ーーー10ーーー
ゴール板を通過したジープベニザクラは減速して振り向くと。
後続が次々とゴールする様を眺めていた。
すぐ下には、2着でゴールした不良ウマ娘が激しく息をしながら四つん這いになっていた。
首を垂れる不良ウマ娘とそれを上から見下ろすジープベニザクラ。
レースをする前と立場は完全に逆転していた。
ジープベニザクラはしゃがみこんで四つん這いの不良ウマ娘と目線を合わせる。
「レース、楽しかったですか?」
微笑みながら、ジープベニザクラは尋ねた。
「"私は"楽しかったです」
あなたはどうだったか知りませんけど?
ジープベニザクラはそう言いたげに主語を強調した。
「たっ、楽しいワケあるか……!なんてオメーそんなに強いんだよ……!?」
息も絶え絶えになりながら、不良ウマ娘はジープベニザクラに恐れおののいた。
「さあ?」
ジープベニザクラはわざとらしくとぼけてみせた。
「ただ1つ言えることは……私は、自分自身を強いウマ娘だと思っています」
そう言うと、ジープベニザクラは立ち上がり。
恐れを抱く不良ウマ娘に踵を返した。
「ジープベニザクラ!ちょっといいか!」
石原トレーナーがジープベニザクラに声をかけると。
「えっ。私ですか?」
自分が声をかけられるとは予想だにしていなかったのか、ジープベニザクラは少しだけびっくりして振り向く。
「ああ。トレーナーの石原という。単刀直入に結論から言わせてほしい」
「俺と組まないか?ダートでベニザクラを最強にさせてやりたい」
力強く、少々強引とも思えるぐらいグイグイと詰め寄って石原トレーナーは担当契約の話を持ち掛ける。
先ほども言ったように、ダートコースの模擬レース場はガラガラ。
芝は1人のトレーナーが複数のウマ娘を担当する"チーム"の概念があるが、レースや人口の少ないダートではマンツーマンが基本だ。※
ダートウマ娘はトレーナーを選り好みできる立場にはない。
ましてや情熱が復活したベテラントレーナーからのスカウトならこれ以上ない条件だろう。
ジープベニザクラは"は"の口を開けて了承しようとしたが。
「……私はダートウマ娘ですし……その中でも変わってるって、よく言われますよ?」
と、ジープベニザクラは少し言葉を濁した。
どうやら、ジープベニザクラはよく他人から"変わり者"と言われているらしく。
そんな自分でいいのかと気にしているようだ。
確かに、上品そうな印象のわりに不良ウマ娘から砂をかけられる嫌がらせを"お化粧"などとシニカルに言えるあたり只者ではない。
「いや、気にしないさ。それに……」
石原トレーナーは後ろにいる打出トレーナーと小原トレーナーにアイコンタクトを配る。
「ここはダートだ。お前が変わり者だというのなら、むしろ誇ってもいいんじゃないか?」
それに対し、小原トレーナーは頷いて。
打出トレーナーはサムズアップでYESの返事を返した。
※コノハナレッド独自の設定です。