぇぇぇぇっ!!」
僕の叫びが喫茶店に響いた。
「何故怒る。」
「怒りますよ! 何勝手に眷属?使徒?にしてるんですか!?」
「まあまあ。」
真魚が苦笑しながら僕を宥める。そのまま彼女は、ふと何かに気付いたように火のエルを見た。
「でも、さっき言ってたよね。」
真魚が少し真剣な表情になる。
「地球にもセレスティアルがいるって。それは大丈夫なんですか?」
真魚が闇の力を見る。
「宇宙にいるのは今すぐどうにもできないとしても、地球にいるなら、今のうちに何とかできないの?」
もっともな意見だった。僕も闇の力を見る。光のエルも見る。火のエルも見る。水のエルだけはお茶を飲んでいる。そして。
「既に対処している。」
闇の力の発言に僕、光のエル、火のエル、真魚、全員が固まった。いや、水のエルだけが普通にお茶を飲んでいる。
「…………はい?」
僕が聞き返す。
「既に対処している。」
「何を?」
「地球内部に存在するセレスティアルを。」
え?
「どうやって?」
「氷のエルを使った。」
さらっと、とんでもない名前が出てきた。
「氷のエル?」
「七柱の一人だ。現在は地の底にいる。」
「何してるんです?」
「セレスティアルを凍結させている。」
凍結。セレスティアルを。
「待ってください。」
僕は額を押さえる。
「さっき、セレスティアルって星一個どうこうできる存在だって言ってましたよね?」
「ああ。」
火のエルが答える。
「それを……凍らせた?」
「正確には、まだ完全な個体ではない。」
闇の力が説明を続ける。
「地球内部に埋め込まれた種だ。」
「種?」
「セレスティアルが誕生するためのものだ。」
闇の力は淡々としている。
「地球に生きる知的生命体からエネルギーを吸収し、一定量に達した時、星そのものを割って誕生する。」
真魚の顔が青くなる。僕も多分、同じ顔をしている。
「星、割れるんですか?地球は?」
「滅ぶ。」
「さらっと言わないでください!」
とんでもない爆弾が埋まってるじゃん!
「故に凍らせた。」
闇の力が続ける。
「氷のエルの力で、種そのものの活動を停止させている。エネルギーを吸収することもない。成長することもない。誕生することもない。封印が維持される限り、問題はない。」
「いつから?」
「数千年前からだ。」
「数千年!?」
そんな昔から!?
闇の力が僅かに首を傾ける。
「私は人類を見守る者だ。」
「いや、知ってますけど!」
後で聞いたら、この世界の闇の力は原作みたいに長い間オーパーツの中で眠っていたわけじゃない。ずっと存在し、ずっと人間を見ていたらしい。
「地球内部に異物が存在することには、遥か以前から気付いていた。」
闇の力が言う。
「当初は破壊を試みたが、星への影響が大き過ぎた。」
ああ。地球の中心近くにあるなら、下手に攻撃できない。
「故に、活動を停止させる方法を探した。その結果、氷のエルの力が最も適していると判断した。」
「それで、ずっと凍らせてる……。」
「そうだ。」
なんというか。この人、僕が思っていたより遥かに仕事してた。
「じゃあ、セレスティアル問題、解決してるじゃないですか。」
「地球内部のものについてはな。」
闇の力が僅かに目を細めた。
「問題は、それを地球へ送り込んだ者だ。」
嫌な予感。
「別のセレスティアルか?」
火のエルが尋ねる。
「ああ。」
闇の力が頷く。
「地球内部へ種を送り込み、さらに監視と管理を目的として複数の存在を配置した。」
「エターナルズか。」
火のエルが呟いた。
「そう呼ばれているようだ。」
闇の力の声が少しだけ低くなる。
「彼らそのものに敵意はない。故に排除する理由もない。」
「じゃあ、何が問題なんです?」
「彼らを送り込んだ存在だ。」
闇の力はカプチーノへ視線を落とす。
「地球内部の種が活動していないことに、いずれ気付くだろう。その際、どのような行動を取るか分からない。」
「それで悩んでる?」
「ああ。」
数千年単位で。
僕はしばらく黙り、そして。
「それを先に言えぇぇぇぇっ!!」
本日二回目。
「何故だ。」
「何故じゃないですよ!」
僕はテーブルを叩く。
「セレスティアルが地球にいる! って聞いたら、普通、地球滅亡の危機だと思うでしょ!?」
「危機ではない。」
「今聞きました!」
「以前から説明していたはずだ。」
「いつ!?」
「外宇宙から脅威が訪れる、と。」
「言ってましたけど!」
確かに。ずっと言ってた。宇宙から危険なものが来る。地球の外には、人間では対処できない存在がいる。何度も聞いた。
「それと地球の中のセレスティアル、関係ないじゃないですか!」
「その通りだ。地球内部のセレスティアルは、外宇宙からの脅威ではない。」
闇の力が真顔で言った。
「地底からの脅威だ。」
僕はテーブルへ突っ伏した。真魚も額を押さえた。光のエルは目を閉じる。火のエルは――
「ぶはっ! 地底からの脅威だってよ!」
「事実だ。」
「そういう問題じゃないでしょ!」
真魚までツッコんだ。その横で、水のエルだけが、静かにお茶を飲んでいた。
「……知ってたんですか?」
僕が尋ねる。
「はい。」
「教えてくださいよ!」
「聞かれませんでしたので。」
「この人たち、本当にもう!」
頭が痛い。本当に。心の底から。
「…………もういい。」
僕は力なく手を振った。
「とりあえず、地球の中のセレスティアルは氷のエルさんに任せる。」
「問題ない。」
「外にいるセレスティアルは、今すぐ来るわけじゃない。」
「ああ。」
「だったら、そっちは後。」
「よかろう。」
「当面はサノス対策。」
闇の力が頷く。
「異論はない。」
光のエルも頷いた。
「私も、それで構わない。」
「俺も賛成。」
床から火のエルが手を挙げる。
「お前はまず反省しろ。」
「まだ正座!?」
「当然だ。」
「そろそろ足の感覚ないんだけど!」
僕は椅子の背もたれに身体を預ける。なんだか、とんでもなく疲れた。サノス。インフィニティ・ストーン。
加えて、セレスティアル。エターナルズ。知らない単語がどんどん増えていく。でも、全部を僕一人でどうにかする必要はない。
地球にはアベンジャーズだっている。二年前まで、僕と一条さんたちだけでグロンギと戦っていたことを思えば頼れる相手が増えた。……増え過ぎた気もするけど。
「じゃあ、本当に任せますからね。」
「ああ。」
「勝手に人間を改造したりしないでくださいね。」
光のエルを見る。
「善処しよう。」
「善処じゃなくて約束して!?」
前途多難だった。とりあえず、サノスが来るまでには、もう少しまともな話し合いができる集団になっていてほしい。
切実にそう思った。
ーーーーー
それから少しして。長かった話し合いもようやく終わり、僕たちは喫茶店を出た。闇の力と光のエル、それに水のエルはまだ店内に残っている。どうやら、このまま今後について話を続けるらしい。真魚さんは先に帰った。そして僕はというと――
「いってぇぇぇぇ……。」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫に見えるか?」
店の前で、火のエルが足を押さえて蹲っていた。
「エルなのに正座で足痺れるんですね。」
「人間の身体使ってんだから仕方ねぇだろ!」
「だったら人間の身体使わなきゃいいのに。」
「街中であの姿になれってのか?」
「通報されますね。」
「だろ?」
火のエルはしばらく足を揉んでいたけれど、やがて感覚が戻ってきたのか、ゆっくりと立ち上がった。
「ったく。昔から容赦ねぇんだよ、あの人。」
「自業自得じゃないですか?」
「うるせぇ。」
僕としては、あれだけ好き勝手やった罰が正座だけなら相当軽いと思う。火のエルは何度か足を振ってから、ふと僕を見る。
「そういや、お前。」
「はい?」
「今、クウガでアべンジャーズなの?」
なんだろう。その『学生でバイトしてるの?』みたいなノリ。
「そうですけど。」
「マジか。」
火のエルが目を丸くする。
「スゲェな。」
「そうですか?」
「そりゃそうだろ。クウガやりながらアべンジャーズ加入とか、クロスオーバーにも程があるだろ。」
「自分で言わないでくださいよ。」
僕たちにしか通じない会話だな。まあ、事実なんだけど。僕はクウガで、アべンジャーズと一緒にニューヨークで戦った。正式加入しているのかは微妙だけど、少なくともフューリーからはメンバー扱いされている。
……高校生なのに。
「それにしても。」
僕は火のエルを見る。
「あなたは、これからどうするんですか?」
「ん?」
「光のエルさんは、あの村で超能力者の人たちを見るみたいですけど。あなたは?」
火のエルは少し考えるように空を見上げた。
「さてな。」
「決めてないんですか?」
「ああ。そもそも、三馬鹿と違って他のエルは割と自由にやってたからな。」
「三馬鹿?」
「水、地、風。」
「酷い言い方。」
「実際、あいつら三人は昔からつるんでたんだよ。」
だから三馬鹿らしい。水のエルさん、普通に落ち着いた人に見えたけど。
「俺たち七柱は全員が四六時中一緒にいたわけじゃねぇ。それぞれ役割も違えば、考え方も違う。俺なんかは特に好き勝手やってたしな。」
「でしょうね。」
「お前、俺に対して当たり強くない?」
「やったこと思い出してください。」
黙った。
「まあ、とりあえず世界でも見て回るかな。」
「世界?」
火のエルが辺りを見回す。
「前にいた世界と似てるところも多いが、違うところも山ほどある。せっかくこうして自由に動けるようになったんだ。自分の目で見て回るのも悪くねぇ。」
「宇宙は?」
さっきまでセレスティアルだのサノスだのと話していたのだ。この人なら、宇宙にも興味を持ちそうだけど。
「気にはなる。けど、今はやめとく。」
「なんでです?」
「怖ぇんだよ。関わった、その後がな。」
火のエルは頭を掻く。
「宇宙まで行って変に介入した結果、何がどう変わるか分からねぇ。地球だけでも相当変わってんのに、宇宙規模で原作崩壊させたら収拾つかなくなるだろ。」
それは、ちょっと分かる。僕たちは未来を知っている。でも、それは絶対の未来じゃない。僕たちが何かをすれば、その時点で未来は変わる。実際、この世界はもう僕が知っている世界とはかなり違っている。
「というか。」
火のエルが僕を見る。
「お前はよくアべンジャーズに関わったな。」
「え?」
「原作崩壊、怖くねぇの?」
その言葉に、僕は少しだけ黙った。怖くない、なんて言えば嘘になる。僕がアべンジャーズに関わったことで、本来とは違う未来になる可能性はある。本来なら生きていた人が死ぬかもしれない。逆に、死ぬはずだった人が生き残るかもしれない。僕の知識が役に立たなくなる可能性だってある。でも、
「……もう崩壊してますからね。」
「ん?」
「原作。」
火のエルが僕を見る。
「僕がクウガになった時点で、僕が知ってる『仮面ライダークウガ』とは違う。」
五代雄介の代わりに僕がクウガになった。それだけでも、十分すぎるほど違う。
「ニューヨークでもそうです。僕がアべンジャーズと一緒に戦った時点で、僕が知ってる映画とは違う。」
「まあな。」
僕は少し考えてから続けた。
「あなたも同じでしょう?」
「俺?」
「原作を知ってるのに動いた。光のエルさんに未来のことを教えた。それで、本来とは違う流れになった。」
火のエルが黙る。
「だから、僕も同じです。」
もう、原作通りにはならない。だったら、
「良い方向に崩壊させる努力をしたい。」
火のエルが僅かに目を見開いた。
「未来を知ってるのに、何もしないで誰かが死ぬのを見るなんて嫌ですから。」
僕が知っている未来が、そのまま起きる保証なんてない。それでも、知っている危機があるなら、備えたい。救える人がいるなら、救いたい。その結果、僕が知っている物語から遠ざかったとしても。
「まあ、失敗するかもしれませんけどね。」
火のエルはしばらく僕を見ていた。
「そ。」
それだけ言って、僕の横を通り過ぎる。
「頑張れよ。」
僕は振り返ると、こちらを見ないまま片手を上げていた。
「……はい。」
僕も小さく笑う。
「頑張ります。」
火のエルはそのまま歩いていった。僕も一条さんのところへ帰るため、反対方向へ歩き出した。だから、その後、火のエルが再び喫茶店へ戻ったことを僕は知らなかった。
―――――
店内。既に光のエルと水のエルの姿もない。残っているのは、闇の力だけだった。その向かいへ、火のエルが座る。
「……帰ったのか。」
「ああ。」
闇の力は火のエルを見ることなく答えた。火のエルは先ほどまでの軽い態度を消し、椅子へ深く腰掛ける。
「一つ聞いていいか?」
「何だ。」
「本当に、セレスティアルズと事を構えるのか?」
闇の力の手が止まる。
「ああ。」
迷いのない返答だった。
「……そうか。」
闇の力が何千年も前から、地球内部のセレスティアルの誕生を阻害している。今はまだ、向こうがどう動くかは分からない。だが、いずれ気付かれる。
地球へ送り込んだ種が成長していないことに。本来ならば、とっくに誕生へ向けて成長しているはずのセレスティアルが、何者かによって封じられていることに。
「なら最悪――エターナルズは敵になるな。」
「ああ。」
闇の力は否定しなかった。エターナルズ自身に悪意があるかどうかは関係ない。セレスティアルズによって生み出され、その命令に従う存在である以上、立場が衝突する可能性はある。
「クロオには?」
「まだ話す必要はない。」
「だろうな。」
火のエルが苦笑する。
「これ以上聞かせたら、本気で倒れそうだ。」
高校生でクウガ、そしてアべンジャーズ。迫りくるサノスにインフィニティ・ストーン。そこへセレスティアルズとエターナルズ相手の戦争まで追加するのは、さすがに酷だ。火のエルは椅子へ背を預け、天井を見上げる。
「セレスティアルズ、か。」
未来の知識を持つ彼ですら、その全てを知っているわけではない。ただ一つ分かるのは。まともに戦っていい相手ではない、ということ。
「……力を蓄えるしかないか。」
「ああ。」
闇の力は静かに頷く。
そして何事もなかったかのように、カプチーノへ口をつけた。
ーーーーー
光のエルが村の中を歩いていると、背後から声をかけられた。
「光のエルさん。」
振り返ると、そこにいたのは、真魚だった。
「……君か。」
「ちょっと聞きたいことがあって。」
真魚は自分の手を見る。
「私の力って、これからどうなりますか?」
サイコメトリー。触れた物や人から、その思念を読み取る力。光のエルは真魚をじっと見つめた。
「君は既に、目覚め始めている。」
「目覚める?」
「ああ。」
光のエルが、真魚へ手を伸ばす。その指先が額へ触れる直前。
――ドクン。
真魚の心臓が大きく脈打った。
「……え?」
一瞬。身体の奥から、何かが湧き上がった。温いけれど、恐ろしいほど強い何か。光のエルが僅かに目を細める。
「やはりな。」
「何が?」
「いずれ分かる。」
「そういう言い方、クロオ君が絶対怒ると思いますよ。」
「ならば、まだ彼には言わないことだ。」
「えぇ……。」
真魚は困ったように笑う。その胸の奥で、静かに『力』が脈動していた。
人が進化する限り。人が未来へ進み続ける限り。いつか再び、その時は訪れる。
――アギトは戻ってくる。