日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
ある意味、第二に暴露会
しばらくして。僕たちは一度、例の村へ戻っていた。惑星調査に行く。そう決まったからといって、そのまま「じゃあ行ってきます」で宇宙へ飛び出すわけにもいかない。いや、闇の力たちなら普通に行きそうだけど。少なくとも僕は無理です。
「ゴウラム、もう少しこっちー。」
――キィィィン。
「そうそう。そこで待ってて。」
村の広場では、ゴウラムが大人しく待機している。その周囲では、光のエル、水のエル、地のエルが何やら話し合っていた。
「到着直後は私が大気を確認します。」
「では、私は地盤を確認しよう。」
「生態系については私が。」
何というか。本当に惑星調査っぽい。いや、惑星調査なんだから当たり前なんだけど。僕はゴウラムの状態を確認しながら、その様子を眺める。
「黒雄。」
「はい?」
少し離れた場所から闇の力に呼ばれた。
「最初の惑星へ到達した後、すぐには変身を解除するな。」
「大気が安全か確認するまで、クウガの姿のままですね? ゴウラムは?」
「そのままでいい。次の移動に備えろ。」
「了解です。」
なるほど、一応、僕にも仕事はある。宇宙規模のアッシーだけど。
「それと、現地で何か危険な生物が出てきても、すぐに攻撃するな。」
「分かってますよ。僕たちの方が侵入者ですからね。」
「理解しているならいい。」
「そんなに信用ないですか?」
「ある。」
即答されたよ。ならいいけど。
「クロオー。」
呼ばれたので振り返ると、少し離れたところに真魚がいた。
「どうしたの?」
「えっと。ううん、何でもない。」
「そう?」
「準備、もうすぐ終わる?」
「たぶん。闇の力が座標を確認して、それが終わったらかな。」
「そっか。」
真魚が笑い、僕も笑い返して、再びゴウラムへ向き直った。だから、その時の真魚の表情には、気付かなかった。
ーーーーー
「……フューリーさん。」
「何だ?」
村の建物の陰。真魚は周囲を確認してから、フューリーを呼び止めていた。フューリーが怪訝そうに眉を寄せる。
「ちょっと……話したいことがあって。」
「クロオのことか?」
「え?」
真魚が目を丸くし、フューリーは広場へ視線を向ける。その先では、黒雄がゴウラムの周囲を歩きながら、闇の力と何かを話している。
「違うのか?」
「……いえ。」
真魚も同じ方向を見る。
「クロオのことです。」
「何が気になる?」
「……うまく、説明できないんですけど。」
真魚は胸元で両手を握る。
「今回、クロオが宇宙に行くって聞いて……ちょっと、不安で。」
「危険だからか?」
「それもあります。でも……そうじゃなくて。」
言葉が出てこない。何と言えばいいのだろう。
「最近のクロオ、時々……変なんです。」
フューリーの目が僅かに細くなる。
「変?」
「変っていうか……精神的に不安定? でも、そういう感じでもなくて。むしろ逆というか……頑丈になったというか。何があっても平気そうなんです。前よりずっと。」
それは良いことのはずだった。強くなった。成長した。そう考えれば、それで済む。でも、
「……平気そうすぎるんです。」
真魚が小さく呟いた。
「前は、もっと困ってた気がするんです。分からないことがあったら分からないって言って、怖い時は怖そうにして。私とか、一条さんとか、周りの人に相談して。」
「今は違う、と?」
「はい。自分で決めて、自分で動いて……それで何とかしちゃうんです。それが悪いって言いたいわけじゃないんです。でも……。」
真魚は困ったように眉を寄せた。
「何か、気になるんです。」
フューリーは答えなかった。その沈黙に、真魚が顔を上げる。
「フューリーさん?」
「……俺もだ。」
「え?」
「俺も感じていた。」
フューリーは腕を組む。
「最初にアベンジャーズとして集めた頃のあいつには、なかったものがある。」
「なかったもの?」
少し考えてから、フューリーは言った。
「頑固さ、いや、言い方を悪くすれば、傲慢さとも言える。」
「クロオが?」
真魚が思わず聞き返す。その言葉と黒雄が、上手く結びつかなかった。
「力を持っているから他人を見下す、という意味じゃない。自分なら何とかできる。自分が何とかしなければならない。自分がやるべきだ。そういう考え方だ。以前のあいつは、もっと人を頼っていた。」
フューリーは思い返す。ニューヨーク決戦で、まだ十七歳だった少年。圧倒的な力を持ちながら、自分が何をすべきか分からず、周囲の大人たちの判断を仰いでいた。ニューヨークに先行するときもコールソンに相談をしていた。それが今は、
「確かに……。」
真魚も思い当たる節があり、二人の間に沈黙が落ちた。
「当然だ。」
「え?」
突然、第三者の声がし、真魚とフューリーが振り返る。そこには闇の力が立っていた。
「いつからいた?」
フューリーが警戒するように尋ねる。
「今来た。」
「……本当か?」
「本当だ。」
たぶん本当なんだろう。闇の力は二人へ近付く。
「その部分を解決することも、私が今回の件に協力している理由の一つだ。」
「どういうこと?」
真魚が尋ねる。闇の力は答える前に、広場にいる黒雄へ視線を向けた。
「二人に聞きたい。」
「何だ?」
「ここ最近、黒雄の精神的な負担が急激に増えるような出来事はなかったか? あるいは。」
闇の力が続ける。
「大量の封印エネルギーを、自身に向けて放ったことは?」
真魚とフューリーが固まった。身に覚えがありすぎる。
「ある。両方ある。」
「……うん。封印エネルギーの方は、私も見てた。クロオ、自分にものすごい量の封印エネルギーを使ってた。」
「やはりか。」
闇の力が納得したように頷く。その反応に、真魚の顔が曇った。
「それが原因で……クロオに何か悪い影響が出てるの?」
「悪い影響、という表現が正確かは分からない。」
「どういう意味だ?」
フューリーが尋ねる。闇の力は静かに答えた。
「アークルの精神安定効果が、正常に機能しなくなっている。」
「精神安定効果?」
真魚が聞き返す。
「ああ。」
「アークルに、そんな機能があるの?」
「ある。」
闇の力は当然のように答えた。
「アマダムは、使用者の肉体だけではなく精神にも干渉する。強大な力を扱う者が、その力に精神を呑まれぬようにするためにな。特に黒雄が使用しているアークルは、長期間にわたり戦闘を続けている。使用者の精神状態を一定に保つ機能は、以前から働き続けていた。」
真魚の表情が変わる。
「それが……今は働いてないの?」
「完全に失われたわけではない。しかし、正常とは言えない。」
真魚は少し迷い、
「それって……そんなに不味いの?」
そう尋ねると、闇の力は、
「?」
本気で不思議そうな顔をした。
「え?」
「真魚。黒雄の精神状態が、何の補助もなく正常に保たれていると思っていたのか?」
「…………え?」
「ずっと、戦い続けている。」
淡々と闇の力は語る。
「両親を亡くした。」
真魚の表情から血の気が引く。
「帰国した後には祖父母を殺された。」
フューリーの顔も強張る。
「その仇であるグロンギたちと戦い続けた。まだ十五の頃にな。それが終われば、次は宇宙からの侵略者だ。」
ニューヨークでのロキ、チタウリとの戦い。
「その後も戦いは終わらなかった。……私が協力を持ちかけたことではあるが、光を含むアンノウンとアギトに関わる戦い。」
光のエル、アンノウン、G4。
「テロリスト。」
エクストリミス。
「そして、アスガルドに関わる敵。」
ダークエルフ。
「それらと戦い続け、今もなお戦い続けている。……君たちは。」
闇の力は、本当に分からないという顔で二人を見た。
「その精神状態が、何の補助もなく大丈夫だと思っていたのか?」
真魚の顔が青ざめ、フューリーも完全に言葉を失っていた。言われてみれば当たり前だった。あまりにも当たり前すぎることだった。
黒雄は強い。異常なほどに強い。だから、いつの間にか、忘れていた。あの少年が、普通なら一つ経験しただけでも、一生消えない傷になりかねない出来事を、何度も、何度も、何度も経験していることを。
「……待て。」
フューリーが低い声を出す。
「では、今のあいつは……。」
「アークルによる精神への補助が弱まったことで、これまで抑えられていた負荷が表面化し始めている。」
闇の力が答える。
「封印エネルギーを自身へ大量に使用したことによる、アマダムへの干渉。そして、精神的負荷の急激な増大。」
「精神的負荷……。」
「最大の原因は、おそらくアスガルドで行ったという、未来知識の暴露大会だろう。」
フューリーが顔を上げた。
「……あれが。」
「あれ以前、黒雄は未来に関する知識を、ほぼ一人で抱えていたのだろう? ならば、自己完結できた。」
「自己完結?」
真魚が尋ねる。
「自分では介入できない。自分にはどうしようもない。ならば仕方がない。」
闇の力が淡々と言う。
「そうやって、自分自身を納得させることができていた。……だが、他者へ未来を伝えた。そして、」
フューリーの表情が変わる。
「対策を始めた。いや、対策を始めてしまった。その瞬間から、未来の出来事は『どうしようもないこと』ではなくなった。」
闇の力が広場にいる黒雄を見る。
「『絶対に何とかしなければならないこと』になった。」
闇の力の言葉に、真魚が息を呑んだ。
「未来を知っている。対策もできる。ならば……失敗は許されない。」
「……あ。」
真魚の口から、小さな声が漏れた。
「自分が知っていたのに誰かが死ねば、自分の責任だ。自分に力があったのに事件が起きれば、自分の責任だ。少なくとも、今の黒雄はこれまでより強く、そう考え始めている。」
真魚の手が震えた。
「……だから。」
「何だ?」
「クロオ……。」
真魚が思い出す。アスガルドで黒雄は未来のことを話した時、次から次へと自分の知っていることを、まるで吐き出すように話していた。
「ずっと……話してた。」
「そうか。」
闇の力が頷く。
「これまであった未来の知識の吐露も含めて、一種の精神的な防衛手段だったのだろう。」
「防衛手段?」
「一人では抱えきれなくなっていた。だから、口に出した。」
闇の力は静かに言った。
「誰かに知ってほしい、という思いもあったのだろう。」
真魚が俯き、フューリーも黙っている。そして、
「……待ってくれ。」
フューリーが呟き、気付いた。
「どうした?」
「未来の話だ。」
フューリーの頭の中であの日、黒雄が話した内容が蘇っていく。ヒドラ、インサイト計画、ウルトロン、ソコヴィア、アベンジャーズの分裂、サノス、インフィニティ・ストーン。指を鳴らすだけで、宇宙の生命の半分が消える。…………多すぎる。
「敵を倒せば終わる話じゃない事件が多すぎる……。」
「え?」
「こいつが知っている未来だ。」
フューリーの声が低くなる。
「敵一人を見つけて、倒して終わり。そんな話がほとんどない。」
ヒドラは世界中に潜伏していた。インサイト計画を潰しても、それでヒドラそのものが消えるわけではない。
ウルトロンはまだ存在すらしていない。だが、未来では誕生する。しかも、その原因にはトニー・スタークが関わる。
そして、その先にはアベンジャーズそのものが割れる未来まで待っている。サノスに至っては地球だけの問題ですらない。
「……強いて言えば。」
フューリーが呟く。
「アスガルドの件くらいか。ジェーン・フォスターを救った。フリッガを救った。ダークエルフを倒した。マレキスも倒した。それで終わる事件だ。」
そう、終わったのだ。だが、他は? フューリーの顔が、さらに険しくなる。
「そういうことか。」
「フューリーさん?」
「クロオが、俺に何度も言っていた。何かさせてくれ、と。」
真魚が目を見開いた。
「ヒドラを調べる時も。インサイト計画の時も。その後も。」
フューリーは拳を握る。
「何でもいい。自分にも何かさせてくれ。」
その時はただ焦っているのだと思っていた。未来を知っているから。危険を知っているから。だから、じっとしていられないのだと。だが、
「何もしていないことが、怖かったんだ。」
真魚の顔が強張る。
「自分が動いていない間に、未来が近付いてくる。それが怖かった。だから、何でもいいから動いていたかった。」
フューリーが顔を覆う。
「クソ……。」
真魚も思い出していた。
「……暴露大会の後。クロオ、ずっとフューリーさんからの連絡を待ってました。」
「…………。」
「普段通りにしてたけど……。」
学校へ行って。村へ行って。一緒に過ごして。笑って。遊んで。いつも通りの日常を送っていた。でも、
「気が付くと、端末を確認してた。」
「…………。」
「ヒドラのことが終わった後も。」
インサイト計画を阻止し、バッキーも救出した。少しくらい休んでいいはずなのに、
「すぐに……ウルトロンのことを気にしてた。ずっと。」
真魚の声が震える。
「まだ何も起きてないのに。まだ生まれてもいない敵のことを……ずっと。」
「鉄の男も。」
闇の力が口を開いた。
「スタークか?」
「あの男も、似たところがあるのだろう?」
フューリーは否定できなかった。ニューヨークでワームホールの先を見て、自分たちの知らない脅威をトニー・スタークは見た。そして、アーマー制作に没頭した。
「危機を知り、その危機に対処できるだけの力も、知識もある。しかし、その方法は他者からすれば受け入れられないかもしれない。」
フューリーの目が細くなる。
「仲間から否定されるかもしれない。それでも、自分がやらなければ世界が危ない。」
闇の力は二人を見る。
「そのような状況で、普通でいられるわけがない。」
「「…………。」」
「黒雄はもう。」
闇の力は告げた。
「限界など、とうに超えているぞ?」
真魚の顔が完全に青ざめたが、何かを思い出す。
「あれ……。なら……昨日のは?」
「昨日?」
真魚が闇の力を見る。
「クロオをアルティメットフォームにして、あなたと繋がせたこと。宇宙を見せて……あんなに疲れさせて。」
真魚の声に心配が滲む。
「あれも、クロオを追い込んでるんじゃ……。」
「ああ。」
闇の力が頷いたことで、真魚の表情が強張る。しかし、
「あれはストレス発散に良いと思ってな。」
真魚が固まった。フューリーも固まった。
「……え?」
「究極の闇の姿で、思い切り力を使わせたのだ。多少はスッキリするだろう。」
「えー……。」
真魚の口から、何とも言えない声が漏れた。
「そんな理由だったの……?」
「当然、それだけではないがな。君という存在を、黒雄に改めて認識させた。」
真魚が瞬きをする。
「あの時。私の記憶を辿るため、君は黒雄を座標として利用した。」
「うん。」
「だが。本音を言えば、逆だったのだ。」
「逆?」
闇の力は広場を見ると、黒雄がゴウラムへ何かを話しかけている。ゴウラムも鳴いたり、顎を動かしたりして反応を返している。そんな黒雄たちの様子を確認し、真魚へと向き直り、
「君こそが。十文字黒雄という存在にとっての、日常の座標なのだ。」
真魚が何も言えなくなっていた。
「戦いでもない。未来でもない。世界でもない。彼が戻る場所だ。」
真魚は俯く。その頬が少し赤くなる。けれど今はそれ以上に、心配そうに唇を噛んだ。そして、フューリーは。
完全に別の方向を向いていた。
「フューリーさん?」
真魚が呼ぶが返事がない。しばらくして、
「……俺は。そんな状態のガキに、宇宙規模の問題を持ち込んだのか?」
誰も答えない。
「スクラルの移住先。何十年も解決できなかった問題をあいつに持ち込んだ。」
拳が震える。
「俺が。」
「フューリーさん……。」
フューリーは目を閉じ、思い出す。黒雄はずっと言っていた。最初から、何度も、何度も。
『僕、高校生ですよ?』
あの頃はその言葉通りに受け取っていた。自分は未成年だ、高校生だ。そんな自分を世界の命運が懸かった戦いへ呼ぶな。そういう意味だと。もちろん、それもあったのだろう。だが、
「……違ったんだ。高校生だからじゃない。アイツはずっと言ってたんだ。」
力はある。誰よりも強く、国家戦力という括りすら意味を失うほどに。それでも、
「考え方は……普通の人間なんだ。軍人じゃない。エージェントでもない。王でも、神でもない。」
フューリーが広場の少年を見る。
「ただの一般人だ。」
強大な力を持ってしまった。未来を知ってしまった。それだけの、
「そんな奴に、事件なんて解決できるわけがない。世界の問題なんて、背負えるわけがない。」
分かっていたはずだった。だから、アベンジャーズへ招集した時も揉めた。スタークに責められた。それでも、黒雄が強かったから。
そして黒雄も、頼られるたびに応えた。だからいつの間にか、大丈夫なのだと思ってしまった。
真魚も俯いている。自分も同じだったからだ。クロオが変だ、何かおかしい。そう思っていた。気付いていた。でも、その理由までは考えなかった。
クロオは笑っていたから。いつも通りだったから。自分の隣で。普通に、
「…………。」
「…………。」
二人揃って、完全に沈黙してしまった。闇の力が二人を見る。
「どうした?」
返事はない。
「…………。」
真魚は俯いたまま、フューリーは腕を組んだまま。二人とも、微動だにしない。完全に、お通夜状態だった。
「仕方があるまい。私もどうするべきか、と悩んでいたし、一条からも相談を受けていたが、解決策は浮かばなかった。」
一条と闇の力が先に異変に気付き、何とかしようとしていたことを知り、真魚とフューリーはさらに落ち込んだ。
ーーーーー
「さっきから皆、何を話してるんだろうな? 闇の力がいるから聞こえてこない。僕も行った方が良いかな?」
『――――ッ!!』
「駄目? まあ、いいか。」
ゴウラム、足止め担当。