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あっという間に天気が急変し、土砂降りに見舞われる。
言うまでもないかもしれないが一応述べておこう。
屋上には屋根もなければ、ジープベニザクラ、ミスターシービーは2人とも傘も合羽も持っていない。
2人は今、大雨でずぶ濡れ状態だ。
今すぐ学園内に駆け込まなければ。
だが、2人はまったくもって微動だにしなかった。
恐らくここに3人目が来たのなら、「何ボーっとしてるの!?ずぶ濡れだよ早くこっち来て!」と呼びかけるだろう。
残念ながら、ここに3人目が来る様子はなく、2人は雨に打たれたままじっとしている。
ジープベニザクラは目にだけ雨が入らないように手をバイザー代わりにしながら空を見た。
「--そういえばやたら雲、灰色ですね」
「あはは、今気づいたの?」
ミスターシービーは意外と雨の天気が好き。
ずぶ濡れになるのはこれが初めてではないし、なんなら外が雨になったのを見て散歩を思いつくような変わり者だ。
そんな変わり者についていけるウマ娘なんているわけがない。
ミスターシービーだって、そんな変わり者の自分でいることをやめるわけがない。
と思われていたのだが。
どうやら隣のジープベニザクラもまた、同じぐらいずぶ濡れでいることを気にしない変わり者ウマ娘だったようだ。
というかむしろ雨に濡れることでよりご機嫌になっているかもしれない。
「私のこと、変な奴だな、って思ったりしない?」
「まず私が変な奴ですから」
さすがは悪路・悪天候を物ともしない車を名前に冠しているだけあるか。
「(この子、私と似た者同士なのかも。気が合いそう)」
ミスターシービーもまた、心の中で少しご機嫌になった。
「実は、なんですけど」
相変わらず雨に濡れ続ける中、ゴミ袋を振りながらジープベニザクラは話を切り出した。
「私、シービーさんみたいなウマ娘に憧れているんです」
「……へぇ?」
ミスターシービーは興味深いという感じの返事を返した。
ミスターシービーはシンボリルドルフと並んでこの学園に永遠に名を遺すであろうクラシック三冠ウマ娘。
その称号と名前に憧れてトレセン学園の門を叩く新入生ウマ娘は今後何十年と絶えないだろう。
憧れを抱かれること自体はぶっちゃければ、ミスターシービーにとっては当たり前で特別なことでもなんでもない。
だが、今隣にいるのはダート専門ウマ娘。
どれだけ努力しようがクラシック三冠の称号を手にすることは絶対に不可能だ。
「私の、どんなトコに?」
だから、ジープベニザクラはミスターシービーの強さ以外のどこかに憧れたのではないだろうか。
ミスターシービーはそう踏んだ。