ウマ娘 コノハナレッド   作:takapon960

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そんなつもりはなかった。
でも、最低でも3人の未来を彼女はグッドエンドに変えてしまった。


第106話

ーーー106ーーー

 

東京大賞典を走り切ったウマ娘たちには、もう1つ大仕事が残っている。

 

Unlimited Impactだ。

 

これはダートレースなら全日本ジュニア優駿から東京大賞典まで一切変わらない。

 

トレーナー4人は最前列を予約して、担当ウマ娘のテーマカラーにしたサイリウムを準備して待機する。

 

石原トレーナーは赤、打出トレーナーはピンク、原崎トレーナーは青、小原トレーナーは黄だ。

 

「一応ライブがある前提で来たがよ、あるのか?ってかアールは来るのか?」

 

「アールがやりたくないと言ったことはねえ。アルマダがやりたくないと言わなきゃ来るぜ」

 

「なら心配ねえ」

 

原崎トレーナーと小原トレーナーが軽口を言い合っている横で、石原トレーナーは隣にいた打出トレーナーに耳打ちする。

 

「どうだ打出、なにか感慨深いものはあるか」

 

「正直に言うとないですねえ。僕はメティと交わした約束をまだ果たせてませんから」

 

ジュニア級あたりのころにメティキュラスをスカウトしたとき、打出トレーナーはこう約束していた。

 

どんな手を使っても、テッペンに連れて行ってやる、と。

 

勝利したレースの最高グレードがG2では、テッペンとは言えないのだろう。

 

「そういう石原さんは清々しい顔してますね?2着だったのに」

 

「まさか。悔しいさ。もし一生に1回しか使えないタイムマシンがあるなら今使ってレース前に戻ってやる」

 

 

照明が消えた。夜なこともあり、隣すら見えない暗闇になる。

 

しばらくすると、砂嵐のテレビが映り、メロディーが始まった。

 

スモークからだんだんと明るくなっていき、3人のシルエットでしか映らないウマ娘が前に出てくる。

 

そして、一気にバッ、と青白い照明が付き。

 

「視界全部奪うような 打ち付けるスコールの中でも……」

 

センターのアールライズ、そして両サイドにいるジープベニザクラとアルマダクロックが慣れた手つきでUnlimited Impactを歌いだした。

 

4位のメティキュラスはバックダンサーとして踊っている。

 

Unlimited Impactに限った話ではないが、ウイニングライブは戦いではなく、ファンへの感謝を伝えるために協力して作り上げるもの。

 

センターの3人も、バックダンサーの9人も、息を合わせてライブを歌い、踊って完成させていく。

 

 

「Yes…Unlimited Impact♪」

 

サビの最後までいつも通り、キッチリと全員が歌いきる。

 

観客たちは「見せてあげる Evolution Go Ahead 未来 DAYS!♪」で終わりか、と少ししんみりと惜しもうとして。

 

「おい?今音程下がったか?」

 

小原トレーナーの他、かなり多くの者が気づいた。

 

通常のライブならImpactの音程は上がる。

 

ここにいるウマ娘たちが揃って音程を外すはずもない。

 

つまりは……

 

メロディーが最初のAメロに戻る。

 

「2番か!?ヒュー!」

 

「フルで歌うなんて嬉しいサプライズしてくれるじゃないですか!」

 

原崎トレーナーと打出トレーナーは思わずやってくれた!と歓声を上げる。

 

通常のライブでは1番しか歌われることがなく、大一番だからといって必ずフルで歌う必要はない。

 

つまり、これは12人の合意で決めた、ファンたちへのサプライズということになる。

 

「2番か。Unlimited Impactの2番なんてなかなか聞かないな。いつも以上に耳を澄ましてみるとしよう」

 

石原トレーナーは目を閉じ、いつもと違うウマ娘たちの歌声に耳を澄ました。

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