日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
マイティ・ソー / バトルロワイヤル編 開幕
ここまで、雑魚キャラを蹴散らすばかりなソーに不満を感じていた皆さん、雷神が出陣します。
黄昏
アスガルド
「さて、ロキ、ソー。わざわざサカールまで行ってきたのだからな、報告を頼む。」
オーディンの言葉に、ソーはニヤリと笑い、後ろに立つ女性へ視線を向ける。長い黒髪に、歴戦の戦士であることを隠そうともしない鋭い眼差し。かつてアスガルド最強の精鋭部隊、ヴァルキリーを率いた戦士、ブリュンヒルデだ。
「ヴァルキリーの説得には成功しました。真剣に話し合った成果です。」
「アレを説得と言って良いのかは置いておくべきですがね。」
「ロキ。なんだ、その言い方は。」
ロキが胡散臭そうな目を向ける横で、ブリュンヒルデは小さくため息を吐いた。
「まあ、嘘じゃないよ。少なくとも、ちゃんと真剣に話をしてくれたし、誠意も感じた。」
「聞いたか、ロキ!」
ソーの喜ぶ顔を見て、ロキが僅かに口元を緩め、苦笑してしまう。だが、今回のサカール行きの成果は、それだけではなかった。
「それで。」
玉座に腰掛けたオーディンは、目の前に並ぶ面々を見渡した。ブリュンヒルデ、ソー、ロキ。そして、
「やあ!」
岩でできた巨体が、陽気に手を上げる。
「俺はコーグ。こっちはミーク。」
その隣で昆虫のような生物が小さく身体を動かした。さらにその後ろには、サカールから連れてこられた大勢の者たちが並んでいる。正確には、連れてきたというより、
「……奴隷を解放した、と。」
「はい、父上。」
ソーが胸を張った。
「……全員か?」
「全員です。」
「……そして、そのままアスガルドへ?」
「行くところがない者も多かったので。」
「兄上が『ならアスガルドへ来い!』と。」
「ロキ!」
「事実でしょう。」
オーディンはしばらく黙っていた。やがて、深々とため息を吐く。
「……まあよい。」
その一言にソーが笑顔になる。
「ちょうど戦力はいくらあっても困らぬ時期だ。住む場所については後で考えよう。」
「さすが父上!」
もっとも、現在のアスガルドには、新たに増えた住民について頭を悩ませている暇などなかった。
王都の至るところで兵士たちが走り回り、巨大な荷車には食料や生活物資が積み込まれている。そしてビフレストには、途切れることなく人々が集まっていた。
理由はただ一つ。アスガルド史上でも類を見ない、大規模避難計画が動いていたからだ。その目的はただ一つ、ヘラ打倒のためである。
オーディンの長女にして、かつて彼と共に九つの世界を征服した死の女神。長きにわたってオーディン自身の力によって封印されてきた存在だったが、その封印に問題が生じ始めている。
オーディンの寿命が迫っているのだ。それだけなら、想定されていたことであった。問題なのは、オーディン自身が予想していた以上の速度で、その力が衰え始めていることだった。
このままでは、自らの死を待たずしてヘラの封印が解ける可能性がある。そしてヘラは、アスガルドそのものから力を得る。彼女が先にアスガルドの力を掌握すれば、戦いは圧倒的に不利になる。
だからこそ、ヘラが完全に復活する前に敢えて封印を解き、迎え撃つ。
まず、アスガルドの民を全員避難させる。そして民間人がいなくなった王都で、オーディン、ソー、そして、地球から呼び寄せる予定の十文字黒雄。
この三人を中心にヘラを包囲。撃破、あるいは弱体化させたところで、黒雄の持つ封印エネルギーによってヘラの力そのものを封じ込める。
単純かつ完全に力押しではあるが、現在のアスガルドが用意できる中では、最も確実性の高い作戦だった。
問題は、民の避難先だったのだが、それについては、意外な場所が選ばれていた。
かつてハルクが修行に使用した、あの惑星である。本来なら、避難先として選ぶような場所ではない。むしろ普通の人間を放り込めば、数分生き残れるかどうかすら怪しい。
巨大生物、凶暴な肉食獣、意味不明な生態を持つ怪物。そんなものが星中を闊歩する、文字通りの魔境だった。
……だった。過去形である。
原因はハルクである。彼が修行中、その惑星の生態系の頂点に君臨していた巨大生物を撃破してしまったのだ。そして、何故か星全体が平和になった。
後の調査によって、その惑星の生物には奇妙な性質があることが判明した。生態系の頂点に立つ個体を中心として、ある種の命令系統を構築する習性を持っていたのである。
ただし、ハルクはそのシステムに適合しなかった。
結果として、頂点が空席となり、二番手だった生物が繰り上がった。そして幸運なことに、その二番手は、非常に温厚な生物だった。
その影響を受け、惑星全体の生物たちまで軒並み大人しくなってしまったのである。こうして、かつてハルクが死闘を繰り広げた魔境は、今やアスガルド人の一時避難先として使える程度には安全な星となっていた。
ーーーーー
他の者たちが退室した部屋で、
「……本当に、ここまで大規模な避難が必要なのですか?」
ビフレストへ向かう民を眺めながら、ソーがオーディンに尋ねた。
「ヘラを見くびるなよ、ソー。アレは強い。」
ソーの表情から笑みが消え、オーディンは遠くの空を見つめる。
「お前も強くなった。ロキも以前とは違う。ブリュンヒルデも戻った。そして、十文字黒雄という規格外の力まで借りられる。」
オーディンの顔から警戒は消えなかった。
「それでも油断が許されず、万全を期すべき相手なのだ。」
「……分かりました。」
「それに、……嫌な予感がするのだ。」
ソーが眉を寄せた。
「ヘラについてですか?」
「分からぬ。」
オーディン自身、それ以上を説明することはできなかった。ただ、長い年月を生きてきた神としての直感が告げている。何かが近づいている。
ヘラだけではない。もっと別の何かが。
「……まあ、それはそれとして。」
オーディンがソーを見る。
「修行は抜かりないな?」
「もちろんです。」
ソーが笑い、次の瞬間。
バチッ!
拳の周囲に青白い稲妻が走った。ムジョルニアは握っていないにもかかわらず、雷はソー自身の意思に従い、その拳を包み込んでいる。
オーディンの眉が僅かに上がる。
「ほう。」
「ハルクと共にあの星で戦い続け、クロオに何度ボコボコにされたか分からなくなりましたが、」
「待て。」
オーディンが止めた。
「今、何と言った?」
「何度ボコボコにされたか分からない、と。」
「……。」
「その最中、死の淵というか……いい加減、この雷神を舐めるな、とキレてしまいまして。」
「修行の説明として正しいのか、それは。」
「結果として力の使い方が分かりました。」
ソーが右手を伸ばすと、遥か彼方から轟音が響き、飛来したムジョルニアが右手に収まる。さらに左手には、ドワーフたちによって新たに鍛え上げられた巨大な武器、ストームブレイカーが現れる。
二つの神造兵器を構えたソーの全身を、凄まじい雷が駆け巡った。
「それに今なら、」
ソーは誇らしげに胸を張る。
「黒雄のライジングアルティメット相手なら、勝ち切りましたよ。」
「……ほう。」
「アルティメットには負けましたがね。次こそ勝ちます。ハハハ!」
豪快に笑う息子を前に、オーディンは額に手を当てた。
「頼もしいのか、情けないのか……。」
「頼もしいのでは?」
隣にいたロキが苦笑する。
「少なくとも、あの兄上が自分の負けを正しく認め、そのうえで向上心に満ちているのですから。」
「ロキ、お前は俺をなんだと思っている。」
「兄上です。」
「答えになっていないぞ。」
「あなたたち。」
聞き慣れた声が響き、三人が振り返ると、フリッガがブリュンヒルデを伴って部屋にやってくる。
「こんなところにいたのですね。」
「母上。」
ソーが笑顔で振り返る。
「ちょうど父上に修行の成果を――」
そして、ソーが言葉を言い切る前に、五人の表情が、一斉に変わった。
最初に空を見上げたのはオーディン、続いてフリッガ。ソーとロキ、ブリュンヒルデも、ほぼ同時にその異変を感じ取った。
強い。あまりにも強い力が突然、アスガルドの王都、その真上に出現したのだ。
「なんだ!?」
ソーがテラスへ飛び出す。ロキたちも続いた。そして、空を見上げる。
「……これは。」
ロキの表情が強張る。アスガルドの黄金の空、その中央が歪んでいた。巨大な亀裂、いや、ワームホールが発生し、空間そのものを抉るように形成された巨大な穴が、王都上空に口を開いている。
そして、その暗闇の奥から。
一隻、二隻、三隻と、巨大な宇宙船が姿を現した。
「艦隊だと……?」
ソーが呟く。アスガルド上空を覆い尽くす勢いで、異形の宇宙艦隊がワームホールから侵入してくる。
避難途中の民たちから悲鳴が上がり、兵士たちが一斉に武器を取る。オーディンの手に、グングニルが現れた。
「総員、戦闘配置!」
老いた王の声が、アスガルド全域へ響き渡った。
「民の避難を最優先とせよ!」
「父上!」
ソーがムジョルニアとストームブレイカーを構える。
「何者です!?」
「分からぬ!」
オーディンは答えながら、上空を睨みつける。そして、先ほど感じていた嫌な予感の正体を悟った。
「……これか。」
ヘラではない。だが、圧倒的な強者が上空にいることを感じ取っていた。
ーーーーー
アスガルド上空。
艦隊中央を陣取る、他の艦船とは明らかに規模の異なる巨大宇宙船、その艦橋。静寂の中、複数の人影が、巨大モニターに映し出されたアスガルドを見つめていた。
エボニー・マウ、カル・オブシディアン、プロキシマ・ミッドナイト、コーヴァス・グレイヴの四人で構成されるブラックオーダー。
その後ろに佇む二人の男女。一人の身体からは赤い光が、もう一人からは青い光が発せられ、それぞれから膨大なエネルギーが、呼吸するかのように明滅している。
そして、彼らのさらに奥。巨大な影が、玉座に腰掛けていた。紫色の皮膚に、圧倒的な巨躯。
サノスは、モニター越しに黄金の都を見下ろしている。
誰も口を開かない中、サノスがゆっくりと立ち上がる。モニターには、武器を構えるソー、そして戦闘態勢へ移行していくアスガルドの軍勢が映し出されている。その光景を見ても、サノスの表情には、僅かな動揺すらない。
サノスは、グングニルを握るオーディンだけを見つめ、
「老いた神よ。寿命を待っても良かったが、せっかくだ。私自らが引導を渡してやろう。」
インフィニティ・ウォー前哨戦
アスガルド対サノス軍の全面戦争です。書き切ってみせるぜ。