日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
――一方、その頃。
「――そこを、どけ!!」
――ガァァァァァァァン!!
スティーブの投げた盾が、量産型ウルトロンの頭部へ真正面から直撃した。
『――ッ!?』
金属製の頭部が大きくひしゃげ、そのまま身体ごと吹き飛ばされる。さらに盾は後方にいたもう一体の胸部へ激突し、そいつまで巻き込みながら壁へ叩きつけられた。
「よし!」
スティーブは跳ね返ってきた盾を受け止め、そのまま走り出す。目指すのは、クロオが向かった方向。既にかなりの時間を取られている。一刻も早く追いつかなければならない。だが、
――ガシャン!!
「っ!?」
横から飛び込んできた量産型ウルトロンが、スティーブの腰へ両腕を回した。
『確保。』
「なっ――!?」
そのまま、
――ガシャン!!
もう一体。
『確保。』
――ガシャン!!
さらに一体。
『確保。』
「待て、何を――」
――ガシャン!!
『確保。』
「多い!!」
四体の量産型ウルトロンが、スティーブの両腕、腰、脚へ一斉にしがみついた。攻撃してこない。殴ってもこない。撃ってもこない。ただ、
「離せ!!」
『拒否。』
「くっ……!」
――ガァン!!
盾を振り回し、一体を吹き飛ばす。すると、
――ガシャン!!
『確保。』
「また来た!?」
吹き飛ばしたそばから、別の一体が同じ場所へしがみついてくる。
「何なんだ、こいつらは!?」
『見りゃ分かるだろ!!』
少し離れた場所から、トニーの怒鳴り声が聞こえた。
『嫌がらせだよ!!』
「それは分かっている!!」
『なら聞くな!!』
「そういう意味じゃない!!」
――ドゴォォォォン!!
トニーが両手のリパルサーを放ち、正面から迫ってきた三体をまとめて吹き飛ばす。
『ったく、さっきから――』
背部スラスターが唸り、空へ上がろうとする。その瞬間、
――ガシャン!!
『…………。』
右脚に一体。
――ガシャン!!
左脚に一体。
――ガシャン!!
腰に一体。
――ガシャン!!
背中に一体。
『…………。』
さらに、
――ガシャン!!
両腕に一体ずつ。
『…………ジャーヴィス。』
『はい、トニー様。』
『現在、僕にくっついている粗大ゴミの数は?』
『六体です。なお、接近中の個体が十一体。』
『何でだよ!? 僕だけ多くないか!?』
『飛行能力を有するトニー様を優先的に拘束しているものと思われます。』
『そこだけ合理的なの腹立つな!!』
――ゴォォォォォォッ!!
スラスターが全開になる。トニーの身体が僅かに浮き上がるが、
『…………重い!!』
量産型ウルトロン六体分の重量が、一気にのしかかる。
『離れろ!!』
――ドォン!!
肩部から小型ミサイルを発射し、近くの地面へ着弾させる。爆風で数体を引き剥がし、その隙に上昇――
――ガシャン!!
『嘘だろ!?』
建物の屋上から、一体が飛びついてきた。
『お前ら、僕を倒す気ないだろ!?』
『肯定。』
『肯定するな!!』
本当に、倒す気がない。それが何より厄介だった。自称ウルトロンが用意していた、足止め専用の量産型ウルトロン。装甲は通常型より分厚い。その代わり、武装はほとんど搭載されていない。機動力も低い。攻撃能力も低い。単純な戦闘力だけで言えば、これまで相手にしてきた量産型よりはるかに弱い。だが、
『捕捉。』
『拘束。』
『進路妨害。』
『捕捉。』
『拘束。』
『進路妨害。』
『うるさい!!』
倒されることを前提として、ひたすら邪魔をすることだけに特化している。飛べる相手には集団でしがみつく。走る相手には脚へ飛びつく。突破しようとすれば、複数体で壁を作る。そして一体を倒しても、その隙に別の個体が補充される。
――完全に、時間を奪うためだけの兵器だった。
「はぁっ!!」
――ガァン!!
ナターシャが量産型ウルトロンの膝裏へスタンロッドによる電撃を叩き込み、姿勢を崩したところで首へワイヤーを巻きつける。そのまま勢いよく身体を捻り、
――ガシャン!!
地面へ叩きつけた。
「スティーブ!」
「ああ!」
スティーブが駆ける。
「今度こそ――」
――ガシャン!!
『確保。』
「…………。」
また腰に抱きつかれ、スティーブが無言で下を見る。
『…………。』
量産型ウルトロンが、無言で見上げている。
「……離してくれないか?」
『拒否。』
「そうか。」
――ガァァァァァァン!!
盾で殴り飛ばした。
「これで――」
――ガシャン!!
『確保。』
「…………。」
「スティーブ。」
「言わないでくれ、ナターシャ。」
「まだ何も言ってないわ。」
「分かってる。」
さすがのスティーブも、顔が引きつっていた。その横では、
「ぬおおおおおおおおおおおお!!」
ソーがムジョルニアを振り回していた。
――ドゴォォォォォォォン!!
『――ッ!?』
一体。
――バヂィィィィィィィィン!!
『――ッ!!』
二体。
――ドゴォォォォォォォン!!
三体。
「小癪な鉄人形どもめ!! 我が友の下へ向かう邪魔をするな!!」
雷が落ちる。
――ズドォォォォォォォン!!
周囲にいた量産型ウルトロンたちがまとめて吹き飛ばされ、黒煙を上げながら地面へ転がった。
「よし!!」
ソーがムジョルニアを掲げる。
「これで――」
――ガシャン!!
「…………。」
背中に一体。
――ガシャン!!
「…………。」
右脚に一体。
――ガシャン!!
左脚に一体。
「…………。」
――ガシャン!!
腰に二体。
「…………。」
ソーが、ゆっくりと空を見上げた。
「……父上。」
『おい、そこで神頼みするな!!』
「この状況では仕方なかろう!!」
『口ではなく身体を動かせ!!』
トニーの怒鳴り声が響く。
「ええい、離れよ!!」
ソーが身体を振り回すが、量産型ウルトロンたちは徹底して離れない。
「何なのだ、こやつらは!? 戦士ならば正面から戦え!!」
『こいつらに戦士の誇りを求めるな!!』
「ならば何故、我らへ挑む!!」
『だから嫌がらせだって言ってるだろ!!』
「嫌がらせで戦場に立つな!!」
『僕に言うな!!』
怒号。
爆発。
雷。
金属音。
見た目だけなら、とんでもない激戦だった。だが、実際に行われているのは、アベンジャーズと大量の量産型ウルトロンによる、世界最高峰の足止め合戦。一体一体なら、問題にもならない。四人が本気で戦えば、次々と破壊できる。それなのに、
「くそっ!!」
スティーブが盾を振るう。また一体、量産型ウルトロンが吹き飛ぶ。けれど、その間に二体が進路へ立ちはだかる。完全に、相手の思惑通りだった。
「……まずい。」
ナターシャが呟く。その声から、さっきまで僅かにあった呆れが消え、
「時間を稼がれてる。」
『分かってる!!』
トニーがリパルサーを連射する。
『分かってるから腹が立ってるんだ!!』
――ドォン!!
一体。
――ドォン!!
二体。
『こいつら、最初から僕たちを倒すつもりなんてない!!』
「クロオのところへ、自称ウルトロン自身のところへ行かせないことだけが目的か。」
スティーブの表情が険しくなる。
「それか――」
ナターシャが、クロオの向かった方向を見る。
「クロオを一人にしたい……いえ、今、クロオを確実に――」
その言葉に、全員が止まった。
『…………くそ。』
トニーが吐き捨てる。思い出してしまった。あの自称ウルトロンが、クロオへ向けて言った言葉を。
――君がいるから、アベンジャーズは負けない、負けられない。
――君が何とかしてしまうから、彼らは君を頼ろうとする。
――君が未来を知っているから。
――君が強いから。
――君がいるから。
細かな言い回しは違っていても、その意味は嫌というほど伝わっていた。そして、…………誰も、否定できなかった。
『……冗談じゃない。』
トニーが低く呟く。
『この前、全員で反省したばかりなんだぞ?クロオの負担を減らすって。それに、あんなイカれた奴に言われたことを認める気はない。認める気はないが――』
言葉が止まる。
『……結果だけ見れば、その通りじゃないか。』
「トニー。」
『今ここにいるのは誰だ? キャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、ソー、アイアンマン。世界がひっくり返るような戦力だぞ?』
「…………。」
『なのに何で、あいつ一人が先に行ってる?』
誰も答えない。答えられない。
『何で僕たちは、クロオを追いかけている?』
「…………。」
『何であいつが、一人で一番危険な場所にいるんだよ!!』
――ドゴォォォォォン!!
リパルサーが量産型ウルトロンの胸を撃ち抜いた。トニーの声には、怒りよりも焦りが滲んでいた。
「……私たちが、行かせたわけじゃない。」
ナターシャが言う。
「クロオが自分で行ったのよ。」
『分かってる。』
「なら――」
『それで納得してたら、あいつの言った通りだ!!これまで何も変わらない!』
ナターシャが黙ってしまう。
『クロオなら大丈夫。クロオなら何とかする。クロオなら追いつくまで持ち堪える。』
「…………。」
『何回なんだ? 僕らが知らないものを含めたら、一体何回になるんだ?』
誰も答えなかった。答えられなかった。何度も。何度もだ。クロオは強い。それは間違いない。
アベンジャーズの中でも、間違いなく上位の戦闘能力を持っている。雷のエルの力まで使えば、単純な身体能力だけでもソーやハルクと並ぶ。加えて、切り札すら持っているらしい。
――クロオなら大丈夫。
それは信頼だ。確かに信頼だった。けれど、
「……信頼と。」
スティーブが、小さく呟いた。
「任せきりにすることは、違う。」
『…………。』
トニーが黙る。ナターシャが唇を噛む。ソーがムジョルニアを強く握る。
『…………最悪だ。』
トニーが呻く。
『あの偽ウルトロンの野郎、余計なこと言いやがって……。』
「否定できぬのが、なお腹立たしいな。」
ソーが珍しく低い声で答える。
「クロオは我らの友だ。仲間だ。守られるだけの者ではない。それは分かっている。だが――」
ムジョルニアを握る手に力が入る。
「だからといって、一人で戦わせて良い理由にはならぬ。」
「急ぎましょう。」
ナターシャが武器を構え直す。
「これ以上、一秒でも――」
――ズドォォォォォォォン!!
「っ!?」
突然、遠くから轟音が響いた。全員が振り向く。クロオが向かった方向。そこから、巨大な爆炎が上がった。
『…………。』
トニーの顔色が変わる。
「クロオ……。」
スティーブが盾を握り直す。次の瞬間、
『ジャーヴィス!!』
『はい。』
『出力制限解除!! 残弾気にするな!! 最短距離を開けろ!!』
『了解しました。』
「ソー!!」
「分かっている!!」
――バヂィィィィィィィィン!!
雷が爆発する。
「ナターシャ!」
「ええ!」
全員が同時に動いた。もう、冗談を言っている余裕はない。一秒。一秒でも早く。クロオのところへ。今度こそ、自分たちの仲間を――一人で戦わせないために。
ーーーーー
――その頃。
『ーーーーーッ。』
ゴウラムが低く鳴く。その巨体は既に戦場から大きく離れ、前線基地代わりのクインジェットに到着していた。
「よし、よくやってくれた、ゴウラム。チョ博士はこちらで保護するよ。皆、よろしく頼む。」
クインジェット内の人員がチョ博士の容体を確認する中、バナーはゴウラムへと歩み寄っていく。
「バナー博士?」
バナーの足が止まった。
「僕は――」
一度、振り返る。通信機から聞こえた会話。モニターに映る戦場。一つには、アベンジャーズが集まって大量の敵と戦っている様子が映っている。もう一つには、
「…………。」
新たな敵とクロオが戦っている。それも一人で、全力で戦っている。画面越しでも、それが伝わってくる。
『ーーーーー?』
戦場に、主人の下に、急ぎ戻ろうとするゴウラムが首を傾げる。
「……ゴウラム。」
『ーーーーー?』
「頼めるかい?」
『ーーーーーッ!!』
力強い返事が返ってきた。
「え?」
チョ博士の治療に当たっていた一人がバナーを見る。
「待ってください。バナー博士、あなたは――」
バナーが、話を遮るように、静かだが、それでも力強く宣言する。
「大丈夫だ。」
もう一度、クロオが映るモニターを見る。
まだ若い。自分たちよりずっと若い。それなのに、いつも前へ出る。強いから、戦えるから、守れるから、そして、自分たちは何度も、それを受け入れてきた。
――クロオなら大丈夫。
「…………。」
バナーは、ゆっくりと眼鏡を外した。
「バナー博士……?」
「僕は、」
眼鏡を折り畳む。そして、ゴウラムの背に乗る。
「少し、行ってくるよ。」
「行くって、まさか――」
――ドゴォォォォォォォォォォン!!
モニター上で、再び巨大な爆発。
「…………。」
バナーの表情が変わる。恐怖ではない。迷いでもない。これまで、自分の中にいる存在を出さないために、何度も何度も押さえ込んできた男の顔ではなかった。
「僕が――」
拳を握る。
「いや。」
その手が震え始める。首筋に、緑色の血管が浮かび上がる。
「バナー博士……?」
誰かが息を呑む。
「ハルクが行く。」