日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
短いです。
洗礼
結論から言えば、僕、ジェイソン・ストライカーはこの光のエルの村を気に入っている。ピーター・パーカーの救出作戦で保護された子供たちの多くは、この場所へ預けられることになった。
僕たちG4の装着者も同じだ。もちろん、全員ではない。家族のもとへ帰った者もいるし、別の保護施設へ移った者もいる。けれど、能力の制御が必要だったり、帰る場所がなかったりする子供たちの多くは、ここで暮らすことになった。
僕も、その一人。村へ来る前、十文字黒雄に能力の一部を制限してもらった。以前の僕なら考えられないことだが、今となっては感謝している。
他人の声が聞こえない。頭の中に、勝手に他人の感情が流れ込んでこない。こんなにも静かな世界が存在していたのかと、最初は驚いたくらいだった。だから、僕としてはこの村で静かに暮らせれば、それで十分だった。だが、
「なあ、この超能力者の集団で一番偉い奴って誰だ?」
どうやら、そう考えない者もいるらしい。声の主へ視線を向けると、僕と同じくG4の装着者だった二人の少年。
一人はパイロキネシス。もう一人はサイコキネシス。二人とも十代半ばだが、能力を得てから随分と好き勝手に暴れていたらしい。聞いた話では、地元の不良少年を集めて小さなギャング集団まで作っていたとか。
まあ、彼らからすれば、この村も同じようなものに見えたのだろう。強い超能力者が大勢いる。なら、その中で最も強い者がボス。実に分かりやすい発想だ。
「一番偉い?」
尋ねられた村の大人たちが首を傾げる。
「この村のトップなら、光のエル様じゃないか?」
「でも、この子たちが聞きたいのはそういう意味じゃないだろ?」
「強さなら闇の力様だろう。」
「超能力者としてならジーンじゃないか?」
「でも、ジーンをトップって呼ぶのもなあ……。」
「そもそも、ここに超能力者のトップなんていたか?」
話がどんどん迷走していく。僕は小さく息を吐いた。……実に平和だ。そして、その時、
「あ、皆さん。こんにちは。」
聞き覚えのある声がした。僕がそちらを見ると、風谷真魚がいた。今日は子供たちに授業をするために来たらしく、何やら教材らしきものを抱えていた。
彼女が現れると、
「……ああ。君らが言っている意味での『一番強い超能力者』なら、彼女でいいんじゃないか?」
「うん、間違いない。」
「え?」
真魚本人だけが理解できていないようだ。実を言えば、僕は風谷真魚が戦うところは見たことがない。彼女が強力なサイコメトラーであることは聞いている。
具体的にどの程度強いのかまでは知らない。……ただ、一つだけ知っていることがある。先日、G4を纏った僕たちを瞬殺したサラが、
――真魚さん、私より強いからね。
と言っていた。もう、それだけで十分な情報だった。サラがどれほどの能力を持っているのかは、この目で見ている。G4を纏った僕たちを、僅かな時間でまとめて無力化したのだ。
その本人が、迷いなく自分より強いと言っていた。
「はあ? この女がトップ?」
炎を操る少年が真魚を上から下まで眺める。
「ふざけてんのか?」
念動力使いも鼻で笑った。僕は何も言わず、黙っている。
「じゃあ、俺たちがコイツぶっ倒してやるぜ!」
僕は静かに二人から距離を取ると、隣にいた少女が不思議そうに僕を見てくる。彼女も僕たちと同じG4の装着者で、テレポート能力を使っていたG4の正体は彼女だ。
「ジェイソン、なんで離れるの?」
「巻き込まれたくないから、かな。」
周囲を見ると、以前から村にいる人たちも、僕と似たような反応だった。
「あーあ……。」
「言っちゃったよ……。」
中には手を合わせている者までいる。
周囲の反応に気が付かない少女は不安そうに真魚を見る。
「でも……あの人大丈夫なの?」
その質問に僕は正直に答えた。
「僕は真魚さんが戦っているところを見たことがないけれど、」
「じゃあ分からないじゃない。」
「ただ、サラが自分より強いって言ってたよ。」
少女が固まった。僕から施設での戦闘の話を聞いていた彼女は、二人の少年に視線を送ってから、一歩後ろへ下がった。……賢明な判断だと思う。
やがて、広場の中央で二人の少年と真魚が向かい合った。
「あの……今回は私が担当でいいですか?」
真魚が周囲へ確認すると、村人たちが頷いた。
「二対一だけど問題ないか?」
「はい。大丈夫です。」
そんな会話をしている内に、一人の少年の両腕から火炎が立ち上り、もう一人の念動力使いの周囲で石が浮き始めた。対する真魚は、何故か杖を取り出した。
僕は瞬きをし、隣の少女も瞬きをする。
「ジェイソン、あれ何?」
「杖だね。」
「それは見れば分かるよ。」
僕だって、それ以上のことは分からない。周囲の新参者たちも同じみたいで、
「杖だ。……え? どっから出した?」
「超能力者じゃないの?」
「あれで何するんだ?」
一つ分かっていることは、先日、僕たちを瞬殺した力は魔術だ。そして、魔術と杖は簡単に連想できてしまう。真魚が杖を振るうと、光球が発生した。それも一つではなく複数。真魚の周囲へ浮かび上がった光球を見た瞬間、以前から村に住んでいる子供たちが一斉に騒ぎ始めた。
「きた!」
「真魚お姉ちゃん、やれー!」
「もっと出してー!」
一方、大人たちは静かに手を合わせている。
「南無……。」
「話し合いで解決できないのは悲しいことだな……。」
サラ。できれば、もう少し詳しく説明しておいてほしかった。
「あ、今日は調子いいかも。」
真魚が呟くと、再度杖が掲げられ、魔法陣が展開される。光球がその魔法陣を通ると、その数が倍以上に増えた。
うん、四十は超えたね。しかもあの光球、一個一個がエネルギーの塊にみたいに見えるのは気のせいだろうか。
「…………」
パイロキネシス使いの少年とサイコキネシス使いの少年は、それぞれ自身の超能力と目の前の光球を見比べ、顔を青くし、及び腰になる。
うん。逃げるなら、もう少し早く判断するべきだった。
「えい。」
真魚が杖を振るうと、四十の光球が一斉に翔び、それで終わった。
ーーーーー
そして現在、先ほどまで威勢の良かった二人が、広場に伏している。僕は彼らの前にしゃがみ込んだ。
「生きてる?」
「……生きてる。」
「そう。良かった。」
威力は相当抑えられていたのか、大きな外傷はないようだ。イメージ的には二人に向かって完璧にコントロールされたボールが四十球一斉に襲いかかったような感じか。……想像したら結構怖かった。
外傷はなくても、心には相当なダメージを受けているようだが、炎使いの少年は顔だけを上げ、
「……超能力者の勝負に魔法使うなんて卑怯だぞ……。」
なんて口にした。……それは駄目なヤツだ。何故か本能的にそう思った。
「あ、バカ。」
村の誰かが呟く。
「……ふーん。」
真魚は、いや、心の中でも敬称を付けよう。真魚さんは笑顔だった。笑顔なのだが、先ほど四十の光球を展開した時より怖い。真魚さんが少年の前にしゃがみ込むと、
ガシッ、と少年の頭を掴んだ。
「え?」
少年の顔色が変わった。想像以上に力が強かった、というのもあるだろうが、
「超能力がお望みなら、そうしてあげる。」
「……何が?」
「私の能力、サイコメトリーなんだけど、最近人テレパシー的な使い方もできるの。」
少年の顔から血の気が引いた。そして、僕も理解した。ああ、これは駄目だ。
「十三歳の時、」
「待って。」
「近所に住んでいた、」
「本当に待ってください。」
「好きだった女の子に、」
少年が跳ね起きた。
「すみませんでした!! 本当にすみませんでした!!」
地面へ額を擦り付ける、見事な土下座だった。僕は感心した。彼は日本人ではないし、土下座という文化について詳しく知っていたわけでもないだろう。それでも彼の生存本能が、この状況における最適解を導き出したらしい。
隣の少女が僕の袖を引く。
「ジェイソン。この村……怖くない?」
「奇遇だね。僕も今、同じことを考えていた。」
テレパシー能力者である僕だからよく分かる。あの能力の使われ方は恐怖でしかない。
「皆んなー!あの能力の使い方すると、光のエルや闇の力に本気で怒られるから、絶対にやっちゃダメだからねー!」
「「「「「はーい!」」」」」
……後になって、村人から聞いた話では、こうした騒ぎは別に珍しくないらしい。この村には様々な超能力者がやって来る。その中には、自分の能力が強いからという理由で他人を従わせようとする者もいる。もちろん、最初は話し合いが行われる。ここでは能力の強さに上下はない。誰かが誰かを支配する必要もない。皆で助け合って暮らせばいい。
そう説明する。大抵の者は、それで理解してくれるが、どうしても理解してくれない場合、一度、徹底的に叩きのめされることもあるらしい。
「……ちなみに、」
僕は尋ねた。
「毎回、真魚さんが?」
「いや?」
村人で、この村では主に料理や野菜の栽培を担当しているらしい男性はあっさり否定した。
「その時、村にいる大人の誰かが担当するね。僕が担当する時もあるよ。」
「なるほど。」
「今回は真魚さんで良かったよ。」
「……良かった?」
あれで? 僕が広場を見る。二人の少年は完全に心を折られている。片方に至っては、未だに真魚さんが来ると反射的に身を竦ませている。村人はそんな僕の疑問を察したのか、
「たまに闇の力様とかエルロードさんたちが出てくるから。」
少し考え、そして、もう一度広場を見た。
「……なるほど?」
その存在について、まだ詳しくは知らないが、相当ヤバい存在であることだけは分かった。
「あ。でも、今の真魚さん、エルロードさんたちよりも強いんだっけ。」
……その呟きは聞かなかったことにした。