ーーー13ーーー
2000mもそろそろ終盤。
石原トレーナーはラストスパートをかけるジープベニザクラを注視し。
それに加えて耳も澄ます。
ラストスパートをかけているジープベニザクラの"呼吸"を聞くためだ。
石原トレーナーはこれまで自分の担当だけでなく、様々な適正距離のウマ娘の呼吸を聞いてきた。
その激しい息遣いを聞けば、今ウマ娘のスタミナが今どれくらい残っているかを感じ取ることができる。
一流トレーナーであれば、そのウマ娘の総合スタミナ量がどれくらいか。
そのウマ娘は適切なスタミナ配分でうまく走れてきたのか。
そのウマ娘の適正距離はどれくらいか。
極端な話、目を閉じていても呼吸1つ聞くだけで、ウマ娘のスタミナどころか総合力まで測ることができるのだ。
「2000mは……走れそうだ」
一流トレーナーである石原トレーナーはジープベニザクラに対しそう結論をつけると。
まだまだ勉強中のダート知識を思い返す。
ダートレースの中の最長距離は2400m、G2のダイオライト記念だ。
G1に限るなら2100mの川崎記念。
2401m以上はG1どころかどのグレードにも1つとして存在しない。
「(道理で長距離なんて単語を出したとたんにマヌケ呼ばわりされるわけだ。この世界じゃステイヤーが全くの無価値なんだからな)」
その他、ジャパンダートダービー、帝王賞、JBCクラシック、東京大賞典など2000mのダートG1レースが数多く存在する。
とりあえず2000mまで走ることができれば、出走できる幅はかなり大きくなる。
……ただし、それはあくまで"適正距離"の話。
「2000mまでならなんとか走れます」、という評価を"スタミナ"の観点から見れば。
これもまた平均的。
いや、ウマ娘のスタミナという基礎能力はステイヤーが当たり前の芝中長距離を基準として考えられる。
仮にトレセン学園、ウマ娘スタミナランキングなんてものがあったとしたら。
ジープベニザクラは平均どころかむしろだいぶ下の方に位置するに違いない。
ここまで見てきて。
ジープベニザクラはスピード、パワー、賢さは並レベル。
スタミナに至っては並以下と言っていいレベルだ。
今のところ、特筆すべき事項が全く見当たらない。
やはり、ジープベニザクラは平凡の域を出られないウマ娘なのだろうか?
「--そんなはずはない」
石原トレーナーはジープベニザクラの方向へ独り言を飛ばした。
ジープベニザクラが本当にただの平々凡々なウマ娘だとしたら。
模擬レースで見せた、あの4と1/2バ身差のの圧倒的な走りはいったい何だというのだ?
石原トレーナーは5つの基礎能力の内、最後の1つである根性がどれほどのものか分析を始める。
ここで石原トレーナーは顎に手を当てて悩むように考え込んでしまった。
やはり、根性も平均的の域を出ないのだろうか?
考え込んでいるうちに、ジープベニザクラは2000mのラインを通過してゆっくりと速度を落としていった。
「走り切りました、トレーナーさん。……トレーナーさん?」