日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
キャプテン・アメリカ / ウィンター・ソルジャー編開幕
すみません、導入なので短いです。
始動
ニック・フューリーはS.H.I.E.L.D.の公式記録には存在しないセーフハウスで、壁一面に並べられた資料を睨みつけていた。
職員名簿、資金移動、作戦記録、研究施設、通信履歴。そして一枚の写真にはアレクサンダー・ピアースが写っていた。
「……ここまで入り込まれていたとはな。」
十文字黒雄から聞いた、S.H.I.E.L.D.内部にヒドラが多数存在しているという話。最初はあまりにも荒唐無稽だと思っていた。
だが、調べれば調べるほど妙な点が出てくる。
消えた記録、不自然な人事、特定人物に集中する権限。そして秘密裏に進められる巨大計画、プロジェクト・インサイト。
三隻の新型ヘリキャリアと衛星を連動させ、対象を事前に選別。脅威となる前に排除する。表向きは、そういう計画のはずだ。だが、十文字の未来知識によれば、それはヒドラによる大量粛清に使われる。
手に持っていた端末を閉じ、十文字が言っていたことを思い出す。
『スティーブさんには、ちゃんと正直に話した方がいいと思います。』
あの少年にしては、妙に真剣な顔で。
『全部一気にぶつけたら、スティーブさん、暴走っていうか……一人で突っ込みそうですけど。』
十分あり得るな。
『でも、黙ったまま利用するのは駄目です。特にバッキーさんのことは。』
ジェームズ・ブキャナン・バーンズ。第二次世界大戦で死亡したとされる男。だが生きている。ヒドラに回収、洗脳され、暗殺者として利用されている。
ウィンター・ソルジャー。
十文字の知る未来では、スティーブ・ロジャースは戦場で彼と再会するらしい。
「……正直に、か。」
呟いて思う。自分らしくない。
………だが今回は、あの真っ直ぐすぎる少年の意見を採用することにした。
「呼び出しとは珍しいな。」
スティーブ・ロジャースが部屋へ入ってくる。その後ろにはナターシャ・ロマノフもいる。
「私まで?」
「必要だから呼んだ。」
「嫌な予感しかしないわね。」
「正しい。」
二人が向かいに座る。テーブルの上には必要最低限の資料だけ出してある。それ以外は全て隔離してある。
ロジャースがこちらを見てくる。
「何があった。」
二人を順番に見ながら、
「まず、ここで話す内容は、S.H.I.E.L.D.内部でも共有しない。」
ロマノフの表情が僅かに変わった。
「内部でも? 理由は?」
「敵がいる。」
俺の言葉に、ロジャースの眉が寄る。
「どこに。」
「S.H.I.E.L.D.の中だ。」
ロマノフの顔から笑みが消える。
「規模は?」
「不明だ。」
「組織は?」
「ヒドラ。」
その瞬間、ロジャースの表情が変わった。
「何だって?」
「ヒドラは滅びていない。」
「そんなはずは――」
「ないと言い切れるか?」
ロジャースが黙るのに合わせて、資料を滑らせる。複数の人間、資金、組織図、そしてピアース。
それらの資料に目を通し、ロマノフが目を細める。
「……これは。」
「まだ確定していないものも含まれている。」
「でも、疑ってるのね。」
「ああ。」
ロジャースも資料を見る。
「この情報はどこから?」
「情報源は明かせない。」
「ニック。」
「少なくとも今はな。」
納得していない顔をする。だが、今は説明を優先させてもらう。
「もう一つある。」
端末を操作し、プロジェクト・インサイトに関わる情報を開く。
「ヘリキャリア? しかも三隻とは。」
「何のために用意したの?」
「本来は、脅威を事前に排除するためだ。」
「本来は?」
ロマノフが聞いてくる。
「ヒドラがこれを乗っ取る。標的選定アルゴリズムを使い、自分たちにとって将来的な脅威となる人間を一斉に殺す。」
ロジャースが立ち上がりかける。
「そんな計画を進めているのか!」
「座れ。」
「今すぐ止めるべきだ!」
「だから座れ、ロジャース。」
「ニック!」
「今動けば逃げられる!」
強い声を出し、ようやくロジャースが止まる。
「ヒドラが何十年S.H.I.E.L.D.に潜伏していると思っている。頭を一つ潰して終わりなら、とっくにやっている。」
ロマノフが静かに言う。
「泳がせてるのね。」
「ああ。」
「全員炙り出すために。」
「そうだ。」
ロジャースはゆっくりと座った。
「……僕に何をさせたい。」
「今は何も。」
「何?」
「知っておいてくれれば、それで良い。……そして、誰も信用するな。」
「あなたも?」
ロマノフからの問いに笑って答える。
「特に私を疑え。」
そう答えると、ロマノフは僅かに口元を緩めた。
「それはいつも通りね。」
少しだけ空気が緩む。だが、まだ言わなければならないことがある。
十文字の言葉。
『バッキーさんのことは絶対です。』
「ロジャース。」
「何だ。」
「もう一つ。これは………お前個人に関わることだ。」
ロジャースの表情が変わる。
「僕に?」
「ああ。」
一瞬だけ、言葉を選んだ。
「バーンズ軍曹のことだ。」
ロジャースの動きが完全に止まり、ロマノフが横目で見る。
「バッキーが?」
声が僅かに低いな。だが、今回は『正直』に伝える。
「生きている。」
ロジャースの驚愕に染まった目が、俺を見てくる。
「……今、何て言った?」
「ジェームズ・ブキャナン・バーンズは生きている。」
机が軋む。ロジャースの拳が、何かに耐えるように握られている。
「どこにいる。」
「落ち着け。」
「どこにいる。」
「ロジャース。」
「ニック。」
その声に怒りはない。それ以上に、何かを押し殺したものがある。
「バッキーは、どこにいるんだ。」
十文字の言葉を思い出す。暴走しないように注意しながら、正直に。
「ヒドラだ。」
「…………。」
「第二次世界大戦後。奴らに回収され、洗脳された。」
ロマノフの表情が変わる。何かに気付いたようだな。
「まさか。」
「そう。ウィンター・ソルジャー、彼がその正体だ。」
ロジャースが勢いよく立ち上がる。
「どこにいる。」
「分からん。探してはいる。」
「俺も――」
「だから、お前を呼んだ。」
ロジャースの動きが止まる。
「一人で突っ込ませるためじゃない。ヒドラを潰すため。インサイト計画を止めるため。S.H.I.E.L.D.内部の奴らを全部引きずり出すため。」
そして。
「バーンズを取り戻すためにだ。」
ロジャースの目が揺れる。
「……取り戻せるのか。」
「知らん。」
『正直』に、嘘をつかない。
「洗脳の程度も、現在の状態も分からん。だが、生きている。」
その言葉だけは、はっきりと伝える。
「なら、」
ロジャースはゆっくり息を吐き、力を抜いた。
「十分だ。」
ロマノフが彼を見る。
「スティーブ。」
「分かってる。」
返事は早かった。
「一人では動かない。」
「本当だな。」
「……努力する。」
「信用できんな。」
「あなたに言われたくはない。」
少し笑顔が戻ったロジャースを見て、ロマノフが小さく笑った。
「十文字がいたら、今の顔見て安心しそうね。」
ロマノフの何気ない言葉に、思わず黙ってしまった。そして、俺の反応にスティーブが眉を寄せる。
「十文字黒雄が何か関わっているのか?」
「気にするな。」
「今、十文字の名前が出た瞬間、表情が変わったろ。」
「変わっていない。」
「変わってたわね。」
「ロマノフ。」
「何?」
「黙れ。」
ロマノフが肩をすくめる。
だが、内心で少年を思い浮かべていたのは事実だ。学校へ行け、卒業しろ、普通に生活しろ。そう伝えた。
だから、こちらは大人の仕事だ。
「始めるぞ。」
俺の言葉にロジャースとロマノフ、二人が視線を向けてくる。
「ヒドラ狩りだ。」
未来を変えてやろう。