日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
「少し付き合ってもらうよ。」
青い光を全身から溢れさせながら、エボルという姿に変わった男が拳を構える。その姿を前に、僕もゆっくりと腰を落とす。
クウガ・アルティメットフォーム・ゴルドアークルはアルティメットの力を、雷のエルの力と完全に融合させることに成功した、今の僕が使える最強の姿。相手が何者なのか、詳しいことはまだ分からないけれど、ロキの話が正しいのなら、目の前にいる男はスペース・ストーンの力を宿した転生者。あまり自覚はないけれど、僕と同質の存在らしい。
本当は色々と話を聞きたいけれど、今はまず敵を倒そう。
アスガルドの街並みは燃え、空には敵艦隊。遠方では、ソーさんが赤い雷を纏う軍勢とぶつかり合っている。そして王城からは、黄金の光と紫の光が凄まじい勢いで噴き上がっている。……オーディン王まで戦っているなら、僕が無駄に時間をかけるわけにはいかない。
「できるだけ早く終わらせます。」
エボルは少しだけ首を傾ける。
「随分と余裕だね。」
「余裕はありませんよ。」
余裕なんてないからこそ、最初から全力で倒しにいく。全速力を出すために雷を纏い、地面を蹴った。
「ッ!?」
エボルは僕の速度に反応しているけれど、構わず右拳を振り抜く。対するエボルも、右拳を突き出してきた。黄金と青が炸裂し、
「ぐっ……!」
押し負けたのは、エボルだった。装甲に覆われた身体が後方へ吹き飛ぶ。転がりながらも、すぐに立ち上がり、右手を振るエボルは苦笑しながら、
「いやはや。実際に受けてみると、とんでもないね。アルティメットの――」
相手が何か言ってはいるが、無視だ。最後まで聞く必要はない。
「ちょっと。少しくらい会話を――」
再び踏み込む。
「――させてよ!」
エボルの姿が消えた。直後、気配が背後へ移動したのを感じ、振り返りながら、左腕で裏拳を放つ。
「おっと!」
エボルが身体を反らして、拳を避ける。同時に右手がこちらへ向けられ、青い光が視界に映る。空間そのものが歪み始めるが、
「はッ!」
手を振り、封印エネルギーを放つ。相手が放った青い光と封印エネルギーがぶつかるが、衝突した瞬間に相手のエネルギーを消し去る。
「……封印エネルギーね。便利すぎない? その力。」
エボルが呆れたように口を開くけれど、その姿が再び消える。
右、左、背後、頭上と、青い光が連続して明滅し、空間転移を繰り返すエボル。けど、慣れているんだよね。
「そこ!」
右拳を振るうと、何もなかった空間が歪み、その歪みから姿を現したエボルの腹部に拳を打ち込む。
「ぐあッ!?」
逃げる暇を与えず、そのまま更に一歩踏み込み、追撃を入れる。僕が何年、超能力者の子供たちの相手をしていると思ってる。テレポーターの子供たち相手の鬼ごっこで、連勝記録更新中なんだぞ。それに、ゴウラムが次元移動できるようになってから、そういった空間のうねりみたいなものもしっかりと感じるようになったんだ。
「が……ッ!」
良いのが二発も入ったエボルの膝が折れる。……けど、おかしい。攻撃は入っているのに、手応えが少ない。
封印エネルギーを込めて殴っているのだから、相手の力そのものへと干渉できているはずだ。あのドルマムゥにも、ゾラウルトロンにも効いたのだから、相手が強大でも、同じインフィニティ・ストーンの力を宿す相手でも、封印エネルギーは通じる。なのに、エボルは未だ空間転移を使っている。
追撃として繰り出した拳がエボルの顔面を捉え、封印エネルギーを多めに流し込んでみる。
アルティメットの超感覚で封印エネルギーの流れを確認すると、……なるほど、スカされているのか。エボル自身が纏うエネルギーが封印エネルギーだけを、別の空間に飛ばしている。
「……そういう躱し方があるのか。」
思わず感心してしまう。
ダグバと互いに封印エネルギーを掛け合った時以外では、初めて封印エネルギーを攻略されたかもしれない。僕の呟きにエボルが反応し、苦しそうにしながらも笑った。
「あれ? もう気付いた?」
「はい。勉強になりました。」
拳を引き、一度距離を取る。エボルも腹部を押さえながら数歩後退した。
「スペース・ストーンの力を全身に纏って、エネルギーだけを常に別空間に流しているわけですね。」
「正解。」
エボルが腹部を軽く叩く。
「いやぁ、痛い。でも封印エネルギーを警戒してなかったら、正直手も足も出ないだろうからね。対策しておいて良かった。」
「対策、ですか?」
「そう。君とウルトロンの戦いは、見物させてもらっていたからね。封印エネルギーの厄介さは承知の上さ。」
「……あの戦いを?」
「そう。なかなか面白かったよ。」
エボルの声には、戦場とは思えないほど軽い調子が残っている。
「君が最後の一撃を放つ瞬間、一瞬だけ赤い光が割り込んだのに気づかなかった? あそこでソーと戦っている彼女、ヴィスティナっていうんだけど、彼女がリアリティ・ストーンの力で君に幻影を見せたんだ。君の最後の一撃で爆散したウルトロンは幻影だったんだよ?」
「なッ!? じゃあ自称ウルトロンは生きて――」
「その後すぐ、拘束して、彼には石ころになってもらったんだ。」
「……なんだって?」
「胸糞悪い装置だけど、必要だから使ったまでさ。もし君が大人しく石になってくれるなら、わざわざヴォーミルまでソウル・ストーンを取りに行かなくても良いんだけど。」
コイツ、僕が宿しているのがソウル・ストーンだと勘違いしているのか。それよりも、
「石になった人を、元に戻す手段はあるのか?」
「……残念ながら、方法は見つかっていない。それに正直、石になった存在に意識なんて残ってはいないと思っているよ。」
「そう、……か。」
一瞬。助けられなかった自称ウルトロンにまた会えるのでは、と思ってしまい、今すべきことを忘れかけた。
「話を戻そうか。君から僕に流される封印エネルギーをスペース・ストーンの力で別の空間に流す。シンプルだけど、有効だろ?」
青い膜を纏ったエボルは飄々とした様子で両腕を広げる。
「君の封印エネルギーは強力だ。でも、どんな強力な力だって、相手に届かなければ意味はない。」
「確かに。」
エボルが嬉しそうに頷く。
「だろ? 力を封印されると厄介だから、封印エネルギー対策はしっかりやってきたんだ。僕本体に封印エネルギーが届かな――」
雷速で踏み込み、距離を詰める。
「え?」
腰を落とし、封印エネルギーを全力で振り絞った拳を叩き込む。狙いはエボルが纏う青いオーラ。傍から見れば寸止めを打っているように見える一撃目で、
「――え?」
エボルが纏うオーラのみが掻き消える。そして二撃目は、封印エネルギーだけでなく、莫大な雷のエルの力を込めた拳。
「ちょ、ちょっと待って!?」
エボルの声から余裕が消えると同時に、その顔面で黄金の雷が爆発し、その身体を勢いよく吹き飛ばした。
地面を何度も跳ね、転がり、そして止まる。
「……ぐっ……がぁッ……?」
「なるほど。」
確かに、封印エネルギーそのものへの対策としては有効なやり方だったかもしれない。本体まで届かせるのに、一発余計に打ち込む必要があったのだから。
「いやいやいやいやいや!」
青い光と共に、エボルが立ち上がる。
「そうはならないだろ!?」
エボルが飛び出してくる。装甲そのものに大きな損傷は見えないが、足が生まれたての子鹿のように震えている。
「なにスペース・ストーンの力で張ったフィールドを、インフィニティ・ストーンの力なしで無理矢理突破してんだよ!?」
エボルが叫ぶ。
「君とゾラウルトロンの戦いを見て、封印エネルギーの性質まで分析して、わざわざ対策したんだぞ!? あのフィールドがあればエネルギー関係の攻撃は、普通なら本体まで届かないはずなんだ!」
「残念、届きましたよ。」
ーーーーー
僕の返しを聞き、エボルは青い光を纏ったまま、殴られた顔を押さえていたが、
「……悔しい。いや、普通に悔しいんだけど。」
エボルは心底納得がいかないとでも言いたげに、僕を指差した。
「君とウルトロンの戦いを観察して、封印エネルギーの性質を分析して、スペース・ストーンの力ならどう対処できるか考えて、わざわざ専用のフィールドまで作ったんだよ? それを『剥がしてから殴ればいい』みたいな感じで突破されるとは思わないだろ!」
随分と感情豊かだな。エボルは大きく肩を落とし、自分の身体を見下ろした。
「……このフォーム、結構お気に入りなんだけどなぁ。見た目も気に入ってるし、コブラって格好いいだろ? 僕としては、できればこの姿のまま君と戦いたかったんだけど……。」
そう言いながら、エボルは腰のエボルドライバーへ手を添える。
「仕方ない。君が予想以上に無茶苦茶だから、予定変更だ。」
エボルが右手を掲げると、その手には小さな容器が握られていた。
透明な外装を持つそれは、内部には何も入っていないように見える。
「空の容器?」
僕が口に出すと、待っていましたとばかりにエボルが容器をこちらへ突き出し、見せつけるように掲げた。
「こいつは特別製でね! インフィニティ・ストーンの力を収め、それをライダーシステムへ反映させられる機能があるんだ!」
「……インフィニティ・ストーンの力を?」
「そう!」
エボルの全身から青い光が噴き上がる。先ほどまで身体を覆っていた程度ではない。空間そのものを青く染め上げるほどの、膨大なエネルギーを放出し、エボルは空の容器を握り締めると、
「君みたいなのを相手にするなら、全力を出すしかないよね。」
青い光が一斉に容器へ吸い込まれる。内部に星空を閉じ込めたかのように無数の光が瞬き、やがて完全に一つのボトルとして形を成す。
「スペースボトル。」
「……随分とそのままですね。」
「分かりやすいだろ? 名前なんて分かりやすいのが一番なんだよ。」
エボルはそう言って笑うと、腰のドライバーへ手を伸ばし、現在装填されているコブラボトルを引き抜くと、エボルの身体を覆っていた装甲が粒子となって崩れ、男本来の姿が露わになる。
「さて。」
男は右手にスペースボトルを持ち、僕を見据えた。
「第二ラウンドといこうか。」
スペースボトルを振ると、内部で青い光が激しく渦巻き、周囲の空間がその動きに合わせて歪んでいく。そして、
「変身。」
スペースボトルをエボルドライバーへ叩き込んだ。
《SPACE!》
電子音声が響いた瞬間、ドライバーから青い光が噴き上がる。男は構わずレバーを掴み、一気に回転させた。
《RIDER SYSTEM!》
周囲の空間が大きく歪み、男の前後に、青いエネルギーによって構成された装甲が出現する。
装甲が男の身体へ吸い寄せられ、装着されていく。最後に頭部装甲が閉じ、全身を走るラインへ青い光が流れ込んだ。
《SPACE!》
《SPACE!》
《EVOL SPACE!》
《Fuhahahahahaha!》
青い光の柱が天へ突き抜ける。空間が震え、大地が軋み、周囲に散らばっていた瓦礫が次々と宙へ浮かび上がった。
そこに立っていたのは、先ほどまでのエボルとは明らかに異なる姿だった。
基本的な輪郭こそエボルの面影を残している。
けれど、その全身を覆う装甲は深い青を基調とし、胸部や四肢には星空を思わせる光が流れていた。装甲の隙間では青白い粒子が絶えず瞬き、まるで身体そのものが宇宙空間へ繋がっているように見える。
「……これは。」
僕は構えを取り直した。さっきまでとは、全く違う。先ほどのエボルはスペース・ストーンの力を纏っていたけど、今はスペース・ストーンの力そのものが、ライダーシステムを通して全身の装甲へ組み込まれている。
エボルが両腕を広げた。
「どうだい?」
それだけで、青い粒子が舞う。
「これがスペース・ストーンの力をライダーシステムへ直接反映させた、僕の強化形態。」
右手を握ると、エボルの周囲の空間が一斉に歪んだ。
「仮面ライダーエボル・スペースフォーム。」
「……。」
「いやぁ、やっぱり良いね。」
エボルは自分の身体を確認するように両腕を眺め、満足そうに頷いた。
「コブラも気に入ってるけど、こっちはこっちで悪くない。」
「そうですか。」
僕は、全身に黄金の雷を巡らせ、拳へ力を込めた。
「……反応薄くない?」
「いえ。」
黄金の雷が弾ける。
「ちゃんと格好いいと思っていますよ。でも、倒すことに変わりはありません。」
僕の宣言に、エボルは肩を震わせる。
「……やっぱり君、面白いね。」
両拳を構え、その背後で、青い空間が幾重にも歪んでいく。
「数発殴って終わり、とはいかないからね。」
「なら、何発だって殴ってやる!」
「それは勘弁してほしいな!」
そして、僕らが激突する前に、王城から紫の光が立ち昇った。