日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
トニーさんとペッパーさんがついに結婚する。その話を聞いた時、僕はてっきり、とんでもなく派手な結婚式になると思っていた。
世界的大企業スターク・インダストリーズのトップと、その創業者一族にしてアイアンマンであるトニー・スタークの結婚式だ。世界中の著名人を招待して、テレビ局が押しかけて、上空にはヘリが飛び回る。
トニーさんなら、ついでに花火代わりにアイアンマン・スーツを百機くらい飛ばしてもおかしくない。そう思っていたのだが、
「身内だけ?」
「ああ。」
結婚式の数日前。僕の問いに、トニーさんは当然のように頷いた。
「今回はマスコミも政治家も財界人もなしだ。仕事関係の連中も呼ばない。僕とペッパーが、本当に来てほしいと思った人間だけだ。」
意外だった。思わず隣を見ると、真魚も同じような顔をしている。
「なんだ、その顔は。」
「いや……トニーさんにしては普通だなって。」
「黒雄。君は僕を何だと思ってる?」
「超を十個並べても足りない派手好きです。」
「否定できないのが腹立つな。」
そんな話をしてはいたのだが、当日会場へ到着した僕は、目の前の光景を見て首を傾げた。
「……身内だけ?」
隣に立っていた真魚も呟く。
「多くない?」
「多いよね?」
確かに、マスコミもいなければ、政治家も財界人もいない。だけど、
「クロオさん!」
聞き慣れた声に振り返る。
「ピーター。」
スーツ姿のピーターがこちらへ走ってくる。その後ろにはネッドとメイさん、それからミシェルの姿もあった。
「すごいよ! スティーブさんも来てるし、ソーさんも来てる! ブルース博士も!」
「まあ、その辺は来るだろうね。」
「ストレンジさんもいたよ!あと、ウォンさんも!」
「それはちょっと意外だ。」
さらに会場の向こうでは、スコットさんがホープさんと話しているし、ナターシャさんやクリントさんもいるし、少し離れた場所にはバッキーさんの姿も見えた。……トニーさん、色々と割り切れたんだ
そして当然のようにフューリーまでいる。
「……身内?」
僕がもう一度呟く。
「身内なんじゃない?」
真魚が苦笑する。
「範囲が広すぎない?」
日本からは僕と真魚、一条さんに加えて、小沢さんまでいる。
少し離れた場所ではサラがジーンの服装を直していて、ジーンは少し迷惑そうな顔をしていた。その横をソーが通り過ぎ、
「よく似合っているぞ!」
と豪快に褒めたせいで、ジーンが照れてサラの後ろへ隠れてしまった。その様子を見ていたピーターが笑った。
「でも、本当にすごいメンバーだよね。」
「まあね。」
普通の結婚式なら、まず一人もいないような人たちが一ヶ所に集まっている。しかも、その大半が世界規模の事件を経験した仲間だ。こんなところを敵に襲撃されたらどうなるんだろう。一瞬だけそんなことを考えて、
「クロオ。今、絶対ろくでもないこと考えたでしょ。顔に出てた。」
「いや、敵が襲ってきたら可哀想だなって。」
「結婚式の日くらい、そういうこと考えるのやめなさい。」
「はい。」
「おい、そこの若者組!」
そんなやり取りをしていたら、トニーさんが近づいてきた。今日はきちんと礼服を着ている。
「何を固まってる。今日は戦闘任務じゃない。好きに食べて、好きに飲め。未成年は酒以外だ。分かったか、ピーター。」
「なんで僕だけ!?」
「サラ、ネッド、ミシェル、ジーン、そしてピーター。一番やらかしそうなのはどう考えても君だ。」
「否定できないのがツライ。」
そんな二人のやり取りを見ていると、トニーさんの後ろからペッパーさんが歩いてきた。
「トニー。そろそろ時間よ。」
「ああ。」
返事をしたトニーさんが、こちらを見る。いつもの自信満々な笑顔。でも、ほんの少しだけ緊張している気もする。長い付き合いになったからか、なんとなく、それが分かった。
「……緊張してます?」
「この僕が?」
「はい。」
トニーさんが僕の肩に手を置いた。
「アイアンマンは緊張しない。」
「じゃあ、トニー・スタークは?」
数秒の沈黙。
「……少しする。」
ペッパーさんが吹き出し、僕も笑う。ピーターなんて、後ろで必死に笑いを堪えている。
「おい、ピーター。聞こえてるぞ。」
「何も言ってません!」
「顔がうるさい。」
「そんな!」
いつものやり取りだけど、今日は少しだけ違う。戦いに行くわけじゃないし、誰かを救いに行くわけでもない。
当然、世界の危機でもない。ただ、僕たちの仲間が結婚する。そのためだけに、みんながここへ集まっている。
そう考えると、悪くないと思える。
いや、こういう日があるからこそ、僕たちは戦ってきたのかもしれない。
「トニー。」
ペッパーさんがもう一度呼ぶ。
「ああ、今行く。」
トニーさんが歩き出す。その背中を見送りながら、ピーターが僕の隣へ並んだ。
「クロオさん。スタークさん、幸せそうですね。」
僕は少しだけ考えてから、
「うん。そうだね。」
今日くらいは、何も起きなくていい。怪人も、宇宙人も、秘密結社も、世界征服を企む人工知能もいらない。
アイアンマンも、スパイダーマンも、クウガも必要ない。
今日ここにいるのは、ヒーローじゃなくていい。
ただの仲間として、トニー・スタークとペッパー・ポッツの門出を祝えばいい。そう思いながら、僕たちも式場へ向かった。