日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
「一条さん。」
『どうした。』
「ちょっとロンドン行ってきます。」
『待て。』
即座に止められた。
「まだ何も説明してませんよ?」
『お前がその言い方をする時は、大抵ろくなことじゃない。』
「酷い信頼ですね。」
『それで、今度は何だ。』
僕はスマートフォンを耳に当てたまま、隣にいる真魚を見る。さっき真魚のサイコメトリーで見えたもの、外国人の女性とその身体の中に存在している赤い何か。おそらく――エーテル。
「前に話した、ダークエルフの件です。」
『……来たのか。』
一条さんの声が低くなる。僕は以前から一条さんにも話していた。今年中に、ダークエルフによる事件が起きる可能性があること。詳しい時期は分からないこと。そして、ソーの母親が殺される可能性があることも。
「多分、始まりました。」
『根拠は?』
「僕のアマダムが何かに反応しました。真魚に確認してもらったら、外国人の女性の身体の中に、別の何かがあるみたいで。」
『それが、お前の言っていたエーテルか。』
「多分。」
『場所は?』
「ロンドンです。」
電話の向こうで、一条さんが黙る。
「なので、今から行きます。」
『……今から?』
「今回は時間との勝負になる可能性があります。」
『飛行機では間に合わない、と?』
「はい。」
僕は空を見上げる。
「ゴウラムで行きます。」
『…………。』
長い沈黙。
「一条さん?」
『東京からロンドンまでゴウラムで飛ぶつもりか。』
「そうなります。」
『お前な……。』
一条さんが深々と溜息を吐いた。まあ、言いたいことは分かる。普通なら東京からロンドンへ行くのに飛行機を使う。当たり前だ。だけど、今から航空券を取って、空港へ行って、飛行機に乗って、十時間以上かけて移動していたら、その間に何が起こるか分からない。今回は、下手をすればアスガルドの王妃の命が懸かっている。
「無茶はしません。」
『お前の無茶はしないほど信用できない言葉も珍しいな。』
「善処します。」
『それも信用できん。』
酷い。しばらくして、一条さんが息を吐いた。
『……分かった。』
「いいんですか?」
『止めても行くだろう。』
「いや、一条さんが本気で止めるなら――」
『それに、お前の話が正しければ、放置できる問題じゃない。』
一条さんの声が真剣なものに変わる。
『ただし、定期的に連絡を入れろ。ロンドンに到着した時点で一度。何か状況が変われば、その都度だ。』
「はい。」
『それからS.H.I.E.L.D.にも連絡しろ。』
「分かりました。」
『絶対に一人で無茶をするな。』
「はい。」
電話が切れる。
「よし。」
これで一条さんの許可も取った。後はロンドンへ――
「ねえ。」
「ん?」
隣にいた真魚が僕を見る。
「時間との勝負になるの?」
「多分ね。細かい流れは覚えてないんだけど……。」
僕は記憶を探る。
「確か、移動したり、何かを探したり、色んな場所を行ったり来たりする場面があった気がする。」
「ふーん。」
真魚が少し考える。そして、
「じゃあ、私がいた方がよくない?」
「駄目。」
「即答するじゃん。」
「危ないから。」
「でも、探し物するんでしょ?私、得意だよ?」
「人間GPS扱いした僕が言うのもなんだけど、自分から便利能力みたいに言わないで。」
「じゃあ連れてってよ。」
「駄目。ダークエルフが出てくるから。」
「強いの?」
「強い。」
「クロオより?」
「分からない。でも普通の人間が戦っていい相手じゃない。」
「ふーん。」
真魚が頷く。
「じゃあ大丈夫。」
「何が?」
「見てて。」
真魚が一歩後ろへ下がる。
「……何を?」
次の瞬間。
――キィィィン。
「…………え?」
真魚の腰から光が溢れ、見覚えがある物が現れる。
「ちょっと待って。」
真魚の腰に現れたのは――
「オルタリング!?」
「うん。」
「うん、じゃないよ!?」
何で!?いつ!?どこで!?いや、心当たりはある!
「光のエルか!?あの人、何してるの!?」
僕が頭を抱えている間にも、真魚は腰に現れたオルタリングへ手を添えた。
「変身。」
眩い光が真魚を包み込み、一瞬でその姿が変わった。銀と黒と赤を基調とした身体。頭部から伸びる角。そして全身から溢れ出す、凄まじい光の力。ただし、その姿は僕が知っているものとは微妙に違う。
全体的に細身で、腰回りや脚部のラインにも違いがある。明らかに女性の身体に合わせた姿だ。でも、問題はそこじゃない。
「…………。」
僕は目を擦って、もう一度見る。変わらない。
「いきなりシャイニングフォーム!?」
初変身で!?最終フォーム!?
「これ、シャイニングフォームっていうんだ。」
「知らずに変身したの!?」
「光のエルは『今の君に最も適した姿』って言ってたけど。」
「最初から最強形態渡してるじゃん!」
あの人、僕と戦った時もシャイニングフォームだったよね!?絶対自分の趣味でしょ!真魚――いや、アギトが自分の手を見る。
「結構すごいよ。」
「見れば分かる。」
「あとね。」
「まだあるの?」
「これも凄いよ。」
真魚が手を伸ばす。光が集まり――一本の杖が現れた。
「…………何それ?」
見た目は完全に魔道士の杖だった。長い柄、先端には光を帯びた装飾。アギトの装備と言われても、僕の記憶には全くない。
「光のエルにもらった。」
「あの人、本当に何してるの!?」
「これでビームとか撃てるよ。」
「ビーム!?」
真魚が杖を構える。
「やめて! ここで試さなくていいから!」
「撃たないよ。」
良かった。
「だから大丈夫。」
「いや。」
僕は即答する。
「それでも駄目。」
「何で?」
「強いから安全とは限らない。相手が何してくるか分からないし、そもそも今回は宇宙規模の事件なんだよ?」
「でも、私がいれば色々と助かるでしょ。」
「それは……。」
「テレパシーも使える。」
「……。」
「サイコメトリーも。」
「…………。」
「戦えるようにもなった。」
「………………。」
説得材料が強い。それでも。
「駄目。」
「じゃあ。」
真魚が変身を解除する。光が消え、いつもの姿へ戻った。そして、僕へ人差し指を立てる。
「貸し一つ。」
「ぐっ。」
そこを突いてきたか。
「返して。」
「真魚、それは卑怯じゃない?」
「クロオが言ったんでしょ。貸し二つ目って。」
「言ったけど!」
「一つ返して。そして、ロンドン連れてって。」
僕はしばらく真魚を見る。真魚も僕を見る。
「…………はぁ。」
負けた。
「絶対、僕から離れないこと。」
「うん。」
「危ないと思ったらすぐ逃げる。勝手に行動しない。」
「分かった。」
「あと美杉教授の許可。」
「取る。」
「それから――」
僕はスマートフォンを取り出す。
「一条さんに、もう一回電話する。」
―――――
『駄目だ。』
「ですよね。」
予想通りだった。
『何を考えている。一般人を国外の危険地帯へ連れていくなど――』
「あ、一条さん。」
『何だ。』
「真魚、アギトになりました。」
『…………何?』
「しかもシャイニングフォーム。」
『…………。』
一条さんが黙った。
「僕もさっき知りました。」
『どういうことだ。』
「光のエルが何かしたみたいです。」
『…………。』
また沈黙。多分、一条さんも頭を抱えてる。
「クロオ。」
真魚がスマートフォンを手に戻ってきた。
「お父さん、いいって。」
「早っ!」
もう許可取ったの!?
「はぁ。一条さん、美杉教授から許可出ました。」
『本当にか?』
「真魚。」
「うん。代わる。」
僕はスマートフォンを真魚へ渡す。
「もしもし。一条さん?」
『……風谷さん。本当に行くつもりなのか?』
「はい。」
『危険だぞ。』
「分かってます。」
『旅行ではない。場合によっては命に関わる。』
「それも分かってます。」
真魚は真剣な顔で答える。
「でも、私の力があればクロオを助けられると思います。」
『…………。』
「それに、叔父さんからも許可をもらいました。」
しばらくして。
『……黒雄に代わってくれ。』
「はい。」
スマートフォンが戻ってくる。
「もしもし。」
『絶対に風谷さんを守れ。何があってもだ。』
「分かってます。」
『……許可する。』
「ありがとうございます。」
通話が切れたので、僕はスマートフォンを下ろす。
「ところで、どうやって美杉教授を説得したの?」
「危なくなったらクロオが助けてくれるから大丈夫って。」
「…………。」
「そしたら笑って、『それなら大丈夫だね』って。」
「僕への信頼が重い!」
いや、嬉しいけど!嬉しいけど命懸かってるからね!?
「じゃあ行こっか。」
「……はい。」
こうして、予定には全くなかった同行者が一人増えた。
―――――
「来い、ゴウラム!」
僕の呼びかけに応じ、空からゴウラムが飛来する。僕と真魚がそれぞれ変身してから乗り込むと、ゴウラムは翼を大きく広げた。
「真魚、しっかり掴まってて。」
「クロオに?」
「ゴウラムに!絶対分かってて言ったよね?」
ゴウラムが一気に高度を上げる。東京の街が小さくなっていき――そのまま西へ。目指すはイギリス、ロンドン。そして、エーテルを身体に宿してしまった女性、ジェーン・フォスター。
僕は目を閉じ、アマダムの感覚へ意識を集中する。まだ感じる。遠いけど、確実に存在している。エーテルにアマダムが反応している。
「……何なんだろうな。」
「エーテル?」
「うん。闇の力はアマダムも宇宙由来の力だって言ってたけど……。」
だからインフィニティ・ストーンに反応している?分からない。そもそもアークル自体、僕が原作で知っていたものとは明らかに違う部分がある。
「まあ、今はいいか。」
考えるのは後、まずはジェーンの所へ。そしてソーが来たら――
「っ!?」
アマダムが脈打つ。エーテルとは違う反応だ。空そのものを震わせるような――雷の気配。
「来た!ソーだ!」
分かる。姿は見えないし、場所も正確には分からない。だけどいる。今、地球に雷神ソーがいる。
「真魚!」
「うん!」
僕と真魚が手を繋ぐ。
「行ける?」
「クロオが増幅してくれれば。」
「分かった。」
アマダムへ意識を集中させ、僕の中に宿る力を真魚へ流し込む。真魚が目を閉じ、僕は雷の感覚だけを頼りに、ソーの存在を探る。
遠い。けれど――いた。
「真魚。」
「うん。繋げるね。」
真魚の意識が、僕の力を伝って伸びていく。
―――――
ロンドン。
ジェーン・フォスターを前に、ソーは険しい表情を浮かべていた。彼女の身体に異変が起きている。それは明らかだった。
「ジェーン。」
「私は大丈夫。」
「大丈夫には見えない。」
ソーがジェーンの腕へ触れようとした、その時。
『――ソー!』
「!?」
ソーが勢いよく振り返る。
「どうしたの?」
ジェーンが驚く。ソーは周囲を見回すが誰もいない。しかし、確かに聞こえた。頭の中へ直接響いた声。
『聞こえますか!? ソー!』
「……クロオか?」
『繋がった!』
直後、別の女性の声が混ざった。
『繋がった! クロオ、繋がったよ!』
『真魚、ちょっと待って!』
「……何をしている?」
クロオの声が響く。
『今、地球にいますよね?』
「ああ。」
『ジェーン・フォスターと一緒ですか?』
ソーの表情が変わる。
「何故それを知っている。」
『予知能力みたいなものです。正確には未来について少しだけ分かることがあるんです。それで………嫌な予感がします。』
「嫌な予感?」
『アスガルドです。』
ソーの顔から表情が消える。
『近いうちに、アスガルドで大きなことが起きる気がします。ジェーンさんの異変とも関係しているはずです。』
「……。」
『だから僕も行きたい。』
ソーが眉を寄せる。
『戦力にはなれます。ニューヨークで僕の力は知ってますよね。』
「………お前の言うことが真実ならば、相当に危険だぞ。」
『分かってます。』
「アスガルドは今、九つの世界の混乱を鎮めたばかりだ。何が起きるかは俺にも分からない。」
『だから行きたいんです。』
一瞬の沈黙。そして。
「……分かった。」
『本当ですか!?』
「ああ。来い。」
『ありがとうございます!』
「今どこだ?」
『そっちへ向かっています。僕の力であなたの雷を追えます。』
ソーが空を見る。
「ならば待とう。」
―――――
しばらくして。
ロンドンの空を、黒い影が横切った。
「いた!」
ゴウラムの上から、僕はソーを見つける。その隣には、ジェーン・フォスターもいる。
「ソー!」
「クロオ!」
ゴウラムを降下させ、僕と真魚は変身を解除して地面へ降り立つ。
「お久しぶりです。」
「ああ。」
ソーが僕の肩を叩く。
「元気そうだな。」
「そっちも。」
僕はジェーンを見る。
「初めまして。十文字黒雄です。」
「ジェーン・フォスターよ。」
ジェーンが僕を見る。それから真魚、そしてゴウラムへと視線が動く。
「……ソー。」
「何だ?」
「あなたの友達って、普通の人はいないの?」
「いるぞ。」
ソーが少し考える。
「……多分。」
「多分なんだ。」
真魚が小さく呟く。僕は苦笑しながらも、ジェーンを見る。近くに来たことで、よりはっきり分かる。ジェーン本人じゃない。彼女の中にある何かに、アマダムが反応している。
「……エーテルか。」
僕が呟くと、ソーがこちらを見る。
「知っているのか?」
「名前だけです。」
「ならばアスガルドへ行くぞ。」
ソーが空を見上げる。
「父上ならば、これが何かを知っているかもしれん。」
僕も空を見上げた。
「ヘイムダル。」
ソーが呼びかける。
「聞こえているな。」
僕と真魚も空を見る。ジェーンもつられるように顔を上げる。
「……本当に来るの?」
真魚が小声で聞いてくる。
「多分。」
「前にクロオが庭で叫んでも来なかった人でしょ?」
「何で知ってるの!?」
「一条さんから聞いた。」
「一条さん!」
何を話してるんですか!その瞬間、空が光った。
「うわっ!」
僕たちを包み込む、七色の光。ビフレストだ。ソーが笑い、
「行くぞ。」
僕は頷く。ジェーン、ソー、真魚、そして僕。四人の身体が、虹色の光に包まれていく。次の瞬間、地球から僕たちの姿が消えた。目指す先は――
神々の国、アスガルド。