ついに始まったジープベニザクラの育成ですが、天才かと言われると?
第12話
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無事に担当契約を結ぶことができたジープベニザクラと石原トレーナー。
ここからはメイクデビューの日までひたすらトレーニングをこなし、基礎能力を身に着けていく時期に入る。
場所は変わってダートコースの練習場。
「--次は2000mのタイムラップを測る。体力は残っているか」
「ええ、やれます」
石原トレーナーの笛の音に合わせて、ジープベニザクラはスタートを切り。
相変わらずガラガラの練習場で1人、砂煙を上げてコースを駆けていくジープベニザクラ。
私の"ワガママ"を全部聞いていただきますから、覚悟してくださいね?
なんて言い放った割には、今のジープベニザクラは嫌がるそぶりを全く見せず、淡々と練習を行っている。
もちろん、素直なのは大いに結構なのだが。
ウマ娘のわがままなどドンと来い、叶えてやるのがトレーナーの仕事だ!と受けて立つ心づもりをしていた石原トレーナーにとっては少々拍子抜けだったろう。
石原トレーナーはジープベニザクラの走りを見ながら、改めて基礎能力を分析する。
ウマ娘がレースをするときの基礎能力は主に5つ。
スピード、スタミナ、パワー、根性、そして賢さだ。
ではまず。
「坂道やダートを問題なく走ることができているな」
と石原トレーナーは独り言をつぶやきながらメモを書き加えた。
これは良い評価のように見えるのだが。
石原トレーナーがパワーについて太鼓判を押すなら「問題ない」ではなく「目を見張るような豪脚」という。
あくまで問題ないだけ。
つまりパワーは平均的だ。
次に賢さはどうだろうか。
「基礎は押さえている」
基本的なレース理論や作戦に沿って走ることはできるだろう。
しかし、応用を活かしてレース中、臨機応変に対応できるか、と言われれば……
恐らく無理だ。
恐らく本人もそう言う。
賢さも平均的の域を出ない。
ではスピードは?
ウマ娘たるもの、スピードだけ高くても勝てないが、スピードが低いとそもそも話にならない。
「最高速は……悪くはないが」
石原トレーナーはこれまで複数人のG1ウマ娘を担当してきた。
話にならないほど遅いかと言われればそれは断じて違うが。
トップクラスのウマ娘たちを比べると、やはり上には上がいくらでもいる。
スピードも平均的、どちらかと言えば平均より上とだけはかろうじて言えるだろう。
5つの内、3つを見た限りでは。
ジープベニザクラには、歴史に名を遺すようなウマ娘が持っている圧倒的な実力は感じられない。
悪い、とか才能なし、とかまではいかないのだが。
ジープベニザクラにはどこかパッとしないというか、他の誰にも負けない強みというものがないように見える。
もし、ジープベニザクラが自分の担当ウマ娘ではなく、傍から一目見ただけだったとすれば。
特に面白みのない平凡なウマ娘、で終わっていただろう。
では、残りの2つ。
スタミナと根性はどうだろうか?