日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです   作:ken4005

31 / 105

キャプテン・アメリカ / ウィンター・ソルジャー編開幕
すみません、導入なので短いです。


キャプテン・アメリカ / ウィンター・ソルジャー編
始動


 

ニック・フューリーはS.H.I.E.L.D.の公式記録には存在しないセーフハウスで、壁一面に並べられた資料を睨みつけていた。

 

職員名簿、資金移動、作戦記録、研究施設、通信履歴。そして一枚の写真にはアレクサンダー・ピアースが写っていた。

 

「……ここまで入り込まれていたとはな。」

 

十文字黒雄から聞いた、S.H.I.E.L.D.内部にヒドラが多数存在しているという話。最初はあまりにも荒唐無稽だと思っていた。

 

だが、調べれば調べるほど妙な点が出てくる。

 

消えた記録、不自然な人事、特定人物に集中する権限。そして秘密裏に進められる巨大計画、プロジェクト・インサイト。

 

三隻の新型ヘリキャリアと衛星を連動させ、対象を事前に選別。脅威となる前に排除する。表向きは、そういう計画のはずだ。だが、十文字の未来知識によれば、それはヒドラによる大量粛清に使われる。

 

手に持っていた端末を閉じ、十文字が言っていたことを思い出す。

 

『スティーブさんには、ちゃんと正直に話した方がいいと思います。』

 

あの少年にしては、妙に真剣な顔で。

 

『全部一気にぶつけたら、スティーブさん、暴走っていうか……一人で突っ込みそうですけど。』

 

十分あり得るな。

 

『でも、黙ったまま利用するのは駄目です。特にバッキーさんのことは。』

 

ジェームズ・ブキャナン・バーンズ。第二次世界大戦で死亡したとされる男。だが生きている。ヒドラに回収、洗脳され、暗殺者として利用されている。

 

ウィンター・ソルジャー。

 

十文字の知る未来では、スティーブ・ロジャースは戦場で彼と再会するらしい。

 

「……正直に、か。」

 

呟いて思う。自分らしくない。

 

………だが今回は、あの真っ直ぐすぎる少年の意見を採用することにした。

 

「呼び出しとは珍しいな。」

 

スティーブ・ロジャースが部屋へ入ってくる。その後ろにはナターシャ・ロマノフもいる。

 

「私まで?」

 

「必要だから呼んだ。」

 

「嫌な予感しかしないわね。」

 

「正しい。」

 

二人が向かいに座る。テーブルの上には必要最低限の資料だけ出してある。それ以外は全て隔離してある。

 

ロジャースがこちらを見てくる。

 

「何があった。」

 

二人を順番に見ながら、

 

「まず、ここで話す内容は、S.H.I.E.L.D.内部でも共有しない。」

 

ロマノフの表情が僅かに変わった。

 

「内部でも? 理由は?」

 

「敵がいる。」

 

俺の言葉に、ロジャースの眉が寄る。

 

「どこに。」

 

「S.H.I.E.L.D.の中だ。」

 

ロマノフの顔から笑みが消える。

 

「規模は?」

 

「不明だ。」

 

「組織は?」

 

「ヒドラ。」

 

その瞬間、ロジャースの表情が変わった。

 

「何だって?」

 

「ヒドラは滅びていない。」

 

「そんなはずは――」

 

「ないと言い切れるか?」

 

ロジャースが黙るのに合わせて、資料を滑らせる。複数の人間、資金、組織図、そしてピアース。

 

それらの資料に目を通し、ロマノフが目を細める。

 

「……これは。」

 

「まだ確定していないものも含まれている。」

 

「でも、疑ってるのね。」

 

「ああ。」

 

ロジャースも資料を見る。

 

「この情報はどこから?」

 

「情報源は明かせない。」

 

「ニック。」

 

「少なくとも今はな。」

 

納得していない顔をする。だが、今は説明を優先させてもらう。

 

「もう一つある。」

 

端末を操作し、プロジェクト・インサイトに関わる情報を開く。

 

「ヘリキャリア? しかも三隻とは。」

 

「何のために用意したの?」

 

「本来は、脅威を事前に排除するためだ。」

 

「本来は?」

 

ロマノフが聞いてくる。

 

「ヒドラがこれを乗っ取る。標的選定アルゴリズムを使い、自分たちにとって将来的な脅威となる人間を一斉に殺す。」

 

ロジャースが立ち上がりかける。

 

「そんな計画を進めているのか!」

 

「座れ。」

 

「今すぐ止めるべきだ!」

 

「だから座れ、ロジャース。」

 

「ニック!」

 

「今動けば逃げられる!」

 

強い声を出し、ようやくロジャースが止まる。

 

「ヒドラが何十年S.H.I.E.L.D.に潜伏していると思っている。頭を一つ潰して終わりなら、とっくにやっている。」

 

ロマノフが静かに言う。

 

「泳がせてるのね。」

 

「ああ。」

 

「全員炙り出すために。」

 

「そうだ。」

 

ロジャースはゆっくりと座った。

 

「……僕に何をさせたい。」

 

「今は何も。」

 

「何?」

 

「知っておいてくれれば、それで良い。……そして、誰も信用するな。」

 

「あなたも?」

 

ロマノフからの問いに笑って答える。

 

「特に私を疑え。」

 

そう答えると、ロマノフは僅かに口元を緩めた。

 

「それはいつも通りね。」

 

少しだけ空気が緩む。だが、まだ言わなければならないことがある。

 

十文字の言葉。

 

『バッキーさんのことは絶対です。』

 

「ロジャース。」

 

「何だ。」

 

「もう一つ。これは………お前個人に関わることだ。」

 

ロジャースの表情が変わる。

 

「僕に?」

 

「ああ。」

 

一瞬だけ、言葉を選んだ。

 

「バーンズ軍曹のことだ。」

 

ロジャースの動きが完全に止まり、ロマノフが横目で見る。

 

「バッキーが?」

 

声が僅かに低いな。だが、今回は『正直』に伝える。

 

「生きている。」

 

ロジャースの驚愕に染まった目が、俺を見てくる。

 

「……今、何て言った?」

 

「ジェームズ・ブキャナン・バーンズは生きている。」

 

机が軋む。ロジャースの拳が、何かに耐えるように握られている。

 

「どこにいる。」

 

「落ち着け。」

 

「どこにいる。」

 

「ロジャース。」

 

「ニック。」

 

その声に怒りはない。それ以上に、何かを押し殺したものがある。

 

「バッキーは、どこにいるんだ。」

 

十文字の言葉を思い出す。暴走しないように注意しながら、正直に。

 

「ヒドラだ。」

 

「…………。」

 

「第二次世界大戦後。奴らに回収され、洗脳された。」

 

ロマノフの表情が変わる。何かに気付いたようだな。

 

「まさか。」

 

「そう。ウィンター・ソルジャー、彼がその正体だ。」

 

ロジャースが勢いよく立ち上がる。

 

「どこにいる。」

 

「分からん。探してはいる。」

 

「俺も――」

 

「だから、お前を呼んだ。」

 

ロジャースの動きが止まる。

 

「一人で突っ込ませるためじゃない。ヒドラを潰すため。インサイト計画を止めるため。S.H.I.E.L.D.内部の奴らを全部引きずり出すため。」

 

そして。

 

「バーンズを取り戻すためにだ。」

 

ロジャースの目が揺れる。

 

「……取り戻せるのか。」

 

「知らん。」

 

『正直』に、嘘をつかない。

 

「洗脳の程度も、現在の状態も分からん。だが、生きている。」

 

その言葉だけは、はっきりと伝える。

 

「なら、」

 

ロジャースはゆっくり息を吐き、力を抜いた。

 

「十分だ。」

 

ロマノフが彼を見る。

 

「スティーブ。」

 

「分かってる。」

 

返事は早かった。

 

「一人では動かない。」

 

「本当だな。」

 

「……努力する。」

 

「信用できんな。」

 

「あなたに言われたくはない。」

 

少し笑顔が戻ったロジャースを見て、ロマノフが小さく笑った。

 

「十文字がいたら、今の顔見て安心しそうね。」

 

ロマノフの何気ない言葉に、思わず黙ってしまった。そして、俺の反応にスティーブが眉を寄せる。

 

「十文字黒雄が何か関わっているのか?」

 

「気にするな。」

 

「今、十文字の名前が出た瞬間、表情が変わったろ。」

 

「変わっていない。」

 

「変わってたわね。」

 

「ロマノフ。」

 

「何?」

 

「黙れ。」

 

ロマノフが肩をすくめる。

 

だが、内心で少年を思い浮かべていたのは事実だ。学校へ行け、卒業しろ、普通に生活しろ。そう伝えた。

 

だから、こちらは大人の仕事だ。

 

「始めるぞ。」

 

俺の言葉にロジャースとロマノフ、二人が視線を向けてくる。

 

「ヒドラ狩りだ。」

 

未来を変えてやろう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。