日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
アイアンマン3編、開幕………しますが、前後編と短いです。
アンノウンを巡る一連の事件は、ひとまず終わった。
G4計画も破棄。深海や水城も逮捕され、警察側のゴタゴタも、まあ、警視総監の、
『まあ、良いじゃないか。』
で何故か収まった。
闇の力や光のエルとも一応の話はついた。というわけで。本来なら、僕と一条さんもさっさと長野へ戻るところなのだけど。
「四月までは東京に残る。」
数日前、一条さんからそう告げられた。
「なんでです?」
「アンノウン事件の事後処理だ。」
「終わったんじゃないんですか?」
「事件が終わることと、仕事が終わることは別だ。」
「嫌な言葉ですね。」
「覚えておけ。」
覚えたくない。
アンノウンの資料整理、G3ユニットとの情報共有、超能力者たちに関する対応。それに、今回の件では警察だけでなく自衛隊まで絡んでいる。事件そのものが終わっても、一条さんたち大人の仕事は山ほど残っているらしい。そして、保護者である一条さんが東京に残る以上、当然、僕も東京に残ることになった。
「まあ、別にいいんですけどね。」
長野に戻ったところで、今すぐ何かあるわけでもない。それに、
「クロオ君。」
昼休み。廊下を歩いていると、後ろから聞き慣れた声がした。
「真魚さん。」
「今からお昼?一人?」
「その予定です。」
「じゃあ一緒に食べよ。」
そう。東京に残ることになって、一つだけ予想外のことがあった。僕が今、通っている高校。そこには風谷真魚もいた。
―――――
「なんか不思議ですね。」
僕と真魚は並んで座り、それぞれ弁当を広げていた。
「何が?」
「こうして普通に学校で会ってるのが。」
「そう?」
「だって、この前まで自衛隊基地に誘拐されてたんですよ?」
「それはクロオ君もでしょ。」
「そうですけど。」
僕の場合は、人生全体で見ると、あれくらいはまだマシな部類に入る。テロで両親を失い、十五歳でグロンギと戦った。十七歳で宇宙人と戦って、その後アギト事件に巻き込まれて、光のエルと殴り合った。
「…………。」
「どうしたの?」
「いや。」
僕は弁当を見る。
「普通の高校生って、いいなって。」
「今さら?」
「今だからですよ。」
真魚が笑う。こういう時間は、本当に普通だった。授業を受けて、昼休みに友達と弁当を食べて、放課後になったら帰る。
アンノウンもいない。グロンギもいない。チタウリもいない。エルもいない。………あ、僕自身がエルか。いや、それは置いておこう。
うん、普通とは素晴らしい。
「四月になったら長野に戻るんだっけ?」
「その予定です。一条さんの仕事が終われば。」
「そっか。」
真魚が少し残念そうに言う。
「寂しいです?」
「別に。」
即答。
「何その顔。」
「いや、もう少しこう。」
「寂しい寂しい。」
「雑!」
真魚が笑い、僕も笑った。本当に平和だった。少なくとも、この時までは。
―――――
放課後。特にすることもなく、適当にネットニュースを流し読みしていると、
「…………ん?」
指が止まった。『トニー・スターク』見慣れた名前があった。記事を開くと、アメリカで続いている爆破事件、マンダリンを名乗るテロリスト、そして、その事件でハッピーさんが重傷を負ったこと。
「これは………。」
嫌な予感がして、さらに読み進めると、
『トニー・スターク氏、マンダリンを挑発。自宅住所を公表』
もう一度読むが、見間違いじゃない。記事には、記者に囲まれたスタークさんの写真。その下にはマンダリンへの宣戦布告。さらに、マリブにある自宅住所を、その場で堂々と口にしたと書いてある。
僕はスマートフォンを置き、両手で顔を覆う。
「何やってんの、あの人……。」
僕は前世でアイアンマンが好きだった。当然、『アイアンマン3』も見た。細かいところまで全部覚えているわけじゃない。でも、これは覚えている。
ハッピーさんが爆発に巻き込まれて、スタークさんがキレて。マンダリンを挑発した。自宅住所まで公開して、そして。
「次……家が襲われるじゃん。」
一気に血の気が引いた。スマートフォンを掴む。まずは一条さん。電話をかける。数回の呼び出し音。
『どうした。』
「一条さん。」
『何だ。』
「スタークさんがヤバいです。」
数秒。
『……順番に話せ。』
「ネットニュース見てください。アメリカのマンダリンっていうテロリストの件です。」
『知っている。爆破事件だろう。』
「スタークさんがそいつを挑発して、自宅住所まで公開しました。」
『……それも見た。』
「この後、襲われる可能性があります。」
一条さんが黙った。
『何故そう思う。』
来た。そこ聞くよね。
「…………勘です。」
『黒雄。』
「はい。」
『お前がそう言う時は、大抵何か知っているな。』
完全にバレてる。いや、僕が悪い。今まで何度もやってきた。
「説明は後でします。」
『今は出来ないのか。』
「出来ないというか……僕自身、どこまで正しいか分からないんです。」
未来を知っているなんて、簡単に言える話じゃない。しかも、僕が知っている未来はもうかなり変わっている。
五代雄介ではなく、僕がクウガになった。アベンジャーズに僕が参加した。火のエルなんていう、本来いるはずのない存在まで動いている。僕の知識通りになる保証なんてない。でも。
「嫌な予感がします。」
『…………。』
「一条さん。」
『まずスターク本人に連絡しろ。』
そうだ。普通に連絡先持ってるじゃん。
『お前が直接知っている相手だろう。』
「はい。」
『連絡して、警戒するよう伝えろ。それからこちらにも連絡しろ。』
「分かりました。」
電話を切り、すぐに連絡先を開く。『TONY STARK』登録されている名前を見る。ニューヨーク決戦の後、本人に半ば強引に登録された。
『何かあったら連絡しろ。宿題以外ならな。』
そんなことを言われた記憶がある。
プルルルル。
プルルルル。
「出てくださいよ……。」
プルルルル。
出ないで切れた。もう一度。出ない。
「スタークさん……。」
三回目も出ない。今度はメッセージを送る。
『ニュースを見ました。マンダリンの件です。すぐ家から離れてください。危険です。』
送信したが、既読はつかない。嫌な感じがする。でも、まだ間に合うかもしれない。もう一度電話するが繋がらない。
「なんで出ないんですか……。」
その時、スマートフォンに通知が入った。海外ニュース。
『速報、トニー・スターク氏の自宅で大規模な爆発』
記事を開くと、映像まであった。海沿いの崖、黒煙、炎。そして、崩れ落ちていく建物。スターク邸だ。
「…………遅かったか。」
映像では、武装ヘリらしき機影まで確認されている。
『スターク氏の安否は現在不明――』
でも大丈夫だ。スタークさんは生きている。
確かアーマーで脱出して、テネシーに飛ばされる。その後は子供と一緒に事件を調べる。でも、
「…………どこだっけ。」
テネシーを調べる。アメリカの州、ダメだ広すぎる。それ以上は思い出せない。町の名前って何だった?
「くそ……。」
僕が関わったことで、この先が同じになる保証すらない。もしスタークさんが。いや、嫌な想像は振り払おう。
スマートフォンに着信が入った。
「スタークさん!?って…………フューリーかよ。」
一応出るか。
「もしもし。」
『十文字。』
相変わらず挨拶がない。
『スターク邸が襲撃された。』
「見てます。」
『スターク本人の安否は不明だ。』
「生きてますよ。」
言ってから、またやってしまった、と思った。
『……何故分かる。』
それは勿論、毎度お馴染みの、
「勘です。」
『お前は何か知っているようだな。』
「さあ?とにかく。」
僕はスターク邸の映像を見る。
「スタークさんは生きています。」
『根拠は。』
「説明できません。」
『十文字。』
「でも、探した方がいい。」
僕は真剣に言った。
「今の時点で死亡扱いするのは絶対に駄目です。」
数秒、フューリーは何も言わなかった。やがて。
『こちらも同じ判断だ。』
「じゃあ。」
『ローディが既に動いている。S.H.I.E.L.D.でもスタークの所在を追う。』
「僕も行きます。」
即答した。
『……日本からか。』
「はい。」
『学校はどうする。』
「…………。」
なんかフューリーが凄い意外な事を言ってる。大事だけど。
「何とかします。」
『高校生だったな、お前は。』
「忘れてたんですか?」
『半分くらいな。』
酷い。
『一条には。』
「さっき連絡しました。」
『許可は。』
「まだです。」
『取れ。』
ちょっと意外だった。もっと、
『今すぐ来い。』
くらい言うかと思ったのに。
『お前の保護者だろう。』
「フューリーがそういうところ気にするんですね。」
『俺を何だと思っている。』
「未成年を空母に呼び出す人。」
『…………。』
勝った。
『許可を取れ。取れたらこちらで渡米の手配をする。』
「分かりました。」
『十文字。』
「はい。」
『スタークについて、何か思い出したらすぐ連絡しろ。』
やっぱり疑われてる。あ、通話が切れた。僕はすぐに一条さんへ電話をかけた。今度は一度で出た。
『フューリーから聞いた。』
「早い!」
『アメリカへ行くつもりか。』
「はい。」
即答する。
「スタークさんを探したいです。」
『…………。』
「一条さん。」
しばらく沈黙が続いた。
「お願いします。」
『危険だぞ。』
「分かってます。」
『相手は未確認生命体でもアンノウンでもない。テロリストだ。』
「はい。」
『お前が知っている通りの展開になる保証もない。』
そこまで分かってるのか。いや、僕の態度をずっと見ていれば気付くか。
「それでも。」
僕は燃えるスターク邸の映像を見る。
「行きたいです。」
襲撃されることを知っていたのに間に合わなかった。動かなかった。それが、どうしようもなく悔しい。
「今度は間に合わせたいんです。」
電話の向こうで、一条さんが息を吐いた。
『……分かった。』
「!」
『ただし、条件がある。』
「何です?」
『単独行動はするな。現地ではS.H.I.E.L.D.と行動しろ。』
「はい。」
『危険だと判断したら退け。』
「はい。」
『それから、無茶をするな。』
二年前から、何度も言われてきた言葉だった。
「努力します。」
『約束しろ。』
「……約束します。」
『よし。』
通話が切れる。ふと、僕は、その場で空を見上げた。東京の空だ。少しだけ、普通の高校生に戻れると思っていた。
スマートフォンが震え、フューリーからのメッセージを確認する。
『羽田だ。こちらで手配する。』
「早っ。」
僕は画面を閉じる。スタークさんは生きている。多分じゃ駄目だ、自分の目で確かめる。
アンノウン事件が終わって。ようやく訪れた短い平穏は、あっさり終わった。次の舞台は、再び、アメリカだった。
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