日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
S.H.I.E.L.D.の全機密情報が世界へ放出される、その少し前。
本来ならば三隻、インサイト計画のために建造された新型ヘリキャリアが同時に空へ上がる予定だった。しかし、
「……動かない?」
ヘリキャリアの発進管制室。ヒドラのエージェントが、何度もコンソールを操作するが、離陸する気配はない。
「どうなっている!?」
「発進シークエンスが進みません!」
「制御系を再起動しろ!」
「やっています!」
警告音が鳴り響く。エンジンは始動し、リパルサーも正常、燃料系統にも異常はない。なのに――飛ばない。
「制御チップが認識されません!」
「そんな馬鹿な!」
――ガシャン!!
「な、何だ!?」
突然、発進管制室の隔壁が閉じた。続いて通路、兵器庫、格納庫、ブリッジ。ヘリキャリア内部の隔壁が次々と封鎖されていく。
『警告。艦内隔壁を封鎖します。』
「解除しろ!」
『アクセス権限がありません。』
「何!?」
『アクセス権限がありません。』
「誰がこんな――!」
そして、その惨状をセンサーで覗く赤と金の人影が、悠々と空から降りてきた。
――ドォン!
地面へ着地すると同時に、アイアンマンの装甲が金属音を響かせる。
「聞こえてるか、ジャービス。」
『いつでもどうぞ、トニー様。』
トニー・スタークは目の前の巨大なヘリキャリアを見上げ、そして肩をすくめた。
「あの秘密主義者が頭を下げるなんて珍しいことをしたんだ。驚かされた分の仕事はしないとね。」
『スターク。』
通信機から聞こえてきたフューリーの声に、トニーが笑う。
「何だ? もう一回頼むか? 録音して永久保存してやるぞ。」
『黙って仕事をしろ。』
「はいはい。」
フェイスプレートが閉じる。
『飛び立たせるな。』
「分かってるよ。そもそも――」
両手のリパルサーが輝き、アイアンマンが飛び上がった。
「飛ばなきゃ落ちない。安全第一だ。」
――ドォォォン!!
リパルサーが火を噴き、ヒドラ兵が吹き飛んだ。トニーは空中で身体を反転させ、次々と現れる敵をスキャンする。
『武装した人員、二十八名。追加で接近中。』
「多いな。」
『援軍を要請しますか?』
「必要ない。」
右手を向ける。
「私はアイアンマンだぞ?」
――バシュッ!
放たれたリパルサーが、ヒドラ兵をまとめて薙ぎ払った。
ーーーーー
そして、もう一隻。
こちらも既に飛び立つことはできなくなっていた。その甲板に、一人の男が降り立つ。赤いマントに銀色の鎧。そして、その手にはムジョルニア。
ソーはヘリキャリアを見回した。それから、隣に立つフィル・コールソンへ、何とも言えない顔を向ける。
「コールソン。」
「はい。」
「一つ確認しておきたい。」
「何でしょう。」
ソーは非常に真剣な表情で聞いた。
「給料は出るんだろうな?」
「……はい?」
「ジェーンに言われてしまったのだ。『穀潰しになるな、働け!』と。」
元アスガルドの王族とは思えない遠い目で空を見るソー。コールソンは何と返すべきか考える。やがて、いつもの柔らかな笑顔を浮かべ、
「勿論です。」
「本当か?」
「ニューヨーク決戦分も、あなたは受け取ってませんし。」
「おお!」
顔が明るくなるソーに、コールソンは笑顔で伝える。
「あなたは穀潰しにはなりません。」
「そうか! ならば働こう!」
満足そうに頷き、ムジョルニアを構える。
「どこまでやればいい?」
「可能なら殺さずに。」
「分かった。」
「それとヘリキャリアは壊さないでください。」
ソーが巨大な艦を見る。
「善処しよう。」
「絶対に壊さないでください。」
「分かった。」
「本当に?」
「コールソン。」
「はい。」
「私を信用してくれ。」
コールソンは微笑んだ。
「していますよ。」
その直後、大量のヒドラ兵が甲板へ現れた。
「いたぞ!」
「撃て!」
ソーはムジョルニアを回転させる。
雷鳴。
――バヂィィィィィィッ!!
「では――仕事をするとしよう!」
「だから壊さないでくださいね!」
コールソンの声が雷鳴に消えた。
ーーーーー
こうして二隻。本来ならば世界中へ死を撒き散らすはずだった巨大兵器は、空へ上がることすらできなかった。
フューリーはインサイト計画そのものを知っていた。そして、ヒドラがそれを利用することも。ならば、事前に手を打たない理由がない。制御チップは既にすり替え、発進システムも細工済み。マリア・ヒルが遠隔操作によって隔壁を閉鎖し、内部のヒドラ構成員を分断。
そこへアイアンマンとソーを投入。もはや制圧されるのは時間の問題だった。
問題は、見つけられなかった三隻目である。ヘリキャリアは複数の施設に分けて建造されていたため、最後まで一隻だけ所在を把握できなかった。
――ゴォォォォォォォ!!
その一隻は既に空へ上がっていた。そこに、
「行くぞ、サム。」
「了解。」
スティーブ・ロジャースとサム・ウィルソンが乗り込んだ。二人が甲板へ降り立つ。スティーブの背には盾、手には交換用の制御チップが握られている。目標はただ一つ、制御チップをヘリキャリアの制御中枢へ設置すること。当然、
「いたぞ!」
「ロジャースだ!」
「殺せ!」
大量のヒドラ兵が集まってくる中、スティーブは盾を構える。そして、
「始める前に聞いておこう。……降りたい奴は?」
「……。」
サムは黙って周囲を見回し、ヘリキャリアの縁を見る。既に地上は遥か下だ。
「空の上だぞ? 無茶言うなって。」
「……確かに。」
――ダダダダダダッ!!
戦闘が始まり、スティーブが盾を構えて突進する。銃弾を弾きながら接近し、盾で銃を跳ね上げ、
「ふっ!」
拳の一撃で沈める。背後から来た兵士を盾で殴り倒し、そのまま盾を投げ、
――ガァン!
――ガァン!
二人をまとめて吹き飛ばし、跳ね返ってきた盾を掴む。振り向きざまに盾を構え、銃弾を弾いていく。サムも翼を展開して空へ上がり、上空から援護射撃を行う。
「数だけは多いな!」
「ああ、キリがない!」
敵は次々と増えてくる。超人的な兵士はいないが、数が違う。厄介さを感じ始めた、その時、
――バヂィッ!!
「ぐあっ!?」
ヒドラ兵が倒れた。
「何だ!?」
――バヂィッ!
別の兵士。
――バヂィッ!
さらに一人。見覚えがある光景。いや、正確には先ほども助けられた攻撃に似ている。しかし、今度は狙撃ではなく、
「上だ!」
サムが叫ぶと、スティーブも空を見る。
「……。」
古代の装飾品にも、生物にも見える異形の存在――ゴウラムがヘリキャリアの周りを飛び回り、その上には緑色を基調とした装甲と金色の強化装甲、右手にはボウガンを思わせる武器、さらには頭部に本来存在しない機械式の補助装置を身に付けたクウガ・ライジングペガサスがいた。
「……クロオか?」
「お待たせしました!」
十文字黒雄がゴウラムの上から手を振った。
「待ってはいない。というより、何でいる!?」
「お手伝いしに来ました!」
「フューリーに呼ばれたのか!?」
「いいえ!」
スティーブが黙り、サムも黙った。そして、通信越しに全てを聞いていたニック・フューリーの額に、静かに青筋が浮かんだ。マリア・ヒルは横目で見る。
「長官?」
「確かに、このタイミングで呼ぶつもりだった。だが! ロジャースたちで対処できなかった場合だけの予定だった。」
「そうなんですね。」
フューリーが片目を閉じる。
「ぽんぽん出てくる切り札があるか。」
「本人に今伝えますか?」
「……後で説教する。」
ーーーーー
僕はそんなことを知る由もなく。
「よし。」
ライジングペガサスボウガンを構え、視界の横に取り付けられた機械が起動する。複数の光点が表示される。距離、方向、敵味方識別、射線。必要な情報だけが、視界へ表示される。
「スタークさんに作ってもらったセンサーの性能と――」
ゴウラムが急旋回する。
「訓練の成果を見せてやる!」
引き金を引いた。
――バヂィィッ!!
「ぐあっ!」
一人。
――バヂィッ!
二人。
――バヂィッ!
三人。
高速で旋回するゴウラムから、一方的な狙撃を開始する。少し前までの僕なら、こんな戦い方はできなかった。ペガサスフォームはクウガの持つ超感覚を極限まで強化する形態。ありとあらゆる感覚が、人間とは比較にならない領域まで跳ね上がる。
だからこそ強いが、だからこそ使いづらかった。しかし、
――少し前。
アメリカにて、
「卒業おめでとう!」
「ありがとうございます。」
高校卒業祝いと、エクストリミスの時のお礼として、ペッパーさんに招待され、僕と真魚はアメリカへ来ていた。
「それじゃあ真魚、行きましょうか。」
「え?」
「ショッピング。」
「え?」
「卒業祝いよ。」
「いや、でも。」
「遠慮しなくていいわ。」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
真魚が世界的大企業のCEOに連れて行かれてしまった。
「……大丈夫かな。」
「何が?」
隣にいたスタークさんが聞く。
「真魚です。」
「ペッパーと一緒なら問題ない。」
「そっちじゃなくて金銭感覚が。」
「何か問題あるのか?」
「スタークさんに聞いた僕が馬鹿でした。」
数時間後、真魚は大量の袋を持っていた。最初こそ、
『日本円だとこれいくら!? いやいやいやいや!』
とビビりまくっていた。しかし、今では、
「これ、可愛いですね。」
「こっちも似合うと思うわ。」
「本当ですか?」
普通に順応していた。……無限に成長するアギトの力って、こういうことなのだろうか。多分違うよね。いや、絶対違う。
そんな買い物の様子を遠巻きに眺めながら、スタークさんに相談事を始めた。
「超感知能力を持ったペガサスフォーム、そして時間制限か。」
「はい。」
ペガサスフォームは強い上、便利だ。索敵能力と射撃精度、どちらも他のフォームにはない長所だ。
「持続時間を伸ばせれば、役に立てる場面が増やせると思うんですけど。」
「思い当たる原因は?」
「やっぱり、感覚が鋭くなりすぎることだと思うんですよ。」
「具体的には?」
一番は周囲の音が大きすぎること。遠くの人間の声、車なんかの音。他の感覚も、風や建物の振動すら感じる。匂いや光もだ。それが全部、一気に押し寄せてくる。
僕の話をスタークさんは黙って聞いてくれた。そして、
「……それだけ?」
「それだけって。」
「なら簡単だ。不要な機能を減らせば良い。スマホと同じだ。」
「……はい?」
スタークさんが自分の端末を見せてくる。
「必要ないアプリを全部起動したままにして、GPSもBluetoothも通信も画面輝度も最大。バックグラウンドで何十個も処理させておいて、『バッテリーがすぐ切れるんです』って言ってるようなものだ。」
「いや、でも。」
「君の場合、敵を探すために感覚を全方位に向けているんだろ?」
「そうです。」
「だったら探すな。機械にでも探させろ。」
「……え?」
スタークさんが自分の頭を指差した。
「君は狙い撃つだけだ。」
そして翌日、どう見ても某戦闘民族や宇宙の帝王やらが付けているものにそっくりな機械を渡された。
「……何ですか、これ。」
「補助センサーだ。こいつが索敵、照準、敵味方の識別、それと不必要な情報の一部シャットアウトを担当する。君は真っ直ぐ、指示された方向にいる標的にだけ意識を向ければ良い。」
「そんな簡単に――」
「まずは試してみよう。」
広い場所へ連れていかれた。
「三キロ先に標的がある。」
今のままじゃ全く見えない。
「さっさと変身したまえ。」
「……はい。変身。」
ペガサスフォームに変身し、すぐにセンサーを装着する。すると、
「……え?」
静かだった。いや、音はある。風も、遠くの車も、人の声も、全部聞こえている。けれど、今までのように、世界そのものが巨大な騒音になって襲いかかってくることはない。そして、視界の端に矢印が出る。
――TARGET.
センサーの指示に従って、意識を遠くに向ける。
「……見えた。」
ペガサスボウガンを構え、狙い撃つ。
――バシュッ!
『命中。』
「……。」
唖然としていると、制限時間がとっくに過ぎていることに気付き、変身を解く。スタークさんに視線を向ける。
「何だ?」
センサーを見てから、もう一度スタークさんを見る。
「知ってはいましたが、スタークさんって本当の本当に天才なんですね。」
心の底からの称賛を送ると、スタークさんは目を瞬かせるけど、
「……今さらか?」
ちょっと嬉しそうだった。
――そして現在。
「そこ!」
――バヂィッ!!
ライジングペガサスボウガンから放たれた弾丸が、ヒドラ兵の胸へ直撃。
「ぐっ!」
痙攣して倒れるけど、死んではいない。
「よし!」
僕は次の敵へ照準を合わせる。
「フューリーに言われて、非殺傷ライジング弾を練習しといて良かった!」
ライジングペガサスの射撃は、本来なら人間へ撃てるようなものじゃない。だから威力を落とし、雷のエルから得た力を弾丸へ乗せる。
――バヂィッ!
「がっ!」
次、
――バヂィッ!
「ぐあっ!」
次!
ゴウラムで甲板上空を旋回し、センサーが教えてくれる位置だけに意識を向け、狙い撃つ。
「凄いな!」
同じく、空中から攻撃しているサムさんが叫んでくる。
「便利ですよ、これ!」
「いや、お前の話だ!」
「あ、ありがとうございます!」
「会話してないで戦え!」
スティーブさんに怒られた。
「はい!」
ーーーーー
その後はあっけなかった。
ウィンター・ソルジャーはいない。強化兵士もいない。ヒドラの一般兵ではキャプテン・アメリカを止められない。ましてやファルコンがいて、上空から僕の援護もある。
「サム!」
「行け!」
スティーブさんが走る。ヒドラ兵が銃を向けるけど、
――バヂィッ!
僕が狙撃し、別方向から狙う奴はサムさんが撃つ。そして、船内に入ったスティーブさんが制御中枢へ到達。
「ヒル!」
『いつでも!』
制御チップを差し込む。
――ガシャン!
『認識しました!』
次の瞬間、ヘリキャリアの制御系統が切り替わり、
『こちらで操縦を掌握した!』
巨大な艦が旋回を始め、人口密集地から離れていく。
「成功したのか?」
『成功よ。これで三隻全部、こちらの管理下。』
「よし!」
僕が拳を握り、スティーブさんも大きく息を吐いた。こうして、数百万人を殺すために作られたインサイト計画は、誰一人として標的を撃つことなく、完全に潰されたのであった。
ーーーーー
――数日後。
「ここだよ。」
僕はスティーブさんを連れて、ある場所へ来ていた。人里離れた土地。そこには、特殊な力を持った人々が暮らしている。超能力者やアギト、ギルス、そして人ならざる存在である光のエルたち。
「……ここは?」
「色々説明すると長いんですけど。」
僕は頭を掻く。
「困った時は闇の力です。」
「説明になってないぞ。」
「ですよね。でも、バッキーさんの洗脳って、普通の治療だけじゃ難しいんですよね?」
「……ああ。」
スティーブさんの表情が曇ってしまう。ヒドラによる洗脳、記憶操作、さらに長期間の冷凍保存。それを七十年近く繰り返されてきた。
でも、と僕は村を見ながら、
「光のエルや真魚の力なら、人間の心とか生命に普通とは違う形で触れられるんです。」
「治せるのか?」
「それは分かりません。」
正直に答える。
「すぐ全部元通り、なんてことは無理だと思います。でも、回復するきっかけにはなるかもしれません。」
スティーブさんは黙って村を見る。
「それに、ここならヒドラも簡単には手を出せません。」
「……確かにな。」
アギト、ギルス、超能力者、光のエル。さらに、困った時には闇の力までいる。ヒドラが攻めてきたら……。
「……可哀想ですね、ヒドラが。」
「そこまでか?」
「そこまでです。」
こうして、ジェームズ・ブキャナン・バーンズ、バッキーは、一時的にこの村へ預けられることになった。
「そういえば、フューリーとナターシャさんは大丈夫なんですか?」
「何が?」
世界中にS.H.I.E.L.D.の機密をばら撒いた。世界安全保障理事会やアメリカを含めた各国政府。そして、それ以外の情報機関からも、
「めちゃくちゃ怒られてません?」
「怒られてるだろうな。」
スティーブさんは少し考えてから、
「まあ、大丈夫だろ。」
「言い切れるんですか?」
「ナターシャだからな。」
……妙に説得力があった。
ーーーーー
「ミス・ロマノフ。」
議員たちの厳しい視線が、ナターシャへ集中していた。公聴会には大量のカメラと記者が集まり、世界中が注目している。S.H.I.E.L.D.の機密情報流出に、ヒドラ、インサイト計画。そして、ブラック・ウィドウ――彼女の過去。その全てが議題だった。
「あなた方の行動によって、国家安全保障は重大な危機に晒された。」
ナターシャは黙って聞いている。
「あなたは自分が法の上にいるとでも?」
「いいえ。」
「ならば、なぜそんなことを?」
ナターシャは静かに答えた。
「必要だったから。」
議員の顔が険しくなる。
「あなた方を刑務所へ送るべきだという意見もある。」
「そうでしょうね。」
「怖くないのですか?」
その言葉に、ナターシャは僅かに笑った。
「私たちを刑務所へ入れられないでしょう。……世界には私たちが必要なのだから。」
会場がざわつき、ナターシャは立ち上がる。
S.H.I.E.L.D.は崩壊し、ヒドラも世界中へ存在を晒された。世界は混乱しているけれど、世界を救う者まで消えたわけではない。
「失礼します。」
ナターシャ・ロマノフは堂々と、その場を後にした。
ーーーーー
ソコヴィアに存在する、ヒドラ残党の研究施設。
一人の科学者が、厚いガラスの向こうを見つめている。本来ならば、彼らに残されたモノは少ないはずだった。S.H.I.E.L.D.内部のヒドラはほぼ壊滅。ピアースたちによるインサイト計画も完全に潰された。
なによりも、ロキがニューヨークに持ち込んだセプターはニック・フューリーが事前に回収したことで、彼らの手にはない。ならば、強力な武器は作れない……はずだった。
「結果は?」
「安定しています。」
研究員の視線の先、ガラスの向こうに青年がいた。
「始めろ。」
装置が起動した次の瞬間。
――消えた。
正確には、あまりの速度で見えなくなったのである。気が付けば、青年は部屋の反対側に立っている。
「速度、計測不能!」
「しかし、確実に前回よりも上昇しています!」
研究者たちがざわめく。隣の部屋には一人の少女がいた。
彼女は椅子へ座ったまま、ゆっくりと指を動かす。赤い光が揺らめいた瞬間、研究員の一人が息を呑む。
少女の前に置かれていた物体が浮き、
「出力上昇。」
一瞬で跡形もなく潰れた。
「精神波も検出されています。」
「……成功だ。」
リーダー格の科学者が笑う。
「我々は、まだ終わっていない。」
ヒドラは首を一つ落とされても、別の首が生える。S.H.I.E.L.D.に寄生していた巨大な頭は失われたが、完全に滅びたわけではない。
ヒドラは新たな力を生み出した。
そして、その力の源が、やがて世界を揺るがすことになる。
物語は静かに、次なる戦いへ向けて、動き始めていた。