日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
ブラックウィドウ、ブラックパンサーのファンの皆様に怒られてしまうような章、というより前後編にハルク、エルロードを添えます
増強
自称ウルトロン、そしてゾラウルトロンとの戦いが終わり、十文字黒雄の身体が完全に回復するまでの間にも、世界は止まることなく動き続けていた。
そして、その裏側では。
「……つまり。」
ワカンダ王国。
外界から隔絶され、世界最先端の科学技術と膨大なヴィブラニウム資源を秘匿し続けてきた国家。その王宮の一室で、ティ・チャカは目の前に座る隻眼の男を静かに見つめていた。
「あなたは我々に、世界を守るための協力を求めている、と。」
「正確には。」
ニック・フューリーは、普段より明らかに慎重な口調で答えた。
「これから先、地球そのものが危機に晒された時、ワカンダにも力を貸してほしい。」
「…………。」
ティ・チャカの表情は変わらない。当然だった。ワカンダは長い年月、自国の存在と本当の力を世界から隠し続けてきた。表向きは貧しい農業国家。
だが、その地下には世界中のどの国をも遥かに上回る科学力と、地球上でもっとも貴重な金属の一つであるヴィブラニウムが眠っている。そんな国家へ、元S.H.I.E.L.D.長官が正式な外交手続きを踏んで話を持ち込んできた。警戒するなという方が無理な話だった。
「これまで地球では、既に複数の大規模な侵略が起きている。」
フューリーは淡々と続ける。
「ニューヨーク。ダーク・エルフ。そして、今回のウルトロン事件。」
「…………。」
「その全てが、単なる国家間戦争ではなく、宇宙から来た脅威が関わっている。」
ティ・チャカの目が細められるが、フューリーは続ける。
「そして、これで終わりだとは思っていない。」
「……根拠は?」
「ある。」
しかしフューリーは、それ以上をすぐには話さなかった。未来を知る少年。インフィニティ・ストーン。宇宙の彼方に存在する巨大な脅威。説明すべきことは山ほどあるが、その全てを一度に語れば、かえって信用を失う可能性すらある。
だからこそフューリーは、可能な限り順序立て、ティ・チャカへ説明を続けていった。やがて、
「なるほど。」
ティ・チャカが腕を組む。
「既に我が国の正体にお気付きのようなので、下手な探り合いはやめましょう。……その脅威に対抗するため、ワカンダのヴィブラニウムと技術を提供しろ、と?」
「いや。」
フューリーは迷いなく返す。
「脅威が迫った時、力を貸してくれさえすれば良い。」
ティ・チャカが僅かに目を見開く。
「まあ。」
フューリーは肩をすくめた。
「提供してくれるというなら、喜んでもらうが。」
「…………。」
ティ・チャカは数秒ほどフューリーを見つめ、
「正直な男だな。」
「よく言われる。」
「それは嘘だろう。」
「そうとも言う。」
ほんの少しだけ、その場の空気が緩んだ。もっとも、
「…………。」
ティ・チャカの視線が、フューリーの後方へ移る。
そこには、水のエル、地のエル。
二人の超越的存在が人間の姿ではあるが、何故か護衛として立っていた。
「ところで。」
ティ・チャカが尋ねる。
「あなたの護衛、彼らは何者なのだ?私も、かつては戦士の一人だ。彼らから感じる気配が尋常でないことぐらいは分かる。」
フューリーも少しだけ沈黙し、
「…………かなり別格な存在、としか説明しようがないな。」
地のエルが答える。
「古くから存在する自然の化身みたいなものだ。」
「フューリー長官。」
「もう、長官ではありませんな。」
「ではフューリー殿、……必要ですか?追加戦力。」
ティ・チャカは二人に関しては、理解しようとすると話がさらに複雑になることを既に察していた。だが、思わず聞いてしまった。しかし、フューリーは真顔で、
「必要です。世界を守るためには、絶対に。」
フューリーの返答を聞き、ティ・チャカは一度目を閉じ、
「話は理解した。」
静かに答えた。
「だが、これは私一人で即断できる問題ではない。一度持ち帰り、検討させてもらいたい。」
「当然だ。」
フューリーも頷く。そこで会談は一旦終わるはずだった。だが。
「一つ。」
水のエルが口を開いた。
「聞きたいことがある。」
「……何だね?」
ティ・チャカが水のエルを見る。水のエルは特に深い意味などないような口調で、
「もう一つのヴィブラニウムで発展した文明を交えなくて良いのか?」
「…………。」
「…………。」
ティ・チャカとフューリー、二人が唖然とした顔になる。
「……何の話だ?」
先に尋ねたのはティ・チャカだった。水のエルが首を傾げ、
「知らないのか?」
「何をだ。」
「海だ。海底に都市がある。」
水のエルは淡々と続けた。
「そちらもヴィブラニウムを利用して文明を発展させている。」
「…………。」
「…………。」
ティ・チャカとフューリーが、ゆっくりと互いを見る。数秒。どちらも何も言わない。やがて。
「……フューリー殿。」
「なんだ。」
「会談を延長しても?」
「もちろんだ。」
即答だった。こうして。本来ならばワカンダとの協力関係を築くだけだったはずの会談は、地球上に存在する誰も把握していなかった第二のヴィブラニウム文明という、さらに巨大な問題へと突入していくことになった。
ーーーーー
――一方。
「あなたは?」
ナターシャ・ロマノフは、目の前に立っている存在を見上げた。
「私は風のエル、護衛だ。主人から、お前を守るよう言われている。」
「そう。」
ナターシャは僅かに眉を上げた。
少し前、黒雄から未来で自分に関係する事件が起こることを聞いた。心当たりは、かつて自分が壊滅させたと思っていた組織、レッドルーム。
それが、まだどこかに存在している可能性。ナターシャにとって、それを聞いて何もしないという選択肢はなかった。だからこそ、彼女はすぐに行動を開始した。そして、何故か、その護衛に風のエルがついてきた。
「仕事を手伝ってくれるの?」
「必要なら。それが我が主人とクウガの助けになるのなら、問題ない。」
「…………。」
ナターシャは少しだけ笑った。
「そう。」
そして歩き出す。
「今回の事件、昔の仲間に会えるかもしれないの。」
一瞬、その表情が僅かに変わる。
「フューリーに頼まれた戦力を増やすことにも繋がるかもしれない。戦闘になったら頼りにしても良いかしら?」
風のエルが隣を歩く。
「当然。そのための護衛だ。」
「そう?助かるわ。」
ブラック・ウィドウ、そして風を司る超越存在。普通ならば決して並ぶことのない二人が、レッドルームという過去を終わらせるため、動き始めた。
ーーーーー
――そして、さらに数日後。
「え?」
僕は目の前にいるバナーさんを見つめていた。この頃には身体もほとんど本調子に戻っていて、普通に動き回れる程度には回復している。バナーさんが村まで訪ねてきたこと自体も、あり得ることだ。
問題は。
「……ハルクが?」
「ああ。」
バナーさんが非常に言いづらそうな顔をしている。
「君と話したいらしい。」
「話?」
「うん。」
「良いですよ。」
普通に返答しただけなのに、バナーさんが固まった。
「え?」
「え?良いですけど。」
「いや。」
バナーさんが思わず身を乗り出す。
「ハルクだよ?」
「はい。」
「ハルク。」
「分かってますよ?」
「……良いのかい?」
そこで僕は少し考え、
「あ。」
「ほら!」
「ハルク用の椅子とかないですけど、それでも良いですか?」
「そこじゃない!」
思い切り突っ込まれた。
「君は……。」
バナーさんが額を押さえる。
「本当に凄いな。普通はもっと怖がるものなんだけど。」
「でもハルクが話したいって言っているんですよね?」
「…………。」
バナーさんが少しだけ黙った。
「まあ……そうなんだけど。」
ということで。念のため闇の力にも同席してもらい。真魚も、
「ハルクさんと話すの? 見たい。」
という完全に興味本位の理由で参加。ある程度周囲を片付け、広い場所を確保してから。バナーさんがゆっくりと目を閉じた。数秒後、身体が膨れ上がる。
筋肉、骨格、皮膚、全てが変化し、巨大な緑色の身体がそこに立った。
「こんにちは。」
僕がハルクに向かって、普通に頭を下げる。
「こんにちは、ハルクさん。」
真魚も頭を下げた。
「…………。」
ハルクが二人を見る。そして。
「…………。」
ペコリ、と会釈した。
『えええええええええええええ!?』
その瞬間。バナーさんの声が、何故か頭の中から聞こえたような気がした。いや、本当に聞こえたわけじゃないけど。たぶん今、内側でそんな感じになっている。
ハルクはそんなことなど気にせず、僕をじっと見る。
「ハルク。」
「はい。」
「強い。」
「はい。」
「ハルク、一番強い。」
胸を張る。
「思ってた。」
「……思ってた?」
僕が聞き返すと、ハルクの巨大な指がこちらを指した。
「お前。」
「僕?」
「一番強い。」
いや、一番は僕じゃないと思うけど。そう思っていると、ハルクの指が今度は闇の力へ向く。
「アイツ。」
「…………。」
「二番強い。」
「…………。」
闇の力は何も言わない。というか、僕が一番で闇の力が二番なのは、たぶん絶対に逆だ。そのままハルクは少し考え、
「……他。」
「はい?」
「強い。」
少し言葉を探してから、
「いっぱい?」
と尋ねてきた。僕は少し考える。
「いっぱいかは分かりませんけど。」
ハルクを見る。
「いますよ。」
「…………。」
「確実に。」
ハルクが黙って、更に何かを考える素振りをしてから、
「修行。」
「え?」
「トレーニング!」
突然叫んだ。
「トレーニング?」
真魚が目を丸くする。
「ハルクさんがトレーニングするってことですか?」
ハルクが力強く頷く。
「トレーニング。」
さらに僕へ顔を近づけ、
「何する。良い?」
「…………。」
トレーニング。ハルクのトレーニング。
「うーん。」
僕は腕を組んだ。普通の筋トレ、は意味ないよな。走り込み、もたぶん地面が壊れる。組手……誰と?そんなことを考えていると。
「あ。」
真魚が声を上げた。
「あそこは?」
「え?」
僕が真魚を見る。
「あそこ?」
「うん。」
「…………あ。」
何のことか理解して。僕も声を上げた。
「あそこか。闇の力。」
「ん?」
「あそこ、どうです?」
闇の力が少し考えてから頷き、
「あそこなら、彼のトレーニングにもなるか。」
「ですよね。」
ハルクが僕たちを見る。
「トレーニング?」
「はい。」
僕は笑った。
「たぶん最高の場所がありますよ。」
――後日。
ブルース・バナー博士は休暇を取得した。本人曰く。
『少しハルクに付き合ってくる。』
とのことだった。その後、彼がどこへ行ったのかを正確に知る者は少ない。ただ、かつてスクラル人たちの移住候補地として調査した、とある惑星。
大気。
重力。
水。
生態系。
そのほとんどが居住に適しているにも関わらず。そこには、一つだけ重大な問題があった。生物が大きすぎること。山のような生物、巨大怪獣としか表現できない生物。数十メートルは当たり前。百メートルを超える個体も存在している。そのような存在たちが普通に生息している惑星。
そこへ。
「オォォォォォォォォォォォ!!」
雄叫びを上げながら巨大生物へ突進していく緑色の人がいた。地球基準なら巨体たが、この星では豆粒サイズである。しかし、
――ズドォォォォォォォォン!!
真正面から激突し、巨大生物が唸る。ハルクは笑う。次の瞬間には組み合い。そのまま、
「フンッ!!」
巨大生物の身体が持ち上がる。
――ドォォォォォォォォン!!
投げた。
別の日。巨大な四足獣とハルクが互いに構える。次の瞬間、相撲が始まった。
さらに別の日。巨大生物の群れと山岳地帯を走り回った。
別の巨大生物と岩を投げ合った。
空を飛ぶ怪鳥へジャンプで追いつこうとし、地面を泳ぐように移動する巨大生物と競争し。
毎日のように、
「もっと!! もっと!!」
楽しそうな雄叫びが惑星中へ響いていた。そして、その身体の奥では。
『うわああああああああああああああああああ!!』
ブルース・バナー博士が叫び続けていたらしい。
もっとも。
後に本人は、
「……ハルクがあんなに楽しそうなのは初めて見たよ。」
と、どこか複雑そうに語ったという。