日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
仮面ライダーっヒロインいる?っていう意見もあるとは思いますが、僕はいて良いと思ってます。
翌日、僕と一条さんは再び警視庁を訪れていた。
昨日久しぶりに来たけれど、二年前はかなりの頻度で出入りしていたから慣れたものである。
G3ユニットの部屋に、氷川さん、小沢さん、小室さん、そして僕と一条さんの全員が揃ったところで、一条さんが話を切り出した。
「昨日、黒雄がアンノウンを統率している存在と接触した。」
「……はい?」
氷川さんが固まった。
「統率している存在?」
小室さんも目を瞬く。一方、小沢さんだけは、なんか目を輝かせていた。
やめて。その目は知ってる。ニューヨークで僕のアークルを見た時のスタークさんと同じ目だ。絶対ろくなことにならない。
「十文字君。」
「はい。」
「詳しく。」
「……はい。」
僕は昨日、闇の力から聞いた内容の一部を説明した。
闇の力と光の力の対立や、アギトや超能力者、そして、アンノウンの活動目的について。
光の力が世界を守るために超能力者やアギトを増やしている事については、ここ以外では口外しないことを約束してもらった。
一条さんが、この三人は信用できる、と言っていたから僕も信用する。
そして、津上翔一という人間の身体を、現在は光の力が使っていることも説明した。
「つまり、アンノウンは超能力者を無差別に殺害しているわけではないと?」
「親玉の話を信じるなら、そうらしいです。基本的には、光の力によって与えられた能力を奪うのが目的ですが、既に力に執着していたり、抵抗したりすると戦闘になるそうです。」
「その結果、殺害に至る可能性がある、と。」
氷川さんの言葉に僕は頷く。
「はい。」
ここは重要だ。闇の力に人類を滅ぼす意思がないからといって、アンノウンを放置していいわけじゃない。実際に人が亡くなっているわけだし。
「なので、アンノウンへの対応はこれまで通りでいいと思います。」
「遭遇した場合は?」
「止めます。事情がどうであれ、人間に危害を加える可能性があるなら、見逃す理由にはなりません。ただ……。」
「殺す必要はない?」
「はい。」
昨日までなら完全に敵だと思っていた。でも今は違う。可能なら撃退に留める。
「そして、俺たちが今優先すべきなのは――」
一条さんが机の上に津上翔一に関する資料を置いた。
「この人物の捜索だ。」
「光の力が使っている身体……。」
小室さんが資料を見る。
「僕らだけで、どうやって探すんです?」
「犯人探しは警察の全体の仕事だ。」
一条さんが淡々と答える。頼もしい。
ということで。話はその日のうちに杉田さんたち、未確認生命体対策に関わっていた警察官の皆にも共有された。
「……一条。」
「はい。」
「話の規模がおかしくなってないか?」
「俺のせいではありません。」
「じゃあ黒雄くんか。」
「僕のせいでもありませんよ!?」
風評被害だ!ともかく。警察による津上翔一の捜索が始まった。
そして――。
その捜索は、思った以上に長引いた。
ーーーーー
一週間、二週間、三週間。津上翔一は見つからなかった。その間にもアンノウンは何度も現れた。いずれも、狙われた人は超能力の兆候を見せていた。そして僕たちが介入すると、アンノウンたちはこちらに襲いかかってきた。
「ハァッ!」
蹴り飛ばすが、アンノウンはすぐに立ち上がってくる。
「もうやめません!?」
言葉が通じてない訳じゃないのに止まってくれない。襲いかかってきた腕を受け止め、そのまま投げ飛ばす。倒すだけなら難しくはないけれど、殺さないとなると、意外と面倒だった。
「帰ってください!」
『――――!』
「いや、怒るなって!」
再び突っ込んでくる。闇の力が言ってた自尊心ってこれか!?
結局、腕を掴んで地面に叩きつけまくるハルクスタイルを駆使する事で、アンノウンはようやく撤退してくれた。
そんな戦いを何度か繰り返していたある日。僕がG3ユニットを訪れると、
なんかいた。いや。多分氷川さんなんだけど。氷川さんなんだけども。
「……何ですか、これ?」
全身を覆う装甲。以前のG3よりも明らかに強化されたシルエット。そして、各部に追加された新装備。僕の記憶にある姿と、ほぼ同じ。
「新型のG3ーXよ!」
小沢さんが腕を組み、満足そうに言った。
「出来ちゃったんですか!?」
「出来ちゃったとは何よ。」
「いや、だって!」
早くない!?原作だともうちょっと色々あっただろ!
「アンノウンの能力が予想以上なのよ。それなのに、主戦力が高校生一人ってどういう状況よ。」
「僕、一応クウガなんですけど。」
「高校生でしょうが!」
「はい。」
正論だった。
「高校生だけに任せていられないから張り切ったわ!」
そう言って小沢さんは胸を張った。
「……で、張り切った結果がコレですか?」
「そうよ!」
行動力が凄い。
「氷川さん、大丈夫なんです?」
僕は少し心配になって聞いた。僕の知るG3-Xは、強力すぎる戦闘支援AIが装着者の意思を無視して動き、氷川さんが振り回される問題があった。しかし、
「問題ありません。」
氷川さんは普通に答えた。
「むしろ以前より動きやすいです。」
「へー。」
「戦闘支援AIが氷川君の動きを予測して、姿勢制御や照準補正を行ってるの。」
小沢さんが端末を操作する。
「完全自動じゃなくて、あくまで補助。最終判断は氷川君本人よ。」
「……そんな簡単に出来たんですか?」
「簡単じゃないわよ。」
「ですよね。」
「三日徹夜した。」
「寝てください。」
この人もスタークさん側の人間だった。考えてみれば、この世界はスタークさんがいるし、S.H.I.E.L.D.もある。加えて、チタウリの技術まで流入し始めている。
AI技術そのものが、僕の知っている『仮面ライダーアギト』の世界より遥かに進んでいてもおかしくない。結果、原作で問題児だったG3-Xは――。
「氷川さん、右!」
『把握しています!』
アンノウンの拳を回避し、G3-Xの拳が腹部へ突き刺さる。さらに戦闘AIの補助で一切姿勢を崩さず、追撃。
「おー。」
普通に強い。
「ハァァァッ!」
氷川さんがアンノウンを殴り飛ばした。僕、いらなくない?
ーーーーー
そして。そんな日々の中。僕は闇の力とも何度か会っていて、今日もそうだ。
喫茶店の窓際。僕の前にはコーヒー。闇の力の前にはカプチーノ。ここまではいつも通り。問題は、闇の力の隣に、明らかに一般人じゃない人が座っていることだ。
長身で無表情。ものすごい威圧感を発している。
「……あの。」
「何だ?」
「そちらの方は?」
闇の力がカプチーノを飲みながら答える。
「風だ。」
「風?」
「風のエル。」
僕はゆっくり隣を見ると、風のエルさんが軽く頭を下げてきた。僕も頭を下げ、挨拶する。
「どうも。十文字黒雄です。」
「知っている。」
……いや待て。風のエル?それって確か。
「幹部級連れてお茶に来るなよ!」
店内の視線が集まる。またやってしまった。
「……すみません。」
「何か問題があるのか?」
「問題しかないですよ!」
ラスボスとその幹部が喫茶店でカプチーノ飲んでるんだぞ!
「風は私の護衛だ。」
「あなたに護衛必要なんですか?」
「必要ない。」
「じゃあ何でいるんだよ!」
風のエルさんが静かに答えた。
「私が同行を願い出た。」
「なんで?」
「クウガを見たかった。」
見世物じゃないんですけど。その後、三人で普通にお茶して解散した。
意味が分からない。
ーーーーー
それから数日後、事態が動いた。
『十文字君!』
通信機から小沢さんの声が響く。
『市街地で大規模な火災! ただし、普通の火事じゃない!』
「アンノウンですか!?」
『違うわ!』
火事なら急がないと。ゴウラムを呼んで現場へ急行する。そこで見たのは――。
「ハハハハハハッ!」
炎の海だった。道路、街灯、自動車。周囲のあらゆるものが燃え、その中心には一人の男が立っていた。
少なくとも姿は人間だ。
「超能力者……。」
男の周囲に炎が渦巻く。
「止めてください!」
「何だ、お前?」
「警察に協力してます。とにかく能力を止めてください!」
「能力を止める?」
男が笑った。いや、コチラを嘲笑った。
「何で?」
「周り見れば分かるでしょう!」
「だから何だよ。」
炎が膨れ上がる。
「俺は選ばれたんだ。」
嫌な言葉だ。
「今まで俺を馬鹿にしてた奴らとは違う。俺には力がある。」
炎が男の腕を包む。
「俺は特別なんだよ!」
ああ。闇の力が言っていた力に溺れる者が、目の前の男か。
「……最後にもう一度言います。」
アークルに手を添える。
「能力を止めてください。」
「うるせぇ!」
炎が飛んできた。
「変身!」
赤のマイティフォームを身に纏い、炎を腕で払いながら距離を詰める。
「ハァッ!」
腹部へ拳。ただし、気絶させる程度の威力で!
「ガッ……!」
男が吹き飛び、地面を転がる。
「もうやめてください!」
「…………。」
男が黙って立ち上がり、その身体からは、光が溢れた。
「何!?」
腰にベルトが現れ、肉体が変質する。頭部から伸びる角。
「まさか……。」
光が弾け、そこに立っていたのは。僕が知っている姿とは少し違うけれど、装甲を纏い、一本の剣を携えた、その姿は、
「フレイムフォームか。」
「ハハ……。」
アギトとなった男が、自分の手を見て笑う。
「凄ぇ……。」
炎が剣を包んだ。
「俺はまだ強くなれる!」
次の瞬間、炎を纏った斬撃が飛んでくる。咄嗟に腕で受けるが、火花が散った。
「俺は特別だ!」
二撃。三撃。炎を纏った剣が振り回されるがいなしていく。
「誰にも負けねぇ!」
四撃。五撃。
「俺は選ばれた!」
回避している最中、視界の端に嫌なものが見えた。おそらく、焼け焦げた、人の死体だ。
「最強なんだ!」
何かが、僕の中で静かに切れた。
「……それ。」
「は?」
「その力。」
僕はゆっくり立ち上がる。
「お前が自分で手に入れた力じゃないだろ?」
「何だと?」
「貰った力で。」
アークルへ意識を集中させる。赤から紫へ、そして、金を加える。
「超変身。」
両肩と胸の装甲が強固になり、金色のラインが走る。ライジングタイタンフォームである。
「好き勝手に暴れるな。」
アギトが剣を振り下ろしてくるが、避けない。肩に直撃し火花が散るが無視する。
「なっ……!」
前へ。もう一撃。前へ。炎も斬撃も、全て受け、前へ。
「何なんだよ、お前!」
アギトに変化した男が吠える。剣が何度も身体へ叩き込まれる。
痛みはある、熱も感じる。それでも、止まらず、一歩。また一歩。前に出る。
「来るな!」
一歩。
「来るなぁ!」
壁際で、アギトの背中が建物の壁へぶつかった。僕は近くに落ちていた鉄柱に手を伸ばす。
鉄柱をライジングタイタンソードへと変化させる。
「う、うおおおおおお!」
アギトが炎の剣をメチャクチャに振り回す。
そして、僕も全力で剣を振った。
ガァンッ!!
アギトの剣を真ん中から叩き折った。
「……え?」
呆然とするアギトを無視して、僕はライジングタイタンソードを手放す。そして、拳を握った。
「力があるから特別なんじゃない。」
一歩踏み込む。
「力を持った後、何をするか、だろ!」
「ま――」
拳を、顔面に叩き込んだ。
ドゴォッ!!
アギトの頭が壁へめり込む。同時に、必要な分だけの封印エネルギーを流し込む。当然殺すためではない。グロンギを爆発させていた時とは違う。
狙って、アギトの力とその奥にある異質な超能力を封印する。
「な……。」
男の身体から光が抜け、アギトの装甲も消えた。
男は元の人間の姿へ戻り――そのまま意識を失った。
僕は変身を解く。
「はぁ……。やりすぎたかな。」
『十文字君!』
通信から小沢さんの声。
『今の何!? アギトの力そのものを封じたの!?』
「……たぶん。」
『たぶん!?』
「アークルが出来るって言ってる気がしたから。」
『アークルが!?』
また目を輝かせてそうだな。
『帰ったら検査するわよ!』
「嫌です。」
ーーーーー
遠く離れたビルの屋上で一人の男が戦いを見ていた。津上翔一。
否、その身体を借りた――光の力。
「…………。」
その視線は、先ほど力を覚醒させ、今は救急隊に運ばれていく男にではなく、十文字黒雄へ向けられていた。
アギトを殺さず、人間も殺さず、力だけを封じた。闇の力の使徒ではなく、光の力が力を与えた者でもない。人の身でありながら、遥か昔に地球へ飛来した力を取り込み、自らの力としている存在。
「クウガ……。」
光の力は静かに呟く。強い。だが所詮は一人だ。あの少年一人がどれほど強くとも、人類全てを守れるわけではない。先日の外宇宙からの侵略が、それを証明している。
ならば、やはり人を進化させなければならない。より多く、より強く。次なる脅威が訪れる、その前に。
光の力が視線を上げる。既に次の場所は決めていた。日本政府が管理する施設。
表向きには存在せず、特殊な力を持って生まれた者や超能力者たちを保護し、研究するために作られた施設。
そこには、多くの可能性が眠っている。
光の力が微笑む。
そして、姿を消した。
ーーーーー
同じ頃、防衛省。会議室の大型モニターには、先ほどの戦闘映像が映し出されていた。炎を操る超能力者。その超能力者が変貌した未知の戦士。
そして、それを真正面から圧倒した第4号。
「……これが、警視庁から提出された映像です。」
誰も口を開かない。ニューヨークで宇宙人の軍勢に一歩たりとも引かなかった存在。
世界は変わり、力が必要だった。
「警視庁はG3システム、その強化型を既に実戦配備しています。」
「G3-Xだったか。」
「はい。現在確認されているアンノウンに対しても、一定以上の戦果を上げています。」
「警察に出来て、自衛隊に出来ないという話はないな。」
一人の男が資料を閉じた。その表紙には大きくこう記されている。
『G4』と。
「計画を進める。」
歯車が加速する。
警視庁ではG3ーXと、その先に立つクウガ。
人類を変えようとする光と、それを止めようとする闇。
そして、自衛隊が進めるG4計画。
それぞれの思惑が一つの場所へ向かって集まり始めていた。
ーーーーー
戦闘を終えた僕は、一人でホテルへの帰り道を歩いていた。
「……やりすぎたよなぁ。」
思い出すのは、さっきの戦い。ライジングタイタンになって、攻撃を全部受けながら、真正面から歩いていって、剣を叩き折って、最後は顔面に一発。
結果だけ見れば、誰も殺さず、暴走していた男から能力だけを封印できた。上出来と言えば上出来だ。
でも。
『貰った力で、好き勝手に暴れるな。』
完全にキレてたよ。あの焼け焦げた遺体を見てしまった瞬間、一瞬で頭に血が上った。二年前、グロンギと戦っていた頃にも、似たようなことは何度もあった。
力を持っているから。自分の方が強いから。だから他人の命を好き勝手にしていい。グロンギにはそういう連中が多かった。
「……だからって、ああも簡単に感情任せになっちゃ駄目だよな。」
一条さんにも散々言われた。怒るなとは言わない。けれど、怒りに任せて戦うな、と。分かっているんだけど。
「まだまだだなぁ……。」
小さく息を吐きながら、曲がり角を曲がる。その瞬間だった。
「きゃっ!」
「うわっ!?」
ドンッ!
思いっきり誰かとぶつかった。
「痛っ……!」
「す、すみません!」
僕は慌てて足を止める。ぶつかった相手は女の子だった。僕と同じくらいの年齢だろうか。少女は尻餅をついたまま、僕を見上げている。
「大丈夫ですか?」
「う、うん……。」
怪我はなさそうだな。僕は安心して手を差し出す。すると少女は僕の手を見るなり、何故か不思議そうに首を傾げた。
「……あれ?」
「はい?」
「見えなかった。」
「……何がですか?」
「貴方が来るの。」
何を言っているんだろう。
「まあ曲がり角でしたし。」
「そうじゃなくて……。」
少女は何か納得できないような顔をしている。まあ、ぶつかったのは僕が悪い。
「とりあえず、立てます?」
「あ、うん。ありがとう。」
少女が僕の手を取った。その瞬間。――世界が、弾けた。
「――ッ!?」
「えっ!?」
知らない光景が脳裏へ流れ込んでくる。
街が燃えている。
『――――!』
眩い光を放つアギト。その正面に立つのは――。
『超変身。』
全身を金の力で黒色に染め、雷を纏ったクウガが、輝くアギトと激突している。拳と拳。雷と光。
衝突するたび、大地が砕け、周囲の建物を震わしている。
――場面が変わる。
空から降り注ぐ無数の機械兵。崩壊する街。聞き覚えのある声。
『クロオ! 右だ!』
『分かってます!こっちだ、ウルトロン!』
クウガの姿の僕が、空中から迫る機械兵を迎え撃つ。視界の先には、全身を金属で覆った人型の機械、ウルトロンだ。
――また変わる。
ニューヨークの高層ビルの間を飛び交う赤と青の影。
『こっちだよ、クウガ!』
『待てって! 速いんだよ!』
蜘蛛の糸で街を駆け抜ける少年。その後を、ゴウラムに乗った僕が追っている。知らない。こんな光景を、僕は知らない。
そして。
――最後。
世界が暗い。いや。暗いんじゃない。
僕自身が――闇だった。黒い身体。金色の装飾。赤い複眼。全身から溢れ出す、あまりにも強大な力。究極の闇、アルティメットクウガ。しかも、ダグバと戦った時よりも力が漲っている?
その正面にいるのは――黄金。
人の形をしているけれど、人じゃない。全身から眩いほどの黄金の光を放つ存在。
『――――』
何を言っているのか分からない。けれど。そいつと僕が、互いに拳を構えた次の瞬間。黒と黄金が激突して――。
「――っ!」
現実へ戻った。
「…………。」
「…………。」
僕と少女は、お互いの手を握ったまま固まっていた。
「…………。」
「…………。」
ゆっくり手を離す。
「……今のは。」
「……見えた?」
「見えました。」
「私も。」
…………。
………………。
……………………。
「えぇ……。」
何これ?少女も呆然としているし、僕も多分、似たような顔をしている。
「今の……あなたよね?」
「……えっと。」
「赤いのも?黒いのも?」
「あの。」
「蜘蛛みたいな人と一緒にいたわよね?」
「ちょっと待っ、」
「いいから!答えなさい!」
「あんな光景、記憶にないんですよ!」
「ええっ!?」
少女が立ち上がる。
さっきまで転んでいたことなんて完全に忘れているよ。
「じゃあ、未来!?」
「分かりません!」
「でも、あなたよね!?さっきの赤とか黒とか!?」
「声が大きい!」
慌てて周囲を見る。幸い、こちらを気にしている人はいない。
「ちょっと待って。というか、何なんですか今の?」
「私が聞きたいんだけど!」
「いや、明らかにそっち発信だったでしょう!」
「いつもはこんな風にならないもん!」
「いつもは?」
「物に触ったりすると、そこに残ってる残留思念みたいなのが見えることがあるの。」
サイコメトリー。そこまで聞いて、ようやく僕も目の前の少女が普通の人間じゃないことを理解した。
「でも、今のは変。私だけじゃなくて、あなたにも見えてた。」
「そうですね。」
「それに未来まで見えたのは初めて……。」
「そうですか。」
「何で?」
「僕に聞かないでください。」
分かるわけがない。アークルが何かしたのか?それとも、この子の能力と僕の霊石アマダムが干渉した?あるいは――。
「ねえ。」
「はい?」
「あなた、何者?さっきの赤い姿、最近ニュースに出てる第4号でしょ?それに、変身するところも見えた。」
そこまで見えたのか。
「名前は?どうやって変身するの?ベルトは?あれ何?二年前から戦ってるの?ニューヨークにもいたよね?さっきの黒いのは?」
質問が多い上に止まらない!
「ストップ!」
「え?」
「ストップです!」
「でも――」
「今日はもう疲れてるんです!ついさっきまでアギトと戦ったばかりなんです!」
「あれアギトっていうの!?」
「しまった!」
墓穴を掘った。
「じゃあ、あなたはアギトじゃないのね?クウガって呼ばれてたし。」
「…………聞こえてたんだ。」
「うん。」
どうする。この子、かなり色々見てる。しかも同年代っぽいし、超能力者。下手に放っておいて大丈夫なのか。でも、今日はもう疲れた。
「とにかく!」
僕は強引に話を切る。
「今日は帰ります!」
「えー。」
「えー、じゃありません!」
「じゃあ連絡先――」
「教えません!」
「ケチ。」
「何で初対面の人にそこまで言われなきゃいけないんですか!」
少女は不満そうに頬を膨らませた。
けれど、意外にもそれ以上は食い下がってこなかった。
「……分かった。」
「分かってくれました?」
「うん。」
「じゃあ、僕はこれで。」
「またね。」
「……また会う前提なんですね。」
僕は少女に背を向け、その場を離れた。
しばらく歩く。歩く。
「…………ん?」
そこで。ようやく引っかかった。あの子。どこかで見たことがある。もちろん、現実でじゃない。前世だ。
『仮面ライダーアギト』、超能力、サイコメトリー、同年代くらいの少女。
「…………あ。」
思わず足が止まった。
「風谷……真魚?」
そうだ。風谷真魚。アギト本編に登場していた、超能力を持つ少女。
「マジか……。」
全然気付かなかった。実写作品の登場人物を十何年も経ってから生身で見て、一瞬で判別しろって方が無理だけど。
でも――おかしい。
あの原作キャラが、あんな簡単に引くか?
僕の変身に未来らしき光景。
あれだけ見ておいて。『分かった。』で終わる?僕だったら絶対気になる。
「…………まさかね。」
嫌な予感がした。でも、振り返っても少女の姿はもう見えない。
「……まあ、いいか。」
疲れていた僕は、そのままホテルへ戻った。
ーーーーー
翌日。
ピンポーン。
ホテルの部屋に、インターホンの音が響いた。
「誰だろ。」
一条さん?いや、来るなら連絡くらいあるはず。ルームサービスも頼んでいない。
ピンポーン。
「はいはい。」
扉へ向かい、一応ドアスコープを覗く。
目を擦る。
「クロオくーん。」
もう一度見る。昨日の少女がいた。
「いるよね?」
「いません。」
「今返事したよ?」
「人違いです。」
「クロオくーん!!」
「声が大きい!」
何でいる!?仕方なく扉を開ける。
「おはよう。」
「おはようございます……じゃなくて!」
昨日の少女――風谷真魚が笑顔で立っていた。
「何でここに!?」
「来た。」
「それは見れば分かります!」
「じゃあ何で聞いたの?」
「どうやって僕の泊まってるホテルを突き止めたのか聞いてるんです!」
まさか、昨日、手に触れた時。
「サイコメトリー!?」
「サイコメトリーは正解だけど、クロオ君のことを視たわけじゃないよ。」
「じゃあ何で――」
真魚は僕の横をすり抜け、部屋の中へ入っていく。
「ちょ、勝手に入らないでください!」
「ちょっとだけ。」
「何が!?」
真魚は迷うことなく僕の荷物へ向かった。何でそこに僕の鞄があるって知ってる?
「鞄を開けて。」
「嫌です。」
「じゃあ私が開ける。」
「もっと嫌です!」
僕は慌てて鞄を開く。
「何探してるんです?」
「これ。」
真魚が手を突っ込む。
そして。
取り出した。
小さなキャラクターの人形。
「…………。」
「…………。」
僕のじゃない。女の子が持っていそうな、小さなキャラクター。
「これ、私の。」
「…………いつの間に。」
「昨日ぶつかった時、キーホルダーの紐が切れて十文字君の鞄に入っちゃったみたい。」
「偶然?」
「偶然。」
真魚はキーホルダーを受け取り、嬉しそうに眺める。
「で、元々繋がっていた紐に触ったら――」
「場所が見えた?」
「うん。」
…………。
「ホテルの外観も?」
「見えた。」
「部屋も?」
「ちょっと。」
「部屋番号は?」
「カードキーが見えた。」
完璧じゃねぇか。
「つまり。」
「うん。」
「僕を探したんじゃなくて。」
「うん。」
「自分のキーホルダーを探しただけ?」
「そう。」
真魚がニッコリ笑った。
「クロオ君を視るのは上手くいかないみたいだしね。」
なるほど。昨日、あっさり引いた理由。あの段階で切れたストラップに気付いていたわけか。
「……参りました。」
「え?」
「僕の負けです。」
「何の勝負?」
「こっちの話です。」
能力で、僕ではなく自分の落とし物を見つけることで僕をみつけるとか。完全敗北だ。
「じゃ、キーホルダーも見つかったので。」
「はい。」
「昨日の続きしよっか。」
嫌な予感。
「クロオ君、クウガって何?どうしてベルトが身体の中にあるの?あの黒い姿は?金色の人は誰?」
「それは僕が聞きたいです。」
「蜘蛛の人は?」
「それも僕が聞きたいです。」
「じゃあウルトロンって?」
「何で名前まで分かった!?」
真魚が楽しそうに笑う。
「いっぱい聞きたいことあるんだ。」
逃げ道がない。
「はぁ。コーヒーでいいですか?」
「ジュースがいい。」
「……分かりました。」
冷蔵庫を開けながら、僕は天井を見上げた。アンノウンに闇の力、光の力、アギト、超能力者、本物の津上翔一、そして風谷真魚。
なんか。原作より。
「重要登場人物増えるペース早くない?」
僕の呟きに。
「何か言った?」
「何でもありません。」
こうして。風谷真魚という少女が、僕の日常に加わった。