日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
――結局。
僕と真魚の疲労が思った以上に酷かったこともあって、その日はそこでお開きになった。候補となる惑星は見つかった。ただし、闇の力が見たのは遥か昔の光景だ。現在もスクラル人が暮らせる環境なのかどうかは分からない。だから、次に何をするのかは改めて考える。そういう話になり、
「……じゃあ、帰りますか。」
「うん……。」
僕と真魚は、ほとんどフラフラになりながら店を出た。
「本当に大丈夫か?」
フューリーが珍しく、本気で心配そうな顔をしている。
「大丈夫です。身体は。」
「身体は?」
「頭の中に宇宙を流し込まれた後遺症がちょっと。」
何で黙るんですか。
「まあ、寝れば治ると思います。」
「本当か?」
「たぶん。」
「たぶんか。」
だって初めてなんだから分からないよ。店の外へ出て、僕は空を見上げる。そして、意識を集中し、
「ゴウラムー。」
――数秒後。
遠くから、聞き慣れた音が響いてくる。
――キィィィィィィン……!
空の向こうから飛んできたゴウラムが、そのまま僕たちの前へ降りてきた。いつもお世話になっております。
「帰ろうか。」
「うん。」
僕と真魚が乗り込み、その後にフューリーとヴァーラさんも続く。
「……相変わらず、とんでもない移動手段だな。」
「便利ですよ?」
「便利という言葉で済ませていいのか、これは。」
細かいことは気にしない。そのまま僕たちは、例の村へ戻った。到着後、僕は光のエルに事情を説明する。
「――というわけで、今日は二人ともここに泊まってもらってもいい?」
「構わない。」
穏やかな笑みを浮かべ、光のエルは頷いた。
「空いている部屋を用意しよう。」
「助かる。」
フューリーが短く礼を言い、ヴァーラさんも頭を下げた。
「ありがとうございます。」
「お気になさらず。」
こうして、フューリーとヴァーラさんはそのまま村へ泊まることになった。
そして。その日の夜、僕と真魚の関係にも、少しだけ。少しだけ?まあ、何というか。色々と、変化があった。具体的に何があったのかは、思い出しただけで顔が熱くなってきたので、やめておこう。
うん。
この話は終わり!僕は何も覚えていない!覚えてないったら覚えてない!
――そして翌日。
朝。僕は村の広場で、ぼーっと空を見上げていた。
「クロオ。」
「ひゃい!?」
変な声が出てしまった。
「……どうしたの?」
真魚が不思議そうに首を傾げている。
「な、何でもないよ。」
「そう?」
「うん。」
目を逸らしてしまった。気まずい。いや、別に悪い意味で気まずいわけじゃない。むしろ、その逆なんだけど!ただ昨日までとは、明らかに距離感が違うというか。意識してしまうというか。
「……クロオ。顔、赤いよ。」
「真魚もね。」
二人揃って目を逸らした。何これ?昨日まで普通に手を繋いだり、一緒に過ごしたりしてきたじゃん。何で今さらこんなことになってるんだ?
「……と、とりあえず。」
僕は無理やり話題を変える。
「今日は休んでて。昨日あれだけ無茶したんだから。」
真魚のサイコメトリーが中心だったんだ。僕は精神的肉体労働だったから、寝たら治った。……精神的肉体労働ってなんだ?
「僕は闇の力に呼ばれてるから、ちょっと行ってくる。」
「……うん。」
真魚は少し迷ってから頷いた。
「気をつけてね。」
「もちろん。」
「無茶しないでね。」
「昨日無茶した人に言われたくない。」
「クロオもでしょ。」
それはそう。
「いってらっしゃい。」
「うん。いってきます。」
そして再び。
「ゴウラムー。」
――ゴウラム便、出発。
乗客は僕、フューリー、ヴァーラさん。昨日と同じメンバーから真魚だけが抜けた形だ。やがて喫茶店へ到着し、僕たちは店内へ入る。
「いらっしゃいませ。」
「どうもー。」
店主は今日も普通だった。もう驚かない。そして、
「来たか。」
「来ましたよ。」
闇の力も昨日と同じ席に座っている。その手元には、カプチーノ。好きだな、本当に。ただ、今日はそれだけじゃなかった。
フューリーが足を止める。店の奥には、見覚えのある人物が二人。そして、見覚えのない人物が一人いた。
「光のエル。」
「おはよう、黒雄。」
白い衣服を纏った光のエルが、穏やかに微笑む。その隣には、
「水のエルも。」
「久しぶりですね。」
女性の姿を取った水のエル。
そして。
「…………。」
もう一人、大柄な男性だった。褐色の肌に、鍛え上げられた肉体。立っているだけなのに、妙な圧迫感がある。何というか、大地そのものが人間の姿を取ったみたいな。
「……えっと。」
僕が見上げると、その人も僕を見る。
「初めまして?」
「ああ。」
低い声。
「地を司る者だ。」
「地のエル?」
「そう呼ばれている。」
「おお……。」
初めましてだ。僕は軽く頭を下げる。
「十文字黒雄です。」
「知っている。」
「あ、やっぱり?」
そりゃそうか。アンノウン側では僕、相当有名だよね。というか、火のエルとか水のエルとか光のエルとか闇の力とか、散々関わってきたし。ついに地のエルまで来たか。風のエルは?あ、村の護衛ですね。ありがとうございます。
「よろしくお願いします。」
「ああ。」
短い。寡黙なタイプかな。僕たちが席に着くと、闇の力がカップを置いた。
「昨日発見した三つの惑星についてだ。」
僕は姿勢を正し、フューリーとヴァラさんの表情も引き締まった。
「記憶から得られる情報には限界がある。」
「現在どうなっているかは分からない、って話ですね。」
闇の力が頷く。
「故に、次の段階へ進む。」
「次の段階?」
「現地調査だ。」
僕は瞬きをする。
「現地調査?」
「ああ。」
嫌な予感がする。何で僕、呼ばれたんだろう。
「調査を行うのは、私。加えて、水。」
「はい。」
「光。」
「分かりました。」
「地。」
「ああ。」
「そして黒雄。」
「何で!?」
思わず立ち上がった。
「何で僕も!?」
おかしいでしょ!他全員、人外じゃん!いや僕も普通の人間かと言われたら最近ちょっと自信なくなってきた……僕、雷のエルじゃん。でも、
「僕、惑星調査なんてできませんよ!?」
「知っている。移動手段としてだ。」
「移動手段?」
「アルティメットフォームになり、ゴウラムを呼べ。」
「はい。」
「アルティメットフォームの力をゴウラムへ注ぎ込めば、アルティメットゴウラムとなる。」
「それは知ってますけど。」
闇の力が淡々と続ける。
「アルティメットフォームと、今のゴウラムの能力を組み合わせれば、座標さえ正確に指定できれば、空間と次元そのものへ干渉し、目的地までの距離を無視して移動できる。」
ちょっと待って。それって、
「宇宙規模の瞬間移動だ。」
マジかー。
「どこまで?」
「昨日見つけた三つの候補のうち、最も遠い惑星まで問題なく到達できる。」
僕は天井を見る。なるほど。僕が呼ばれた理由、完全に理解した。椅子へ座り直す。
「アッシーね。」
なるほど。本当に移動手段だ。ただし宇宙規模の。宇宙旅行の送迎係か。免許とかいらないよね?
「なお、移動座標については私が指定する。」
「あ、それなら安心ですね。」
闇の力なら、実際にその惑星を見ている。少なくとも座標ミスで恒星の中に出現しました、とかいう事故はなさそうだ。
……ないよね?
「調査内容は?」
フューリーが尋ねる。闇の力ではなく、水のエルが答えた。
「大気組成、水質、生態系、地質、資源、恒星活動。そして、現在の知的生命体の有無を調べます。」
なるほど、だから水のエルと地のエルなのか。
「私は生命と水を。」
水のエル。
「私は大地と地下資源を。」
地のエル。
「私は生命そのものに異常がないかを確認します。」
光のエル。
「私は全体を監督する。」
闇の力。
「僕は?」
「移動だ。」
「知ってた。」
完全にアッシーである。
「現地で危険が発生した場合は、黒雄にも対応してもらう。」
まあ、それは仕方ない。スクラル人が移住できるかもしれない惑星だ。危険な生物とかがいたら確認する必要もある。
「真魚は?」
ヴァーラさんが尋ねる。
「今日は休ませています。昨日の負担が大きかったので。」
「そう……。」
ヴァーラさんが安心したように息を吐く。……何かちょっと意味深に見られた気がする。気のせいだ。絶対気のせいだ。
フューリーは無言。
「何ですか?」
「いや。何でもない。」
絶対何か気付いてる!その顔やめて!フューリーから逃げるように視線を逸らした僕は、改めて今日のメンバーを見る。
闇の力、光のエル、水のエル、地のエル、そして僕。……あれ?何か凄いな。
「どうした?」
「いや……。」
僕は指を折る。まず、闇の力。アギト世界における、ほぼラスボス、というか神様。次に光のエル。この世界のアンノウンとアギトに関わるラスボス。そして水のエルはアンノウンの最高位。さらに地のエルも同じく最高位。最後に僕。究極の闇になれます。
僕は頬を掻く。
「凄いパーティーだなって。」
ゲームなら完全に終盤の隠しパーティーだ。神様と、その眷属みたいな最高位クラスが三人。そこへ究極の闇。何これ?誰と戦うんだ?サノス?
……いや、今から戦いに行くわけじゃない。
惑星調査です。
「…………。」
僕がそんなことを考えている一方で。フューリーとヴァーラさんは、別の意味で無言になっていた。
「ニック。」
「ああ。」
ヴァーラさんが小さな声で呼びかける。
「私、昨日は詳しく聞きそびれたのだけれど……あの方々は?」
「一人は、この世界の人類を滅ぼす力を持った、神に等しい存在だ。」
闇の力。
「一人は、その対極に位置する存在……と思われていたが、他の二人と同じ存在らしい。しかし、残る二人も含めて、人間の尺度で測れる存在じゃない。」
光のエル、水のエル、地のエル。ヴァーラさんがゆっくりと僕を見る。
「……クロオは?」
フューリーも僕を見る。
「少なくとも、こいつ一人で国家戦力という括りは意味を失う。」
ヴァーラさんが、今日の調査メンバーを改めて見回し、
「ニック。……あの方たちが全員で地球に敵対したら、どうなるの?」
「考えたくもない。」
「アベンジャーズでは?」
「無理だ。」
「キャロルは?」
フューリーが黙った。そして僕を見る。さらに闇の力も見る。
「……あの二人はどうにもならんだろうな。」
「何がです?」
「何でもない。」
フューリーは深々と息を吐き、
「俺は長いこと、地球を守るために戦力を集めてきた。脅威が現れた時、それに対抗するためにな。」
「はい。」
「だが、一つ疑問がある。」
「何です?」
フューリーは、店内を見回した。
「……俺は今、地球を守る側と、滅ぼす側のどちらに囲まれているんだ?」
「何言ってるんですか。全員、守る側ですよ。」
「少なくとも今は。」
「今は!?」
おお、闇の力が冗談を言ったよ。その冗談にフューリーが食いついた。
「冗談だ。」
「お前が言うと冗談に聞こえん!」
珍しくフューリーが声を荒らげた。光のエルが小さく笑い、水のエルも口元に手を当てる。地のエルは無表情。そして闇の力は、
「店主。」
「はい。」
「カプチーノをもう一杯。」
「飲んでる場合か!」
フューリーの叫びが店内に響く。
……うん。大丈夫だ。たぶん。こうして、下手をすれば地球どころか、色々な意味で宇宙の方が心配になりそうなメンバーで、僕たちはスクラル人たちの新しい故郷を探すため、宇宙へ旅立つことになった。