ここはダートです。
「行けー!がんばれー!」なありきたりな応援。誰もしません。
ーーー101ーーー
「レースは折り返し地点1000mを通過、タイム63.7のミドルペース」
ここでジープベニザクラはどんどんと集団からも抜け出し始めた。
前にいるたった1人の逃げウマ娘に食らいつこうとする。
これは集団に揉まれて下げられていく前に早めに抜け出す作戦……
とか考えているわけではなく。
今日のジープベニザクラは単に調子がいいだけだ。
「(囲まれて走るのも悪くありませんが、景色を見ながらのびのび走るのも悪くありませんね)」
なんてハイキング気分でこれからのことを考えながら。
一方、アールライズとアルマダクロックは集団を形成するウマ娘となり。つまりは囲まれている。
メティキュラスは集団からさらに後ろの後方集団をゆったりと走っている。
図らずも、今まで1番いい状況のレースとなっている。
あとはうっかりをしなければ、ジープベニザクラの勝利は堅実なものとなるだろう。
そして、これまで何度もやってきたように。
ジープベニザクラ緊張でうっかりやらかすようなウマ娘ではない。
6のハロン棒を過ぎた。
1400mを通過して残りは600m。
「仕掛けましょう」
ジープベニザクラは先頭にいた逃げウマ娘との差をじりじり詰めだす。
「やっぱり……離せない……!」
先頭にいた逃げウマ娘はもはや怪物と同じ扱いをされるジープベニザクラに立ち向かう術がない。
前に1人しかいない状態でわざと大外をブン回すような理由もない。
ジープベニザクラは速めに視線を右に移し……いや、ハンドルを右に切って。
やはりある程度外には回りつつも第4コーナーをカーブしながら、ジープベニザクラは先頭に立つ。
「ベニザクラさん!東京大賞典だけでも、私がもらいます!」
メティキュラスはいつのまにか集団を貫くように追い上げを見せて現在7位。
「ボクと勝負だベニザクラ!食らいついて見せる!」
アルマダクロックは歯を食いしばり、6位の位置からスパートをかける。
4のハロン棒を過ぎた。
「4コーナーを回って残るは直線!残り400m!」
「先頭を回ってきたのはジープベニザク……」
ジープベニザクラではなかった。
「……いや、違う!」
いつのまにかジープベニザクラの横に並び、越そうとしていたのは。
集団に揉まれていたはずの。
リベンジを果たしたはずの。
「--追いついたわ!」
「ッ、アールさん……!!」
ジープベニザクラの目が見開いて。
奥歯からギシッ、というような鳴ってはいけない音がした。
リベンジを果たしたはずの相手に再リベンジをかまされるなど、あってたまるか。
ジープベニザクラはチャンピオンズカップと同じ覚悟を決めた。
アールライズに勝てるというのなら。
脚が2本吹っ飛んだって前に行ってやる。