でも、最低でも3人の未来を彼女はグッドエンドに変えてしまった。
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東京大賞典を走り切ったウマ娘たちには、もう1つ大仕事が残っている。
Unlimited Impactだ。
これはダートレースなら全日本ジュニア優駿から東京大賞典まで一切変わらない。
トレーナー4人は最前列を予約して、担当ウマ娘のテーマカラーにしたサイリウムを準備して待機する。
石原トレーナーは赤、打出トレーナーはピンク、原崎トレーナーは青、小原トレーナーは黄だ。
「一応ライブがある前提で来たがよ、あるのか?ってかアールは来るのか?」
「アールがやりたくないと言ったことはねえ。アルマダがやりたくないと言わなきゃ来るぜ」
「なら心配ねえ」
原崎トレーナーと小原トレーナーが軽口を言い合っている横で、石原トレーナーは隣にいた打出トレーナーに耳打ちする。
「どうだ打出、なにか感慨深いものはあるか」
「正直に言うとないですねえ。僕はメティと交わした約束をまだ果たせてませんから」
ジュニア級あたりのころにメティキュラスをスカウトしたとき、打出トレーナーはこう約束していた。
どんな手を使っても、テッペンに連れて行ってやる、と。
勝利したレースの最高グレードがG2では、テッペンとは言えないのだろう。
「そういう石原さんは清々しい顔してますね?2着だったのに」
「まさか。悔しいさ。もし一生に1回しか使えないタイムマシンがあるなら今使ってレース前に戻ってやる」
照明が消えた。夜なこともあり、隣すら見えない暗闇になる。
しばらくすると、砂嵐のテレビが映り、メロディーが始まった。
スモークからだんだんと明るくなっていき、3人のシルエットでしか映らないウマ娘が前に出てくる。
そして、一気にバッ、と青白い照明が付き。
「視界全部奪うような 打ち付けるスコールの中でも……」
センターのアールライズ、そして両サイドにいるジープベニザクラとアルマダクロックが慣れた手つきでUnlimited Impactを歌いだした。
4位のメティキュラスはバックダンサーとして踊っている。
Unlimited Impactに限った話ではないが、ウイニングライブは戦いではなく、ファンへの感謝を伝えるために協力して作り上げるもの。
センターの3人も、バックダンサーの9人も、息を合わせてライブを歌い、踊って完成させていく。
「Yes…Unlimited Impact♪」
サビの最後までいつも通り、キッチリと全員が歌いきる。
観客たちは「見せてあげる Evolution Go Ahead 未来 DAYS!♪」で終わりか、と少ししんみりと惜しもうとして。
「おい?今音程下がったか?」
小原トレーナーの他、かなり多くの者が気づいた。
通常のライブならImpactの音程は上がる。
ここにいるウマ娘たちが揃って音程を外すはずもない。
つまりは……
メロディーが最初のAメロに戻る。
「2番か!?ヒュー!」
「フルで歌うなんて嬉しいサプライズしてくれるじゃないですか!」
原崎トレーナーと打出トレーナーは思わずやってくれた!と歓声を上げる。
通常のライブでは1番しか歌われることがなく、大一番だからといって必ずフルで歌う必要はない。
つまり、これは12人の合意で決めた、ファンたちへのサプライズということになる。
「2番か。Unlimited Impactの2番なんてなかなか聞かないな。いつも以上に耳を澄ましてみるとしよう」
石原トレーナーは目を閉じ、いつもと違うウマ娘たちの歌声に耳を澄ました。