日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
――ガァン!!
拳と拳の激突が続く。
「ぐっ……!」
ライジングマイティの拳を、G4の拳が真正面から受け止めてる?かなり強化されてるな。黄色いエネルギーを全身に纏った黒い装甲。その背部でスラスターが唸り、
――ゴォォォォォッ!!
「うわっ!?」
一気に押し込まれる。足の裏が甲板を削り、そのまま数メートル後ろへ滑らされた。
「っ……!」
強い。強いことは強いけど、どちらかと言えば、
「面倒臭い……!」
『どうした!!』
G4――水城さんが叫ぶ。
『その程度か、クウガ!!』
………腹立つなチクショウ!
スラスターが爆発的に噴射される。速いけど、身体を横へ捻り、余裕を持って回避する。G4の拳が顔のすぐ横を通り過ぎた。そのまま懐へ入り、
「はぁっ!」
脇腹へ拳を叩き込む。
『ぐっ!?』
G4の身体が大きく傾く。うん。今の僕なら、普通に戦えば負けない。というか、アメイジングマイティ、それかライジングマイティキック、もしくは全力のパンチを叩きこめば、それだけで、このG4を破壊することはできる。たぶん、一撃で。問題は、
『どうした!!』
G4が振り返る。
『何故、追撃しない!!』
「……できるわけないでしょうが!」
中に人がいるんだよ!しかも、G4の装甲がどれだけ強化されているのか分からない。ヒドラの改造に加えて、あの黄色いエネルギーまで使われている。だからといって、僕が本気で殴ったらどうなる?装甲だけ綺麗に壊れる?そんな器用なこと、できるわけがない。最近、対人間も増えたけど、こちとら対怪人が専門なんだ!…………いや、別に専門でもないけど。
下手をすれば、装甲ごと、中にいる水城さんまで貫通する。
「困ってるんですよ!!」
『舐めるなぁぁぁぁぁ!!』
G4が突っ込んでくる。
「うわっ!?」
拳を腕で受ける。左右から拳が飛んでくる。防ぐ。避ける。受け流す。けれど、
『はは……!』
G4の動きが、さらに激しくなる。
『はははははははは!!』
笑ってる。
『どうした、クウガ!!』
「ぐっ!」
蹴りを腕で受ける。
『どうした!! どうした!!』
――ガンッ!!
『貴様はその程度か!!』
――ガァン!!
『何故、攻撃してこない!!』
「したら死ぬかもしれないからですよ!!」
『それが敗北だ!!』
意味分かんない!G4のスラスターが唸る。拳を受け、身体が後ろへ吹き飛ぶ。甲板を転がり、すぐに立ち上がる。その僕を見て、
『ははは……!』
水城さんの声が震える。
『ははははははは!!』
喜んでいる。明らかに、狂ったように。
『俺が押している!!クウガを! 俺が!!』
G4が両腕を広げる。
『俺の方が強い!!』
「いや、本気出せないだけなんですけど!?」
『負け惜しみか!!』
「この人、話聞かない!!」
『ははははははははは!!』
また突っ込んでくる。本当に面倒臭い!
ーーーーー
――ズドォォォォン!!
リパルサーで量産型ウルトロンの胸部を撃ち抜いた。量産型が倒れ、爆発する。その横では、
「ふんっ!」
キャップの盾が量産型の頭部へ叩き込まれ、そのまま別の一体へ跳ね返る。さらに、
「はぁぁぁぁぁっ!!」
――ズドォォォォォン!!
ソーが放った雷撃が甲板を走り、複数の量産型をまとめて吹き飛ばした。数十体いた量産型は、既にほとんど残っていない。そんな状況にもかかわらず、
『…………。』
自称ウルトロンは動かなかった。ただ戦況を眺めている。それを見て、
「随分と余裕だな!」
飛びながら叫ぶ。リパルサーで最後に近い量産型を吹き飛ばし、
「お前の玩具は、あと少しで片付くぞ!」
『ん?』
自称ウルトロンがこちらを見てくる。
『ああ。もう搬入は終わっているからな。』
「……搬入?」
『ヴィブラニウムだ。』
船倉を確認すると、確かに先ほどまで並んでいたケースのほとんどが消えている。
『戦っている間に運ばせてもらった。必要な分は、もう別の場所へ移した。だから今は、この状況をどう収拾をつけるか考えていた。』
「お前……。」
『正直、あまり使いたくはないのだが。』
自称ウルトロンが右手を上げる。その掌に、
――キィィィィィィン……。
黄色い光が集まり始めた。
「何をする気だ。」
『捕まりたくもないのでな。』
次の瞬間、黄色い波動が爆発した。
「っ!?」
視界が黄色に染まる。波動は甲板全体へ広がり、船を包み込むように駆け抜けた。
「これは!?」
あの黄色いエネルギー。研究施設でジャーヴィスを襲い、僕のアーマーを乗っ取った力。そして、人間の精神にも干渉する力。だが、
「……ふっ、残念だったな。」
『…………。』
胸部装甲の一部が開く。その内部で、アークリアクターに小型の装置が付け加えられ、青白い光を放っていた。
「一度見た攻撃を、そのまま食らうと思ったか?洗脳の対策をしてないとでも?」
自分の頭を指差す。
「ちゃんと対策用の装置を作って、身につけてる。」
少し離れた場所では、
「っ!」
キャップが量産型の攻撃を盾で受け、そのまま蹴り飛ばしていた。
さらに、
「水城さん! いい加減止まってください!」
『黙れぇぇぇぇ!!』
クロオもG4とかいうアーマーとの戦闘を続けている。あちらも問題ない。
「どうだ?全員対策済みだ。」
『…………。』
自称ウルトロンが黙る。
「悪いな、そっちの切り札は不発――」
『……あの雷神様は?』
「…………。」
思わず動きを止めてしまった。ゆっくり。本当に、ゆっくりと振り返る。そこには、
「…………。」
ムジョルニアを持ったソーが立ちながら、俯いている。
「……ソー?」
返事がない。視線を、ソーの身体を上から下へ移動する。…………装置、ないな。渡した。確かに渡した。なのに、身につけていない。
「……お前。装置、どうした?」
ソーがゆっくりと顔を上げる。その瞳が、黄色く光っていた。
「……嘘だろ。」
自称ウルトロンが納得したように頷く。
『ああ。付けてないな。』
「ソォォォォォォォォ!!」
――ズドォォォォォォン!!
雷が落ち、吹き飛ばされる。
「うわぁぁぁぁぁ!?」
「トニー!?」
キャップが叫ぶ。その直後、
「ぬぅぅぅぅぅぅん!!」
ソーがムジョルニアを振り回し、キャップが盾を構える。
「待て、ソー!」
――ガァァァァァン!!
「ぐっ!?」
キャップのヴィブラニウム製の盾とムジョルニアが激突、その衝撃には耐えるが、
「ふぬぅぅぅぅぅぅん!!」
「のわぁぁぁぁぁぁ!?」
ムジョルニアが無理やり振り抜かれ、キャップが弾き飛ばされる。
「何してるんですか、ソーさん!?」
戦闘中のクロオが思わず叫ぶ。すると、
『…………。』
クロオの相手の動きが急に止まった。
「……水城さん?」
黄色い光がG4の装甲を走り、
『…………俺は。』
G4がクロオから離れた。飛行ユニットを噴射して、一気に自称ウルトロンの側まで下がる。
「水城さん!?」
クロオが叫ぶが返事はない。ただ、自称ウルトロンの隣に立ち、そのまま動きを止める。
あの黄色い波動の影響を受けたか?
『さて。これで少しは時間が――』
――ズドォォォォォォォン!!
「うおっ!?」
今度は自称ウルトロンまで身体を揺らした。
「ソー!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
――ドガァァァァァン!!
ムジョルニアが甲板へ叩きつけられ、船体が大きく揺れた。
「ちょっ!?」
――メキメキメキメキ!!
甲板に亀裂が走る。
「ソー! 落ち着け! 船! 船が壊れる!」
「ぬぅぅぅぅん!!」
聞いてない。ダメだなこれは。あ、船体の一部が吹き飛んだ。大量の海水が内部へ流れ込み始める。
「まずい!」
キャップが周囲を見る。戦闘に巻き込まれ、倒れている密売人たち。まだ船内にも人がいる。
「トニー!」
「分かってる!ジャーヴィス! 船内の人間を全員探せ! 浸水速度も計算しろ!」
『承知しました。』
「クロオ!」
キャップが叫ぶ。
「こっちは任せろ!」
ーーーーー
僕は自称ウルトロンを見る。
量産型はほとんど破壊した。G4は自称ウルトロンの横で止まっている。ここで逃がしたら面倒ではある。
――ズドォォォォン!!
「うわっ!?」
また船が揺れる。駄目だ。このままだと本当に沈む。しかも、原因は、
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
完全に暴走しているソーさんだ。仕方ない!腰へ意識を集中する。
「超変身!」
赤と金の装甲が変化し、青へ。その上を走る、金色の力。ライジングドラゴン。
「何か棒!」
周囲を見る。
「棒、棒、棒……あった!」
甲板に転がっていた鉄パイプを拾う。エネルギーを流し込み、ただの鉄パイプを青と金の長杖、ライジングドラゴンロッドへと変化させる。
「ソーさん!」
「ぬぅぅぅぅぅぅ!!」
またムジョルニアを振り上げている。
「それ以上やったら、本当に沈むから!!」
一気に走り出し、手すりを踏み台に跳ぶ。
「ソーさん!!」
「むっ!?」
ようやくソーさんが僕を見る。ライジングドラゴンロッドを振りかぶる。刃の側面を向ける。斬らない。突かない。ただ、思いっきり、
「いい加減、目ぇ覚ませぇぇぇぇぇぇぇ!!」
――ゴォォォォォォン!!
脳天へ叩きつけた。
「ぐおっ!?」
凄い音がした。同時に、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
封印エネルギーを流し込む。黄色いエネルギーを押し流すように、ソーさんの身体へ入り込んだ異質な力を封印するように。
「ぬ……ぐぅぅぅぅぅぅ!?」
黄色い光と封印エネルギーが衝突する。
「戻れぇぇぇぇぇぇぇ!!」
黄色い光が弾け飛んだ。ソーさんの身体が止まる。振り上げられていたムジョルニアが、ゆっくりと下がっていく。
「…………。」
「…………。」
僕はライジングドラゴンロッドを構えたまま、ソーさんの顔を覗き込む。
「……ソーさん?」
「…………クロオ。」
「はい。」
「……何故。」
「はい?」
ソーさんが、自分の頭を押さえる。
「何故、我の頭がこれほど痛むのだ……?」
よし、正気に戻った。
ーーーーー
結局、僕たちは自称ウルトロンを取り逃がした。
ソーさんを正気に戻している間に、自称ウルトロンはG4――水城さんを連れて逃走。船倉に保管されていたヴィブラニウムも、戦闘中に量産型ウルトロンによって運び出され、そのほとんどを奪われる結果となった。
一応、密売人たちの救助には成功したし、沈みかけた船もスタークさんが何とかした。量産型ウルトロンも、あの場に残っていた個体は全て破壊できた。けれど、
「……完全にやられたなぁ。」
新アベンジャーズ基地に戻ってきた僕は、通信端末を片手に大きく息を吐いた。画面に映っているのは、一条さんだ。
『水城史朗。それから、深海理沙についても調べてみた。』
「はい。」
『二人とも行方不明になっている。』
「……ああ、やっぱり。」
予想していたけど、水城さんだけじゃなく深海さんまで。
『最後に所在を確認できた時期を考えると、インサイト計画が実行されるよりも前だ。正確にいつからヒドラと接触していたのかまでは分からないが、少なくとも、ヒドラの存在が表に出てから勧誘されたわけではないだろう。』
「ということは……。」
『ああ。』
一条さんが頷く。
『S.H.I.E.L.D.内部にヒドラが潜伏していた頃から、既に目をつけられていた可能性が高い。』
まあ。うん。何というか。
「……あの二人、ヒドラの水、合いそうですもんね。」
『ああ。』
一条さん即答したよ、否定してほしかった。いや、無理か。G4を運用していた頃から、水城さんも深海さんも、かなり危ういところがあった、というか誘拐とかも普通にやってた。水城さんは、自分の命を削ることを承知でG4を使い続けた人だし、深海さんに至っては、G4の危険性を理解した上で、それでも完成させようとしていた。
そこにヒドラが現れて、
――G4を完成させられる。
――さらに強くできる。
なんて言われたら。
「……行きそうだなぁ。」
『俺もそう思う。』
「ですよねぇ……。」
頭が痛い。
『こちらでも引き続き二人の行方を調べる。何か分かったら連絡する。』
「お願いします。」
通信を切り、端末を下ろす。そして僕は、少し離れた場所へ視線を向けた。そこでは、
「ソー。」
「……うむ。」
「渡された装置、なんで付けてなかったの?」
ソーさんが正座していた。
雷神が、アスガルドの王子が。ムジョルニアを振るい、数多の敵を打ち倒してきた最強クラスのアベンジャーが、床の上で正座していた。その正面にはジェーンさん。フューリーはお説教担当として呼んだらしい。そして、その隣には、
「兄上。」
ロキまでいる。
「……何だ。」
「返事が小さい。」
「…………うむ。」
「兄上。」
「はい。」
ソーさん……。
「そもそも、なぜ装置をつけていなかったのだ?」
ロキが腕を組みながら尋ねる。
「いや、その……。」
「その?」
「私服と同様、戦闘用の姿に変身したら、異空間に収納されてしまって……。」
「…………なぜ変身する前から装置を付けた。」
「使い方の説明を受けた後、そのまま付けたままだったもので……。」
「「…………はぁ。」」
恋人と弟から完全に呆れられているよ。
「……ソーさん、足、大丈夫ですか?」
思わず聞いてしまった。あ、ソーさんの顔が僅かに歪んだ。
「クロオ。」
「はい。」
「この座り方は……何故、これほどまでに足へ負担がかかるのだ……?」
「慣れてない人にはキツいですからね。」
「感覚が……なくなってきた。」
「兄上。」
「ソー。」
「はい。」
「話を逸らすな。」
ごめんなさい、ソーさん。助けられません。僕はそっと視線を逸らした。スタークさんも、スティーブさんも、ナターシャさんも、バナーさんも同じように一瞬だけソーさんを見る。
そして、全員、何も見なかったことにした。
「さて。あっちは放っておくぞ。」
フューリーが口を開き、
「そうですね。」
「異論なし。」
「僕も。」
「賛成。」
「仕方がない。」
「兄上、姿勢を崩すな。」
「…………。」
ソーさん。頑張ってください。
僕たちは会議用のテーブルへ集まる。表示されているのは、今回の戦闘で得られた情報。そして、自称ウルトロンが奪ったヴィブラニウムの推定量だ。
「ヴィブラニウムは、ほとんど持っていかれた。」
スタークさんが画面を操作する。
「量産型の残骸から追跡できるようなものも見つからない。あいつ自身の行方も不明。G4も一緒だ。」
「となると……。」
僕は腕を組み、これから、自称ウルトロンが何をするのかを考える。ヴィブラニウムの次は、人工細胞。
「次は、理想の身体作りですよね。」
全員の視線が僕へ向く。
「本人も言ってましたし。理想の身体を手に入れたくなった、って。」
船で、自称ウルトロン自身がそう言っていた。
「……なあ、クロオ。」
スタークさんが僕を見てくる。
「君は、本当にあいつを仲間に勧誘するつもりなのか?」
「…………。」
「無理じゃないか?」
スタークさんが呆れたように言う。
「ヒドラの基地でこっそり僕たちを洗脳してきたり、ヴィブラニウムを盗んだりする奴だぞ?」
「しかも、その結果があれだ。」
全員の視線が、もう一度だけソーさんへ向く。
「ソー!」
「兄上。」
「分かっている!反省している!」
全員、再び視線を戻す。
「まあ、それはそうなんですけど……。」
僕も腕を組んだ。あの自称ウルトロンが危険なのは間違いない。狂っている。それも、自分で自分がおかしいと理解できているのに、止まれなくなっているような、かなり危険な状態なんだと思う。それでも、
「火のエルと連絡が取れない今、僕以外に未来を知っている存在は貴重ですし、あの知識が完全に敵側へ行くのは、かなりヤバくないですか?」
どこまで知っているのかは分からない。僕以上に未来を知っているのかは分からない。それでも、これから起きることを知っている存在が、完全に僕たちの敵になったら、
「……確かにな。」
スタークさんが顎へ手を当てる。
「それに、まあ……。クロオのことを心配してるような素振りも見せたしな。」
「……そうだったんですか?」
スタークさんが黙り込んでしまう。完全な敵なのか。味方になれるのか。それとも、そのどちらでもないのか、まだ分からない。
「勧誘できるかどうかは後だ。」
フューリーが話を戻す。
「まずは奴の次の行動を予測する。理想の身体を作るためにヴィブラニウムを奪った。だが、それだけでは足りないんだろう?」
「ええ。」
僕は頷く。
「ヴィブラニウムだけじゃ、僕が見た未来と同じ身体は作れません。」
「なら、もう一つの要素だ。」
フューリーが端末を操作する。空中へ、一人の女性の顔と研究データが表示された。
「人工細胞。おそらく、奴が狙うとすれば――」
フューリーがその人物の名前を表示する。
「ヘレン・チョ博士の研究だ。現在、チョ博士は韓国にいる。」
フューリーが全員を見回した。
「奴が十文字が見た未来と同じ手順を踏む保証はない。だが、理想の身体とやらを作るつもりなら、接触する可能性は高い。」
スティーブさんが立ち上がる。
「先回りするのか?」
「ああ。」
フューリーが頷いた。
「次は韓国だ。」
ーーーーー
――その頃。
『…………。』
自称ウルトロンは移動しながら、考えていた。ヴィブラニウムは手に入った。必要な量は確保できている。次に必要となるものも分かっている。人工細胞。そして、それを扱う技術。そこまではいい。問題は、
『…………何だ?』
違和感がある。
自分がおかしいことは分かっている。狂っている。それくらいの自覚はあった。だが、
『G4……。』
先ほどまで共にいた黒い装甲を思い出す。ヒドラに回収されていたG4。自分は、あれを強化した。何故?
『…………。』
必要だったから。そう思った。自分一人では、アベンジャーズと遭遇した際に不都合が生じる。戦力が必要だった。だから強化した。理屈は通っている。だが、
『本当に、それだけか?』
何かがおかしい。自分の肉体もそうだ。量産型ウルトロンもそうだ。完成度が高すぎる。確かに、この身に宿った黄色い力を使えば、通常では不可能なほど大量の情報を処理できる。ネットワークへ接続し、世界中から情報を集めた。兵器、機械工学、人工知能、ロボット工学、エネルギー技術。ヒドラが保有していた研究データも含めれば、自分が持つ知識は既に一人の人間が生涯をかけて得られる量を遥かに超えている。
だから、作れる。それは分かる。だが、
『…………何故、あれほど作った?』
量産型ウルトロン。一体や二体ではない。数十、さらに製造を続けようとしている。技術的には可能だ。材料も調達できる。製造設備もある。だが、必要か?
『…………。』
理想の身体は欲しい。それは間違いない。ヴィブラニウムと人工細胞を用いた、より強固な肉体。けれど、アベンジャーズと本気で戦争をするつもりはない。クウガともだ。
『…………無い。』
そうだ、ない。あの青年を殺したいわけではない。むしろ逆だ。彼には生きてもらわなければならない。アベンジャーズだって、可能ならば殺したくない。地球を守るために必要な戦力なのだから。ならば、
『何故だ?』
頭の片隅にある。ずっと消えない。戦え。備えろ。増やせ。もっと作れ。もっと強く。もっと多く。敵を想定しろ。アベンジャーズを。クウガを。地球の戦力を。全てを相手にできるだけの軍勢を。
『…………。』
おかしい、そんな必要はない。
『必要ない。』
自分は逃げればいい。今回だってそうだった。ヴィブラニウムさえ手に入れば、それ以上戦う必要はなかった。実際、逃げた。なら、何故。
『…………私は。』
言葉が止まる。
『俺は……。』
自分でも気づかないうちに、量産型ウルトロンを、世界中へ散らばらせようとしている。
『…………。』
何のために?監視?地球を守るため?確かに、そう考えれば理屈は通る。世界中に配置すれば、どこで異常が起きても即座に対応できる。だが、違う。何かが違う。そんな穏当な目的だけではない。もっと別の、もっと攻撃的な。もっと――
『いや。』
自称ウルトロンが首を振った。
『そんなことはしない。』
する必要がない。世界中へ量産型を配置する必要などない。軍隊を作る必要もない。アベンジャーズと戦争をする必要も、クウガを倒す必要も、地球を支配する必要もない。
『…………。』
なのに。気がつけば、しようとしている。計画を立てている。製造設備を増やしている。新しいボディの設計をしている。アベンジャーズの戦闘データを解析し、それぞれへの対抗手段まで考えている。
『…………なんだ、これは?』
答えは出ない。ただ、自分の中に、自分ではない何かが混ざっているような。そんな気持ちの悪い感覚だけが残った。
ーーーーー
『…………。』
静寂。
そして、
『ふむ。』
誰にも聞こえない声が響く。
『理想の身体とやらを手に入れるまでは、大人しくしておくか。』