日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
謎の宇宙人はマンティスと同じ種族生まれです。某水しか飲まない龍玉を作れる神コロ様種族は関係ありません。
僕は、研究台の上に横たわる存在から目を離せなかった。
薄緑色の肌に、頭部から伸びる二本の触覚。人間に近い顔立ちをしているのに、人間ではない。知らない。本当に知らない。
少なくとも、僕自身が覚えている『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』に、こんな存在は登場していない。それなのに、
『私は未来を知っている。』
「…………。」
胸の奥が、ざわついた。何かがおかしい。何かが――
「クロオ?」
スティーブさんの声が聞こえるのに、返事ができない。
「クロオ。」
「……え?」
ようやく顔を上げると、スティーブさんが心配そうにこちらを見ている。
「大丈夫か?」
「……はい。」
反射的に答える。けれど、
――グラッ。
「っ……。」
視界が揺れた。
「クロオ!」
スティーブさんが咄嗟に腕を掴んでくれる。
「おい。」
スタークさんも近付いてくる。
「大丈夫か?」
「……大丈夫、です。」
「今倒れかけた人間の台詞じゃない。」
「いや……。」
額を押さえた。頭が痛い。いや、頭痛とは違う。何か、考えなければいけないことがある。なのに、思考がまとまらない。未来を知っている。自分と同じ。だが、知らない。こんな存在は知らない。それなら。
これは何だ?
僕以外にも未来を知っている者がいた? それとも、
「…………。」
「クロオ。」
ナターシャさんが声をかけてくる。
「一度、外に出た方がいいわ。」
「……はい。」
素直に頷いた。自分でも、それがいいと思った。というより、今は、この宇宙人を見ていたくなかった。
ーーーーー
それから、しばらくして。ソコヴィアのヒドラ研究施設は、完全に制圧された。残存していたヒドラ兵は全員拘束。研究資料、兵器、端末なども可能な限り回収。ワンダとピエトロについても、命に別状はない。
「本当に轢くつもりはなかったんです。」
「まだ言ってるのか。」
「だって……。」
遠くを見る。少し離れた場所では、担架に乗せられたワンダが運ばれている。
「……。」
気絶している。
「事故だったんです。」
「分かったから。」
スティーブさんが苦笑する。
「目を覚ましたら、ちゃんと謝ればいい。」
「……はい。」
ちなみにピエトロもまだ寝ている。こちらは完全に僕が撃った。まあ、非殺傷ライジング弾だから大丈夫だろう。問題は、
「さて。」
スタークさんが腕を組む。その視線の先には、特殊な生命維持装置ごと運び出された、例の宇宙人。
「コイツをどうするか、だな。」
「新しい基地に運ぶんじゃないの?」
ナターシャさんが尋ねる。
「本当ならそうしたい。」
スタークさんが首を振った。
「だが、あそこはまだ完成してない。」
「設備が足りない?」
「ああ。地球人ならともかく、未知の宇宙生命体を調べる設備なんて用意してない。」
スタークさんが生命維持装置を見る。
「下手に弄って死なせたら、何も分からなくなる。」
「では、どうする?」
ソーさんが尋ねた。
「スターク・タワー。」
即答だった。
「あそこならブルースと俺の研究設備がある。ジャーヴィスにも直接接続できる。とりあえず生体情報を調べるくらいなら、基地より遥かにマシだ。」
「賛成。」
ナターシャさんが頷く。
「私も。」
スティーブさんも同意する。
「異論はない。」
ソーさんも。
「クロオは?」
「…………。」
スタークさんに呼ばれ、僕は顔を上げる。
「え?」
「スターク・タワーへ戻る。いいな?」
「あ……。」
何か、引っかかった。スターク・タワー。その言葉に、何か、妙な違和感がある。
「…………。」
けれど。何がおかしい? 未知の宇宙人を調べる。新基地には設備がない。だからスターク・タワーへ行く。何もおかしくない。
「……はい。」
少し迷ったけれど、頷いた。
「それでいいと思います。」
「決まりだ。」
スタークさんが言う。
それで、話は決まった。
ーーーーー
――ニューヨーク、スターク・タワー。
「よし。」
スタークさんが研究室へ入る。その隣にはブルースさん。そして、特殊な搬送装置に載せられた例の宇宙人。
「まずは生体情報からだ。」
「未知の生命体だからね。地球人の基準をそのまま当てはめない方がいい。」
「分かってる。」
「あと、いきなり解剖とか言わないでよ。」
「言わないよ。」
「本当に?」
「僕を何だと思ってる?」
「科学者。」
「君もだろ。」
「だから心配なんだよ。」
そんな会話をしながら、二人は研究室の奥へ消えていき、扉が閉まる。
「…………。」
僕も、それを見送っていた。
「さて!」
突然、ソーさんの大声が響いた。
「うわっ!?」
肩を跳ねさせてしまった。
「何ですか、ソーさん。」
「勝ったのだぞ!」
「はい?」
ソーさんが両腕を広げる。
「ヒドラの要塞を陥落させ、民を苦しめる者たちを打ち倒した! 死者も出ておらぬ!」
「まあ……はい。」
「ならば!」
嫌な予感。
「宴だ!」
「…………。」
何度か、瞬きをする。
「宴?」
「うむ!」
ソーさんは満面の笑み。
「勝利の後には宴! これは当然であろう!」
「当然なのか?」
スティーブさんが苦笑する。
「アスガルドではな!」
「ここはニューヨークよ。」
ナターシャさんが言う。
「細かいことを気にするな!」
「国どころか星が違うのよ?」
「ならばミッドガルド式の宴にすればよい!」
ナターシャさんが少し考え、
「まあ、悪くないかもね。」
「ナターシャ?」
「全員無事。作戦成功。ヒドラの研究施設も潰した。少しくらい息抜きしてもいいでしょう?」
「それは……。」
スティーブさんも考え、
「そうだな。」
頷いた。
「賛成だ。」
「よし!」
ソーさんが嬉しそうに笑う。
「では酒を!」
「未成年がいる。」
スティーブさんが僕を見る。
「僕は飲みませんよ。」
「分かってる。」
「ならばジュースを用意しよう!」
「宴に対する情熱が凄いなあ。」
僕は苦笑した。けれど、
「…………。」
また、何かが引っかかった。スターク・タワー。戦いの後のパーティ。
「…………。」
何か、知っている気がする。けれど、思い出せない。
ーーーーー
数時間後。
スターク・タワーの一室は、完全にパーティ会場と化していた。
音楽、料理、酒、ジュース。
「ははははは!」
ソーさんの笑い声が響く。
「それでな! その巨人が――」
「待て待て。」
スティーブさんが苦笑している。
「その話、本当に巨人が三十人いたのか?」
「無論!」
「さっき二十人って言ってなかったかしら?」
ナターシャさんが指摘する。
「細かいことを気にするな!」
「増えてるじゃない。」
「戦いとはそういうものだ!」
「どういうものなのよ?」
少し離れた場所で、僕はジュースを飲んでいた。
「…………。」
楽しそうだ。皆、楽しそうにしている。作戦は成功した。誰も死ななかった。ヒドラは制圧した。ワンダとピエトロも無事。例の宇宙人も救出した。だから、宴。おかしくない。
「…………。」
なのに。
何だ。
この。
気持ち悪さは。
――プシュッ。
扉が開いた。
「やあ、諸君。」
スタークさんが入ってくる。その後ろにはブルースさん。
「遅かったわね。」
ナターシャさんがグラスを傾ける。
「宇宙人を調べてたんだ。これでも早い方だよ。」
「何か分かったか?」
スティーブさんが尋ねる。
「色々とね。」
スタークさんが肩を竦める。
「ただし、まだ確定じゃない。ブルース?」
「地球上の既知の生物とは明らかに違う。」
ブルースさんが答える。
「細胞構造、代謝、神経系、どれも僕たちとは異なる。ただ……。」
「ただ?」
「それは明日にしよう。」
「え?」
僕が驚いて顔を上げると、ブルースさんは笑っていた。
「今日はもう疲れたよ。」
「…………。」
何か。
引っかかった。
けれど。
「まあ、そうだな。」
スタークさんもグラスを取る。
「今日は働いた。」
「君がそれを言うのか?」
スティーブさんが笑う。
「僕だって休むさ。」
「珍しい。」
「キャプテン。僕を何だと思ってる?」
「働きすぎる男。」
「君に言われたくない。」
笑い声。
「…………。」
僕だけが、笑えなかった。
何か。
何かが。
絶対に。
おかしい。
スターク・タワー。
パーティ。
スタークさん。
ブルースさん。
ソーさん。
スティーブさん。
ナターシャさん。
そして。
「…………。」
クリントさんはいない。
いや。
元々、今回の作戦には参加していない。
だから、いなくて当然。
それなのに。
「……何だ?」
既視感。この光景を知っている? 見たことがある? ……どこで?
スターク・タワー。
パーティ。
その後。
「…………。」
――キーン。
「!」
手元の端末が鳴った。
「…………。」
画面に表示されている名前は、
『真魚』
「…………。」
時間が止まった気がした。
「……真魚。」
呟く。真魚。風谷真魚。この世界で出会った、自分にとって何より大切な人。そして、『エイジ・オブ・ウルトロン』には、
「――いない。」
一気に、頭の中の霧が晴れた。
「っ!?」
立ち上がると、椅子が勢いよく倒れた。
――ガタン!!
「うおっ。」
スタークさんが振り向く。
「どうした?」
「…………。」
スタークさんが僕を見てくるけれど、何も感じていない。
スティーブさんも。
ナターシャさんも。
ソーさんも。
ブルースさんも。
誰も、僕が突然立ち上がったことを少し不思議そうに見ているだけ。
「…………。」
おかしい。絶対におかしい。すぐに端末を操作した。
「真魚!」
『――クロオ!?』
聞こえた。真魚の声。
『良かった! 出た!』
「真魚……。」
『もう! 何してたの!?』
「え?」
『作戦が終わったら連絡してくれるって言ったじゃん!』
「…………。」
血の気が引いた。確かに言った。出発前、真魚に終わったら連絡する、と。
「……忘れてた。」
『え?』
「連絡……。」
完全に忘れていた。
『だから心配したんだよ!』
真魚の声が怒っている。けれど、それ以上に、本当に心配している声。
『フューリーからも連絡が来たんだよ!』
「フューリーから?」
『うん!』
真魚が早口になる。
『アベンジャーズの新しい基地に戻ってくるかと思ったら、スターク・タワーに戻ってるって聞いて、どうしたって。クロオから私に何か連絡はないかって。』
「…………。」
『それで、スタークさんにも、スティーブさんにも、ナターシャさんにも連絡したのに、誰も出ないって。』
「え?」
ゆっくりと顔を上げる。スタークさんを見る。スティーブさんを見る。ナターシャさんを見る。三人とも、
「…………。」
何も気にしていない。
『フューリー、すごく焦ってたよ。』
「…………。」
『全員連絡に出ないなんて、普通じゃないって。何かあったんじゃないかって。』
「……。」
心臓が大きく鳴った。そうだ。普通じゃない。フューリーからの連絡を、全員が無視している?
いや、そもそも。
「……連絡?」
端末を見る。着信履歴。
「…………。」
何件もある。フューリーから、真魚から。全く気付かなかった。
「…………。」
僕は周囲を見る。笑っている。飲んでいる。談笑している。誰も、おかしいと思っていない。
「……真魚。」
『何?』
「ちょっと待って。」
『え?』
「絶対に切らないで。」
『う、うん。』
端末を握ったまま、目を閉じ、心の中で呼びかける。
(闇の力。)
『――何だ?』
すぐに、頭の中へ声が響いた。
(すみません、かなりヤバいトラブルかもしれません。助けてください。)
僕が助けを求めると、闇の力の声の質が変わった。
『何があった。』
(分からない。)
周囲を確認するけれど、
(分からないんですけど、絶対におかしい。)
ソコヴィアで見つけた未知の宇宙人。そして、未来を知っていると話していたこと。スターク・タワーへ運んだこと。スタークさんとブルースさんが調べたこと。その後、何の疑問も持たず、パーティを始めたこと。フューリーからの連絡に誰も気付かなかったこと。
僕自身も、真魚から連絡が来るまで、違和感に確信が持てなかったこと。それらを急いで説明する。
「…………。」
数秒、闇の力から返事がない。
(闇の力?)
『クロオ、今すぐ変身しろ。黒のクウガだ。』
自分の目が見開かれたのが分かる。
(でも――)
『急げ。』
「…………。」
いや、迷う必要はない。腰にアークルを出現させ、
「――いきなり超変身!」
スタークさんたちが振り向いた。
「どうした、クロオ?」
質問が飛んでくるが、いきなり変身したにもかかわらず、驚く様子がない。やっぱり変だ。
黒い装甲と、金の装飾に身を包んだ黒き戦士、アメイジングマイティに変身する。
(変身しました!)
『封印エネルギーを波動として、全身から放て。』
(えっと、どれくらいの規模で?)
『全力だ。』
「…………。」
息を呑んでしまう。
(ここ、スターク・タワーですよ!?)
『構わん。緊急事態だ。いいか、クロオ。イメージしろ。そこに正体不明のエネルギーが漂っていると。そのエネルギーを封じるイメージで封印エネルギーを放て。』
一拍。
『黒のクウガの状態で、限界まで、だ。』
「…………。」
拳を握り、全身へ封印エネルギーを巡らせる。
「皆さん! ちょっとだけ、我慢してください!」
「何を――」
――ドンッ!!
波動を爆発させる!
「っ!?」
アメイジングマイティの身体から放たれた莫大な封印エネルギーが、スターク・タワー内部を一気に駆け抜けた。
――ブワァァァァァァッ!!
「ぐっ!?」
スティーブさんが腕で顔を覆う。
「何だ、これは!?」
ソーさんが目を見開く。
「クロオ!?」
ナターシャさん。
スタークさん。
ブルースさん。
全員を封印エネルギーの波動が通り抜けた。そして、
「……え?」
スタークさんが瞬きをしながら、手元のグラスと周囲を見る。
「……何だ?」
スティーブさんも額を押さえた。
「僕たちは……。」
ブルースさんが呟く。
「何を……してたの?」
ナターシャさんの顔から酔いも、笑みも、一瞬で消えた。そして端末を見ると、
「フューリーから……七件?」
「僕は十二件だ。」
スタークさんが自分の端末を見る。
「ジャーヴィス。」
返事がない。
「…………。」
スタークさんの表情が変わった。
「ジャーヴィス?」
『ーーーーーッ。』
数秒遅れて返事が返ってくる。しかし、聞き取れない。ソーさんがゆっくり立ち上がり、
「待て。」
ムジョルニアを握る。
「我らはなぜ宴を?」
誰も答えられない。
「勝ったから、じゃなかったか?」
スティーブさんが呟く。
「そう思っていた。」
「でも。今は?」
ナターシャさんが続ける。
全員同時に、研究室の方向を見る。スタークさんとブルースさんがつい先ほどまで調べていた未知の宇宙人。未来を知っているという存在。
「……ブルース。」
スタークさんが尋ねる。
「僕たちは、アレの……何を調べた?」
ブルースさんが固まる。
「覚えてない。」
「僕もだ。」
スタークさんが自分の頭を指差す。
「調べたことは覚えてる。スキャンしたし、血液も調べた。細胞も見た。だが、」
顔が強張る。
「結果が思い出せない。」
「…………。」
背筋に冷たいものが走った。その時、
――プシュッ。
扉が、ゆっくりと開いていく。
スタークさんの手にリパルサーの光。
スティーブさんが盾を構える。
ナターシャさんが銃へ手を伸ばす。
ソーさんがムジョルニアを握り締める。
ブルースさんが一歩下がる。
そして、僕は拳を構えた。
――コツ。
足音。
――コツ。
もう一度。
「…………。」
暗い通路から、誰かが歩いてくる。薄緑色の肌、頭部から伸びる二本の触覚。
「……嘘だろ。」
スタークさんが呟いた。生命維持装置がなければ、生きていることすら難しいはずだった。何年もの間、ヒドラによって最低限の生命活動だけを維持されていたはずの存在。その宇宙人が、自分の足で歩いている。
この世界の異物の一つが、ゆっくりと姿を現した。