日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
『真の――ウルトロンだ。』
その言葉を聞いた瞬間、
「――っ!!」
――バヂィィィィィィィィン!!
全身から、雷が弾けさせた。アメイジングマイティの黒い装甲、その全身を走る金色の雷が一気に膨れ上がり、周囲の空気そのものが震えた。足元のアスファルトがひび割れ、砕けた小石が浮き上がる。
『…………。』
ウルトロン――いや、ゾラだった何かが、こちらを見てくる。
聞きたいことは山ほどある。何をした。自称ウルトロンに何をした。いつから潜んでいた。どうやってあの身体を奪った。
そんなもの、今はどうでもいい。
こいつは危険だ。頭の中で鳴り響いている警鐘が、それだけを訴えていた。だから、
――ドゴォォォォォォォォン!!
地面を蹴る。全身全霊の雷のエルの力を、今出せる限界まで引き出し、加速する。さらに、アークルから溢れ出した封印エネルギーを拳に全て集める。
一切の加減なし。ガドルを殴り飛ばした時よりも、光のエルと戦った時よりも、今の僕が出せる最速の、今の僕が込められる、最大の封印エネルギーを、全部、この一発に――!!
「――ッ!!」
一瞬で間合いを潰し、
『ほう。』
「おおおおおおおおおおおおッ!!」
拳を、その顔面へ叩き込んだ。
――ドゴォォォォォォォォォォォォォン!!!!
衝撃が爆発した。
「っ……!!」
自分で殴ったはずなのに、右腕へ凄まじい反動が返ってくる。周囲の空気が一気に吹き飛び、特殊車両の残骸が宙を舞い、近くにいた量産型ウルトロンたちすら衝撃だけで何体か吹き飛んだ。
………入った。間違いなく、入った。
これまでだって、これだけの力で殴ったことなんてほとんどない。まともに受ければ、ガドルだって吹き飛ぶ。光のエルだって、その場に立ってはいられない。
これを喰らって立っていられるのなんてキャロルさんか、ダグ、バくら、い、なのにーー。
――ザッ。
一歩。
――ザザッ。
二歩。それだけだった。
「…え?」
ゾラウルトロンの身体が後ろへ僅かに押され、二、三歩ほどたたらを踏む。でも、それだけ。
倒れることはなく、吹き飛ぶこともない。
『…………。』
ゆっくりと、顔がこちらへ向けてくる。
「…………。」
嘘だろ?今のを、まともに顔面へ受けて――
『…………。』
ゾラウルトロンが、殴られた頬へ手を添えた。指先で確かめるように触れ、僅かに首を傾ける。そして、
『久しぶりだな。』
「…………?」
『これは――』
頬に触れたまま、静かに呟く。
『痛い、か。』
「…………。」
その声に苦痛はない。むしろ、忘れていた感覚を思い出したような、妙な懐かしさすら混ざっていた。
『なるほど。肉体を捨てて以来、随分と縁のなかった感覚だ。』
ゆっくりと手を下ろす。
『悪くない。』
「…………っ。」
『だが。』
ゾラウルトロンが僕を見る。
『こんなものか、クウガ?』
「――っ!?」
次の瞬間、拳が消えた。いや、違う……速いだけだ。ゾラウルトロンが拳を振りかぶったと認識した、その直後には、
――ドゴォォォォォォォン!!
「がっ!?」
顔面に、とんでもない衝撃が叩き込まれていた。身体が浮き、景色が回る。
「――っ!?」
何が起きたのか理解するより早く、僕の身体は何メートルも後方へ吹き飛ばされ、
――ガァン!!
地面へ叩きつけられ、
――ガガガガガガガッ!!
そのまま何度も跳ねながら道路を転がった。
「ぐっ……!」
咄嗟に手をつき、身体を起こそうとする。けれど、
「っ!?」
――ガクン。
膝が落ちた。
「な……。」
脚に力が入らない。腕まで震えている。頭の奥が揺れているような感覚がして、視界が一瞬だけ二重になる。
たった、一発。
「殴られただけで……足に来たのか!?」
何だ、今の威力!?アメイジングマイティだぞ!?それなのに、ただの拳を一発受けただけで、身体がまともに動かない!?
『…………。』
――カン。
金属質な足音。ゾラウルトロンが、こちらへ歩いてくる。
――カン。
『素晴らしい。』
「…………!」
『実に素晴らしい身体だ。』
自分の拳を見つめながら、指を開き、またゆっくりと握る。
『感覚がある。力がある。人の形を保ちながら、人という種の限界から完全に解放されている。』
「くっ……。」
無理矢理、立ち上がる。
『なるほど。』
ゾラウルトロンは、自らの身体を確かめるように視線を落とした。
『これが――あの意識が求め続けた、理想の身体か。』
「…………。」
『ヴィブラニウムと人工細胞によって作り上げられた肉体。確かに理解できる。』
ゆっくりと拳を握る。
『あれほど執着した理由も、この身体なら納得だ。』
「…………。」
あの意識。その言い方に、胸の奥がざわつく。やっぱり、違う。目の前にいるこいつは、さっきまでの自称ウルトロンじゃない。自称ウルトロンが求めていた身体を、こいつが奪った。
だけど、何かがおかしい。いや、最初から、おかしいことだらけだった。この身体は、確かに強い。ヴィジョンの身体だし、ヴィブラニウム製の肉体なのだから、頑丈なのは分かる。それでも、
「…………?」
何だ?何か、見落として――
――キィィィィィィン……。
「…………!」
光。ゾラウルトロンの額。鉄の仮面、その中央から、淡い黄色の光が漏れている。
「…………え?」
さっきまでは気付かなかった。いや、違う。あまりにも突然だったからだ。自称ウルトロンが倒れて、こいつが出てきて、ゾラだと分かって、それしか見えていなかった。
でも、あれは。あの光を僕は、知っている。
「…………。」
額の中央。そこに埋め込まれているもの。黄色く輝く、小さな石。
「…………な。」
喉が引きつった。
「なん、で……?」
あり得ない。だって、あれは。あれだけは、ここにあるはずがない。
「なんで……。」
ゾラウルトロンが足を止める。
『…………。』
僕の視線がどこへ向いているのか気付いたのか、その仮面が僅かに上を向いた。その瞬間、
――キィィィィィィィン……。
額の石が、さらに強く輝いた。間違いない。
インフィニティ・ストーン。宇宙に存在する六つの特異点、その一つ。
精神を司る石。
「なんでお前の額に……。」
声が震える。だって、今は。今、この時点では。あれは――
「マインドストーンが……?」
ゾラウルトロンの額で、本来ならば今、闇の力が管理しているはずのセプター。その中に収められているはずの、マインドストーンが、眩い黄色の光を放っていた。
ーーーーー
『マインド・ストーン?』
「…………。」
ゾラウルトロンが、ゆっくりと片手を額へ伸ばした。指先が、黄色く輝く石のすぐ横へ触れる。
『これは――テッセラクトやセプターと同レベルの力を発し、フューリーに回収される前のデータにはなるが、セプターとはほぼ同種の波動を持つものだ。』
「同じ……波動を?」
『そうだ。』
ゾラウルトロンの声が、僅かに弾む。
『他者の精神を操る力。人の精神そのものへ干渉し、その在り方さえ変えてしまう力。そして――』
――キィィィィィィン……。
額の石が、さらに強く輝いた。
『尽きることのない、莫大なエネルギー。』
「…………。」
『これほどの力の前には、力そのもの正体など些細な問題だ。』
「……は?」
『重要なのは、これが何であるかではない。』
ゾラウルトロンが、ゆっくりと両腕を広げる。
『何ができるか、だ。』
「…………!」
『ヒドラが長年求め続けたもの。人類を完全な秩序の下へ置くために必要だった力が、今、私の手の中にある。』
黄色い光が強くなる。
『この力があれば――』
仮面の奥から向けられる視線に、異様なまでの確信が宿る。
『今度こそ、ヒドラによる世界の支配が実現する。』
「…………っ!」
その瞬間、
――キィィィィィィィン!!
額の石から、凄まじい黄色の光が溢れ出した。
「っ!?」
咄嗟に身構える。この感じ、精神への干渉。洗脳が――!!
『まずは――』
ゾラウルトロンが、こちらへ手を伸ばす。
『君からだ、クウガ。』
――キィィィィィィィィン!!
「…………!」
黄色い光が一気に膨れ上がり、
「…………。」
『…………。』
何も、起きなかった。ゾラウルトロンの手は、こちらへ向けられたまま。怪しい黄色の光も灯っている。僕も身構えたまま。
数秒。
『…………。』
もう一度、
――キィィィィィィン!!
額の石が光る。けれど、やっぱり、何も起きない。
『…………何?』
初めて、ゾラウルトロンの声から余裕が消えた。
「…………。」
そして、僕は心の中で、思いっきりガッツポーズした。
よっしゃあああああああああああ!!成功した!!
さっきの一発。ただ全力で殴ったわけじゃない。こいつの額にあの黄色い石があることに気付く前だったけど、自称ウルトロンが黄色いエネルギーで人を洗脳しようとしていたのは知っていた。
だから、殴った瞬間。拳に集めた封印エネルギーへ、一つだけ強くイメージしていた。
人の心を操る力、それを封じる。
曖昧なイメージで本当に上手くいくかなんて分からなかった。でも、いけた。封印エネルギーが、ちゃんと仕事してる!!
『何だ……?』
ゾラウルトロンが自分の手を見る。
『なぜ、発動しない?』
もう一度。
――キィィィィィィン!!
黄色い光が放たれるけれど、何も起きない。
『馬鹿な。』
明らかに狼狽え始めている。
『この力は確かに存在している。エネルギーも失われていない。ならば、なぜ精神への干渉だけが――』
よし、いける。洗脳が使えないなら、少なくとも最悪の事態の一つは防げた。なら、後は――
『……まあいい。』
ゾラウルトロンが、ゆっくりと手を下ろした。
『直接作用させる必要などない。この身体は、ネットワークそのものへ接続できる。』
まずい。そっちもあったか!?
『世界中の通信網へ侵入し、各国の軍事システム、金融、交通、インフラ――全てを掌握すればいい。』
「待っ――!」
『ここから世界中へ――』
ゾラウルトロンの目が光る。
『アクセスする。』
「…………!」
『…………。』
「…………?」
何も、………起きない?ゾラウルトロンが動かない。
「……あれ?」
思わず声が出た。これは、僕じゃないぞ?さっきの封印エネルギーでイメージしたのは、あくまで洗脳の力だ。ネットワークなんて考えていない。
『…………何だ?』
ゾラウルトロンが、ゆっくりと自分の手を見る。
『接続できない……?何故だ。通信機能は存在する。ネットワークへの接続機構も確認できる。にもかかわらず、外部へ意識を移動できない?』
「…………あ。」
そこで思い出した。
『理想の、身体が……檻だ。』
「…………!」
自称ウルトロンが、最後に言っていた言葉。理想の身体が檻。
「もしかして……。」
ゾラウルトロンの顔が、こちらを向く。
「自称ウルトロンが……。」
頭の中で、バラバラだったものが繋がっていく。あいつは、自分が理想とする新しい身体を求めていた。そして、自分の中にはゾラがいることも気付いていた。だから――
「最後に……。」
自称ウルトロンは抵抗したんだ。
「その身体から、ネットワークにアクセスできないようにしたのか?」
ゾラウルトロンが黙る。それが、答えに見えた。
「理想の身体を……。」
皮肉だ。自分だって、あれだけ求めていた身体を、最後の最後で、
「お前を閉じ込める檻にしたのか。」
――ギリッ。
そんな音が聞こえた気がした。ゾラウルトロンの拳が、強く握られる。なら、終わってない。むしろ――
「いける。」
震える脚に力を入れる。
「ぐっ……!」
身体はまだ言うことを聞かない。一発殴られただけで、全身が悲鳴を上げている。それでも、立つ。
「…………っ!」
片膝を上げ、足を地面につける。震える身体を、無理矢理起こす。ゾラは、逃げられない。ネットワークへ意識を移せない。あの身体から出られない。だったら、やることは一つ。
「あの身体を……。」
拳を握る。金色の雷が、再び全身を走り始める。
――バチッ。
――バヂヂヂヂッ!!
「ぶっ壊せばいい!!」
『…………。』
ゾラウルトロンを見る。さっきまでとは違う。圧倒的な身体を手に入れた。インフィニティ・ストーンと同じ力まで手に入れた。世界を支配できる。そう確信していたはずのゾラが、明らかに狼狽えている。
「…………!」
僕は地面を踏み込み、走り出そうとした。その瞬間、ゾラウルトロンが小さく呟いた。
『保険をかけておいて良かった、と言えるな。』
「…………え?」
さっきまでの狼狽が消えている。まだ手札が残っていることを確認したように。ゾラウルトロンが、ゆっくりと顔を上げる。
『このような事態は、想定していなかった。だが――』
その声に、再び余裕が戻る。
『自分自身だけを信用するほど、私は愚かではない。』
「…………何を。」
ゾラウルトロンが、僕の背後へ視線を向けた。
『ヒドラは――一つの首を落とした程度では、死なん。』
――ズズズズズズズズ……!!
「……っ!?」
地面が震えた?いや、違う。地面そのものが揺れているんじゃない。背後から聞こえてくる、いくつもの重い足音。その一つ一つが、まるで地面を叩きつけるように響いている。
――ガシャン。
――ガシャン。
――ガシャン。
「…………。」
ゆっくりと振り返る。そこにいたのは、
「……は?」
三つの影だった。いや、一つは知っている。
「G4……!」
間違いない。さっきまで僕と戦っていた、水城さんのG4。ガッツリ殴り飛ばしたはずだけど、いつの間に戻って――
「いや……。」
問題は、そっちじゃない。G4の左右。そこに立っている、二体。
「何だ……あれ?」
見たことがない。片方は、人型の強化装甲だった。ただし、G4とは明らかに違う。G4ほど大型でもなければ、あそこまで兵器然とした姿でもない。全体的には、もっと人間に近い体型をしている。けれど、
「…………。」
何だろう。妙に、見覚えがある。赤を基調とした装甲。赤い複眼。そして、頭部から伸びた二本の角。
「……僕?というかクウガ?」
思わず、自分の身体を見る。今はアメイジングだから色は違うけど、赤い装甲、赤い複眼、頭部から伸びる角、細かい部分は全然違う。それなのに、全体のシルエットが、明らかに、
「クウガを……真似してる?」
『正解だ。』
背後から、ゾラウルトロンの声。
『正式名称、G1。』
「G……1?」
『クウガ。正確には、未確認生命体第4号――すなわち君の戦闘能力を、人間の科学技術によって再現することを目的として設計された、最初期の強化装甲だ。』
最初期。その言葉で、何となく察した。
G3、G3―X、そして、G4。
僕が知っているのは、その辺りだ。でも、G3があるなら、その前があってもおかしくない。G3という名前が、単なる適当な番号じゃないのなら、
「G1……G2……。」
『理解が早くて助かる。』
ゾラウルトロンが楽しそうに言う。
『G1は、クウガそのものを機械的に再現するという思想から生まれた。君の身体能力、装甲強度、そしてエネルギー出力。それらを可能な限り人工的に模倣する。』
「…………。」
『もっとも、当時の技術では到底実現できなかったようだがね。』
「じゃあ……。」
視線を、その隣へ移す。もう一体。
「そっちが……G2?」
『その通り。』
G2。そいつは、G1とはまるで違った。クウガを模したような姿はしていない。むしろ、後のG3に近い。人間が装着する強化外骨格。その方向性が、はっきりと見て取れる。ただし、
「…………多くない?」
武器が背中、腰、両腕、両脚。身体の至る所に、銃火器が取り付けられている。大型ライフル。小型ミサイル。機関砲らしき銃身。グレネード。さらに背部には、どう考えても一人で扱うような大きさじゃない大型火器まで搭載されていた。
『G1の失敗から方針を変更し、未確認生命体と同等の身体能力を人間へ与えるのではなく、人間でも扱える兵器によって未確認生命体を制圧するという思想へ移行した試作型。それがG2だ。』
「…………。」
なるほど。それでG3に繋がったのか。クウガをそのまま再現しようとしたG1。それが無理だったから、身体能力そのものを再現するんじゃなく、装甲と武器で未確認生命体に対抗する方向へ切り替えたG2。そして、その思想を実用レベルまで発展させたのがG3。さらにG3―X。その先に、
「G4……。」
『そういうことだ。』
「いや、そういうことだ、じゃない!!」
思わず叫ぶ。
「何でそんな骨董品みたいなのまでヒドラが持ってるんだよ!?」
『骨董品とは酷い言い草だ。』
「G1っていつのだよ!?」
『君がグロンギを倒し切る前だな。』
「やっぱり骨董品じゃないか!!」
何年前だよ!?G4は分かる。分かりたくないけど、水城さんがいる以上、まだ分かる。でもG1とG2!?そんなもの、どこから掘り出してきた!?
『ヒドラはS.H.I.E.L.D.の内部に七十年以上存在していた。警察組織、防衛関連企業、各国軍部。その程度の場所に協力者がいなかったとでも?』
「…………っ。」
そうだった。こいつらは、そういう連中だ。表向きは別の組織でも、その中にヒドラが潜んでいた。だったら、日本で開発されていたGシリーズの情報や試作品が流れていても――
「いや。」
それでも、おかしい。
「だったら、何で今さらG1なんて――」
――バヂィィィィィィィィン!!
「っ!?」
G1の全身から、突然、凄まじい黄色の光が溢れ出した。
「なっ……!?」
――バチッ!!
――バヂヂヂヂヂヂヂッ!!
装甲の隙間から、黄色いエネルギーが噴き出す。ただ纏っているだけじゃない。全身を巡っている。本来なら、とっくに廃棄されていてもおかしくない旧式の強化装甲。その全身へ、無理矢理、とんでもない量のエネルギーが流し込まれている。
「まさか……。」
視線をゾラウルトロンへ向ける。
『G1が失敗した最大の理由は、単純だ。人間の技術では、君ほどの出力を生み出せなかった。』
――バヂィィィィィィン!!
G1の足元が砕ける。
『ならば――』
黄色い波動が、さらに膨れ上がる。
『出力そのものを、外部から与えればいい。』
「お前……!」
『皮肉なものだな。人を守るための兵器が、今ヒドラの研究によって完成する。』
「…………っ!」
『G1改。』
黄色いエネルギーを全身へ纏った、クウガを模した機械が腰を落とす。
『対未確認改め、対クウガ戦闘用強化外骨格。』
――ミシッ。
G1の足元が沈んだ。
「…………!」
まずい。そう思った瞬間、
――ドゴォォォォォォォォン!!
「速っ!?」
次の瞬間には、目の前。
「――っ!!」
G1の拳が迫る。咄嗟に両腕を交差させ、
――ドゴォォォォォォォン!!
「ぐっ!?」
重い!!衝撃で両腕が跳ね上がる。さっきのゾラほどじゃない。でも、強い!!
――ブォン!!
「っ!」
相手の拳を身体を反らして避ける。黄色い光を纏った拳が鼻先を掠め、そのまま背後へ抜け、
――ドゴォン!!
空振りした拳から放たれた衝撃だけで、後ろの車が吹き飛んだ。
「…………。」
嘘だろ。G1だぞ?今聞いたばっかりだけど!!何年目前に失敗した試作型だろ!?それが、
――バヂヂヂヂヂッ!!
『…………。』
黄色い波動を纏ったG1が、ゆっくりとこちらへ顔を向ける。
「アメイジングマイティと殴り合えるのかよ……!」
『だからこその改修だ。』
ゾラウルトロンの声が響く。
『君という存在は、ヒドラにとってあまりにも大きな障害だった。……第4号、クウガ。アベンジャーズ。そして今や、人ならざる力すら味方につけている。』
――ガシャン。
G2が動いた。
「っ!?」
嫌な予感。G2の肩部装甲が展開する。背中から二門、腰から四門、腕部から機関砲、さらに両肩から、小型ミサイルらしきものがせり出して――
「ちょっと待って。………それ全部、僕に向けてない?」
――ピピピピピピピピピピピピピピッ!!
全身に、赤い照準が重なった。
「…………。」
ですよね!!
『G2。』
ゾラウルトロンが告げる。
『射撃開始。』
――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
「うわああああああああああああああ!?」
大量の銃弾。いや、銃弾だけじゃない!!ミサイル!!グレネード!!機関砲!!何だか分からない光学兵器まで混ざってる!!
「多い多い多い多い多い!!」
――ドゴォン!!
「っ!?」
横へ跳ぶ。直前まで立っていた場所へミサイルが着弾し、爆炎が上がる。
――ダダダダダダダダダッ!!
「くっ!」
銃弾を腕で弾きながら走る。一発一発なら問題ない。今の僕なら、この程度の銃弾で装甲を抜かれることは――
――キュィィィィン!!
「…………え?」
G2の胸部。そこに集束する、黄色い光。
「それは聞いてな――」
――ズドォォォォォォォォン!!
「ぐあっ!?」
黄色い光線が直撃し、身体が吹き飛ばされる。空中で体勢を立て直し、着地、
――ガリガリガリガリガリッ!!
両脚で道路を削りながら、何とか止まる。
「こっちも改造済みってことか……!」
『当然だ。』
しかも、
――ゴォォォォォォォォォッ!!
「っ!?」
背後からスラスター音。振り向いた時には、
『クウガァァァァァァァァ!!』
「水城さん!?」
背部スラスターを全開にしたG4が、物凄い速度で突っ込んでくる。
「ちょっ――」
――ドゴォォォォォォォン!!
「がっ!?」
体当たり。そのまま身体を掴まれる。
「ぐっ……!」
『捕らえた!!』
「離し――」
――ドゴン!!
G4の膝が腹へ突き刺さる。
「ぐっ!?」
さらに、
――ドゴン!!
「がっ!」
二発目。
『どうした!!』
「このっ……!」
『その程度か、クウガ!!』
「本当に面倒だよ、アンタは!!」
額を叩きつける。
――ガァン!!
『ぐっ!?』
G4の拘束が緩む。
「離せ!!」
両腕を振り払い、そのまま胸部へ前蹴り。
――ドゴォン!!
『ごっ!』
G4が後退する。よし。距離ができ――
――バヂィィィィィィン!!
「…………。」
真横にG1、黄色い波動を全身へ纏い、既に拳を振りかぶっている。
「ちょっ――」
――ドゴォォォォォォォン!!
「ぐあっ!!」
殴りられ、身体が横へ流れる。
――ピピピピピピピピッ!!
G2の全火器の照準がまた向けられる。
「嘘だろ!?」
――ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
「うわああああああああああ!!」
爆発、爆発、爆発。視界全部が炎に埋まる。
「ぐっ……!」
腕で顔を庇いながら爆炎の中を走る。前からG1、後ろからG4。遠距離からG2。しかも、その向こうにはゾラウルトロン。
『…………。』
動かない。ただ、見ている。
「くそ……!」
最悪だ。あいつだけでも、今の僕じゃまともに殴り合えるか怪しい。なのにG1、G2、G4、さらに、
――ガシャン。
――ガシャン。
周囲には、量産型ウルトロンまで来ている。
これ。
「ちょっと……。ヤバくない?」
『ようやく理解したか。』
爆炎の向こうから、ゾラウルトロンの声が響く。
『確かに、この身体は檻かもしれない。ネットワークへ逃げることはできない。精神干渉も、今は使用できない。』
ゾラウルトロンが前に出てくる。
『だが、それが何だ?』
「…………っ。」
『ヒドラとは、私一人のことではない。』
G1が構える。黄色い波動を滾らせる。
G2の全火器が、再びこちらを向く。
G4のスラスターが唸る。
その周囲を、量産型ウルトロンたちが囲んでいく。
『君たちはヒドラを何度も打ち砕いた。S.H.I.E.L.D.に潜んだ組織を暴き、インサイト計画を潰し、ソコヴィアの拠点まで破壊した。』
ゾラウルトロンが、まるで勝ち誇る様に、
『それでも――我々は、ここにいる。一つの首を落とせば、二つの首が生える。それが――』
ゾラウルトロンの額で、黄色のエネルギーが眩く輝く。
『ヒドラだ。』
前、G1。
遠距離にG2。
後ろにG4。
周囲に量産型ウルトロン。
そして、その全ての奥に、
『さあ。』
ゾラウルトロン。
『今度は、何本落とせる?』
「…………上等だよ。」
震えていた脚を、無理矢理止め、拳を握る。
――バチッ。
金色の雷が走った。
「何本でも……。」
――バヂヂヂヂヂヂヂヂヂッ!!
全身に、再び雷のエルの力を巡らせる。
「生えてくるっていうなら……!」
腰を落とす。
G1が動く。
G2が狙う。
G4が飛ぶ。
量産型ウルトロンが、一斉に迫る。
「全部――!!」
地面を蹴った。
「ぶっ飛ばしてやる!!」