日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
「キャロル。」
僕の背筋に寒気が走った。まさか。いや、待って。その名前は聞いたことが――
「応答しろ。」
数秒経過、何も起きない。
「……?」
真魚が首を傾げ、ロキが僕を見る。
「キャロルとは誰だ?」
「いや……。」
僕の頭の中に、アベンジャーズの記憶が浮かぶ。最後の戦い。サノスと戦う、とんでもなく強い女の人。
「まさか……。」
夜空が光った。
「え?」
真魚が上を見た、次の瞬間。
――ドォォォォォォン!!
黄金の地面が爆発した。
「うわっ!?」
「何だ!?」
土煙の中心から一人の女性が立ち上がる。全身を包む赤と青のスーツ。身体の周囲には、眩い光。そして、鋭い視線が真っ先にフューリーを捉えた。
「ニック。」
「遅い。」
「銀河の反対側にいたのよ。」
女性が周囲を見る。黄金の都、僕、真魚、そしてロキ。
「……。」
表情が変わった。
「キャロル。」
フューリーが指示する。
「ロキを無力化しろ。」
「待って待って待って!!」
僕が慌てて二人の間へ飛び込む。
「違います!今のロキは敵じゃない!」
女性――キャロルが僕を見る。
「誰?」
「十文字黒雄!クウガです!」
「知らない。」
ですよね!
「とにかく事情があって!」
「十文字。」
フューリーが言う。
「退け。」
「嫌です!」
「そいつはニューヨークを襲撃した。」
「知ってます!」
「なら退け。」
「でも今は違うんです!」
キャロルの身体から光が強くなる。
「子供ね。」
「子供じゃ――18歳って子供かな?」
「どいて。」
「とりあえず話を聞いてください!」
「ニックを攫った。」
「それも事情が!」
「ロキと一緒にいる。」
「だから事情が!」
「十分よ。」
「全然十分じゃない!!」
キャロルが一歩踏み込む。まずい。本当にまずい。この人はキャプテン・マーベル。存在は知っていた。アベンジャーズにも出てきてた。サノスの宇宙船を一人で突っ切って破壊したり、サノス本人とも真正面から殴り合っていた。つまり、
「めちゃくちゃ強い人ですよね!?」
「何の確認?」
「いや!」
どんなヒーローなのかはよく知らない!映画、ちゃんと見てなかったんだよ!でも、強い。それだけは分かる!
「クロオ!」
真魚が叫ぶと、キャロルの姿が消えた。
「っ!?」
次の瞬間、腹に凄まじい衝撃をぶち込まれた。
「がっ!?」
何をされたのか分からない。気付いた時には、僕の身体が浮いていた。変身してない状態でこれは不味い!
「クロオ!?」
景色が後方へ吹き飛んでいく。いや、僕が吹き飛ばされている!?
――ドゴォォォォォン!!
黄金の建物を突き破る。
「ちょっ――!」
そして。
――ドッガァァァァン!!
アスガルド郊外の岩山へ叩き込まれた。
「…………。」
本気で息が止まった。
「ゴホッ……!」
瓦礫を押し退ける。
「何、今の……。」
普通の状態だったとはいえ。一発。一発でここまで飛ばされた。………生きてる僕、流石に人間離れし過ぎてる気がする。
「あら?感じた通り、ちゃんと強いし、頑丈ね。」
空を見ると光が降りてくる。キャロルだ、片腕には。
「フューリーさん!?」
フューリーを抱えている。
「何度と言いますが、僕らは話し合いをしたいんです!」
「誘拐して?」
「安全確保です!」
「誘拐犯は大体そう言う。」
ぐうの音も出ない!
「とにかく、一回話を聞いてください!」
「ロキがいる。」
「今は味方です!」
「ニックを連れ去った。」
「それは僕です!」
「もっと駄目じゃない。」
本当だ!
「でも本当に重要な話なんです!」
「なら、まずニックを地球に返して。」
「返したら話が漏れる可能性があるんです!」
「誰に?」
「ヒュドラにです!」
キャロルの目が僅かに動いた。
「ヒュドラ?」
「そうです!S.H.I.E.L.D.の中に――」
「十文字!」
フューリーが止める。
「ここで話すな!」
「え!?」
「まだ状況が把握できていない。」
慎重すぎる!いや、長官としては正しいんだろうけど!キャロルがフューリーを見る。
「ニック。」
「まず安全を確保する。」
「あなた今、私が抱えてるけど。」
「それを含めてだ。」
キャロルが僕を見る。
「悪いけど。」
嫌な予感。
「しばらく寝てて。」
「待っ――」
光が弾ける。
「っ!!」
瞬間。
僕はアークルへ意識を集中した。もう説得してる暇ない!
「いきなり超変身!!」
――バヂィィィィィィィッ!!
雷光が爆発し、黒い装甲と金色の装飾を纏う。雷のエルの力を限界まで解放した姿、アメイジングマイティ。キャロルが初めて、僅かに表情を変えた。
「へえ。」
「話し合いがしたいんです!」
僕は拳を構える。
「でも聞く気ないなら!」
全身に金の雷が走る。
――バヂィィィィィッ!!
「とりあえず止めます!」
キャロルがフューリーを降ろし、僕を見据える。
「やってみなさい。」
「後で絶対話聞いてくださいよ!」
「勝てたらね。」
「その条件絶対おかしいでしょ!!」
僕は地面を蹴った。
――ドォン!!
キャロルも同時に飛び出す。黒と金の雷と眩い恒星のような光。
二つの影が、アスガルドの空で真正面から激突した。
ーーーーー
激突したはしたのだが、…………無理だ!!
拳がぶつかった瞬間、衝撃波が空気を震わせるぐらいの力で殴ったけど、普通に止められた。相手の拳を受け止めた腕が痺れて、めちゃくちゃ痛い!色々考えていたら、目の前にパンチが迫っていたので咄嗟に首を振るう。キャロルの拳が頬の横を通過したが、
「怖っ!」
ビビってばかりはいられないので、懐へ潜り込み、脇腹へ拳を叩き込む!
――ドンッ!!
「……っ。」
入った!…………よね?
「…………。」
キャロルが無言で『何かした?』という表情で見てくる。いや、何その反応?え?本当に効いてないの?
驚いている暇もなく、キャロルの膝が上がってきた。腹へ突き刺さる寸前に、両腕を交差させて受け止めーー
――ドゴォン!!
「ごぅっ!?」
受け止めたのに身体が浮いた。………どころか数メートル吹き飛ばされたよ。
「しんど過ぎるぞっ……!」
着地した直後、視界の端で光が瞬いた。今日一ヤバい!!
――バヂィィィッ!!
全身に金色の雷を走らせ、一気に横へ跳ぶ。すると、一瞬前まで僕がいた場所をキャロルが通過した。………通過しただけで地面が真っ赤になってるよ。速い、でも――見えはするんだよな。
雷のエルの力を限界まで引き出して戦えば、少なくとも戦闘中の動きには付いていける。………宇宙を飛び回る時の速度とかは知らない。あんなものと競争しろとか言われたら絶対無理だ。いや、今のゴウラムがいればワンチャンあるか?実質ワープしてるし。
とりあえず、殴り合える距離でならギリギリ対応できている。問題は、
「はぁっ!」
雷を纏った勢いで踏み込み、右脚を振り抜く。狙うのは側頭部!
「っ!」
キャロルに反応された!左腕が上がってるけど構うな、ガードごとぶち抜くつもりで!!
――ドッガァァァン!!
「よしっ……!」
今度は手応えがあった。キャロルの身体も空中を滑り、数メートルほど後退している。アメイジングマイティでの全力の蹴りだ。必殺技じゃないとはいえ、まともに受けたなら相当――
「…………。」
キャロルが止まって、僕を見てくる。そして、蹴りを受けた左腕を見る。もう一度、僕を見る。
「……何、その反応。」
痛がってない。それどころか、虫にでも刺されたのかな?みたいな顔してる。
「いやいやいやいや……。」
嘘でしょ?今の結構いい蹴りだったよ?ガードの上だったとはいえ、かなり綺麗に入ったよ?
「アメイジングマイティでこれかよ……!」
思わず声が漏れてしまった。なんだこれ?固すぎるだろ。今まで防御力が高い相手とも戦ったことはある。強い敵は、その強さに比例して耐久力が高かった奴が多い。ダークエルフのアルグリムとか特に頑丈だった。
けど、この人は次元が違う。殴っている感触はちゃんとあし、吹き飛ばすことだってできる。なのに、ダメージが入っている感じが全然しない。
「どうしよっかな………。」
アメイジングマイティで駄目なら、………アルティメット?いやいや、駄目だ。なんかこの前、勢いで一瞬使っちゃったけど、アレを本気で使ってしまうのは避けたい。そもそも僕はこの人と戦いたいわけじゃない。話を聞いてほしいだけだ。となると――
「……どうすれば良いの?」
倒せない。でも、止めないと話を聞いてくれないのに強すぎる。どうしろと!?
頭を悩ませている僕を、キャロルは少し離れた場所から見つめていた。
ーーーーー
――驚いた。
キャロル・ダンヴァースは、目の前の少年と戦い、素直にそう思った。
十文字黒雄、クウガ。ニックからは聞いたことのない名前だった。
最初に見た時は、少し頑丈な少年程度に思っていた。殺すつもりなど当然ないが、戦闘から離脱させるための一撃を放った。世間で超人と言わている連中では立ち上がれない程度の力は込めたはずだったけれど、すぐに瓦礫を押し退けて出てきたとは少し驚いた。
「いきなり超変身!!」
それに、何とも妙な掛け声と共に、少年の姿が変わってからは更に驚かされた。黒い装甲に金色の装飾。そして雷を纏った異形の戦士。
単に電撃を放つのではなく、雷そのものが少年の身体能力を異常な領域まで引き上げて、私の動きに反応してみせた。
拳を振るえば避ける。死角へ回り込めば追いついてくる。そして、
「……。」
左腕を見る。先ほど蹴られた場所に痛みはない。けれど、押し返された。私の防御の上から、数メートルも。
「へえ……。」
自然と声が漏れる。自分がどれほど頑丈なのか知っている。宇宙空間を生身で飛べるし、砲撃を受けても痛くも痒くもない。宇宙船に正面から突っ込み、その船体を物理的に貫いて撃墜することだってできる。
そんな自分とあの少年は――殴り合っている。もちろん、まだ全力ではないが、それは向こうも同じだろう。あの少年、まだ上があるな。
だからこそ余計に興味が湧いた。
宇宙を長く飛び回っていれば分かることだが、世の中には、地球人が考えているより遥かに多くの力が存在する。科学、魔法、神を名乗る種族。そして宇宙由来のエネルギー。
宇宙の根源に関わるほどの力は、そのエネルギーを浴びるだけで人間をその枠組みから大きく外れた存在にするときがある。私と殴り合えるというのなら、
「あなたの力の源も……、」
視線を腰のベルトに、そして、その奥へ。少年の身体から感じる、奇妙な力。
「相当ヤバいものみたいね。」
キャロルは小さく笑った。
ーーーーー