日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです   作:ken4005

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ここまでの流れからこの展開は賛否あると思いますが、ウチの悪役はこんな感じです。



本音

 

ネッドが開いたポータルを抜けた瞬間、僕――十文字黒雄は周囲を確認するより先に、目の前の光景に息を呑んだ。

 

「ピーター!」

 

薄暗い室内の中央に、ピーターが吊るされている。

 

両腕、両脚が拘束され、意識を失っているらしく、こちらが入ってきたことにも反応しない。反射的に駆け出した。

 

拘束具を確認する時間すら惜しい。手刀を振るい、金属製の拘束具を砕く。そのまま落下してきたピーターの身体を受け止め、ゆっくりと床に寝かせる。

 

「ピーター! おい、ピーター!」

 

頬を軽く叩く。呼吸はしているし、脈もあるが反応はない。ひとまず生きていることに安堵するが、

 

「ピーター、聞こえる? 僕だ。黒雄だ。」

 

声をかけながら、外傷がないか確認していく。その間にも、スコットさんがすぐに動いてくれた。

 

「よし。こっちは任せてくれ。」

 

発信機を起動し、待機しているトニーさんやフューリーたちが僕たちの位置を特定できるようにする。

 

真魚とサラは、それぞれ周囲を警戒してくれている。二人とも精神系の能力を持ち、さらに魔術まで扱える。この施設にいる可能性が高いテレパスへの対策として、二人以上の人材はいない。

 

僕がピーターへ声をかけ続けていると、

 

『――想像以上に早い到着ね、十文字黒雄。』

 

室内に女の声が響いた。天井付近に設置されたスピーカーから聞こえてきた声には、聞き覚えがあった。

 

「……深海。」

 

『久しぶりね。』

 

「もう観念しろ。」

 

即座に言い返す。ピーターが生きていることを確認し、発信機の起動も済んでいる。あとはトニーさんたちと合流し、この施設を制圧するだけだ。

 

しかし、スピーカーの向こうから返ってきたのは、どこか楽しそうな声だった。

 

『……あら。初対面の頃は高校生で初々しさがあったのに、随分と貫禄が出てきたわね。』

 

「だてに何年もアベンジャーズに所属してませんよ。」

 

僕はピーターの傍から離れないまま答える。

 

「ピーターも取り戻した今、あとはこの場所を制圧してお終いだ。」

 

深海は、あっさりと肯定した。

 

『そうね。確かにおしまいね。』

 

その言い方に、妙なものを感じた。そして、それを感じ取ったのは僕だけではなかったらしい。少し離れた場所に立っていた真魚が、怪訝そうな表情を浮かべている。

 

『あなた達のことだから既に気づいているとは思うけれど、ここはダメージ・コントロール局の地下に作られた秘密研究所よ。』

 

深海は淡々と続ける。

 

『どうせ、トニー・スタークあたりが戦力を用意して乗り込んでくるのでしょう?そして、あなた達は――』

 

わずかな間。

 

『……そのデコボコ具合を見るに、対テレパスが可能なメンバーを集めた、ってところかしら。』

 

僕は真魚とサラを一瞬だけ見る。そこまで見抜かれているのなら、隠す意味もない。僕はスピーカーを見上げた。

 

「そうだ。だから、お前のとっておきである精神支配は使えないぞ。」

 

『とっておき?』

 

深海の声色が変わった。

 

『いいえ、違うわ。十文字黒雄。』

 

どこか楽しそうに、それでいて、背筋に寒気を覚えるような声で言う。

 

『私のとっておき。私が、あなたと対決するために用意した、とっておきは――精神支配ではないわ。』

 

「……なんだって?」

 

思わず聞き返すと、

 

「ちょっとストップ。」

 

真魚が口を挟んできた。

 

『あ゛?』

 

「え?」

 

深海と僕の声がほぼ同時に重なる。……今、深海すっごい声出さなかった?

 

真魚はスピーカーを見上げていた。さっきから何かを考えているような顔をしていたが、今は完全に確信したような表情になっている。

 

「深海……さん」

 

「真魚?」

 

「あなた、まさか……」

 

真魚がゆっくりと言葉を選ぶ。

 

「ここまでの悪事も、G4も、超能力者も、ヒドラも……」

 

一度言葉を切る。そして、床に横たわるピーターを見る。

 

「……ピーターすら、実はどうでもよくて、」

 

僕が眉をひそめていると、真魚は僕を見て、

 

「本当の目的は――黒雄だったりしますか?」

 

「……真魚?何を言って、」

 

僕が声をかけようとした、その瞬間。

 

『――アハハハハハハハハハッ!』

 

突然、室内に深海の高笑いが響き渡った。スコットさんが驚き、発信機を操作する手を止め、スピーカーを見る。サラも警戒を強める。

 

真魚だけは、やっぱり、と言いたげな顔をしていた。

 

『私の目的が十文字黒雄?』

 

心底楽しそうな深海の声が響く。

 

『私が、こんなことまでして、十文字黒雄一人を狙っていた?』

 

再び笑い声が響くが、その笑いが不意に止まる。

 

『――否定はしないわ。』

 

声色が変わった。

 

ーーーーー

 

私の目的……。

 

思えば、全てが狂い始めたのはアンノウン事件からだったのだろう。私は、当時警察で運用されていたG3、そしてG3-Xを超える兵器、G4を自衛隊で運用するための担当に任命された。

 

天才、小沢澄子が設計し、そのあまりの性能故に封印された呪われた兵器。その運用を自分が担当し、国防の要とする。その栄誉ある仕事に増長していなかったか?と聞かれれば、していた、というのが事実だろう。だが、驕っていたわけではない。

 

極秘に進められていた超能力者を活用した未来予測システムを導入。さらに、装着者にも妥協せず、己の命すら任務遂行のために投げ出せる人間――水城史朗を採用した。

 

G4という最強の装甲服に、最新のシステムと最良の人材を用意した。そのはずだった。

 

なのに――敗れた。

 

十文字黒雄は当時まだ高校生だった。彼の身体能力が素の状態でも異常なのは後で知ったが、それでも、現役の自衛官が高校生相手にああも簡単に敗れるのか?

 

さらに、G4そのものまで敗北した。相手は、スペックでは明確に劣るはずのG3-Xと一人の刑事。まあ、そこまでならまだ良かった。いや良くはないが、兵器は数字だけでは決まらない。装着者の技量、精神力、経験。そういうものが勝敗を覆すこともある。そう納得することはできた。

 

その後、私は見てしまったのだ。

 

光を纏う、人智を超えた存在、それと真正面から激突する――雷を纏った未確認生命体第4号。

 

今では『クウガ』として知られる存在。

 

あの光景を見た瞬間。私の中にあった常識が、音を立てて崩れ去った。

 

G3、G3-X。そして、私が最高の兵器だと信じていたG4。そんなものが、酷くちっぽけに見えた。人間が何年も研究し、莫大な予算と技術を注ぎ込んで作り上げた兵器の遥か先で、高校生の少年が、人智を超えた存在と戦っている。

 

私は、その光景から目を離すことができなかった。

 

――十文字黒雄。

 

あの少年の強さが、私の人生を狂わせた。

 

ーーーーー

 

その後、超能力者たちに対して私が行ってきたことは、全て私の罪とされた。まあ、それについて反論するつもりはない。風谷真魚を始め、未来予知の能力を持っている可能性のある超能力者たちを強引に集めようとしたのは事実だ。

 

彼らの能力をG4のシステムへ組み込み、未来を予測し、それに従って最適な行動を選択する。それによって、G4を文字通り最強の兵器へと完成させる。そのためなら多少強引な手段を取ることも、当時の私は必要な犠牲だと考えていた。

 

結果として計画は失敗。G4は敗北し、私も全てを失った。そんな私に声をかけてきたのが、自衛隊や警察組織の内部にまで潜り込んでいたヒドラだった。

 

私の研究を評価し、G4の研究を続ける環境を用意する、と言われれば断る理由はなかった。こうして私はヒドラに所属し、再びG4の研究を始めた。

 

けれど、研究を続けている間も、頭の片隅には常に一人の人間がいた。

 

雷光を纏う戦士。未確認生命体第4号、クウガ。そして、その正体である十文字黒雄。

 

気がつけば私は、G4の資料よりもクウガの戦闘記録を眺めていることすらあった。未確認生命体との戦闘。ニューヨーク決戦。アンノウンとの戦闘。エクストリミスを巡る事件。そして、インサイト計画。

 

十文字黒雄は戦い続け、そして、勝ち続けていた。

 

もっとも、私があの施設で目撃した時以上の力を使った記録はほとんど確認できなかった。

 

雷光を纏った、あの姿。ならば目標は明確だ。最低でも――あの姿を超える。何のために?そんなもの、決まっている。クウガを、十文字黒雄を超えるためだ。

 

我ながら馬鹿げているとは思う。私の人生は、あの日から狂った。いや、もっと正確に言おう。私は、十文字黒雄に執着してしまったのだ。

 

ただし、誤解されては困る。好意?恋愛感情?愛?そんな浮ついたものではない。十文字黒雄という男と家庭を築きたいわけでもなければ、彼に振り向いてもらいたいわけでもない。

 

私が求めているものは、そんなものではない。これは――挑戦なのだ。

 

私、深海理沙が、絶対の自信を持っていたG4をちっぽけなものに見せた、あの少年を、人間の技術では到底届かないと思わせた、あの存在を、私自身のやり方で、超えられるかどうか。

 

ただ、それを知りたい。

 

そして、そのために私が持っている手札は何か。一つは、G4。そしてもう一つがヒドラ。

 

十分だ。いや、十分にしてみせる。

 

そして、その機会は思ったより早く訪れた。

 

ヒドラ、正確には、ウルトロンとアベンジャーズの激突。あの戦いで私は、一つの実験を行った。私が何よりも研究し尽くしていた初期型G4。そして、私がヒドラへ勧誘された際に持ち出すよう依頼していたG1、G2。

 

それらを、十文字黒雄へぶつけた。もちろん、勝てるとは思っていなかった。あくまでも前哨戦であり、私がこれから作ろうとしているものが、どこまで十文字黒雄に通用するのか、その基準を測るための戦い。

 

そして結果だけを見れば――成果は上々だったと言える。

 

私の考えは間違っていなかった。改良の方向性も見えた。十文字黒雄を相手にするために何が足りないのか、その輪郭がはっきりと見えてきた。

 

――そう。あの戦いの最後を見るまでは。

 

ゾラ。あの男が意識を乗っ取ったウルトロンと、十文字黒雄が激突した。

 

そして私は、再び目撃した。十文字黒雄の最終形態を。

 

「…………。」

 

映像を見ていた私は、何も言えなかった。笑うことも、悔しがることも、分析することすら、一瞬忘れた。

 

ただ、異次元、そう表現する以外になかった。かつて私が目撃した、雷光を纏ったクウガ。あれですら人間の技術では到達可能かどうか分からない未知の領域だと思った。

 

だが、十文字黒雄には、さらに先があった。

 

「……これは無理ね。」

 

思わず、そう呟いた。認めよう。流石の私でも、アレは無理だ。少なくとも今の私ではどう足掻こうが届かない。G4を何機並べようが意味はない。

 

ならば、どうする?諦める?

 

――まさか。答えなど簡単だった。使わせなければいい。十文字黒雄があの力を使用できない状況を作る、それだけだ。

 

別に、十文字黒雄そのものを完全に無力化する必要はない。

 

変身させずに拘束して勝利する、薬物で眠らせる、精神支配で操る。

 

そんなものに興味はない。それでは意味がないのだ。私は十文字黒雄に勝ちたい。クウガを超えたい。ならば、クウガとは戦わなければならない。

 

ただし、あの最終形態だけは別だ。あれは現時点では勝負にならない。

 

……いや、いつかは、アレすら超えてみたいとは思う。だが、それはまだ先の話だ。まずは、雷光を纏った十文字黒雄。

 

あの日、私の人生を狂わせた姿を倒す。それが最初の目標だ。そこを超えなければ、私は先へ進めない。

 

他人から見れば、おかしな話なのだろう。私自身がG4を一から設計したわけではない。元々の設計者は小沢澄子だ。そして、私自身が装着して戦うわけでもない。戦うのは別の人間だ。

 

それなのに、

 

『私が十文字黒雄を超える』

 

などと言えば、何を言っているのかと思われるだろう。けれど、私は格闘家ではない、兵士でもない、ヒーローでもない。……私には、私の戦い方がある。研究し、分析し、技術を集め、必要な人材を選び、兵器を作り、戦場を整える。そして、勝つ。

 

それが、深海理沙の戦い方だ。

 

十文字黒雄。アナタが拳で戦うというのなら、私は頭脳と技術で戦う。アナタがクウガという力を使うのなら、私はG4を始め、私がこれまで積み上げてきた全てを使う。

 

だから、私は、私の戦い方で、十文字黒雄、アナタに勝ちたい。

 

いや、勝たなければならない。あの日からずっと、私の時間は止まったままなのだから。雷光を纏い、人智を超えた存在と真正面から激突していた高校生。あの少年を超えない限り、私はきっと、いつまで経ってもあの日から抜け出せない。

 

十文字黒雄。私が狂っていることは百も承知。それでも、アナタを超える。そうすることでようやく、私は――次に進めるのだから。

 

ーーーーー

 

『――否定はしないわ。』

 

そう答えながら、私は小さく息を吐いた。もちろん、今考えていたことを全て十文字黒雄に話してやるつもりなどない。

 

私がいつから彼を意識していたのか、どれほど戦闘記録を調べたのか。何年もの間、彼を超えることを目標に研究を続けてきたのか、そんなものを本人に事細かに説明するなど、御免だ。

 

私はスピーカー越しに、十文字黒雄へ告げる。

 

『私は、私の全てでアナタを超えるのよ。十文字黒雄。……そのために用意したとっておきは、彼よ。』

 

その言葉と同時に、私はモニターに映る少年へ視線を向ける。床に横たわったまま、未だ目を覚まさないピーター・パーカー。

 

『まあ、想定外の進化のせいで急拵えになってしまったのは仕方がないわね。』

 

「……想定外の進化?」

 

十文字黒雄の表情が変わる。何かを察したのだろう、彼はピーター・パーカーへ片手を向けた。その掌に、エネルギーが集まり始める。

 

封印エネルギー。対象の内部へ送り込み、力そのものを封じ込める、クウガの能力。ピーター・パーカーの身体に何かを仕込んでいると判断し、それを封印するつもりね。でも、

 

『オススメはしないわよ。』

 

「……!」

 

十文字黒雄の動きが止まる。

 

『ピーター・パーカーが再起不能になっても良いなら、別だけれど。』

 

「どういうことだ?」

 

それまで完全に意識を失っていたピーター・パーカーの身体が跳ね上がった。まるで糸で強引に引き起こされた人形のように、一瞬で立ち上がる。

 

「ピーター!?」

 

十文字黒雄が手を伸ばすが、ピーター・パーカーは床を蹴り、一瞬で数メートル後方へ跳び、十文字黒雄たちから距離を取った。

 

「……ピーター?」

 

再び十文字黒雄が呼びかけるが、返事はない。そして直後、天井の一部が開き、複数の黒い物体が射出される。

 

それらは一直線にピーター・パーカーへ向かって飛んでいき、

 

最初に両腕。黒い装甲が前腕へと展開される。

 

続いて両脚。脛までを覆うように黒いアーマーが装着される。最後に、頭上から一つのマスクが落下し、ピーター・パーカーの顔が完全に覆われる。そこに立っていたのは、普段のスパイダーマンではなかった。黒い装甲で覆われた、異様な姿。

 

十文字黒雄がしばらくそれを見つめ、

 

「……ちょっと簡易にもほどがありません?」

 

『うるさいわね。』

 

思わず素で返してしまった。

 

『今準備できる最適を追求した結果よ。こっちにも事情があるの。』

 

「いや、なんかこう……もっと変形するとか、ゴテゴテしてるとか……。」

 

『今それを気にするところ!?』

 

「だって、ヒーローやってるとこういうの気になるんですよ。」

 

『知るか!』

 

思わず怒鳴ってから、咳払いする。……危ない、ペースを乱されるところだった。

 

『ともかく。説明しておいてあげるわ。』

 

十文字黒雄の表情からふざけた様子が消える。

 

『現在、ピーター・パーカーは完全な洗脳状態にある。さらに、彼は長時間、悪夢を見せられ続けた。精神は既に崩壊寸前。今のピーター・パーカーは、強制的な精神支配によって辛うじて一つの人格として形を保っている状態よ。』

 

「……悪夢だと?」

 

十文字黒雄の声が低くなるが、私は構わず続ける。

 

『だから忠告したでしょう?下手に洗脳だけを解除するのはオススメしない、と。無理矢理精神支配を破壊すれば、抑え込まれていた悪夢の記憶と精神的損傷が一気に表面化する可能性がある。』

 

少し間を置き、

 

『最悪の場合――そのまま廃人になる可能性だってあるわ。』

 

「……っ!」

 

十文字黒雄だけではなく、風谷真魚やサラ・グレイ、スコット・ラング、彼ら全員の顔から血の気が引いた。風谷真魚がすぐにピーター・パーカーへ意識を集中させようとするが、

 

『やめておきなさい。今の彼の精神へ外から無理に干渉すれば、どうなるか私にも保証できないわよ。』

 

「……最低。」

 

風谷真魚が吐き捨てるように言ってくるが、

 

『今更でしょう?』

 

私はあっさり返す。

 

『安心しなさい。元に戻す方法はあるわ。』

 

「……どうすればピーターを救える?」

 

『私の配下にいるテレパス。彼ならピーター・パーカーに植え付けた悪夢の記憶を処理できる。』

 

十文字黒雄がスピーカーを睨みつける。

 

「……何が望みだ?」

 

ようやく聞いてくれた。私は自然と笑みを浮かべる。

 

『戦いなさい。』

 

「……なんだって?」

 

『ピーター・パーカーと戦いなさい。十文字黒雄。そして、十文字黒雄以外は、その部屋から出なさい。当然、私たちも抵抗するわ。けれど、あなた達が私の配下のテレパスを見つけ、捕らえることができれば、そちらの勝ちよ。』

 

風谷真魚がスピーカーを睨んでくる。

 

『その時はピーター・パーカーを元に戻してあげる。』

 

「できなかったら?」

 

『私の勝ち。』

 

単純な話である。そして、もう一つ。

 

『ピーター・パーカーが十文字黒雄を倒しても、私の勝ちよ。』

 

十文字黒雄の表情が険しくなる。

 

『ああ。それと一つ忠告しておくわ。』

 

私はあえて楽しそうに言う。

 

『十文字黒雄。アナタの最強の姿……アルティメットだったかしら?アレは、存在しているだけで常に強力な封印エネルギーを纏っている。違う?』

 

反応はないけれど、否定もない。それで十分。

 

『あの姿でピーター・パーカーと接触すればどうなるか。』

 

私は笑う。

 

『――分かるわよね?』

 

「……チッ。」

 

小さな舌打ち。つまり、アルティメットは封じられたとみて良いだろう。ましてや、ピーター・パーカーを傷つける危険がある以上、彼は簡単にアルティメットを使わないだろう。

 

それで十分。

 

「……真魚、行って。」

 

風谷真魚が目を見開く。

 

「ピーターは僕が止める。だから、真魚たちはテレパスを探して。」

 

精神が崩壊しかけたピーター・パーカー。そして、そのピーター・パーカーと戦わなければならない十文字黒雄。普通なら悩むところだが、風谷真魚はすぐに意識を切り替えた。

 

「……分かった。最速で敵のテレパスを捕まえてくる。それまで――」

 

風谷真魚が黒い装甲を纏ったピーター・パーカーを見る。

 

「ピーターをお願い。」

 

サラも心配そうに二人を見る。

 

「クロオさん……。」

 

「大丈夫だよ。」

 

十文字黒雄は軽く笑う。

 

「ピーターを助けるだけだから。」

 

「……無茶しないでくださいね。」

 

「努力するね。」

 

「そこは約束してくださいよ……。」

 

その横でスコット・ラングが発信機を確認しながら、

 

「こっちは問題ない。スタークたちにも位置情報は届いてる。俺たちはテレパスを探してくるよ。……頑張れ、クロオくん。」

 

「はい。」

 

三人が出口へ向かうと、扉が開く。風谷真魚が最後にもう一度振り返った。

 

「黒雄!絶対にピーターを連れて帰るわよ!」

 

十文字黒雄は笑って返す。

 

「当然。」

 

扉が閉まり、室内が静まり返った。

 

ピーター・パーカーは黒いマスクの奥から十文字黒雄を見つめ、十文字黒雄も、しばらくピーターを見ていた。

 

「……ピーター、悪いけど。」

 

十文字黒雄が腰を落とす。

 

「ちょっと痛いぞ。」

 

そして、両腕を構えた。

 

「――超変身!」

 

瞬間、腰のアークルが輝き、赤い装甲が黒い装甲へと変わっていく。そして両腕、両脚へ追加される金色の装飾。雷光が全身を走り、

 

雷を纏った金と黒の戦士が現れる。かつて私が目撃し、私の人生を狂わせた、あの姿。

 

思わず、私はモニターへ身を乗り出していた。

 

それよ、その姿。私が超えなければならない、十文字黒雄。

 

その正面に立つ、普段の赤と青のスーツではなく、黒い簡易アーマーを身に付けたピーター・パーカーもゆっくりと腰を落とし、右脚を引き、両腕を上げる。

 

二人が向かい合う中、私は静かに告げた。

 

『――始めなさい。』

 

次の瞬間、二人の姿が消え、床が同時に砕ける。一瞬で互いの間合いを潰し、ピーター・パーカーの拳と十文字黒雄の拳が激突。

 

轟音と共に衝撃波が室内を駆け抜けた。

 

ーーーーー

 

拳と拳が真正面から激突し、衝撃波が室内を駆け抜け、足元の床が砕け散る。僕を驚かせたのは、僕の右拳とピーターの右拳が真正面からぶつかり合い、拮抗していることだ。

 

「……マジか。」

 

押し切れない。もちろん、まだ雷のエルの力を全力で発動しているわけじゃない。それでも今の僕は、アメイジングマイティの姿だ。

 

単純な腕力だけでも相当なものなのに、ピーターは真正面から受け止めている。

 

「ピーター……君、どれだけ強くなったんだよ。」

 

当然、返事はなく、黒いマスクの奥から、ピーターは無言で僕を見つめている。

 

だったら――!

 

右拳を引くと同時に、今度は左。威力ではなく、速度を重視した拳をピーターの顔面目掛けて放つ。

 

「――!」

 

ピーターは首を僅かに傾けただけ。僕の拳はピーターの頬のすぐ横を通過する。

 

君なら避けるよね!僕だってスパイダーセンスを舐めてはいない。攻撃を回避したピーターの身体が沈み込み、下から突き上げるように、アッパーが飛んできた。

 

でも、こっちは雷速だよ!全身に雷光を纏い、一気に後方へ移動することで、ピーターの拳に空を切らせる。

 

後方へ下がった勢いを殺さず、雷光を残しながらピーターの視界から消え、一瞬で背後へ。ピーターはまだ正面を向いている。

 

雷撃手刀で意識を刈り取る!

 

左腕へ雷撃を集中させ、ピーターの首筋目掛けて手刀を振り抜こうとする僕の目の前に映ったのは、

 

「なっ!?」

 

雷速に反応したピーターだった。こちらへ振り返りながら、ピーターの右拳が大きく引かれている。しかも、

 

「電気!?」

 

その右拳には、青白い電光が纏わりついていた。

 

待て待て待て。何だ、それ!?

 

ついでに、僕は雷速で移動しながら手刀を放っている。対するピーターは、床を踏み締め、腰を捻り、右拳を引き絞っている。

 

僕の手刀と、ピーターの右ストレートが激突。

 

「――っ!?」

 

結果は明白だ。移動しながら手刀を放った僕と、両脚でしっかりと床を踏み締め、全身を使った拳を叩き込んだピーター。真正面から競り合えば、当然、後者が勝つ。

 

「ぐっ!?」

 

凄まじい衝撃が手刀を放った腕から全身へ突き抜け、僕の身体が弾き飛ばされる。

 

宙を舞うが、体勢を立て直そうとした、その瞬間。

 

「――うわっ!?」

 

何かが身体に絡みついた。白い糸、ウェブ!?

 

「ちょっと待て!ウェブシューターは無かったはず――!?」

 

ピーターの様子を確認した時、腕にウェブシューターは無かった。あの腕に付けられたG4の籠手みたいなものにウェブシューターを取り付けた?

 

いや、考えている場合じゃない。戦闘中に色々考え事をするのは僕の悪い癖だ。

 

ピーターの左手から伸びている糸をどうにか、……あ、ピーターの左手が、その糸をしっかり握り締めている。

 

次の瞬間、

 

「うおっ!?」

 

凄まじい力で引っ張られた。予想以上のパワーだ!宙に浮いていた僕の身体が、問答無用でピーターの方へ引き寄せられ、ピーターは既に次の攻撃モーションに移っていた。

 

糸を引いた勢いで一瞬背中を向けながら、床を踏み締める。腰を捻り、右脚を持ち上げる。その右脚にも、青白い電光が走っていた。

 

「……え?」

 

ウェブで引き寄せられながら、その構えを見て、僕の頭にはものすごく嫌な既視感が走った。

 

いや、待て。その構え、その蹴り方。

 

「それカブト式ライダーキッ――」

 

最後まで言わせてもらえず、ピーターの身体が回転。ウェブによって真正面から引き寄せられた僕目掛けて、電光を纏った右脚から強烈な回し蹴りが放たれた。

 

「――ぐあっ!?」

 

凄まじい衝撃が全身を駆け抜ける。

 

今度こそ完全に吹き飛ばされた僕の身体は、砲弾のような勢いで室内を横切り、そのまま壁へと叩きつけられた。

 

「……強っ。」

 

心の底から出た、本音だった。

 

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