日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです   作:ken4005

6 / 6




東京

 

 

そして翌日、僕と一条さんは、朝から警視庁を訪れていた。

 

 

「久しぶりだな、一条、黒雄くん。」

 

「お久しぶりです、杉田さん。」

 

 

到着早々、僕たちを出迎えてくれたのは杉田さんだった。

 

未確認生命体事件の時、一条さんと一緒に何度も現場へ出ていた刑事さんの一人だ。

 

 

「アメリカじゃ随分派手にやったみたいじゃないか。」

 

「……見たんですか?」

 

「あれだけニュースで流れてりゃ嫌でも見るさ。まさか宇宙人と戦ってるとは思わなかったがな。」

 

「僕もですよ。」

 

「お前の場合、冗談に聞こえねぇな。」

 

 

杉田さんが呆れたように笑う。こうして顔を合わせると、毎日のように警察の人たちと顔を合わせていたグロンギと戦ってた頃を思い出す。

 

 

「それで、アンノウンの件なんですけど。」

 

「ああ。」

 

「杉田さんたちも捜査してるんですよね?」

 

 

ベテランの刑事さんたちとの連携なら安心できる。けど、

 

 

「いや?」

 

 

あっさり否定された。そんな気はしていた。

 

 

「俺たちはアンノウン対策では動いてない。」

 

「そうなんですね。」

 

「ああ。俺たちは今も未確認生命体関係だ。まあ、今じゃ残党の情報確認がほとんどだがな。」

 

「じゃあ、アンノウンは?」

 

「担当が別だ。案内しよう。」

 

 

ーーーーー

 

 

「ここが現在、アンノウン対策の実働を担当しているG3ユニットだ。」

 

 

連れてこられた部屋には三人の人がいた。

 

 

「氷川誠です。」

 

「小沢澄子。G3システムの開発と運用を担当してるわ。」

 

「小室です。よろしくお願いします。」

 

 

真面目そうな若い男性。

 

白衣姿の女性。

 

そしてもう一人の男性。

 

 

「一条薫です。」

 

「存じています!」

 

 

氷川さんが即座に反応した。なんなら姿勢まで良くなった。

 

 

「未確認生命体事件で第4号と共に最前線で戦い続けた一条刑事ですよね。お会いできて光栄です。」

 

「そこまで畏まらなくていい。」

 

「いえ! 二年前の事件については資料でも何度も――」

 

「氷川君、長くなるからその辺で。」

 

「……すみません。」

 

 

小沢さんに止められ、氷川さんが少し恥ずかしそうに口を閉じる。やっぱり一条さん、有名なんだな。本人は嫌がるだろうけど。

 

 

「それで。」

 

 

小沢さんの視線が僕へ向いた。

 

 

「そっちの子は?」

 

「ああ。彼は――」

 

「十文字黒雄です。高校二年生です。」

 

「高校生?」

 

 

三人の視線が集まる。うん。完全に『なんで警視庁に高校生が?』って顔だ。まあ当然だと思うけど。

 

 

「今回、アンノウン事件に協力することになっている。」

 

「協力?」

 

「詳しい説明は後ほどする。」

 

 

一条さんがそう言うと、三人は納得した……というより、とりあえず追及するのをやめたみたいだ。流石は警察官、切り替えが早い。僕としても自分から、

 

 

『どうも、第4号です』

 

 

なんて自己紹介するのも変なので黙っておく。

 

 

「それにしても……。」

 

 

改めて部屋を見るが、今自己紹介をされたのは三人。右を見る。誰もいない。左を見る。やっぱりいない。

 

 

「少な!」

 

「黒雄。」

 

 

一条さんの低い声。

 

「あ、すみません。でも三人ですよ!?」

 

「失礼ね。」

 

「すみません!」

 

「まあ、間違ってはいないけど。」

 

 

小沢さんは特に気を悪くした様子もなく、肩をすくめる。

 

 

「こういう特殊な事件を扱うチームは、大所帯にすればいいってものでもないのよ。少人数の方が判断も早いし、自由に動ける利点もあるから。」

 

「自由に……。」

 

 

僕は隣を見る。

 

 

「一条さんたち、超自由に動いてませんでしたか?」

 

「黒雄。」

 

「だって、長野行ったり東京戻ったり、僕が戦ってるところに普通に突っ込んできたり。」

 

「君にだけは言われたくない。」

 

「それはそうなんですけど。」

 

 

一条さんがため息をつく。

 

 

「そもそも、表に出る人間だけが対策班ではない。」

 

「え?」

 

「事件を捜査する刑事、情報を整理する人間、鑑識、通信担当。それにG3のような装備を運用するなら、機器を整備する人員も必要になる。」

 

「あ。」

 

 

言われてみればそうだ。僕が知っている未確認生命体事件だって、一条さんや杉田さんたちだけで全部やっていたわけじゃない。現場を調べる人はもちろん、被害者の身元や人間関係を調べる人。未確認生命体の特徴を分析する人。僕が使っていたトライチェイサーや警察装備を整備してくれていた人。たくさんの人が裏で動いていた。

 

 

「……失言でした。すみませんでした。」

 

「分かればいい。」

 

 

素直に頭を下げると小沢さんが少し笑った。

 

 

「意外と素直なのね。」

 

「よく怒られるので。」

 

「誰のせいだと思っている。」

 

「自分のせいです。」

 

 

その時だった。

 

 

『G3ユニット、出動要請!』

 

 

部屋の空気が変わった。

 

 

『世田谷区内でアンノウンと思われる未確認個体を確認! 現在、現場警察官が住民の避難誘導中!』

 

「氷川君!」

 

「はい!」

 

 

さっきまでの雰囲気が一瞬で消え、氷川さんが奥の部屋へ走り、小沢さんと小室さんも移動を始める。

 

 

「一条さん。」

 

「ああ。俺たちも行こう。」

 

 

僕もついていこうとした。

 

 

「君は駄目よ。」

 

「え?」

 

「ここで待機。」

 

「なんで!?」

 

「なんでって……。」

 

 

小沢さんが本気で不思議そうな顔をする。

 

 

「高校生を怪物が暴れてる現場に連れていけるわけないでしょう。」

 

「…………。」

 

 

正論!正論なんだけど!

 

 

「いや、でも僕――」

 

「黒雄。」

 

「一条さん!?」

 

「先に行く。」

 

「ちょっと!?」

 

 

一条さんまで!?

 

僕を置いていく気満々だった。

 

 

ーーーーー

 

 

「…………。」

 

 

数分後。

 

僕は警視庁の廊下に一人取り残されていた。

 

 

「いや、おかしいでしょ。」

 

 

なんで僕、ここまで来て留守番なんだ?確かにG3ユニットの人たちから見れば、僕は一条さんが連れてきた高校生でしかない。だけど一条さんは知ってるでしょうが。

 

 

「どうした、黒雄?アンノウンが出たんだろ?」

 

「杉田さん。」

 

 

後ろから声をかけられ、振り返る。

 

 

「置いてかれました。」

 

「そりゃそうだろ。向こうはお前のこと知らねぇんだから。」

 

「一条さんまで普通に行っちゃいました。」

 

「一条らしいな。」

 

「本当ですよ。」

 

杉田さんが笑う。

 

「で、どうする?」

 

「……警視庁の真ん前で変身して追いかけて良いですか?」

 

「それはこっちが困るから止めろ。」

 

 

即答すると、杉田さんはポケットから鍵を取り出した。

 

 

「ほら。」

 

「え?」

 

 

反射的に受け取る。

 

 

「地下に一台置いてある。」

 

「まさか。」

 

 

地下駐車場へ降りると

 

「トライチェイサーだ!」

 

「正確にはトライチェイサー2000A。お前が使ってた奴を元にした量産普及型だ。性能はオリジナルより落としてあるが、警察用車両としては十分すぎる性能だ。」

 

 

「おお……!」

 

 

懐かしい。細かいところは違うけど、間違いなくトライチェイサーだ。

 

 

「借りても?」

 

「そのために連れてきたんだろ。」

 

「ありがとうございます!」

 

「壊すなよ。」

 

「努力します!」

 

「そこは絶対壊さないと言え!」

 

 

エンジンをかけると久しぶりの感覚が手に伝わってくる。

 

一条さんたちを追いかけるために僕はアクセルを回した。

 

 

ーーーーー

 

 

現場へ向かうGトレーラーの車内で、小沢は端末に表示された現場情報を確認しながら、先ほどの会話をふと思い出していた。

 

『一条さんたち、超自由に動いてませんでしたか?』

 

『黒雄。』

 

『だって、長野行ったり東京戻ったり、僕が戦ってるところに普通に突っ込んできたり。』

 

『君にだけは言われたくない。』

 

「…………。」

 

あの時は流した。一条と少年が随分親しいのだと思っただけだった。だが――

 

 

「僕が戦ってるところ……?」

 

 

小沢が小さく呟く。

 

 

「どうしました、小沢さん?」

 

「いや、ちょっとね。」

 

 

小室に返しながら、考える。

 

未確認生命体事件。

 

長野から始まり、やがて東京へと舞台を移した二年前の事件。一条薫は、その最前線で第4号と共に戦い続けた刑事として警察内部では有名な存在だ。だからこそ、今回のアンノウン事件でも協力を要請された。そこまでは分かる。

 

では――

 

 

「なんであの子が、当時の一条さんの動きを知ってるのよ。」

 

 

資料を読めば分かる?いや。長野と東京を行き来していたことくらいなら調べれば分かるかもしれない。だが、あの言い方は違った。

 

 

『僕が戦ってるところに普通に突っ込んできたり。』

 

 

僕が。

 

戦っているところ。

 

 

「…………。」

 

 

しかも、それに対する一条の返答。

 

 

『君にだけは言われたくない。』

 

 

否定していない。聞き間違いでも、言い間違いでもない。一条はあの少年の言葉を当然のものとして受け止めていた。

 

 

「十文字黒雄……高校二年生。」

 

 

二年前なら、中学生。そんな子供が未確認生命体事件の現場で戦っていた?警察内部にそんな記録は――

 

 

「……いや。」

 

 

一つだけある。誰もが知っている存在が。

 

 

「まさかね。」

 

 

思い浮かんだ考えを、小沢はすぐに否定した。第4号は人間に近い姿こそしているが、未確認生命体と戦う正体不明の存在。その正体については、警察内部でも情報が厳重に管理されている。それが、あの一条薫が連れてきた高校生?いくらなんでも飛躍しすぎだ。

 

 

「…………。」

 

 

そう思ったところで、もう一つ気付く。そもそも――

 

 

「なんで高校生を連れてきたのよ。」

 

 

今回、一条に協力要請が出た理由は分かる。未確認生命体事件という前例のない怪人事件を経験し、その最前線で戦い続けた刑事だからだ。だが、十文字黒雄は?ただ一条と親しいだけの高校生を、警視庁のアンノウン対策に関わらせる理由なんてない。しかも一条は、はっきり言っていた。

 

 

『今回、アンノウン事件に協力することになった。』

 

 

「…………。」

 

 

小沢は腕を組む。

 

 

「小沢さん?」

 

「何?」

 

「さっきから難しい顔してますけど。」

 

「考え事。」

 

「事件についてですか?」

 

「まあ……そんなところ。」

 

 

小沢は座席に背を預ける。一条薫が連れてきた、未確認生命体事件について妙に詳しい高校生。当時の一条の行動を、まるでその場にいたように語った少年。そして――

 

 

『僕が戦ってるところに普通に突っ込んできたり。』

 

 

もう一度、その言葉が頭の中で再生される。

 

 

「……まさかね。」

 

 

二度目の否定。けれど今度は、その可能性を完全には消せなかった。

 

 

ーーーーー

 

 

僕が現場へ到着した時には、すでに戦闘が始まっていた。

 

 

「いた!」

 

 

道路の先。パトカーによって封鎖された区域で、異形の怪人が暴れている。

 

頭上には光る輪。あれがアンノウンか。確かにグロンギとは雰囲気が違うな。そして、その正面には――

 

青と銀の装甲。G3が銃を構え、アンノウンに向けて引き金を引いていた。

 

 

ドドドドドドドッ!!

 

 

銃弾が次々と命中、火花が散り、アンノウンが後退するけれど、

 

 

「効いて……ない、のかな?」

 

 

全く効いていないわけじゃない。でも決定打には程遠い感じだな。近づいたアンノウンが腕を振るうとG3が吹き飛ばされた。地面を転がるが、なんとか起き上がってる。

 

 

『氷川君、距離を取って!』

 

『はい!』

 

 

通信から小沢さんの声が聞こえ、僕はトライチェイサーを止めた。

 

どうするか。本来なら様子を見るべき場面だ。G3がどこまで戦えるのか。アンノウンがどんな能力を持っているのか。それを確認するためにも、いきなり僕が割り込むべきじゃない。

 

それに一条さんにも、僕を戦力として投入する予定はないと言われたし。

 

 

ドォン!

 

 

「うわぁぁっ!」

 

「逃げろ!」

 

 

アンノウンの攻撃で車が吹き飛ばされ、同時に人々の悲鳴が聞こえた。まだ避難しきれていない人たちがいる。

 

はい、様子見終了。通信機を取る。

 

 

「一条さん。」

 

『黒雄か。もう着いたのか?』

 

「はい。」

 

『杉田さんだな。』

 

「よく分かりましたね。」

 

『後で話をしておく。』

 

「怒らないであげてくださいよ。」

 

 

そんなことを話している間にも、アンノウンがG3へ近づいていく。

 

 

「一条さん。」

 

『なんだ?』

 

「戦いますね。」

 

『分かった。』

 

 

即答だった。

 

 

「……止めないんですね。」

 

『止めてほしかったのか?』

 

「いえ。」

 

『なら聞くな。』

 

 

ですよね。

 

 

『黒雄。』

 

「はい。」

 

『周囲にはまだ一般人がいる。』

 

「分かってます。」

 

『それと――』

 

「無茶はしない。」

 

『昨日の反省文にも書いてあったな。』

 

「…………。」

 

『期待している。』

 

「頑張ります。」

 

 

通信を切る。

 

 

「よし。」

 

 

トライチェイサーから降りるとアンノウンがこちらを向いた。G3も僕に気付いたらしい。

 

 

『君、どうしてここに!?危険だ、すぐに避難を――!』

 

 

腰に手を当て、アークルを出現させる。

 

 

「変身!」

 

 

赤い装甲が全身を包み込み、頭部から角が伸び、複眼が赤く輝く。G3が完全に動きを止め、

 

 

『……え?』

 

 

氷川さんが驚く声が聞こえた。

 

 

『第4号!?』

 

 

驚く氷川さんを放置し、僕はアンノウンへ向き直り、構える。

 

 

「さて。」

 

 

アギトはおらず、G3だけでは苦戦している。そして目の前では、人が襲われている。

 

 

「まずは、こいつを何とかするか。」

 

 

アンノウンがこちらへ向かってくる。

 

クウガとアンノウン。本来なら交わるはずのなかった戦いが、始まった。

 

 

ーーーーー

 

 

まあ、ただ――

 

 

「たぶん、そんなに時間はかからないけどね。」

 

 

アンノウンが地面を蹴り、一気に距離を詰め、振り上げた腕を僕へ叩きつけてくる。

 

半歩横へ動き、攻撃を避ける。うん、速いね。チタウリなんかより、よほど強い。けれど、グロンギと戦い続けた僕からすると………いや、比較するのはやめよう。

 

こいつが弱いんじゃない。

 

僕が死ぬほど実戦経験を積んでしまっただけだな、これは。

 

 

『第4号! 危険です! そいつは――!』

 

 

氷川さんの声が聞こえる。アンノウンが再び僕へ襲いかかってくる。

 

今度は避けず、前に踏み込む。

 

相手が攻撃を繰り出すより先に一歩を踏み出し、右拳を握り締め――

 

 

ドゴォッ!!

 

 

腹部へ叩き込んだ。

 

 

「――――ッ!?」

 

 

アンノウンの動きが止まる。僕の拳は、その腹へ深くめり込んでいた。

 

 

『…………え?』

 

 

通信機から、氷川さんの声。

 

 

「ふっ!」

 

 

拳が触れている場所から封印エネルギーを流し込み。

 

 

「――――ッ!!」

 

 

アンノウンが苦しそうに身体を震わせる。そして――

 

 

ドォォォォォン!!

 

 

爆発した。

 

 

「…………。」

 

 

やがて炎と煙が晴れていき――

 

 

「よし。」

 

 

撃破。

 

「…………あれ?」

 

反応が無いので後ろを見ると、G3が固まっていた。

 

 

「氷川さん?」

 

 

返事がない。

 

 

「終わりましたよ?」

 

 

『…………。』

 

「氷川さん?」

 

『……はい。』

 

 

ようやく返事が返ってきた。

 

 

『こちらでも……確認しています。』

 

「なら良かったです。」

 

 

通信を切ろうとしたところで、別の声が割り込んできた。

 

 

『ちょっと待って。』

 

「小沢さん?」

 

『今、何したの?』

 

「何って……殴りました。」

 

『それは見れば分かるわよ!』

 

 

怒られた。

 

 

『なんで一発殴っただけで爆発したのよ!?』

 

「封印エネルギーを流し込んだので。」

 

『封印エネルギー?』

 

「はい。」

 

『…………。』

 

「…………。」

 

『何それ。』

 

「そこからですか?」

 

 

そういえば、僕の正体についても、能力についても、何も説明してなかった。

 

 

『小沢さん。』

 

『何、氷川君。』

 

『第4号です。』

 

『……見れば分かるわよ。』

 

『本物です。』

 

『だから分かってるって。』

 

『あの第4号です!』

 

『うるさい!』

 

 

氷川さんが怒られてる。なんというか、この人たち、結構面白いかもしれない。

 

 

ーーーーー

 

 

「つまり、身体そのものが変化してるの?」

 

「そうですね。」

 

「装着型の強化服じゃなく?」

 

「はい。」

 

「そのベルトは?」

 

「アークルです。」

 

「外せる?」

 

「無理です。」

 

「分解は?」

 

「もっと無理です。」

 

「ちょっとだけ。」

 

「嫌です。」

 

「見るだけ。」

 

「絶対嫌です。」

 

 

警視庁へ戻ってから、僕は小沢さんの質問攻めに遭っていた。

 

 

「ケチね。」

 

「身体の中に入ってる物を分解しようとしないでください。」

 

「興味あるじゃない。あんな変身システム。」

 

「システムっていうか……僕自身にもよく分かってないんですけど。」

 

「だから調べるのよ。」

 

 

そう言った小沢さんの目が輝く。

 

あ、この目は知ってる。つい最近、アメリカで何度も見たスタークさんと同じ目だ。

 

未知の技術。未知の素材。未知のエネルギー。

 

そういう物を目の前にした時のトニー・スタークと、全く同じ目をしている。ヤバいやつだ。

 

本能的に半歩下がった。

 

 

「何で離れるのよ。」

 

「いえ、なんとなく。」

 

「CTくらいならいいでしょう?」

 

「嫌です。」

 

「じゃあMRI。」

 

「もっと嫌です。」

 

「血液検査。」

 

「健康診断じゃないんですよ。」

 

「一回くらいいいじゃない。」

 

「絶対嫌です。」

 

 

怖い。スタークさんと同じ種類の人だ、この人。下手に許可したら最後、気付いた時には全身を検査されている気がする。研究者ってみんなこうなのか?バナー博士はもう少し穏やかだったぞ。

 

 

「それで、さっきの封印エネルギーっていうのは?」

 

「僕が勝手にそう呼んでるだけですけど、攻撃した相手に流し込めるエネルギーです。未確認生命体はそれを受けると、体内にあるベルトみたいなものが壊れて爆発します。」

 

「アンノウンにも効いたわね。」

 

「みたいですね。あ、宇宙人にも効きました。」

 

「…………。」

 

 

小沢さんが顎に手を当てる。

 

 

「未確認生命体やアンノウン、宇宙人には共通点がある?それとも、そのエネルギー自体が生物に対して何らかの――」

 

 

また目が輝き始めた。スタークさん助けて。いや、あの人を呼んだら二人に囲まれるだけだった。絶対呼んじゃ駄目だ。

 

 

「でも。」

 

 

小沢さんが僕を見る。

 

 

「驚いたわ。」

 

「変身したことですか?」

 

「それもだけど。」

 

 

少しだけ間を置いて、

 

 

「高校生だったのね、第4号。」

 

「そこですか。」

 

「だって二年前でしょ?」

 

「はい。」

 

「当時いくつ?」

 

「十五です。」

 

「…………。」

 

 

小沢さんの眉が寄る。

 

 

「警察は何してたのよ?」

 

「一緒に戦ってくれてました。」

 

「そうだったわね。」

 

「そうですよ。」

 

 

ちなみに、少し離れた場所では――

 

 

「杉田さん。」

 

「なんだ。」

 

「なぜトライチェイサーを貸したんですか。」

 

「必要そうだったからな。」

 

「黒雄には待機の予定でした。」

 

「本当に言ってあったのか?」

 

「……直接は言っていません。」

 

「じゃあいいだろ。」

 

「よくありません。」

 

「結果的に被害は出なかった。」

 

「結果論です。」

 

「そもそも、お前だって黒雄が来ると思ってただろ。」

 

「それとこれとは別です。」

 

「面倒くせぇな、お前!」

 

 

杉田さんが一条さんに説教されている。ごめんなさい杉田さん、助けられません。

 

 

「仲良いのね、あの二人。」

 

「昔からあんな感じです。」

 

「あなたも含めて?」

 

「僕はもっと怒られてました。」

 

「でしょうね。」

 

「即答はひどいです。」

 

 

僕は少し傷ついた。

 

 

ーーーーー

 

 

その後。

 

アンノウン事件への正式な協力に必要な手続きやら、情報共有についての話やらが残っているらしく、一条さんは警視庁に残ることになった。僕はというと、今日はもう帰っていいと言われた。

 

トライチェイサーも一度返却。杉田さんは、

 

 

『明日から使えるように話を通しておく。』

 

 

と言ってくれたけど、流石に警察車両を勝手に乗り回すわけにもいかない。というわけで。

 

 

「歩くか。」

 

 

当面の宿泊先として用意してもらった場所へ向かって、僕は一人で歩いていた。東京の街。二年前にも何度も歩いた場所だけれど、あの頃とは全然見え方が違う。

 

未確認生命体事件は終わり、グロンギはもういない。だから、あの頃のような戦いをすることはない。そう思っていたんだけど。………いや宇宙人とは戦ったし、これからも戦う予定はあるけれど。今は、

 

 

「アンノウン、か。」

 

 

今日戦った相手は弱かった。少なくとも、今の僕にとっては。

 

 

「封印エネルギー、普通に効いたんだよな。」

 

 

グロンギとは全く違う存在。原作では当然、クウガとアンノウンが戦うことなんてなかった。だから僕にも、何がどう作用しているのか分からない。

 

 

「まあ……考えても仕方ないか。」

 

 

小沢さんに言ったら喜んで調べそうだけど。

 

 

「やめとこう。」

 

 

提案した後が怖い。それより今日の晩御飯をどうするか。そんなことを考えながら歩いていた時だった。

 

 

「――十文字黒雄。」

 

 

足が止まった。

 

 

「…………?」

 

 

振り返ると、一人の男が立っていた。

 

 

「誰ですか?」

 

 

見覚えが――ある?いや、ない。でも、どこかで見たような。

 

 

「…………まさか!?」

 

 

胸の奥がざわつく。いやいやいや、待て待て。そんなわけないし、まだ早い。というかこの人は、

 

 

「君とこうして言葉を交わすのは初めてだ。」

 

 

男が静かに告げる。声、顔、雰囲気。記憶の奥から、一つの可能性が浮かび上がるが、確信できない。なんども言うが前世だぞ?細部まで覚えているわけじゃない。

 

 

「あなた……誰ですか?」

 

 

だから確認する。男は静かに僕を見つめた。そして。

 

 

「私は――闇の力。」

 

 

闇の力、そう名乗った。その呼び名を知っている。

 

『仮面ライダーアギト』。

 

その物語における、全ての根幹にいる存在であり、アンノウンを生み出した存在。

 

 

「………………ラスボスじゃねぇか!?」

 

 

なんで今日!?僕がアンノウンと戦い始めた初日だぞ!?なんでラスボスが直接会いに来るんだよ!

 

 

「ラスボス?」

 

 

首をコテン、ってするな!可愛くねぇよ!

 

腰へ手を伸ばし、いつでも変身できるように備える。

 

 

「ほう。」

 

 

闇の力の視線が、僕の腰へ向いた。

 

 

「それが、リントが生み出した力か。」

 

 

アークルを、いや、リントを知っている?

 

 

「リントを……知ってるんですか?」

 

 

「知っている。」

 

 

そういえば、この人、いや、人ではないのか。この闇、人間を生み出したとか、そういう設定があったな。超古代文明のリントも含まれてるのか?

 

確か、人間が自分の手から離れることを嫌がったんだっけ?

 

うん、肌で分かる。今日戦ったアンノウンなんかとは比較にならない。というより、グロンギのゴの階級連中よりも更に上だ。

 

僕がアメイジング、いやアルティメットになればいけるか?

 

でも、そう簡単に戦っちゃ駄目な相手だろ。少なくとも、何も分からない状態で喧嘩を売る相手じゃない。

 

 

「あなたはアンノウンですか?」

 

「違う。彼らは私の使徒だ。」

 

 

はい確定、ラスボスです。

 

 

「どうして僕のところに?」

 

「君を見に来た。」

 

「僕を?」

 

「ああ。」

 

 

闇の力が僕を見てくる。敵意はなく、殺気もない。しかし気配が、グロンギとも、チタウリとも、ロキやソーさんのようなアスガルドの神とも違う。

 

 

「十文字黒雄。」

 

 

名前を呼ばれ、身体が強張る。

 

 

「そして――」

 

 

闇の力の視線が、僕の腰へ落ちる。

 

 

「クウガ。」

 

 

闇の力はただ僕を見ている。まるで――僕という存在そのものを確かめているような視線。

 

 

「リントが生み出した戦士、クウガ。そして、この世界の理から外れた者、十文字黒雄。」

 

「…………え?」

 

 

今度は別の意味で、心臓が跳ねた。待て。それは、どういう意味だ?

 

 

「あなたは、僕の何を知ってる?」

 

 

前世の記憶があることまで知っているのか?

 

 

「…………。」

 

 

闇の力は、そんな僕を静かに見つめ――

 

 

「実に興味深い。」

 

「何がですか。」

 

「君がだ。」

 

「…………。」

 

嫌な予感しかしない。今日だけでその視線を向けてくるのは二人目だ。というかスタークさんにバナー博士、小沢さんに闇の力とか、その手の視線を僕に向けないで、モルモットじゃないんだから。

 

 

「本来ならば存在しないはずの戦士。そして、人の身でありながら、人ならざる力を宿す者。」

 

 

闇の力が、一歩だけ近づく。

 

 

「君がこの世界に何をもたらすのか――」

 

 

僕は動けなかった。

 

 

「見届ける。そのために、」

 

 

闇の力が横に手を伸ばした。

 

くそ!戦うのか!?

 

 

「…………お茶にしよう。」

 

 

…………ん?

 

 

「あそこの喫茶店で腰を落ち着かせて話をしよう。」

 

 

そう言って、一人で店に向かって歩き始める闇の力。

 

 

「……えっと。」

 

 

今日はアンノウンと戦い一発で倒した。小沢さんに解剖されそうになった帰り道でラスボスに接触された。

 

そして、そのラスボスからお茶のお誘いが来た。

 

 

「…………。」

 

 

無言で空を見上げる。

 

 

「アメリカから帰ってきて、まだ二日なんだけど。」

 

 

平穏。

 

その言葉が、ものすごい勢いで遠ざかっていく気がした。

 

 

ーーーーー

 

 

「お金あるんですか?」

 

「うむ。水のエルが用意してくれた。紙幣は人間が生み出した文化だ。しっかり利用せねば。」

 

「誘ったのはそっちなんですから、奢りですよね?」

 

「………ドリンクだけだ。」

 

 

闇の力、ケチぃな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

何!?ズァークとは「もう1人のボク!」ではないのか!?(作者:辛味噌の人)(原作:遊戯王)

A.そうとも言えるしそうでもないとも言える。▼ トマトに転生したOCG次元のARC-Vミリしらオリ主が次元戦争を駆け抜けるお話。▼ 揺れるママママインドの代わりにOCG知識と遊戯王語録を詰め込んだ男はデュエルでみんなに笑顔を届けられるのか?


総合評価:3514/評価:8.64/連載:6話/更新日時:2026年08月15日(土) 18:41 小説情報

星殺しの英雄(作者:Castella)(原作:アサルトリリィ)

星の究極種を殺した型月転生者がアサリリ世界に転移する話。▼※掲示板形式ありです。


総合評価:2222/評価:8.12/連載:18話/更新日時:2026年05月11日(月) 21:37 小説情報

ゲシュパンとTP装甲だ、便利なものだろう?(作者:QAAM_M1911)(原作:インフィニット・ストラトス)

インフィニット・ストラトスの世界に転生した男。▼ガンダムが好きだった彼はこう思ってしまった。▼「フォビドゥン最強じゃね?」と。▼ラファールを改造しながら自分のフォビドゥンを作り上げていくお話。


総合評価:2566/評価:8.27/連載:6話/更新日時:2026年08月15日(土) 18:00 小説情報

石の世界で農業チートしてたら比べ物にならん程のチートがワラワラ湧いてきた件(作者:史上最強のラーメン)(原作:Dr.STONE )

 原始の村で農業チートを駆使して成り上がったら、ある日本当のチートがやってきた。触発されるように村の仲間もチートになっていきもう大変!今日も俺は畑を耕す。


総合評価:2387/評価:7.96/連載:8話/更新日時:2026年08月14日(金) 19:25 小説情報

ケロロ軍曹 転生して早々記憶喪失!? であります!(作者:リボーン2期待ってます)(原作:ケロロ軍曹)

転生してからの14年分の記憶がスッポリ消えた転生者の話。あらすじは後で考えます。


総合評価:4465/評価:8.79/連載:14話/更新日時:2026年08月16日(日) 00:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>