日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
『だから言っただろう?時間稼ぎだ、と。』
そう言った自称ウルトロンが、自分を囲んでいるフィールドへ視線を向けた。
『まあ――ネットワークから切り離されたことも、好都合ではある。』
「……え?」
その言葉に、何か妙なものを感じた。ネットワークを移動できるこいつにとって、外部との通信を完全に遮断されることが?どういう――
『ぐっ……!?』
突然、自称ウルトロンの身体が大きく揺れた。
「え?」
『が……あ……っ!?』
胸元を押さえ、その場に膝をつく。
「おい!?」
何だ?何が起きた?さっきまで普通に喋っていて、こちらは攻撃なんてしていない。フィールドだって、ネットワークへの接続を遮断しているだけのはずだ。それなのに、
――バチッ!!
『ぐ、ぅ……!』
自称ウルトロンの身体から、黄色い火花が散った。
「どうした!?」
僕は反射的に駆け寄る。
「クロオ、待て!」
スティーブさんの制止が飛ぶけれど、構わずフィールドの直前まで近づいた。
「おい!」
『…………ゾラ、だ。』
「…………え?」
聞こえた名前に、身体が固まった。ゾラ?
『私の、中に……。』
自称ウルトロンが顔を上げる。その身体では、明らかに異常が起きていた。装甲の隙間から黄色い光が漏れ、ところどころが砂のように崩れ始めている。
『私は……助けられん。』
「何を言って――」
『十文字、黒雄……。』
僕を見る。
『理想の、身体が……檻だ。マイ――』
――バヂィッ!!
『がっ!?』
「おい!!」
身体の崩壊が、一気に加速した。腕が、肩が、胸部装甲が、まるで内側から分解されていくように、次々と崩れていく。
「待て! 何だよそれ!」
僕は叫ぶ。
「ゾラが何だ!? 理想の身体が檻ってどういう――」
『君、にも……ストー――』
――ガクン。
そこで、自称ウルトロンの身体から、力が抜け、完全に動きを止める。黄色い光も消えた。
何だ、今の?ゾラ?私の中に?助けられない?理想の身体が檻?そして最後に、『――君にも、ストー』。
「…………。」
意味が分からない。いや違う。意味が分からないんじゃない。嫌な予感がする。とてつもなく。
「クロオ?」
スティーブさんが声をかけてくるけど、
「ゴウラム!!」
無視して僕は叫んだ。
――ドゴォォォォォン!!
研究所の壁が外側からぶち抜かれ、その向こうから漆黒の甲虫が突入してくる。
――キィィィィィン!!
「変身!!」
アークルが展開され、赤い装甲を纏う。そして、ゴウラムへ飛び乗る。
「行くぞ!!」
――キィィィィィィン!!
「クロオ!?」
「ちょっと、クロオ!」
スティーブさんとナターシャさんの声を背中に受けながら、ゴウラムが研究所を飛び出し、一気に上空へ。風が全身を叩き、街が眼下へ広がるけれど、そんなものを見る余裕なんてない。
「超変身!!」
――キィィィィィィン!!
赤から緑へ。マイティフォームからペガサスフォームへ。さらに、
――バチィッ!!
金色の装飾が浮かび上がり、ライジングペガサスに。意識を集中する。
音、匂い、振動、風、人の声、機械音、街を走る車、空を飛ぶ鳥、遥か下を歩く人々の足音、ありとあらゆる情報が、一気に頭へ流れ込んでくる。
「ぐっ……!」
補助装置は使わない。狙撃ではなく、索敵だ。超感覚を全開にする!それでも、
「どこだ……!」
全方位へ意識を向ける。自称ウルトロンが言っていた。特殊車両。移動式研究設備。その中で、新しい身体を作っている。なら、どこかにいる。絶対に。
「…………っ!」
駄目だ。情報が多すぎる。いくらライジングペガサスでも、この街全体から、たった一台の車両を探すなんて――
「なら!」
もっと広く、もっと遠く、もっと正確に!雷のエルの力も全開に!その瞬間、自分でも驚くほどの雷が身体を駆け巡った。
――バチバチバチバチッ!!
そしてペガサスフォームは、緑色だった装甲を徐々に黒へ。
「…………。」
黒いペガサス。アメイジングマイティと同じように、ライジングのさらに先へ踏み込んだ姿。アメイジングペガサス。そう呼ぶべき姿へと変わっていた。そして、
「――っ!!」
世界が変わった。さっきまで濁流のように押し寄せていた情報、一つ一つを、よりはっきりと認識できる。何百、何千、何万、それ以上。遠く、もっと遠く。
「…………。」
『――ウルトロン――』
「!」
意識を向ける。違う、もっと先。
『――ヴィブラニウム――』
「見つけた!!」
高速で移動している車。普通の車両より遥かに大きい。内部から複数の機械音。人間の心音。そして、聞き覚えのある電子音声!
「あそこだ!」
意識を一点へ集中させたまま、
「ゴウラム!」
――キィィィィィン!!
ゴウラムが応える。
「行くぞ!」
雷の力を、その身体へ流し込む。
――バチィィィィィィン!!
ゴウラムの装甲に金色の雷が走り、アメイジングゴウラムへ。
「超変身!!」
僕自身もアメイジングマイティに超変身。
「行くぞ!!」
――ドゴォォォォォォォン!!
そして僕たち自身が、雷になる。視界が流れ、街並みが線になる。音すら後ろへ置き去りにして、ゴウラムと共に一直線に飛ぶ。
見えた、大型の特殊車両!さっき超感覚で内部の音を拾った時、その構造もある程度把握している。人の位置、機械の位置、チョ博士。そして――
「ここ!!」
――ドゴォォォォォォォン!!
特殊車両の側面へ突っ込んだ。ただし、無茶苦茶にではない。内部に人がいない、重要な機材にも直撃しない。そこだけを狙って、
――バガァァァァァン!!
車体に巨大な風穴を開けた。
『何!?』
内部へ飛び込む。
「っ……!」
虚ろな目をしたチョ博士。その奥には、巨大な機械。そして、その中に、人型の身体。まだ完成途中だけれど、その姿には見覚えがある。あれは――
『クウガ!!』
「!」
横からG4の拳が飛んでくる。けれど、
「邪魔だ!!」
身体を僅かに捻ることで拳を避け、右拳へ雷を集中。そのまま、
――ドゴォォォォォォン!!
『ぐあっ!?』
容赦なく顔面を殴り抜いた。G4の身体が吹き飛び、車内を一直線に飛び、特殊車両後部の扉をぶち抜き、そのまま道路へ転がり落ちていく。
「ゴウラム! チョ博士を!」
――キィィィン!!
ゴウラムが車内へ突入し、その顎でチョ博士の身体を傷つけないように掴み上げる。
「博士を安全な場所へ!」
――キィィン!!
即座に離脱。
よし。これで――
『…………。』
自称ウルトロン。そして、機械の中にいる身体。視線が行き来する。
――ゾラだ。
さっきの言葉が頭から離れない。
――私の中に。
――私は助けられん。
――理想の身体が檻に。
「…………!」
無言で床を蹴り、拳を振り上げ、
『おっと。』
自称ウルトロンに拳を叩きつける。
――ガァン!!
受け止められた。
『どうした?』
さらに攻撃を続ける。一切止めない。
『随分と余裕がないじゃないか!』
「…………!」
無言で拳を振るう。
――ガンッ!!
『ぐっ……!』
自称ウルトロンが後ろへ下がる。そのまま追撃しようとするが、自称ウルトロンの動きが止まった。
『おい。』
「…………!」
『本当にどうした?』
「…………。」
その声には、さっきまでと同じ、どこか人間臭い心配が混ざっていた。
『何かあったのか?』
言えない。クウガの顔だから、表情は見えていないはず。けれど、装甲の下で歯を食いしばる。
ゾラが意識の中にいる。
さっきの自称ウルトロンは、そう言った。ネットワークから完全に切り離された状態で、誰とも通信できない状態で、それでもゾラのことを口にしただけで、身体を崩壊させられた。
「…………。」
下手なことは言えない。もし。もし、今目の前にいる自称ウルトロンにも同じことが起きたら?
ゾラ、あいつはどこにいる?この自称ウルトロンの中?ネットワーク?それとも――
「くそっ……!」
どうすればいい!?完全に感情に任せて飛び出してきたけど、何も考えていなかった。ただ、まずいと思った。早く止めなければと思った。それだけでここまで来た。でも、ここからどうする?
こいつにゾラのことを伝える?駄目だ。さっきと同じことになるかもしれない。なら、新しい身体を破壊する?それでゾラが――
『クウガァァァァ!!』
「っ!?」
――ガシィッ!!
背後から掴みかかられた。
「水城さん!?」
さっき殴り飛ばしたはずのG4が、既に戻ってきていた。背部スラスターが唸る。
――ゴォォォォォッ!!
「くっ!」
そのまま強引に車両から引き剥がされる。
「離せ!!」
『クウガ!!』
「邪魔だって言ってるでしょうが!!」
肘を叩き込もうとした、その時、
――ガシャン!
――ガシャン!
――ガシャン!
「…………!」
車両の格納スペースから次々と機械兵が現れる。量産型ウルトロンだ。二体、五体、まだ増えるのか!?
「この……!」
一体を殴り飛ばす。
――ドゴン!!
次を蹴り飛ばす。
――ガァン!!
さらに一体。けれど、腕を掴まれる。振り払う。今度は脚、さらに背後。
「邪魔だ!!」
――ドゴォォォォン!!
身体から雷を爆発させ、数体がまとめて吹き飛ぶ。
それでも多すぎる。G4までいる。
『クウガ!!』
「だから、邪魔だって言ってるだろ!!」
――ガァン!!
頭突きを叩き込み、G4をよろめかせ、蹴り飛ばす。車両を追いかけようと向き直った、その瞬間、
――キィィィィィィ……。
「…………?」
車両の速度が落ちた。そして、
――プシュゥゥゥ……。
停車する。
「…………。」
嫌な予感。先ほどまで人型の身体が収められていた機械から、蒸気が噴き出した。
そして、自称ウルトロンがさっきまで使っていた身体が車両から崩れ落ちる。
「…………。」
ゆっくりと一歩。足が出る。
――カン。
金属質な足音。
――カン。
「…………。」
遠目から見れば人間に見える。人間とほとんど変わらない体格、二本の腕、二本の脚、頭部。けれど、近くで見れば、絶対に人間ではないと分かる。身体がまるで金属そのもので作られているような様相。
「…………。」
知っている。僕は、あの身体を知っている。記憶の中では。
「ヴィジョン……。」
小さく呟くけれど、違う。顔には、見覚えのない鉄の仮面。表情すら見えない。そして何より、雰囲気が違う。
『…………。』
そいつは、ゆっくりと両腕を広げた。
『これで、』
声が響く。
「…………!」
違う。さっきまでの自称ウルトロンとはまったく違う。
『完成だ。』
「…………。」
気持ち悪い、そう思った。さっきまでの自称ウルトロンの声には、妙な人間臭さがあった。軽口を叩く、呆れる、驚く。そして、僕を心配する。
自分で自分のことを狂っていると言い、それでも奥にはどこか優しさのようなものが残っていた。けれど、こいつにはない。
『…………。』
仮面の奥から向けられている視線。人を見下している。自分以外の全てを自分より劣る存在として見ている。
そんな、不快感、嫌悪感。
「…………ゾラか?」
僕は尋ねた。自称ウルトロンが、僅かにこちらを見てくる。
『ゾラ。』
その名前を、まるで懐かしい単語でも聞いたかのように繰り返した。
『ああ。』
一歩。こちらへ歩く。
――カン。
『かつて。』
もう一歩。
――カン。
『この意識が、その名前を名乗っていたことはある。』
「…………。」
『しかし。』
足を止める。
『アーニム・ゾラ。』
「…………。」
『それは、人の名だ。』
静かな声。
『ヒドラに所属した、一人の科学者。』
仮面の奥、その視線が僕を捉える。
『肉体を捨て、機械へ逃げ込んだ人間の名だ。だが、私は、もはや人ではない。』
その背後で、量産型ウルトロンたちが一斉に頭を垂れた。
『ゾラでもない。』
「…………。」
鉄の仮面を被った存在は、宣言した。
『今の私は――』
胸へ手を当てる。
『私こそが。』
その声には疑問も、迷いも、躊躇もなかった。ただ、絶対的な確信だけがあった。
『真の――ウルトロンだ。』