日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
「俺と一緒に戦おうぜ。」
火のエルは、本当に近所へ遊びに行く相手でも誘うような気軽さでそう言ってくるが、その言葉を向けられた僕とピーターは、当然ながらすぐには反応できない。
「……戦うって。」
僕は火のエルの顔を見ながら、頭の中でここまでの話を整理する。今日ここへ来た目的は、エンシェント・ワンが僕と真魚に会いたがっていたから。その結果、真魚とサラとジーンが魔術を学ぶことになった。
そして、ここからが僕とピーターへの本題、火のエルと一緒に戦うこと、となれば思い当たる相手は一つしかなかった。
「もしかして、えっと名前が確か、……カエシリウス。カエシリウスとの戦いに、僕たちも参加するってことですか?」
僕が尋ねると、火のエルは口元を吊り上げる。
「御名答。」
なるほど。カエシリウスはエンシェント・ワンの弟子だったけど、ダーク・ディメンションの力に魅入られた魔術師だ。本来であれば、スティーブン・ストレンジが魔術師になった後、その戦いへ巻き込まれることになるけれど、状況が大きく変わった。
エンシェント・ワンは来年に迫っていた自分の死を回避できる可能性を見つけ、真魚たちまで魔術を学ぶことになった。なら、カエシリウスとの戦いに僕たちが参加することになっても、それほど不思議ではない。
「さらに。」
……あ、嫌な予感がする。
「ドルマムゥも、ぶっ潰せるならぶっ潰す。」
「……はい?」
自分でも間抜けな声が出たと思うが、火のエルは平然としている。いやいやいや。待って、
「ドルマムゥって……。ダーク・ディメンションの?ストレンジさんが何回死んでも時間を巻き戻して、嫌がらせみたいなことを続けた結果、ようやく地球から手を引かせたヤツですよね?」
「ああ、それで合ってるよ。」
「それを……倒す?」
「出来るならな。」
「………あれって、倒せるものなんですか?」
僕の問いに、火のエルは少し考えて、
「分からん。」
「分からないんですか!?」
「だから試すんだろ。」
この人、何を言っているんだ?ピーターも状況がよく分かっていないらしく、僕と火のエルを交互に見ている。
「クロオさん。そのドル……なんとかって、そんなに強いんですか?」
「ドルマムゥね。」
僕は少し考えるが、どう説明すればいいんだろう。
「えっと……別次元を支配してる、ものすごく強い存在、かな?」
「ものすごく?」
「少なくとも、普通に殴って倒せる相手ではないと思うんだ。」
ピーターの顔が引きつった。
「それを僕たちで?」
そんなやり取りをしていると、火のエルは呆れたように肩を竦めた。
「別に今すぐ戦いに行くって話じゃねぇよ。」
「そういう問題じゃないと思うんですけど。」
僕がそう言うと、火のエルは少しだけ真面目な顔になり、それまでの軽い調子がなくなった。
「だがな、アレぐらい倒せないと、この先、セレスティアルズが出てきた時、もっとヤベェかもしれねぇぞ?」
「……セレスティアルズ。惑星を餌にして誕生する存在……でしたよね?」
火のエルはあっさり頷く。
「ああ。そして、いずれ来るぞ、奴らは。」
地球の内部で育っているセレスティアルの成長を、会ったことのない氷のエルが食い止めているらしい。そのセレスティアルの種を地球に植え付けた存在がいる。そいつらの対策も考えなきゃいけない。
……そこまで考えて、僕は頭を抱えてしまう。
「……まだサノスも来てないんですけど。」
「なんだ?宇宙からの脅威が順番待ちしてくれるとでも思ってんのか?」
「思ってないです。」
むしろ、最近の状況を見る限り、地球内での脅威だって順番を守ってくれない。ウルトロンだって、本来とは全然違う形で出てきたし、色んな時系列もズレている。
今日なんて、ジーン・グレイまで現れた。もう、何がいつ起きても不思議じゃない。
「だから、まずはドルマムゥだ。」
火のエルが言う。
「何で『まずは』でドルマムゥになるんですか。」
「理由は簡単だ。奴を撃退する手段は、既にある。」
そこで僕も気づいた。
「あ。」
「分かったか?」
「タイムストーン。」
「その通り。」
火のエルがニヤリと笑う。
「ガチンコで勝てなきゃ、そっちを使えばいい。」
僕は思わずエンシェント・ワンを見ると、エンシェント・ワンは特に驚いていない。ということは、この話、事前に聞いてるのかな?
「しかも、石と俺。両方揃ってる。」
「……そうだった。」
本物のタイムストーンと、その力を持った火のエル。時間関係の戦力は揃っている。
「まず、カエシリウスどもを拿捕する。その後、三つのサンクタムによる結界を一時的に止める。」
「話の流れからして、ドルマムゥを地球に入れないための結界ですよね?」
ピーターが恐る恐る尋ねる。
「それを、自分たちから止めるんですか?」
「そうだ。」
ピーターが僕を見て、僕もピーターを見る。
「……正気ですか?」
ピーターが言い、僕も同じことを思う。
「ドルマムゥをこっちから呼び寄せ、その後は…………アルティメット頼みだ。」
「結局それ!?」
反射的に自分を指差した。
「他に誰がいる。」
「いや、いるでしょ!エンシェント・ワンとか!アナタだってバーニングフォームのアギトの力を持ってますよね!?」
「勿論、全員で戦う。だが、メイン火力の担当はお前だ。」
嫌な役割を押し付けられた。アルティメットは僕自身の、いや、地球の最強戦力の一つだ。今まで何度か使ったことはあるけれど、制御の不安も含めて、積極的に使いたい形態ではない。とはいえ、
「……行けますかね?」
思わず聞いてしまう。ドルマムゥ、ダーク・ディメンションそのものとでも呼ぶべき存在。いくらアルティメットでも倒せるイメージが湧かないんだけど。
「あのハルクの野生がお前は闇の力より上だって判断したんだろ?」
「……それは、そうらしいけど。」
確かに本人からそう言われた。正直、今でも信じきれていない。
「なら、やってみる価値はあるだろ。」
「そんなノリで異次元の支配者と戦わせないでほしいんですけど。」
「ダメなら時間を巻き戻せばいい。」
「保険の使い方が豪快すぎる。」
それを聞いたエンシェント・ワンが、ほんの僅かに笑っている。絶対この人も乗り気だ。そこへ、
「あのー。」
ピーターが遠慮がちに手を上げた。
「僕は?」
……そういえばそうだ。今回、火のエルは僕とピーターへ「一緒に戦おう」と言った。僕はドルマムゥ担当。じゃあ、ピーターは?
「お前さんはカエシリウスどもの拿捕に協力してくれ。」
「カエシリウスって、さっき言ってた魔法使いの人ですよね?僕が魔法使いを相手に戦えますか?」
「お前、動き速いだろ。」
「いや、そうですけど。」
ピーターが困った顔になるが、火のエルは軽く笑った後、
「アイツらを野放しにした状態でドルマムゥを呼ぶと、色々と面倒なんだ。よろしく頼む。」
僕も頷く。カエシリウスたちはドルマムゥの信奉者だ。せっかくドルマムゥと戦っている最中に、横から邪魔されたら最悪である。
「だから先に全員捕まえる。出来れば一人も逃がさずにな。」
「なるほど……。」
ピーターが少し考えてから頷いた。
「捕まえるだけなら、僕も役に立てると思います。」
うん。むしろ、ピーターのウェブは捕縛に向いている。………なんて考えていると、火のエルから小声で、
「お前、エンドゲームの後の作品はほとんど見てないの?」
「いえ? ファー・フロム・ホームは見ました。スパイダーマン作品ですし。」
「あー、そこ止まりか。」
火のエルの反応に、僕は愕然としてしまう。
「…………まさか、続編観てるんですか!?」
僕の突然の叫びに他の皆が怪訝な顔になってしまった。
「どうかしたのクロオ?」
ジーンが心配した様子で顔を向けてきて、真魚は『またか』という表情を向けてきている。火のエルが慌てて、僕の肩を掴み、
「静かにしろ。………今度詳細教えてやるから。」
「絶対ですよ。」
小声でナイショ話を続けると、
「まあ、結論から言うとだ。ピーターの奴、エンドゲーム後だと、ストレンジを手玉に取れる程度には魔術師相手に戦えるんだよ。」
「………マジですか?」
「おう、マジだ。」
二人でチラッとピーターを見る。僕らの様子にピーターはオロオロしているが、
「期待しているよ、ピーター。」
「頼りにしてるぜ、ピーター。」
「不安になるんで、やめてください。」
変な期待をかけたらピーターに真顔で怒られてしまった。ただ、火のエルは気にする様子もなく、
「さて、お前ら。準備はしっかりしておけよ。」
「準備ですか?」
「ああ。カエシリウスどもの動き次第のところもあるからな。」
まあ、それなら仕方がない。……安心していい話なのかは分からないけど。火のエルがそこで僕を見て、
「ほら、お前も。ライジングアルティメットとか使えるようにしとけよ。」
言われて僕は黙ってしまい、火のエルが眉を寄せる。
「どうかしたか?」
「……実は。………もう、ライジングアルティメット自体は使えまして。」
今度は火のエルが止まる。
「お、なら良いじゃねぇか。いつ使えるようになった?」
「ウルトロンの事件の後くらいには。」
ライジングアルティメット。アルティメットフォームだけでもクウガとしての最終形態だけれど、そこから更にライジングの力まで重ねた、とんでもない強化形態である。
火のエルは満足そうに頷いた。
「じゃあ問題ねぇな。」
僕はそこで首を横に振る。
「いえ、問題はあるんです。」
「問題?制御できないとかか?」
「いえ、アルティメット同様に制御に不安があることには変わらないんですが、問題はそこではなくて。」
説明に困っていると、
「まあ、せっかくなら実際に見せてみろよ。ここだと狭いから……もう少し広い場所、というか屋外に移動するか。」
アルティメット、というかライジングアルティメットに変身するなら、出来るだけ開けた場所の方がいい。火のエルがエンシェント・ワンに視線を向け、
「カマー・タージの広場、借りていいか?」
「構いません。」
エンシェント・ワンは即答した。
「ちょうど今から、彼女たち三人にカマー・タージを案内しようと思っていましたから。」
視線が真魚、サラ、ジーンへ向く。
「その前に、修練場へ寄りましょう。」
「修練場?」
ピーターの目が輝いた。
「魔法使いの修練場ですか?」
「ええ。」
「見たいです!」
君、本当にそういうの好きだね。
「クロオの変身が見られるの?」
ジーンも興味を持ったらしい。
「まあ、そうなるね。」
「見たい。」
「私も。」
サラまで乗ってきた。さっきまで僕を怖がっていたのに、良い傾向ではあるのかな?
「じゃあ私も。」
真魚が立ち上がる。いや、真魚は僕の変身を何度も見てるでしょ。
「何よ、ダメなの?」
「いや、まったく。」
エンシェント・ワンが立ち上がると、それに合わせるように、僕たちも次々と席を立った。
さっきまで後継者の話をして、ドルマムゥを倒すとか、セレスティアルズが来るとか、相当とんでもない話をしていたはずなのに。気づけば今から、僕の変身見学会が始まろうとしている。
「……何か嫌だな。」
「何がです?」
ピーターが隣を歩きながら聞いてくる。僕は前を歩くエンシェント・ワンたちを見る。
「見世物になる気分。」
「僕は楽しみです!」
「知ってる。」
むしろ君が一番楽しみにしてるよね。
ーーーーー
エンシェント・ワンに案内され、今度はニューヨーク・サンクタムから、カマー・タージに移動する。そこから、いくつかの回廊を抜けた先で開けた空間が見えてきた。何人もの魔術師が同時に訓練できるほど広い、石造りの修練場。エンシェント・ワンが足を止め、こちらを振り返る。
「ここなら問題ないでしょう。」
修練場を見回して確認するけど、十分すぎる広さだ。
「ありがとうございます。」
僕は軽く頭を下げ、そのまま中央へ向かって歩き出す。背後から、ピーターたちの視線を感じる。僕は修練場の中央まで歩いてから振り返り、皆を見る。そして、少し困りながら口を開いた。
「じゃあ……まず、普通のアルティメットから見せますね。」
そう言ってから、一度だけ息を整える。戦闘をするのではなく、変身して見せるだけ。真魚もいるし、暴走の心配は多分ない。ただ、何人もの視線が自分へ集まっているというのは、妙な緊張感がある。まあ、今さら恥ずかしがっていても仕方がない。僕は両足を開き、腰を落とす。そして、
「究極変身。」
静かに呟く。次の瞬間、僕の身体を黒い装甲が覆っていく。赤でも、青でも、緑でも、紫でも、金でもない。クウガという存在が辿り着く、究極。漆黒の身体、巨大な角、全身に刻まれた金色のラインと、異形と言っていいほど禍々しい装甲。
アルティメットフォーム・レッドアイ。
変身そのものは一瞬だったけれど、変わったのは外見だけではない。全身から溢れ出す封印エネルギーが、周囲の空気そのものを押さえつけるように広がっていく。別に威圧しているつもりなんてない。敵意も殺気も向けていない。それでも、この姿になるだけで、どうしても周囲には影響が出てしまう。その証拠に僕から少し離れた場所にいたピーターの表情が固まっている。
「…………うわ。」
ピーターの口から小さく漏れた声。サラも目を見開き、思わず一歩だけ後ろへ下がっていた。精神を読まれた時ほど怯えているわけではないけれど、それでも明らかに警戒している。それだけじゃなく、火のエルまで軽い表情を消して僕を見ていた。以前、この姿の僕を見たことがあるどころか、実際に殴られたことまである相手なのに、それでも改めて見ると感じるものがあるらしい。エンシェント・ワンも、何が起きてもほとんど表情を変えなさそうな人なのに、今は目を細め、僕を観察している。その表情には明確な警戒が含まれている。
そんな中、
「ふーん。」
真魚だけは普通だ。僕がブラックアイの状態になったところまで見ている以上、今さら普通のアルティメットを見たところで驚く理由もないらしい。そして、もう一人。
「おー。」
パチパチパチ、と。何故かジーンが楽しそうに手を叩いていた。……僕は思わずジーンを見てしまう。この姿を初めて見た十二歳の女の子がする反応じゃないと思うんだけど。さすがジーン・グレイ、将来が心配になるほどの大物ぶりだよ。
「えっと……。」
とりあえず気を取り直し、僕は自分の身体を軽く見下ろす。
「この姿がアルティメットです。全身に封印エネルギーを纏いながら戦うことが出来ます。」
自分で説明しておいてなんだけど、随分と雑な説明である。
「色々出来ますけど、僕としては殴る蹴る以外だと、瞬間移動と封印エネルギーを放つくらいですね。」
ピーターが呆れたように言う。
「色々出来るって範囲じゃないですよね、それ。というか、瞬間移動出来るんですか?」
「出来るよ。」
「それ、もっと早く教えてくださいよ!」
いや、何で怒られてるんだろう。ピーターの反応に少し苦笑してから、僕は話を続ける。ここからが本題だ。
「それで、ライジングアルティメットですけど。ゾラ・ウルトロンと戦った時の最後の一撃。あれには封印エネルギーだけじゃなくて、ヴィブラニウム製の身体を粉砕するために、金の力も一緒に込めたんです。」
あの時は、ほとんど考える余裕なんてなく、ゾラ・ウルトロンの身体を確実に破壊するため、使える力をまとめて叩き込んだだけだった。
「でも、その後からなんとなく、いけるかな? って感じがして。」
「なんとなくで新形態に行くのかよ。」
火のエルが呆れる。
「いや、感覚なんですよ。上手く説明出来ないんですけど。」
クウガの力は、元々そういう部分が多い。自分の身体なのに、自分で完全に理解しているわけではない。でも、出来ると感じたから試す、その繰り返しだった。
「それで、闇の力に協力してもらって何度か試してみたら、変身できちゃいました。」
「できちゃったんだ……。」
ピーターが何とも言えない顔をしているけど放っておく。
さて、次はどうしよう。普段、アルティメットになる時は「究極変身」と言っているけど、
「えっと……究極変身の後だけど……まあ、いつも通り超変身で良いか。」
「適当だな。」
火のエルから即座に突っ込まれたけど、正直気持ちの問題だから、気にしない。
「超変身。」
身体の奥に存在する、もう一つの力へ意識を向ける。雷のエルの力をアルティメットの身体へ重ねていく。激しい雷光が全身を駆け抜け、黒い装甲の上を金色の稲妻が走り、次の瞬間、アルティメットの身体へ新たな装甲が形成されていく。
元々存在していた金色の装飾がさらに大きく、厚くなり、まるで漆黒の身体を金色の鎧で覆っていくように姿が変わる。修練場に雷鳴が響き、ライジングアルティメットへの変身が完了する。多分、僕が現在使える、単純な身体能力という意味では間違いなく最強の形態だ。
皆の反応がさっきとは違う。アルティメットの時に感じられた、静かで、それなのに逃げ場のないような威圧感ではなく、今度はもっと分かりやすい、純粋なエネルギー量。僕の身体の内側から溢れ出す膨大な力が、雷光となって周囲へ漏れ出している。
ピーターが目を見開き、サラも呆然としている。火のエルですら、少し驚いた顔をしていて、エンシェント・ワンはじっと僕を見つめている。真魚も今度は素直に感心したように僕を見ていた。
でも、全員の表情に、驚きとは別のものが混ざっている。僕自身も分かっている。確かに強い、さっきより遥かに力が増している。身体能力なんか特に。なのに、どこか違う。皆もそれを感じているらしい。
火のエルが眉を寄せ、ピーターも首を傾げている。
「この違和感はなんだ?」
「さっきより……強いんですよね?」
「なんか。」
ジーンがぽつりと言った。皆の視線が集まる中、ジーンは僕をじっと見ながら、少し考えるように首を傾げ、
「さっきの方が怖い感じがした。」
僕は数秒黙ってしまう。
「………いや、君、さっきその怖い姿を見て『おー』って手を叩いて興奮してたよね。」
「うん。」
「うん、じゃないんだけど。」
何故そんなに平然としているのか。やっぱり大物だな、と僕は溜息を吐く。
「……でも、多分、的を射てると思うよ。」
ジーンの言葉は、かなり核心を突いている気がした。僕は自分の両手を見る。
「このライジングアルティメット、物理的なパワーを上げる代わりに、封印エネルギーの出力が下がってる感じがするんですよ。」
「封印エネルギーが?」
火のエルが聞き返す。そして、エンシェント・ワンが静かに口を開いた。
「確かに。」
僕を見るその目は、先ほど以上に鋭い。
「先ほどのアルティメットの姿には、対峙した瞬間に『絶対に勝てない』と予感させるような気配がありました。今も圧倒的な力を感じることに変わりはありません。しかし、先ほどとは性質が違う。」
「ですよね。」
やっぱり僕の感覚だけではないらしい。そこで火のエルが顎を擦りながら、
「あー……なんだ。」
何かに気づいたような顔をした。
「某戦闘民族王子の息子みたいな感じになってるってことか?」
「微妙に違いますけど。」
例えが分かりやすすぎて困る。
「パワーを求めすぎて、スピードの代わりに肝心の封印エネルギーが弱まってしまっている、という意味なら似てますね。本来、クウガは封印エネルギーが強みなんです。それが弱くなってるなら、いくら物理的なパワーが上がっても本末転倒なんですよ。」
ピーターがますます分からないという顔になる。
「パワーが上がっているのにダメなんですか?」
「うーん。」
説明するなら、普通の姿の方がいいかな。僕は変身を解除する。雷光と共に金色の装甲が消え、続いてアルティメットの姿も消えて、元の身体へ戻った。
「あー……。」
どう説明すれば分かりやすいだろう。
「強い敵になればなるほど、自分の身体に凄まじいエネルギーを纏ってることが多いんだ。」
「はい。」
「で、僕の封印エネルギーは、それを打ち消せる。」
ピーターが瞬きをする。
「打ち消す?」
僕は拳を握る。
「相手が身体を守るために使ってる力とか、特殊な能力とか、そういうものを封印エネルギーで押さえ込める。だから、相手の力を封じながら、こっちは素のパワーで攻撃出来るんだ。」
ピーターはしばらく考えて、
「ゲームのチートっぽいですね。」
「反則的な力って意味なら否定はしないよ。」
我ながら、かなり無茶苦茶な能力だと思う。
「でもライジングアルティメットは、雷のエルの力が前面に出すぎていて、その反則的な部分が弱まってる。それが問題なんだ。」
ピーターがようやく納得したように頷いた。
「ああ。………ゲームの育成ミスでよくある、そのキャラの一番伸びる能力を間違えた、的な。」
「んー、間違っては、ないかな?」
すると火のエルが何か思い出したように頷く。
「雷のエルの力ってのは、元々、闇の力がお前さんにアルティメットなしでも強敵と戦えるようにって与えた力だったか?」
「たぶん。光のエルと戦っている時、金の力の制限時間が来てしまって、その時に貰った力です。」
「その力、アルティメットが暴走した時のセーフティーも兼ねてるだろ?」
キャロルさんと戦ってしまった時、アルティメットに変身するのを雷のエルの力が止めにかかっている感覚があったのはそれか。僕が過去の失敗を振り返っていると、火のエルは腕を組み、
「ハルクと殴り合ったりする分には、ライジングアルティメットでも良いんだろうが、ドルマムゥが相手となると、通常のアルティメットの方が良いのかもな。」
「僕も、そう思ってます。」
単純な腕力だけなら、ライジングアルティメット。でも、ドルマムゥみたいな存在を相手にするなら、むしろ封印エネルギーを最大限使える方が重要になる。そう考えると、せっかくライジングアルティメットを使えるようになったのに、今回に限っては出番がないかもしれない。
…………なんか悲しい。そんなことを考えていた時だった。
「普通のクウガでも雷使えるんだから。」
ジーンが言った。
「普通のアルティメットの姿のまま雷使えば良いんじゃない?」
「…………え?」
僕だけじゃない。真魚も、ピーターも、サラも、火のエルも、エンシェント・ワンも、全員がジーンを見る。
「何?」
突然注目されて、ジーンが不思議そうな顔をする。
「だってクウガがクロオなら、ニューヨークの時、赤の姿で雷使って暴れてた。」
「いや、あれは……。」
僕は反射的に説明しようとすると、代わりにピーターが説明を始める。
「あれは金の力を使っていて、その発展で黒になって、それが最終的にさっきのライジングアルティメットの――」
そこまで言って、ピーターが一度説明を止め、疑問の声を上げた。
「あれ?………クロオさん。黒の金のクウガの時とか、この前の模擬戦の金の赤の時、ライジングアルティメットみたいにたくさん装甲を纏わなくても雷、バンバン使ってませんでした?」
「ああ。あれは雷のエルの力で、金の力とはべ…つ、もの?」
金の力も雷のエルの力もバンバン使ってた。でも、………ん?ニューヨークで使っていたのは金の力で、ピーターとの模擬戦で使っていたのは……雷のエルの力。…………あれ?
「金の力と雷のエルの力は別もの?」
そうすると、ライジングアルティメットを会得するために僕がやってきたことが根本的に間違っていたことになる。
さっき火のエルが、雷のエルの力にはアルティメットの暴走を食い止める要素もあるってハッキリと言っていた。その力を、雷のエルの力を、外付けの金の力と同じ扱いにしてアルティメットの装甲の上に更に追加していた。
「……そうか。金の力ではなく、雷のエルの力を装甲として纏っているから、封印エネルギーの、アルティメットの力のバランスが崩れているんだ。」
だったら、金の力だけを纏って………いや、金の力と雷のエルの力じゃ出力と持続時間が全然違う。
「雷のエルの力を纏うんじゃなく、」
アークルを中心に、封印エネルギーを邪魔しないように、
「内側で、両方の力を混ぜ合うように、循環させるように。」
僕はぶつぶつと呟きながら、再び修練場の中央へ歩いていく。
「クロオ?」
真魚が声を掛けてくるけど、返事を返さず準備を進める。今は頭の中に浮かんだ感覚を逃したくない。
出来る。
今までと同じだ。何故か分からないけど、出来る気がする。
僕は両足を開き、腰を落とす。雷のエルの力を表へは出さない。装甲も作らない。あくまで、身体の中に留め、流す。封印エネルギーも同様に!
「究極変身!」
今度は、自信を持って、はっきりと叫んだ。漆黒の装甲が僕の身体を包み込み、アルティメットフォームへと姿を変える。さっきと同じ姿。でも違う。
バチッ。
小さな雷が、金色の雷が、アルティメットの右腕の装飾で弾ける。続いて左腕、両脚。けれど、ライジングアルティメットの時のように装甲は増えない。姿そのものは、通常のアルティメットのまま。ただし、四肢にある金色の装飾が淡く輝き、アルティメットの全身に走る金色のラインには封印エネルギーだけでなく、雷のエルの力も絶えず走り、僕の身体の中を循環していく。
………封印エネルギーは弱まっていない。さっきまでとは違い、アルティメットの封印エネルギーと雷のエルの力、二つが互いを押し退け合わず、同時に存在している。それどころか、雷のエルの力がアルティメットの力と溶け合い、安定させ、互いを高めてすらいる。
「出来た。」
思わず声が漏れるが、誰も何も言わない。ただ、全員が僕を見ていた。
アルティメットの圧倒的な封印エネルギー、そして雷のエルの力が内側を駆け巡る。僕がゆっくりと拳を握り締めると、
バチッ、と金色の雷が弾けた。
「…………これなら。」
感覚としては、………圧倒的に強くなった。ふと、視線をアークルへと向けると、
「………あ。」
これまで、アルティメットに変身した際は漆黒に染まっていた霊石アマダムが、金色に輝いていた。